2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発
で紹介した森泉岳土の新刊が出ています。
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・森泉岳土 (2016.12) 『うと そうそう』. 166pp. 光文社, 東京.
← 初出 : 小説宝石, 2015年6月号~2016年8月号
ブックデザイン : 吉岡秀典(セプテンバー・カウボーイ)
今回は、水と爪楊枝を8B(!)の鉛筆に持ち替えての作品。紙は画用紙かな?
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うまい、うますぎる。嫌味に感じるほどうまい。中身もブックデザインも完成度が高すぎて、私がくだくだ語る必要もない。見て、読んでもらえばそれで充分、といった作品。
解説によると、著者はこの作品全部を、連載開始前わずか1ヶ月で描き終え、連載はそれを小出しにしていったのだそうな。驚きですね。
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中身は8ページものが15編。いずれも主人公のモノローグで構成される詩のような作品。スケッチのような単純な線で描かれており、シルエットを得意とする森泉にとってはお手のものだろう。
鉛筆なので下描きはないはず。一発勝負でこれだけの絵が描けてしまうのがすごい。別紙にラフくらい取ってから、その後にコマ割りして描いてはいるのだろうが。
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各話の扉がまた凝っている。上3分の2は見えるか見えないかのかすかな線で、手前に置いて見るとよく見えないが、奥から覗きこむようにすると見えてくるという、ホログラムのような特殊印刷。どういう仕組みなんだろう。
本をひっくり返しても同じなので、インクの粒子に角度がついている、とかではなさそう。不思議な仕組みだ。
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解説は映画監督・大林宣彦。実は、著者は大林監督の娘婿に当たるのです。大林監督の文章は、フラフラあちこちに寄り道する展開で、本人の話と似ていておもしろい。
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1400円+税、ということで高いと感じるかもしれませんが、ブックデザインも含めてひとつの芸術作品と思って、手に取ってみてください。
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(追記)@2016/12/31
著者自身が、小説宝石及びブックバンで本作について語っているので、そちらもどうぞ。
・ブックバン > レビュー > 森泉岳土/だれかの指 『うと そうそう』刊行エッセイ(2016/12)
http://www.bookbang.jp/review/article/523795
← 初出 : 小説宝石, 2017年1月号
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(追記)@2017/01/01
扉の仕組みが少しわかった。仕掛けがあるのはインクの方じゃなくて紙の方だ。
光沢のある紙を使っているんだが、特定の角度に光を多く反射する。それが手前側、少し本を傾けた角度(本を読む視線の方向)。すると紙が光を反射して白っぽくなり、やはり白っぽいインクで印刷された絵と同化して真っ白に見える、という寸法。
その角度からずれると、紙からの反射は減り、紙は少し黒っぽくなり絵が見える、というわけだ。
2016年12月31日土曜日
2016年12月30日金曜日
stod phyogsの分家blogです
ブログstod phyogsの分家です。
本家からマンガ、アート、本、科学ほか、いろいろ雑多な話題はこちらに移します。しばらくは本家の投稿も残しておくので、2016/12/24以前の投稿は当分重複します。
リンクやレイアウトにまだ不備がありますが、それらはおいおい修正していきます。
本家からマンガ、アート、本、科学ほか、いろいろ雑多な話題はこちらに移します。しばらくは本家の投稿も残しておくので、2016/12/24以前の投稿は当分重複します。
リンクやレイアウトにまだ不備がありますが、それらはおいおい修正していきます。
2016年12月24日土曜日
須藤佑実『ミッドナイトブルー』
本エントリーは
stod phyogs 2016年12月24日土曜日 須藤佑実『ミッドナイトブルー』
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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・須藤佑実 (2016.11) 『ミッドナイトブルー』(フィールコミックス). 175pp. 祥伝社, 東京.
装丁 : コードデザインスタジオ
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これは表紙画とデザインに一目惚れです。素晴らしい。
タイトルの「ミッドナイトブルー」にひっかけて、ブルーな配色だが、これはミッドナイトブルーではない。なんだこれは、粘土ブルー(いわゆる青灰色)か?
火星の夕焼け色にも似ているな。はからずも、タイトル作「ミッドナイトブルー」は火星がキーワードだ。
肌の薄いピンクに、影のように控えめに入った粘土ブルーがすごく効果的。そこはかとなく、表紙の人物の素性を表現してもいる。
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あと文字が少し透けていて、薄~く背景が見えるのもいいなあ。気づく人は少ないだろうけど。デザイナーが楽しんでいるのがわかる。
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中身は「ときどきファンタジーが入った正統派ラブストーリー集」といったところ。
これも「フィーヤン」(祥伝社の雑誌「フィールヤング」)かあ。最近女性向けマンガ買うと、「フィーヤン」ものに当たる確率が高い。高野雀とかヤマシタトモコとか。
この須藤佑実については、予備知識なしで本を買ったのだが、見覚えある絵。と思ったら『流寓の姉弟』の人かあ。
『流寓の姉弟』も本屋で何度も手にとっているんだが、なかなか買う踏ん切りがつかなかった。しかし、よし、これも買おう。
stod phyogs 2016年12月24日土曜日 須藤佑実『ミッドナイトブルー』
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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・須藤佑実 (2016.11) 『ミッドナイトブルー』(フィールコミックス). 175pp. 祥伝社, 東京.
