そろそろかな?とは思っていたが、2冊ほぼ同時とは意表を突かれた。
・冬目景 (2018.3) 『空電ノイズの姫君 2』(バーズコミックス). 199pp. 幻冬舎コミックス, 東京(幻冬舎, 東京).
← 初出 : 月刊コミックバーズ, 2017年7月号~2018年3月号.
cover design : Tamura Keiichiro(makena graphics)
夜祈子(右のロング黒髪の子)は、なんでこんなワルイ顔をしてるんだ?
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1巻についてはこちらをどうぞ↓
2017年4月27日木曜日 冬目景 『空電ノイズの姫君 1』 欠落だらけの物語
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1巻で注目した「欠落」については、2巻ではその欠落をあまり感じさせない。みんな、その欠落を音楽で埋めようとしているかのよう。展開は明るいので、読後感はいい。
同書, p.46
磨音ちゃんに、色んな表情、いろんなポーズをさせてるし、どれもかわいく描けている。作者が楽しんで描いているのがわかる。だから読む方も楽しい。
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この物語には、延々説教を垂れたりする暑苦しい奴や、悪役じみた登場人物がいない(今のところは)。だから安心して読んでいけるんだが、その点が物足りないという人もいるだろうな。
磨音ちゃんをはじめ、バンドメンバーは自分たちのことだけ考えてればいい状態なんだから、ある意味理想的な環境だ。まあ、社会との軋轢があまりない「ファンタジー」といえばその通りだが、放っておくとすぐに暗い展開に行きがちな姐さんにとっては、かえってこれがいい方向にころがってる。
夜祈子も音楽面で物語に絡み始めた。「いずれ×××になるんだろうな」とは、誰しも思うところだが、その過程を丁寧に描いているのでいい感じで進んでる。
しばらくは安定して楽しめそうな展開だ。
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2巻で笑ったのは、ライブハウスの店長・須藤寺(すとうじ)さん。
同書, p.92
ギャハハ、Iggy Pop ! 須藤寺←The Stoogesだし。
これ、ネット上では誰も指摘してないのな。このマンガ、音楽ファンはあんまり読んでない、と見た。というより、ジジイ+ババア(自分含む)の音楽ファンは読んでない、と言うべきか。
しかし、チョイ役にこんな気合の入った絵を与えてどうする(笑)?これじゃあ、今後「重要キャラ」に昇格させるしかないではないか。
その辺も楽しみだ。
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お次は、
・冬目景 (2018.3) 『黒鉄・改 1』(ヤングジャンプ コミックス GJ). 173pp. 集英社, 東京.
← 初出 : グランドジャンプ, H28年23号, H29年5号/6号/8号/10号/12号/16号.
Design : Maruka-Kōbō
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「黒鉄・改」の連載開始については、こちらをどうぞ↓
2017年2月4日土曜日 冬目景 「黒鉄」 復活!
単行本が出るまで結構時間がかかった。当初毎号(隔週)掲載との話だった(信用してなかったけど)が、徐々に掲載間隔が伸びつつある。単行本での描き直しもあったんだろうな、例によって。
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こちらは比較的ゆっくりした展開。丹(まこと)が拾った密書の存在が、なんかうやむやになってるな。
連載を読んでて、ところどころ違和感があったんだが、あとがきによれば、かつての設定からかなり変えたらしい。やっぱりそうだったのか。
刀の鋼丸は迅鉄と離れてもしゃべれるようになってるし、鋼丸がいないと有象無象の悪鬼が迅鉄に取り憑いて凶悪な強さになるとか、迅鉄の仮面が外れるようになっている、とか・・・。
同書, pp.134-135
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単行本冒頭には、連載開始前に掲載された短編。これは知らなかった。スッキリまとまっていておもしろい短編だ。オチは、あんまり多用しちゃいけない強引な技を使っているが、 おもしろかったからまあいいとしよう。
あと丹は、偶然鋼丸を拾ったり、迅鉄の窮地に出くわしたり、タイミング良すぎでしょ。便利な女になってる。ちょっと不憫。
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さて、『黒鉄・改』の方は、まだ地味な展開だが、今後じわじわと盛り上がっていくのか、それとも毎度おなじみ、飽きてフェイドアウトしていくのか・・・。微妙なところだが、あまり風呂敷を広げすぎないほうがいいような気も・・・。
まあこちらも、じっくりつきあうことにしよう。
ちなみに、『黒鉄・改 2』は2018年秋ごろの予定。1巻が遅かっただけに、こっちは少し早めに出すようです。
2018年3月29日木曜日
2018年3月26日月曜日
やりすぎの人 小林銅蟲(2) 『寿司 虚空編』
・小林銅蟲 (2017.8) 『寿司 虚空編』. 223pp. 三才ブックス, 東京.
← 初出 :
裏サンデー, 2013年~2014年
http://urasunday.com/index.html
MANGA pixv, 2015/04/13+2015/10/26+2016
https://comic.pixiv.net/magazines/87
装幀 : 井上則人デザイン事務所
タイトルからして、これも料理マンガかと思いきや、数学マンガだ。それもテーマが「巨大数」!
------------------------------------------
巨大数とは何かというと、とにかくでかい数(笑)。宇宙に存在する粒子の数よりもはるかに多い数でも、とにかく作っていこう、という試みだ。
何が目的かわからないが、すでに手段が目的化しているという暴走理論でもある。高等数学って、まあそういう学問ではあるけど。
------------------------------------------
冒頭から、もうグラハム数が出てくる。
私は5ページ目の「↑(タワー=クヌースの矢印記号)」が3つ重なった「↑↑↑」が出てきたところでもう脱落しました(笑)。
あとは、作者の暴走ぶりを笑って楽しむのみ。
------------------------------------------
普通、こういうマンガには、読者と物語のディープな世界をつなぐ「初心者」を主人公として置くものだが、このマンガにはそういう登場人物はいない。
ひたすら巨大数の数式を投げまくる親方(ごくたまに寿司を握る)と、その弟子マシモ、そして親方の娘うるか(の霊)、この三人の掛け合いで話は進む。マシモが比較的初心者に近いのだが、ツッコミは入れるものの、読者に寄り添う気はまるでない。
三人で読者など置いていって、暴走しっぱなし。
同書, pp.198-199
ここは珍しく料理にからめて解説しているところ。他のページはマンガの形にはなっているが、エグい数式の解説がひたすら続く、という展開。寿司関係ねーじゃん。
------------------------------------------
同書, pp.20-21
これは数式を展開している様子だが、こんなのが10ページも続いたりするのだ。
こんなマンガなので、裏サンデーでは6回で打ち切り。まあ当然ですな。
------------------------------------------
第6話は64ページもある。裏サンデーでの最終話。
覆面レスラー「綿花製品・アストラル・気持ち・御覧ください・仮面」が出てきて、ちょっと展開は変わる。もしかすると編集者に「あんた、いいかげんにしろ」と怒られたのかもしれない。作者がプロレス・ファンであることもわかる。
それでも、その合間には「最小超限順序数ω(オメガ)」や「FGH(急増加関数)」の解説がしっかり入る。
------------------------------------------
ちなみに
第1話は4ページ(2の2乗)
第2話は8ページ(2の3乗)-数式展開ページを除く
第3話は16ページ(2の4乗)
第4話+第5話は32ページ(2の5乗)
第6話は64ページ(2の6乗)
------------------------------------------
MANGA pixvに移ってからは、巨大数に疲れたのか、説明の仕方がわからなくなったのか、寿司屋の客との掛け合い、5年前に店を飛び出した元弟子マサとのロボット・バトル(笑)。
同書, pp.172-173
ほんともう、自分の好きなものを、なりふり構わず全部乗せで突っ込んできたようなマンガ。
「ついていけない・・・」と落ち込んだ読者、心配ありません。誰もついて行っていませんから(笑)。
------------------------------------------
本屋で見かけたので、こんな本も買ってしまった。
・鈴木真治 (2016.9) 『巨大数』(岩波科学ライブラリー253). 113pp. 岩波書店, 東京.
