2017年4月27日木曜日

冬目景 『空電ノイズの姫君 1』 欠落だらけの物語

1年ぶりの冬目景姉さんの単行本が出た。

・冬目景 (2017.4) 『空電ノイズの姫君 1』(バーズコミックス). 187pp. 幻冬舎/幻冬舎コミックス, 東京.


cover design : Tamura Keiichiro(makena graphics)

「自信なさげなオチビちゃん」と「ロング黒髪の謎美人」という、冬目景作品ではおなじみのキャラが主人公。

どっちかというと、オチビなのにギターがプロ級にうまい(磨音(まお))ちゃんがメイン。謎美人(夜祈子(よきこ))は、まだ脇役の域を出ていないが、2巻以降メイン・ストーリーにどうからんでくるのか楽しみ。

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絵は例によって文句なし。どれも見たことあるようなキャラばかりだが、この人はこういう描きなれたキャラで見せてくれる安定感が持ち味(になってしまった、というべきか・・・)。

マオちゃんのギターを弾く姿は、カワイイ上にカッコイイよね。


同書, p.156

普通は「長くつしたのピッピ」頭だが、ギターに熱中すると、天パ頭爆発になる。これは本現物で見てくれ。

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それにしても、このマンガは「欠落」だらけ。どの登場人物も、「家族や仲間の欠落」をかかえている。

(1) マオちゃんは、母親が不在(離婚だけど)。

(2) マオちゃんの父親(ミュージシャン)は、かつてバンド・リーダーが死んでバンド解散。

(3) 夜祈子は、家族自体がいない(お婆ちゃんだけ遠くで入院中)。その上、慕っていた謎の叔父さんも外国で消息不明。

(4) マオちゃんをバンドに誘っている高瀬と日野は、ヴォーカル+ギター(高瀬の弟)が事故死でバンド解散の危機。

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今のところは(4)が機能して物語を動かしているが、いずれ(1)~(3)も発動するのだろう。特に(3)の発動が展開のキーになりそうな気がする。

もしかすると作者も、夜祈子をどう動かしていくか、まだ考え中なのかもしれない。

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まあ何はともあれ、新刊が出たことを喜びたい。

あとは完結までダレずに続けてくれれば満足。全4巻くらいと予想(それ以上続くと、物語をたたみきれなさそうだから・・・)。

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(追記)@2017/05/06

ピッピ頭とロング黒髪のコンビって、なんか見たことあるな、と思っていたのだが、わかったよ。

・石黒正数 (2008.5) 『ネムルバカ』(RYU COMICS). 210pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMICリュウ, 2006年10月号~2008年3月号.


装幀 : 宮村和生(510design.)

の鯨井ルカ先輩と後輩・入巣柚実だ。ピッピ頭が鯨井先輩。これもロックだし、『空電ノイズ・・・』発想のヒントになってるのかもしれない。

なお、この二人は現在『木曜日のフルット』に転生して、鯨井先輩(ルックスは紺先輩になってるが)と後輩・頼子のコンビで活躍中。こっちもおもしろいよ。特に鯨井先輩のダメっぷりと貧乏っぷりが。

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