装丁 : コードデザインスタジオ
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これは表紙画とデザインに一目惚れです。素晴らしい。
タイトルの「ミッドナイトブルー」にひっかけて、ブルーな配色だが、これはミッドナイトブルーではない。なんだこれは、粘土ブルー(いわゆる青灰色)か?
火星の夕焼け色にも似ているな。はからずも、タイトル作「ミッドナイトブルー」は火星がキーワードだ。
肌の薄いピンクに、影のように控えめに入った粘土ブルーがすごく効果的。そこはかとなく、表紙の人物の素性を表現してもいる。
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あと文字が少し透けていて、薄~く背景が見えるのもいいなあ。気づく人は少ないだろうけど。デザイナーが楽しんでいるのがわかる。
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これも「フィーヤン」(祥伝社の雑誌「フィールヤング」)かあ。最近女性向けマンガ買うと、「フィーヤン」ものに当たる確率が高い。高野雀とかヤマシタトモコとか。
この須藤佑実については、予備知識なしで本を買ったのだが、見覚えある絵。と思ったら『流寓の姉弟』の人かあ。
『流寓の姉弟』も本屋で何度も手にとっているんだが、なかなか買う踏ん切りがつかなかった。しかし、よし、これも買おう。
2016年12月3日土曜日
『うんこ』出ました。
本エントリーは
stod phyogs 2016年12月3日土曜日 『うんこ』出ました。
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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2016年10月30日日曜日 『10分後にうんこが出ます』
で紹介した
・中西敦士 (2016.11) 『10分後にうんこが出ます 排泄予知デバイス開発物語』. 223pp. 新潮社, 東京.
装幀:新潮社装幀室
が出たので、買ってきました。単刀直入に言うと「ハズレ」でした。
ハズレの本について書くのもなかなか苦痛なのですが、前々回のエントリーで大々的に「楽しみ」と書いてしまったので、ちゃんと責任取ります。
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この本は「排泄予知デバイス」を「作る人」の話ではなく、「作る人」と「金」を集めてくる「起業家」のお話。
だから、実験にしても試作機開発にしても、具体的な内容がさっぱりわからない。もっとも、著者はその最中ずっとUSAでプレゼン資料を作っていて、現場には立ち会っていないんだから、詳しいことが書けないのも仕方ない。
かたや資金調達の記述になると、とたんに具体的な話がどんどん出てくる。そっちが専門なんだから、その箇所では生き生きしてくるのも当然でしょうね。
実験や機器開発の間に、「排泄のメカニズムや腸内のうんこの諸相がどんどん明らかになっていく」、また「排泄予知が一筋縄ではいかないことが明らかとなり、そしてそれを克服する具体的な方法の発見」といった科学的な内容を期待していた自分にとっては、全く面白くありませんでした。
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終始、著者の行動力と人たらしの素晴らしさが、自画自賛として語られていく、という展開で、最初の4分の1で飽きたなあ。
確かに行動力は素晴らしいし、実際の人間性もきっと魅力的なんだと思うが、私と合うタイプではないですね。著者にとっては別にどうでもいいことだけど。
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文章はそれほどうまいわけではないんだが、時々名言チックなことを言ったり書いたりできる才能のある人。この本のキャッチーなタイトル「10分後にうんこが出ます」にもその片鱗が伺える。
「排泄のビッグデータ」(p.7)
「それなのに、うんこに関する情報は社会で共有されていない」(p.14)
この、今まで見たことも聞いたこともない意外な連結具合はどうだ。
「僕は当時(引用者注:大学時代)能楽サークルに所属していたのだ。ちなみにバークレーでうんこを漏らした時、パンツからブツが落ちないように歩く「すり足」は、サークルで学んだ動きだった。」(p.100)
も素晴らしい。
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しかしひと通り読んでみて、このプロジェクトには医学(特に内科)関係のプロが一人もいないのが、非常に気になった。つまり、消化器、排泄物に関する知識が圧倒的に不足している、と感じた。
「排泄予測」という理想だけが先走っていて、あたかももうすぐ完成するかのようにプレゼンして資金を集めているのだが、人間の体は素人がすぐに十全に把握できるほど甘くないだろう。
資金調達のためプレゼン日程だけが先に決まっていて、その直前に超音波装置(試作機とは別の既成の装置)で腸の具合を初めて調べているんだから、かなり危なっかしい。
その実験結果は「超音波測定器で腸内の便の様子がわかることが判明した」というもの。これだけで「排便予知装置の開発が可能」というシナリオで資金を集めるのだから、その強心臓ぶりは私にはちょっと理解できない。
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排尿予知デバイスはかなり実用化が近いようなのだが、肝心の排大便予知デバイスは当分完成しないようだ。
クラウド・ファンディングで集めた約1200万円を全額返金することを2016年9月に決定している(p.175)ことからも、それは確実だろう。
大便や大腸の諸相はそう簡単に単純化できるものではないし、なんといっても排便のタイミングには個人差が大きい。大便の位置がわかるだけで一律に「何分後に出ます」と予知できるものではない、と思う。
でもまあ、大腸の様子がウェアラブル・デバイスでリアルタイムに観測できるようになるだけでも立派なものだとは思う。
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発想が面白いのは間違いないし、完成したら世の役に立つのも間違いない。私が協力できるのは、この本を買って印税の130円(定価の10%が印税として)を著者にあげるくらいだが、是非完成へ向けて頑張ってほしい。
「山師」で終わるか、「利用者に感謝される人」になるのかは、今後の社長である著者の力にかかっているのだ。これから先は「行動力」だけでは解決できない問題が多いと思うけど。
stod phyogs 2016年12月3日土曜日 『うんこ』出ました。
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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2016年10月30日日曜日 『10分後にうんこが出ます』
で紹介した
・中西敦士 (2016.11) 『10分後にうんこが出ます 排泄予知デバイス開発物語』. 223pp. 新潮社, 東京.