これは前半では、巨大数の歴史を解説。恒河沙とかアボガドロ数とかエディントン数なども出てくるので、上記のような異常な巨大数に至るまでの経緯がわかりやすい。
------------------------------------------
『寿司 虚空編』で扱ってるような巨大数が現れるのは、後半になってからだ。
『巨大数』では後半になってやっと現れるグラハム数が、マンガでは冒頭から登場することでも、『寿司 虚空編』の異常さがわかるでしょう。
『寿司 虚空編』でしきりに出てくるアッカーマン関数は、『巨大数』ではちょっとだけ。「ふぃっしゅ数」に至っては、あとがきでちょっと触れているだけです。
------------------------------------------
『巨大数』で扱ったのは、主に学界中心の話題だったのですが、『寿司 虚空編』で扱っているのは、アマチュア・グーゴロジスト(巨大数愛好家)が2ch(今は5ch)あたりで作り出した巨大数の話題なのです。そういうわけで両書には興味の範囲にずれがあるので、話が一致しなくても当然。
それにしても、科学啓蒙書すら置いてけぼりにするマンガが存在しうるとは・・・。いつも言ってることですが、日本のマンガの豊穣さに驚くばかり。
しかも、どうやらこれが増刷になったらしい。恐ろしや・・・。
------------------------------------------
本屋に行ったら、フェアかなんかで、この『巨大数』が平積みされていました。それもどうかと思うが・・・、一体誰が買うんだ?(オレだった)。
それで本屋のお兄さんに「『寿司 虚空編』を隣りに置いといて下さい」と言っておきましたが(←バカ)、どうも『寿司 虚空編』の存在は知らなかったようです。
------------------------------------------
しかし小林銅蟲って人は大丈夫かなあ。暴走しすぎだ。
この人は、水産学部出身で理系だ。なるほど、『めしにしましょう』の理詰めの料理法、『寿司 虚空編』の数学趣味にも納得。メンヘル、ひきこもりからの脱却でTVにも出てるし。
なんだか急に狂い咲きしてるんだが、その後に急落しないよう、暴走を抑えて小出しにしていくのもひとつの手。が、それができる人ならこんなマンガ描かないよな(笑)。
まあ、とにかくできるとこまでこの「濃いマンガ」を続けてほしいものです。
===========================================
(追記)@2018/03/28
なお、『寿司 虚空編』の第9話、第10話は単行本未収録で、WEBでしか読めません。
こちらでどうぞ。インタビューもおもしろいぞ。
・ピクシブ/pixvコミック > 寿司 虚空編/小林銅蟲(as of 2018/03/26)
https://comic.pixiv.net/works/1505
← 初出 :
裏サンデー, 2013年~2014年
http://urasunday.com/index.html
MANGA pixv, 2015/04/13+2015/10/26+2016
https://comic.pixiv.net/magazines/87
装幀 : 井上則人デザイン事務所
タイトルからして、これも料理マンガかと思いきや、数学マンガだ。それもテーマが「巨大数」!
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巨大数とは何かというと、とにかくでかい数(笑)。宇宙に存在する粒子の数よりもはるかに多い数でも、とにかく作っていこう、という試みだ。
何が目的かわからないが、すでに手段が目的化しているという暴走理論でもある。高等数学って、まあそういう学問ではあるけど。
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冒頭から、もうグラハム数が出てくる。
私は5ページ目の「↑(タワー=クヌースの矢印記号)」が3つ重なった「↑↑↑」が出てきたところでもう脱落しました(笑)。
あとは、作者の暴走ぶりを笑って楽しむのみ。
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普通、こういうマンガには、読者と物語のディープな世界をつなぐ「初心者」を主人公として置くものだが、このマンガにはそういう登場人物はいない。
ひたすら巨大数の数式を投げまくる親方(ごくたまに寿司を握る)と、その弟子マシモ、そして親方の娘うるか(の霊)、この三人の掛け合いで話は進む。マシモが比較的初心者に近いのだが、ツッコミは入れるものの、読者に寄り添う気はまるでない。
三人で読者など置いていって、暴走しっぱなし。
同書, pp.198-199
ここは珍しく料理にからめて解説しているところ。他のページはマンガの形にはなっているが、エグい数式の解説がひたすら続く、という展開。寿司関係ねーじゃん。
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同書, pp.20-21
これは数式を展開している様子だが、こんなのが10ページも続いたりするのだ。
こんなマンガなので、裏サンデーでは6回で打ち切り。まあ当然ですな。
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第6話は64ページもある。裏サンデーでの最終話。
覆面レスラー「綿花製品・アストラル・気持ち・御覧ください・仮面」が出てきて、ちょっと展開は変わる。もしかすると編集者に「あんた、いいかげんにしろ」と怒られたのかもしれない。作者がプロレス・ファンであることもわかる。
それでも、その合間には「最小超限順序数ω(オメガ)」や「FGH(急増加関数)」の解説がしっかり入る。
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ちなみに
第1話は4ページ(2の2乗)
第2話は8ページ(2の3乗)-数式展開ページを除く
第3話は16ページ(2の4乗)
第4話+第5話は32ページ(2の5乗)
第6話は64ページ(2の6乗)
MANGA pixvに移ってからは、巨大数に疲れたのか、説明の仕方がわからなくなったのか、寿司屋の客との掛け合い、5年前に店を飛び出した元弟子マサとのロボット・バトル(笑)。
同書, pp.172-173
ほんともう、自分の好きなものを、なりふり構わず全部乗せで突っ込んできたようなマンガ。
「ついていけない・・・」と落ち込んだ読者、心配ありません。誰もついて行っていませんから(笑)。
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本屋で見かけたので、こんな本も買ってしまった。
・鈴木真治 (2016.9) 『巨大数』(岩波科学ライブラリー253). 113pp. 岩波書店, 東京.
これは前半では、巨大数の歴史を解説。恒河沙とかアボガドロ数とかエディントン数なども出てくるので、上記のような異常な巨大数に至るまでの経緯がわかりやすい。
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『寿司 虚空編』で扱ってるような巨大数が現れるのは、後半になってからだ。
『巨大数』では後半になってやっと現れるグラハム数が、マンガでは冒頭から登場することでも、『寿司 虚空編』の異常さがわかるでしょう。
『寿司 虚空編』でしきりに出てくるアッカーマン関数は、『巨大数』ではちょっとだけ。「ふぃっしゅ数」に至っては、あとがきでちょっと触れているだけです。
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『巨大数』で扱ったのは、主に学界中心の話題だったのですが、『寿司 虚空編』で扱っているのは、アマチュア・グーゴロジスト(巨大数愛好家)が2ch(今は5ch)あたりで作り出した巨大数の話題なのです。そういうわけで両書には興味の範囲にずれがあるので、話が一致しなくても当然。
それにしても、科学啓蒙書すら置いてけぼりにするマンガが存在しうるとは・・・。いつも言ってることですが、日本のマンガの豊穣さに驚くばかり。
しかも、どうやらこれが増刷になったらしい。恐ろしや・・・。
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本屋に行ったら、フェアかなんかで、この『巨大数』が平積みされていました。それもどうかと思うが・・・、一体誰が買うんだ?(オレだった)。
それで本屋のお兄さんに「『寿司 虚空編』を隣りに置いといて下さい」と言っておきましたが(←バカ)、どうも『寿司 虚空編』の存在は知らなかったようです。
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しかし小林銅蟲って人は大丈夫かなあ。暴走しすぎだ。
この人は、水産学部出身で理系だ。なるほど、『めしにしましょう』の理詰めの料理法、『寿司 虚空編』の数学趣味にも納得。メンヘル、ひきこもりからの脱却でTVにも出てるし。
なんだか急に狂い咲きしてるんだが、その後に急落しないよう、暴走を抑えて小出しにしていくのもひとつの手。が、それができる人ならこんなマンガ描かないよな(笑)。
まあ、とにかくできるとこまでこの「濃いマンガ」を続けてほしいものです。
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(追記)@2018/03/28
なお、『寿司 虚空編』の第9話、第10話は単行本未収録で、WEBでしか読めません。
こちらでどうぞ。インタビューもおもしろいぞ。
・ピクシブ/pixvコミック > 寿司 虚空編/小林銅蟲(as of 2018/03/26)
https://comic.pixiv.net/works/1505
2018年3月24日土曜日
福岡県赤村古墳?
最初はGoogle Newsで見ました。で、元サイトに行ってみたわけです。
・西日本新聞 > ニュース >九州 >福岡 > 筑豊 > 「卑弥呼の墓では」巨大な前方後円墳?謎の丘陵 日本最大に迫る全長450メートル [福岡県](2018年03月20日 06時00分)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikuhou/article/402402/
これが本当なら大発見だ。
------------------------------------------
まず赤村の位置から
Google Mapより
福岡県の東部、田川郡に属しています。
------------------------------------------
これがその「古墳様地形」の衛星写真。
Google Mapより
確かに、北側が円形、南側が台形の「前方後円墳」のように見えます。
------------------------------------------
Google Earthで少し角度をつけてみましょう。
Google Earthより、南側から
西日本新聞も、他の「古墳説」を取る人の絵はだいたいこの方向、角度からのものばかりです。
------------------------------------------
では、方向を変えたらどう見えるのか?東から見てみましょう。
Google Earthより、東側から
円形部よりも、方形部に向かってどんどん高くなっているようです。
前方後円墳で、方形部の方が高い古墳なんてあるのかな?自分はちょっと知らない。
しかも方形部は水平ではなく、円形部へ向かい傾斜している。これも古墳にしては不自然だ。
円形部の一部、民家が数軒建っているあたりは開削したのだろうか?だとすれば、ここには露頭が出ているはずだから、盛り土なのか?何か地層が出ているのか?わかるんではないだろうか?
------------------------------------------
次に北東から見てみよう。
Google Earthより、北東側から
円形部はあまり盛り上がりが感じられない。本当の古墳ならもっとはっきりしていてほしいところ。
これは自分には「方形部からの斜面の末端」という感じに見える。
------------------------------------------
この地形の西側が、なにか不自然に樹木がないことがとても気になる。谷間のように見えるが、それにしても低木すらないのは不自然だ。
もしかすると、この地形が古墳に見えるように、きれいに伐採したのではないか?などと考えてしまう。
見る人が古墳と感じるのは、この樹木の切れ目(の連なり)で輪郭が強調されている影響が非常に大きいだろう。
------------------------------------------
Google Map StreetViewでも見てみよう。東側から。
Google Map StreetViewより、東側から
やはり方形部ヘ向かいどんどん高くなっていくのがわかる。
------------------------------------------
見た目だけではなく、等高線のある地形図で見てみよう。
国土地理院地図より
・国土地理院/地理院地図(電子国土Web)(as of 2018/03/24)
http://maps.gsi.go.jp
地形図でも意外に「前方後円墳」のように見えるのでびっくり。
しかしやはり方形部の方が高い。円形部の頂部は八十数m。方形部の頂部は九十数mだ。もちろん円形部へ向かって傾斜している。
等高線には出ないが、くびれの部分に少し高まりがあるのも、古墳としては不自然。
西側の谷間は、これで見ると田んぼがあるようだ。なるほど、低木すらないのも納得。陸稲だろうか?ずいぶん狭いところに作ったもんだなー。
------------------------------------------
地質も見ておこう。
シームレス地質図より
・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター > 20万分の1日本シームレス地質図 > 20万分の1日本シームレス地質図を表示(as of 2018/03/24)
https://gbank.gsj.jp/seamless/seamless2015/2d/index.html?lang=en
この場所を含む一帯には、白亜紀の花崗岩が分布していることがわかる。
この場所は、花崗岩地形らしい起伏に欠けるが、だいぶ風化・削剥されているのだろう。
花崗岩は風化すると、「真砂(まさ)」というごく粗い砂~小石になる。表面には土壌がかぶっているとは思うが、少し掘ればその真砂が出てくるはずだ。
私には、この「古墳様地形」は、南側にあった花崗岩の山が徐々に風化して崩れ、真砂が北へ地すべりのように流れ落ち、末端の円形部に溜まっているように見える。
------------------------------------------
というわけで、私の見るところでは、これは人工物ではなく自然の地形と判断しました。
マスコミの人は「古墳か?遺跡か?」と煽ったほうが商売になるので、不都合なデータはわざと出さない傾向にあります。与那国海底遺跡と同じ図式ですね。
「新聞は公器。正しい情報を書いてくれる」が迷信なのは、これでもわかりますね。こう言った案件では、マスコミの言うことは鵜呑みにせず、ある程度自力で調べる必要があるのです。
さて、本当のところはどうなんでしょうね?続報を期待しましょう。
===========================================
(追記)@2018/03/24
・国土地理院 > 地図・空中写真・地理調査 > 地図・空中写真閲覧サービス > CKU747(1975/03/15(昭50))
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1057978&isDetail=false
に、1975年の航空写真があります。
地図・空中写真閲覧サービスより
当時、この地形の西側・北側は伐採されたばかりで、樹木のない状態の地形がよくわかります。