装幀:新潮社装幀室
が出たので、買ってきました。単刀直入に言うと「ハズレ」でした。
ハズレの本について書くのもなかなか苦痛なのですが、前々回のエントリーで大々的に「楽しみ」と書いてしまったので、ちゃんと責任取ります。
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この本は「排泄予知デバイス」を「作る人」の話ではなく、「作る人」と「金」を集めてくる「起業家」のお話。
だから、実験にしても試作機開発にしても、具体的な内容がさっぱりわからない。もっとも、著者はその最中ずっとUSAでプレゼン資料を作っていて、現場には立ち会っていないんだから、詳しいことが書けないのも仕方ない。
かたや資金調達の記述になると、とたんに具体的な話がどんどん出てくる。そっちが専門なんだから、その箇所では生き生きしてくるのも当然でしょうね。
実験や機器開発の間に、「排泄のメカニズムや腸内のうんこの諸相がどんどん明らかになっていく」、また「排泄予知が一筋縄ではいかないことが明らかとなり、そしてそれを克服する具体的な方法の発見」といった科学的な内容を期待していた自分にとっては、全く面白くありませんでした。
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終始、著者の行動力と人たらしの素晴らしさが、自画自賛として語られていく、という展開で、最初の4分の1で飽きたなあ。
確かに行動力は素晴らしいし、実際の人間性もきっと魅力的なんだと思うが、私と合うタイプではないですね。著者にとっては別にどうでもいいことだけど。
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文章はそれほどうまいわけではないんだが、時々名言チックなことを言ったり書いたりできる才能のある人。この本のキャッチーなタイトル「10分後にうんこが出ます」にもその片鱗が伺える。
「排泄のビッグデータ」(p.7)
「それなのに、うんこに関する情報は社会で共有されていない」(p.14)
この、今まで見たことも聞いたこともない意外な連結具合はどうだ。
「僕は当時(引用者注:大学時代)能楽サークルに所属していたのだ。ちなみにバークレーでうんこを漏らした時、パンツからブツが落ちないように歩く「すり足」は、サークルで学んだ動きだった。」(p.100)
も素晴らしい。
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しかしひと通り読んでみて、このプロジェクトには医学(特に内科)関係のプロが一人もいないのが、非常に気になった。つまり、消化器、排泄物に関する知識が圧倒的に不足している、と感じた。
「排泄予測」という理想だけが先走っていて、あたかももうすぐ完成するかのようにプレゼンして資金を集めているのだが、人間の体は素人がすぐに十全に把握できるほど甘くないだろう。
資金調達のためプレゼン日程だけが先に決まっていて、その直前に超音波装置(試作機とは別の既成の装置)で腸の具合を初めて調べているんだから、かなり危なっかしい。
その実験結果は「超音波測定器で腸内の便の様子がわかることが判明した」というもの。これだけで「排便予知装置の開発が可能」というシナリオで資金を集めるのだから、その強心臓ぶりは私にはちょっと理解できない。
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排尿予知デバイスはかなり実用化が近いようなのだが、肝心の排大便予知デバイスは当分完成しないようだ。
クラウド・ファンディングで集めた約1200万円を全額返金することを2016年9月に決定している(p.175)ことからも、それは確実だろう。
大便や大腸の諸相はそう簡単に単純化できるものではないし、なんといっても排便のタイミングには個人差が大きい。大便の位置がわかるだけで一律に「何分後に出ます」と予知できるものではない、と思う。
でもまあ、大腸の様子がウェアラブル・デバイスでリアルタイムに観測できるようになるだけでも立派なものだとは思う。
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発想が面白いのは間違いないし、完成したら世の役に立つのも間違いない。私が協力できるのは、この本を買って印税の130円(定価の10%が印税として)を著者にあげるくらいだが、是非完成へ向けて頑張ってほしい。
「山師」で終わるか、「利用者に感謝される人」になるのかは、今後の社長である著者の力にかかっているのだ。これから先は「行動力」だけでは解決できない問題が多いと思うけど。