円形部、西側は思いのほか整っている。でも、川で削られた地形としては、まあおかしくない。
円形部の東側はだいぶグズグズだ。このときに伐採された木が育つ前に、人為的に改変を受けている(崩された?あるいは採石された?)ようにも見える。
決定的な証拠とまでは行かないけど、じっくり観察すればおもしろいことがわかりそうな資料です。
===========================================
(追記)@2018/03/25
今思ったのだが、もしこれが造営物だったとすると、山際のライン(前方後円墳様地形の西側)が偶然うまい具合に「前方後円墳」の輪郭だったところに、その輪郭に合わせて前方後円墳を造営したことになる。
そんなことするかな?これはやはり、自然による偶然と考えた方が理にかなっていると思う。
どっちにしても決定的な話ではないけど・・・。
・西日本新聞 > ニュース >九州 >福岡 > 筑豊 > 「卑弥呼の墓では」巨大な前方後円墳?謎の丘陵 日本最大に迫る全長450メートル [福岡県](2018年03月20日 06時00分)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikuhou/article/402402/
これが本当なら大発見だ。
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まず赤村の位置から
Google Mapより
福岡県の東部、田川郡に属しています。
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これがその「古墳様地形」の衛星写真。
Google Mapより
確かに、北側が円形、南側が台形の「前方後円墳」のように見えます。
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Google Earthで少し角度をつけてみましょう。
Google Earthより、南側から
西日本新聞も、他の「古墳説」を取る人の絵はだいたいこの方向、角度からのものばかりです。
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では、方向を変えたらどう見えるのか?東から見てみましょう。
Google Earthより、東側から
円形部よりも、方形部に向かってどんどん高くなっているようです。
前方後円墳で、方形部の方が高い古墳なんてあるのかな?自分はちょっと知らない。
しかも方形部は水平ではなく、円形部へ向かい傾斜している。これも古墳にしては不自然だ。
円形部の一部、民家が数軒建っているあたりは開削したのだろうか?だとすれば、ここには露頭が出ているはずだから、盛り土なのか?何か地層が出ているのか?わかるんではないだろうか?
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次に北東から見てみよう。
Google Earthより、北東側から
円形部はあまり盛り上がりが感じられない。本当の古墳ならもっとはっきりしていてほしいところ。
これは自分には「方形部からの斜面の末端」という感じに見える。
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この地形の西側が、なにか不自然に樹木がないことがとても気になる。谷間のように見えるが、それにしても低木すらないのは不自然だ。
もしかすると、この地形が古墳に見えるように、きれいに伐採したのではないか?などと考えてしまう。
見る人が古墳と感じるのは、この樹木の切れ目(の連なり)で輪郭が強調されている影響が非常に大きいだろう。
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Google Map StreetViewでも見てみよう。東側から。
Google Map StreetViewより、東側から
やはり方形部ヘ向かいどんどん高くなっていくのがわかる。
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見た目だけではなく、等高線のある地形図で見てみよう。
国土地理院地図より
・国土地理院/地理院地図(電子国土Web)(as of 2018/03/24)
http://maps.gsi.go.jp
地形図でも意外に「前方後円墳」のように見えるのでびっくり。
しかしやはり方形部の方が高い。円形部の頂部は八十数m。方形部の頂部は九十数mだ。もちろん円形部へ向かって傾斜している。
等高線には出ないが、くびれの部分に少し高まりがあるのも、古墳としては不自然。
西側の谷間は、これで見ると田んぼがあるようだ。なるほど、低木すらないのも納得。陸稲だろうか?ずいぶん狭いところに作ったもんだなー。
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地質も見ておこう。
シームレス地質図より
・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター > 20万分の1日本シームレス地質図 > 20万分の1日本シームレス地質図を表示(as of 2018/03/24)
https://gbank.gsj.jp/seamless/seamless2015/2d/index.html?lang=en
この場所を含む一帯には、白亜紀の花崗岩が分布していることがわかる。
この場所は、花崗岩地形らしい起伏に欠けるが、だいぶ風化・削剥されているのだろう。
花崗岩は風化すると、「真砂(まさ)」というごく粗い砂~小石になる。表面には土壌がかぶっているとは思うが、少し掘ればその真砂が出てくるはずだ。
私には、この「古墳様地形」は、南側にあった花崗岩の山が徐々に風化して崩れ、真砂が北へ地すべりのように流れ落ち、末端の円形部に溜まっているように見える。
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というわけで、私の見るところでは、これは人工物ではなく自然の地形と判断しました。
マスコミの人は「古墳か?遺跡か?」と煽ったほうが商売になるので、不都合なデータはわざと出さない傾向にあります。与那国海底遺跡と同じ図式ですね。
「新聞は公器。正しい情報を書いてくれる」が迷信なのは、これでもわかりますね。こう言った案件では、マスコミの言うことは鵜呑みにせず、ある程度自力で調べる必要があるのです。
さて、本当のところはどうなんでしょうね?続報を期待しましょう。
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(追記)@2018/03/24
・国土地理院 > 地図・空中写真・地理調査 > 地図・空中写真閲覧サービス > CKU747(1975/03/15(昭50))
http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1057978&isDetail=false
に、1975年の航空写真があります。
地図・空中写真閲覧サービスより
当時、この地形の西側・北側は伐採されたばかりで、樹木のない状態の地形がよくわかります。
円形部、西側は思いのほか整っている。でも、川で削られた地形としては、まあおかしくない。
円形部の東側はだいぶグズグズだ。このときに伐採された木が育つ前に、人為的に改変を受けている(崩された?あるいは採石された?)ようにも見える。
決定的な証拠とまでは行かないけど、じっくり観察すればおもしろいことがわかりそうな資料です。
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(追記)@2018/03/25
今思ったのだが、もしこれが造営物だったとすると、山際のライン(前方後円墳様地形の西側)が偶然うまい具合に「前方後円墳」の輪郭だったところに、その輪郭に合わせて前方後円墳を造営したことになる。
そんなことするかな?これはやはり、自然による偶然と考えた方が理にかなっていると思う。
どっちにしても決定的な話ではないけど・・・。
2018年3月23日金曜日
やりすぎの人 小林銅蟲(1) 『めしにしましょう 1~4(続刊)』
・小林銅蟲 (2016.11) 『めしにしましょう 1』(イブニング-KC). 125pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2016年13号~20号.
・小林銅蟲 (2017.2) 『めしにしましょう 2』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2016年21号~2017年5号.
・小林銅蟲 (2017.7) 『めしにしましょう 3』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年5号~13号.
・小林銅蟲 (2017.12) 『めしにしましょう 1』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年14号~23号.
Coverdesign : Tadashi HISAMOCHI (hive&co.,ltd.)
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マンガ家・「广大脳子(まだれだいのうこ)」とそのアシスタント(のちにチーフっぽくなる)・「青梅川おめが」による密室料理マンガ。主役、すなわち料理を作るのは、メガネの青梅川の方。
もうなんかね、見てるだけで痛風になりそうな、豪華食材というか凶悪な食材ばかり・・・。松浦だるま・・・いや、广大脳子先生の健康が心配になるレベル。
リストアップしてみよう。
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1巻
・一の膳 : ローストビーフ → いきなり肉肉しいメニュー。マッシュドポテトにいきなりバター1本、丸ごと入れたりするあたりからして異常。
・二の膳 : すっぽん鍋 → 2回目でもうこれだ(笑)!广先生は、当然鼻血を出す。
同書1巻, pp.22-23
・三の膳 : 超級カツ丼 → このマンガではおなじみになる、風呂を使った低温加熱の登場だ。スマホ大のカツ切り身(笑)。
・四の膳 : 肩ロース氏 → 肉肉肉肉・・・。
・五の膳 : 肉あんかけチャーハン → 肉肉肉肉肉・・・。このチャーハンの作り方は、実は結構有名。3人目のレギュラー、アシ見習いの「馬場ヲッカ」少年が加わる(少年に見えるが、実はXX歳。なお、陰毛は剃ってる)。
・六の膳 : ブイヤベース的なもの → カエル、ザリガニ、巨大フジツボ・・・。確かにフジツボはものすごいダシが取れるのだが・・・。
・七の膳 : 絹かけ丼 → 肉から離れたかと思ったら、大量のウニ!大丈夫か?マスク・ド・編集者「ザ・ダイスケ」登場。
・八の膳 : 冷やし汁なし担々コシャリ → 今回は肉味噌が主役。「誰得?」の青梅川の下着姿が堪能できる。
・九の膳 : ハモの手まり寿司 → メスでハモをさばく。この食材選び、海原雄山なみの贅沢さ。
・十の膳 : パタン的なもの → 珍しくシンプルに、「宇宙ひも」(笑)をゆでた素「ウ゜ドン」。主役はチャーシューのつけ汁。「ウ゜」「ウ゜マーイ」の声が上がる。
------------------------------------------
2巻
・十一の膳 : イクラの邪道丼 → またこんなだ。ホントに痛風になるぞ。4人目(?)のレギュラー、しゃべるロボット掃除機(のちに名前がつく)の登場。
・十二の膳 : キノコ・フォアグラ丼 → キノコはいいけど、フォアグラはよせ!「なんであるんですか?」「あるからです」
・十三の膳 : クジラいろいろ(前編) → 珍しく外へ。外房・和田漁港にお出かけ。ツチクジラの解体を見学しつつ、クジラ肉4kgゲット。4kg・・・。
・十四の膳 : クジラいろいろ(後編) → ようやく料理。ユッケ、「天ぷら」と「はりはり鍋」。今回は料理パート短かったな。
・十五の膳 : 牛バラ肉のコロッケ。あー、胸焼けしてきた。青梅川と广の知られざる過去の関係が明らかになる。
・十六の膳 : 大水炊き展 → 馬場少年が料理。これはうまそう。しゃべるロボット掃除機は「ゆず」と命名。このあと馬場少年と怪しい関係になっていく。
・十七の膳 : つよい鴨南蛮そば → 何が強いのかというと、ソバ3杯に鶏丸々一羽使う。肉とネギでソバが見えない状態。バカじゃないの?
・十八の膳 : 松茸すき焼き的なもの → またこんなだよ。なお、とき卵用の卵は、フォアグラと一緒に保存しておいたもの。ほんともう、いいかげんにしろよ。
・十九の膳 : カキのリゾット・レモン風味 → 呆れた。ホントもう痛風になっても知らんぞ。
・二十の膳 : 角煮クレープ → 下手に不得手な甘味方面に行こうとすると失敗する(笑)。
------------------------------------------
3巻
・二十一の膳 : アンコウどぶ粥 → いつかは出ると思ってたが・・・。アンコウ吊るし切りのマニュアルとしても使える。なお、小さいアンコウならまな板でもさばけます。
・二十二の膳 : ガリバタステーキ・ゆずバタステーキ → ラム肩ブロックと牛ハツ。一名「キング・オブ・王」。ホントもう・・・。
・二十三の膳 : カラスミと白子のパスタ → つ・・・もう言わない・・・。
・二十四の膳 : 愚者の祭典 → ライスの横にカニ玉、ハンバーグ、その上に牛スジカレー、最後に生卵・・・。超高カロリー、「バカじゃないの?」料理だ!
・二十五の膳 : 春のロールキャベツ → 珍しくおとなしいメニューだが、中に紛れ込ませる「ふきのとう」が今回の技。確かに意外に存在感あるんだわ、ふきのとう。
・二十六の膳 : カンジャンケジャン的なもの → ワタリガニのかわりにタカアシガニを丸ごと漬け込む。失敗(笑)。雑炊化でなんとかリカバー。
・二十七の膳 : 貝の清蒸(チンジョン) → 黒ミル貝、白ミル貝、サザエを蒸して、熱々のピーナツ油をかける。うん、もう、これはうまいに決まってる。
・二十八の膳 : 低温タンしゃぶ → グロい牛タンを丸々買って来て(こっからして、もうおかしい)、スライスし、おなじみ低温加熱「しゃぶしゃぶ」だ。時間かかりそうだけど、これはホントにうまそうだな。
同書3巻, pp.90-91
・二十九の膳 : ごはん → 今回はネタがなかったか、飯炊きのウンチク。
・三十の膳 : 佛跳牆(ファッチューチョン) → 担当編集者ガルシア氏退職記念。あらゆる高級乾貨(ガンツォ=乾物)を「これでもか!」とぶち込んだ凶悪なスープ。
------------------------------------------
4巻
・三十一の膳 : エビトマトクリーム ホットサンド → 新・担当編集者・凪無(なぎむ)登場。これはあれだ。旧作「ねぎ姉さん」だ(注)。今回は、芝エビの身はもちろん、殻のうまみも存分に使った贅沢なホットサンド。「バカじゃないのこれ」。
(注)
『ねぎ姉さん』は、こちらでどうぞ↓
・小林銅蟲/ねぎ姉さん (as of 2018/03/21)
http://negineesan.com/
もともとWEB公開作品らしいが、やっぱり本でも読みたいなあ。3分の2くらい収録した本はあるらしいが・・・。
・三十二の膳 : 中華風おろしハンバーグ → ブタ肩ロースと牛モモを合挽きにしてハンバーグに。そしてその上にナスと大量の大根おろし。また肉。
・三十三の膳 : ウツボの冷や汁 → ハモの次はウツボかよ・・・。
・三十四の膳 : 麻婆肉ミート → 豆腐の替わりに豚肉唐揚げを使う。ラー油作りから始めるあたりからして、もうどうかしてる。
・三十五の膳 : 桃地獄 → スイーツでも山盛り。やりすぎ。糖尿病も心配だ。
・三十六の膳 : いろいろな親子のかたち → 鶏むね肉を毎度おなじみの低温加熱して親子丼にしようとするが、うまくいかない。そこで・・・。
・三十七の膳 : ファイナルカレー → 水野仁輔氏のレシピを利用。カレーの決め手はやっぱりタマネギだ。味と力のない日本のタマネギではなかなか難しいので、日本でインドの味を出すのは、私はあきらめてる。
・三十八の膳 : やけくそアヒージョ → イセエビとギガマッシュ(カサの直径20cmはあろうかという巨大マッシュルーム)を使った、どうかしてる料理。
・三十九の膳 : ナープ天茶 → 趣向を変えて、オクラ、えのき茸、納豆を米粉衣で天ぷらにして、それをお茶漬けに。お茶漬けひとつにでも、こんなに手間をかける。やりすぎ。
・四十の膳 : 混沌やきそば → イカスミとソースを両方使ったイカヤキソバだ。濃い料理だなあ。しかし、よく思いついたもんだ。
------------------------------------------
見ての通り、圧倒的に肉が多い。ボリュームあり過ぎ、高カロリーの料理ばかり。これは男の料理だ。
そう、実は青梅川は作者(男)の分身。実際、小林銅蟲は『累(かさね)』が大ヒット中の松浦だるま(なんでこんなペンネーム?)のチーフ・アシ。
だいたい、作務衣が普段着の女子などいない。小林氏の普段着が作務衣なのだ。
------------------------------------------
本当にこんな料理いつも作ってるんだろうか?アフタヌーンは月2回刊だが、それと同じペースでこんな料理食ってたら、本当に痛風・糖尿病が心配になるレベル。
金も心配だが、これは雑誌から取材費みたいな形で、ある程度出てるんだろうな。
------------------------------------------
それにしてもやり過ぎ感たっぷりで、読んでいるだけで胸焼けがしてくる怪作。
だが、実は小林銅蟲作品には、もっとやり過ぎマンガがある。次回はそれを紹介。
← 初出 : イブニング, 2016年13号~20号.
・小林銅蟲 (2017.2) 『めしにしましょう 2』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2016年21号~2017年5号.
・小林銅蟲 (2017.7) 『めしにしましょう 3』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年5号~13号.
・小林銅蟲 (2017.12) 『めしにしましょう 1』(イブニング-KC). 126pp. 講談社, 東京.
← 初出 : イブニング, 2017年14号~23号.
Coverdesign : Tadashi HISAMOCHI (hive&co.,ltd.)
------------------------------------------
マンガ家・「广大脳子(まだれだいのうこ)」とそのアシスタント(のちにチーフっぽくなる)・「青梅川おめが」による密室料理マンガ。主役、すなわち料理を作るのは、メガネの青梅川の方。
もうなんかね、見てるだけで痛風になりそうな、豪華食材というか凶悪な食材ばかり・・・。松浦だるま・・・いや、广大脳子先生の健康が心配になるレベル。
リストアップしてみよう。
------------------------------------------
1巻
・一の膳 : ローストビーフ → いきなり肉肉しいメニュー。マッシュドポテトにいきなりバター1本、丸ごと入れたりするあたりからして異常。
・二の膳 : すっぽん鍋 → 2回目でもうこれだ(笑)!广先生は、当然鼻血を出す。
同書1巻, pp.22-23
・三の膳 : 超級カツ丼 → このマンガではおなじみになる、風呂を使った低温加熱の登場だ。スマホ大のカツ切り身(笑)。
・四の膳 : 肩ロース氏 → 肉肉肉肉・・・。
・五の膳 : 肉あんかけチャーハン → 肉肉肉肉肉・・・。このチャーハンの作り方は、実は結構有名。3人目のレギュラー、アシ見習いの「馬場ヲッカ」少年が加わる(少年に見えるが、実はXX歳。なお、陰毛は剃ってる)。
・六の膳 : ブイヤベース的なもの → カエル、ザリガニ、巨大フジツボ・・・。確かにフジツボはものすごいダシが取れるのだが・・・。
・七の膳 : 絹かけ丼 → 肉から離れたかと思ったら、大量のウニ!大丈夫か?マスク・ド・編集者「ザ・ダイスケ」登場。
・八の膳 : 冷やし汁なし担々コシャリ → 今回は肉味噌が主役。「誰得?」の青梅川の下着姿が堪能できる。
・九の膳 : ハモの手まり寿司 → メスでハモをさばく。この食材選び、海原雄山なみの贅沢さ。
・十の膳 : パタン的なもの → 珍しくシンプルに、「宇宙ひも」(笑)をゆでた素「ウ゜ドン」。主役はチャーシューのつけ汁。「ウ゜」「ウ゜マーイ」の声が上がる。
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2巻
・十一の膳 : イクラの邪道丼 → またこんなだ。ホントに痛風になるぞ。4人目(?)のレギュラー、しゃべるロボット掃除機(のちに名前がつく)の登場。
・十二の膳 : キノコ・フォアグラ丼 → キノコはいいけど、フォアグラはよせ!「なんであるんですか?」「あるからです」
・十三の膳 : クジラいろいろ(前編) → 珍しく外へ。外房・和田漁港にお出かけ。ツチクジラの解体を見学しつつ、クジラ肉4kgゲット。4kg・・・。
・十四の膳 : クジラいろいろ(後編) → ようやく料理。ユッケ、「天ぷら」と「はりはり鍋」。今回は料理パート短かったな。
・十五の膳 : 牛バラ肉のコロッケ。あー、胸焼けしてきた。青梅川と广の知られざる過去の関係が明らかになる。
・十六の膳 : 大水炊き展 → 馬場少年が料理。これはうまそう。しゃべるロボット掃除機は「ゆず」と命名。このあと馬場少年と怪しい関係になっていく。
・十七の膳 : つよい鴨南蛮そば → 何が強いのかというと、ソバ3杯に鶏丸々一羽使う。肉とネギでソバが見えない状態。バカじゃないの?
・十八の膳 : 松茸すき焼き的なもの → またこんなだよ。なお、とき卵用の卵は、フォアグラと一緒に保存しておいたもの。ほんともう、いいかげんにしろよ。
・十九の膳 : カキのリゾット・レモン風味 → 呆れた。ホントもう痛風になっても知らんぞ。
・二十の膳 : 角煮クレープ → 下手に不得手な甘味方面に行こうとすると失敗する(笑)。
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3巻
・二十一の膳 : アンコウどぶ粥 → いつかは出ると思ってたが・・・。アンコウ吊るし切りのマニュアルとしても使える。なお、小さいアンコウならまな板でもさばけます。
・二十二の膳 : ガリバタステーキ・ゆずバタステーキ → ラム肩ブロックと牛ハツ。一名「キング・オブ・王」。ホントもう・・・。
・二十三の膳 : カラスミと白子のパスタ → つ・・・もう言わない・・・。
・二十四の膳 : 愚者の祭典 → ライスの横にカニ玉、ハンバーグ、その上に牛スジカレー、最後に生卵・・・。超高カロリー、「バカじゃないの?」料理だ!
・二十五の膳 : 春のロールキャベツ → 珍しくおとなしいメニューだが、中に紛れ込ませる「ふきのとう」が今回の技。確かに意外に存在感あるんだわ、ふきのとう。
・二十六の膳 : カンジャンケジャン的なもの → ワタリガニのかわりにタカアシガニを丸ごと漬け込む。失敗(笑)。雑炊化でなんとかリカバー。
・二十七の膳 : 貝の清蒸(チンジョン) → 黒ミル貝、白ミル貝、サザエを蒸して、熱々のピーナツ油をかける。うん、もう、これはうまいに決まってる。
・二十八の膳 : 低温タンしゃぶ → グロい牛タンを丸々買って来て(こっからして、もうおかしい)、スライスし、おなじみ低温加熱「しゃぶしゃぶ」だ。時間かかりそうだけど、これはホントにうまそうだな。
同書3巻, pp.90-91
・二十九の膳 : ごはん → 今回はネタがなかったか、飯炊きのウンチク。
・三十の膳 : 佛跳牆(ファッチューチョン) → 担当編集者ガルシア氏退職記念。あらゆる高級乾貨(ガンツォ=乾物)を「これでもか!」とぶち込んだ凶悪なスープ。
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4巻
・三十一の膳 : エビトマトクリーム ホットサンド → 新・担当編集者・凪無(なぎむ)登場。これはあれだ。旧作「ねぎ姉さん」だ(注)。今回は、芝エビの身はもちろん、殻のうまみも存分に使った贅沢なホットサンド。「バカじゃないのこれ」。
(注)
『ねぎ姉さん』は、こちらでどうぞ↓
・小林銅蟲/ねぎ姉さん (as of 2018/03/21)
http://negineesan.com/
もともとWEB公開作品らしいが、やっぱり本でも読みたいなあ。3分の2くらい収録した本はあるらしいが・・・。
・三十二の膳 : 中華風おろしハンバーグ → ブタ肩ロースと牛モモを合挽きにしてハンバーグに。そしてその上にナスと大量の大根おろし。また肉。
・三十三の膳 : ウツボの冷や汁 → ハモの次はウツボかよ・・・。
・三十四の膳 : 麻婆肉ミート → 豆腐の替わりに豚肉唐揚げを使う。ラー油作りから始めるあたりからして、もうどうかしてる。
・三十五の膳 : 桃地獄 → スイーツでも山盛り。やりすぎ。糖尿病も心配だ。
・三十六の膳 : いろいろな親子のかたち → 鶏むね肉を毎度おなじみの低温加熱して親子丼にしようとするが、うまくいかない。そこで・・・。
・三十七の膳 : ファイナルカレー → 水野仁輔氏のレシピを利用。カレーの決め手はやっぱりタマネギだ。味と力のない日本のタマネギではなかなか難しいので、日本でインドの味を出すのは、私はあきらめてる。
・三十八の膳 : やけくそアヒージョ → イセエビとギガマッシュ(カサの直径20cmはあろうかという巨大マッシュルーム)を使った、どうかしてる料理。
・三十九の膳 : ナープ天茶 → 趣向を変えて、オクラ、えのき茸、納豆を米粉衣で天ぷらにして、それをお茶漬けに。お茶漬けひとつにでも、こんなに手間をかける。やりすぎ。
・四十の膳 : 混沌やきそば → イカスミとソースを両方使ったイカヤキソバだ。濃い料理だなあ。しかし、よく思いついたもんだ。
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見ての通り、圧倒的に肉が多い。ボリュームあり過ぎ、高カロリーの料理ばかり。これは男の料理だ。
そう、実は青梅川は作者(男)の分身。実際、小林銅蟲は『累(かさね)』が大ヒット中の松浦だるま(なんでこんなペンネーム?)のチーフ・アシ。
だいたい、作務衣が普段着の女子などいない。小林氏の普段着が作務衣なのだ。
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本当にこんな料理いつも作ってるんだろうか?アフタヌーンは月2回刊だが、それと同じペースでこんな料理食ってたら、本当に痛風・糖尿病が心配になるレベル。
金も心配だが、これは雑誌から取材費みたいな形で、ある程度出てるんだろうな。
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それにしてもやり過ぎ感たっぷりで、読んでいるだけで胸焼けがしてくる怪作。
だが、実は小林銅蟲作品には、もっとやり過ぎマンガがある。次回はそれを紹介。
2018年3月14日水曜日
いしがきのぼる 『恐竜の飼いかた 1~2(続刊)』
新人マンガ家の作品。
・いしがきのぼる (2017.3) 『恐竜の飼いかた 1』(RYU COMICS). 165pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2016年7月~12月
・いしがきのぼる (2017.10) 『恐竜の飼いかた 2』(RYU COMICS). 157pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2017年2月~8月
装幀 : ストロングスタイル
------------------------------------------
舞台はJR横浜線で、八王子と町田の間にある「町王子」(笑)。
駅からの街路は微妙に放射状だし、裏手にはもう1本線路(相模線)が走っているので、モデルは相模原のようだ。作者は、その辺に住んでいるのかな?
------------------------------------------
学者の父は離婚して別居、母は死去。その長女・マンガ家奥村ねね子(26)と次女・フキ(16)が二人で暮らす家に、突如、腹違いの妹・よりか(10)と恐竜(!)・びわが加わる。
同書1巻, pp.48-49
------------------------------------------
そう、これは恐竜がペットとしてフツーにいる世界のお話。その事情についての説明はないが、どうも「Jurassic Park」のように遺伝子操作で作られたような雰囲気(数十年前から始まったよう)。
ま、これはSFではなく日常ものマンガなので、設定の説明がきちんとなくても別にいいのだ。世界観は、ストーリーの流れに沿って小出しにしていけば充分。
------------------------------------------
「姉妹だけの家に、腹違いの妹が急に同居」って、これ、吉田秋生 『海街diary』じゃないか!それよりも「やっぱり猫が好き」を目指しているらしいが・・・。この設定結構はやってるのかな・・・。
レギュラーの登場人物はその他に、
・父-冒頭にだけ登場。モンゴルに長期発掘調査に行くために「よりか」を二人の姉にあずける。よりかの母も死去、っていかにもお話だ。
・江森-フキの高校ソフトボール部のチームメイト。意外にも結構主役をはる。
・いずみ-よりかの同級生。アレルギー性鼻炎で、いつもハナをたらしている(変な設定だな~)。
・角藤-ねね子の担当編集者。一見好青年だが、実はヤバい性癖の持ち主。
・タネヤン-ねね子の中学時代の同級生。獣医。
そして
・びわ-体長2mくらいの四足歩行草食恐竜。おとなしい。「がぇ~」と鳴く。
・コスケ-奥村家のメスネコ。10才くらい。オスと思われていたが、子ネコを5匹出産。
・ダイスケ-コスケの子(他の4匹はもらわれて行った)。
といったところ。
------------------------------------------
「びわ」をはじめとする恐竜たちは、実におとなしい。皆、おとなしい大型犬をモデルにしたような感じ。だから「恐竜で大事件が起きる」なんてこともこのマンガではない。
ホントの恐竜がどうだったかなんて誰も知らないし、このマンガでは恐竜は決して主役ではないから、いいんだけど、この辺はまあファンタジー的ですね。
同書2巻, pp.138-139
びわはpanpanyaのマンガのレギュラー・レオナルドとも似てますね(笑)。
------------------------------------------
しっかりしてるようで抜けてるメガネ女子・ねね子、グラマラスな大女・フキ、「よい子」であることに悩みもある・よりか、意外にストーリーを動かしてくれる江森、と結構みんなキャラが立っているので、読んでいて楽しい。こういうのは飽きないです。
------------------------------------------
絵柄は「たむらしげる」と似たあっさり系。この系統の絵も最近多いなあ(そのうちまとめて取り上げる予定)。
カラーはくっきりした色使いで、デザイン的。トロピカル調イラストで有名な永井博(大滝詠一/A LONG VACATIONの人ね)の影響がありそう。
線もカラーもデジタル作画だろう。この人の絵柄には合ってると思う。
pixvあたりに上がっている自主制作時代の絵や単発読み切りでは、それとはちょっと違った絵だ。この絵は連載用の絵なんだろうか。
他の作品も読んでみたくなりますね。短篇集も出ないかなあ。
------------------------------------------
ほのぼのとした作風を装っているが、その中に、
・女子の下着姿
・ペド
・セフレ
・女子のトイレ・シーン
・恐竜のウンコ
など、意外にヤバイものを時々ぶっ込んで来るのが変。本性は結構ひねくれた人と見た。もっと色んな面も見たいぞ。
------------------------------------------
この作風なら、このマンガは何巻でも読める。長く続いてほしいマンガです。
そろそろまた1冊分たまる頃だ。3巻が出るのは4月くらいかな。
------------------------------------------
最後に、この人ネコを描くのも、ものすごくうまい。
同書1巻, pp.160-161
ネコマンガ・アンソロジーにもいずれ出てくるだろうから、それも楽しみにしていよう。
===========================================
(追記)@2018/03/16
と思ったら、次回2018/03/19更新で最終回じゃないか!
・徳間書店/月間COMIC RYU > WEB COMIC > 第1月曜日 > いしがきのぼる/恐竜の飼いかた > 第19話 気をつけよう(後編)(最終更新日3月5日)
http://www.comic-ryu.jp/_kyoryu/comic/19_02.html
残念だなあ。でも次回作も楽しみではある。
===========================================
(追記)@2018/03/24
と思ったら、2018/03/19更新分は休載=かわりにイラスト。
ここ最近の傾向だと1話=前後編だから、おそらく最終話もそうだろう。あと2回分読めるわけだな。
・いしがきのぼる (2017.3) 『恐竜の飼いかた 1』(RYU COMICS). 165pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2016年7月~12月
・いしがきのぼる (2017.10) 『恐竜の飼いかた 2』(RYU COMICS). 157pp. 徳間書店, 東京.
← 初出 : COMIC RYU WEB, 2017年2月~8月
装幀 : ストロングスタイル
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舞台はJR横浜線で、八王子と町田の間にある「町王子」(笑)。
駅からの街路は微妙に放射状だし、裏手にはもう1本線路(相模線)が走っているので、モデルは相模原のようだ。作者は、その辺に住んでいるのかな?
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学者の父は離婚して別居、母は死去。その長女・マンガ家奥村ねね子(26)と次女・フキ(16)が二人で暮らす家に、突如、腹違いの妹・よりか(10)と恐竜(!)・びわが加わる。
同書1巻, pp.48-49
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そう、これは恐竜がペットとしてフツーにいる世界のお話。その事情についての説明はないが、どうも「Jurassic Park」のように遺伝子操作で作られたような雰囲気(数十年前から始まったよう)。
ま、これはSFではなく日常ものマンガなので、設定の説明がきちんとなくても別にいいのだ。世界観は、ストーリーの流れに沿って小出しにしていけば充分。
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「姉妹だけの家に、腹違いの妹が急に同居」って、これ、吉田秋生 『海街diary』じゃないか!それよりも「やっぱり猫が好き」を目指しているらしいが・・・。この設定結構はやってるのかな・・・。
レギュラーの登場人物はその他に、
・父-冒頭にだけ登場。モンゴルに長期発掘調査に行くために「よりか」を二人の姉にあずける。よりかの母も死去、っていかにもお話だ。
・江森-フキの高校ソフトボール部のチームメイト。意外にも結構主役をはる。
・いずみ-よりかの同級生。アレルギー性鼻炎で、いつもハナをたらしている(変な設定だな~)。
・角藤-ねね子の担当編集者。一見好青年だが、実はヤバい性癖の持ち主。
・タネヤン-ねね子の中学時代の同級生。獣医。
そして
・びわ-体長2mくらいの四足歩行草食恐竜。おとなしい。「がぇ~」と鳴く。
・コスケ-奥村家のメスネコ。10才くらい。オスと思われていたが、子ネコを5匹出産。
・ダイスケ-コスケの子(他の4匹はもらわれて行った)。
といったところ。
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「びわ」をはじめとする恐竜たちは、実におとなしい。皆、おとなしい大型犬をモデルにしたような感じ。だから「恐竜で大事件が起きる」なんてこともこのマンガではない。
ホントの恐竜がどうだったかなんて誰も知らないし、このマンガでは恐竜は決して主役ではないから、いいんだけど、この辺はまあファンタジー的ですね。
同書2巻, pp.138-139
びわはpanpanyaのマンガのレギュラー・レオナルドとも似てますね(笑)。
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しっかりしてるようで抜けてるメガネ女子・ねね子、グラマラスな大女・フキ、「よい子」であることに悩みもある・よりか、意外にストーリーを動かしてくれる江森、と結構みんなキャラが立っているので、読んでいて楽しい。こういうのは飽きないです。
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絵柄は「たむらしげる」と似たあっさり系。この系統の絵も最近多いなあ(そのうちまとめて取り上げる予定)。
カラーはくっきりした色使いで、デザイン的。トロピカル調イラストで有名な永井博(大滝詠一/A LONG VACATIONの人ね)の影響がありそう。
線もカラーもデジタル作画だろう。この人の絵柄には合ってると思う。
pixvあたりに上がっている自主制作時代の絵や単発読み切りでは、それとはちょっと違った絵だ。この絵は連載用の絵なんだろうか。
他の作品も読んでみたくなりますね。短篇集も出ないかなあ。
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ほのぼのとした作風を装っているが、その中に、
・女子の下着姿
・ペド
・セフレ
・女子のトイレ・シーン
・恐竜のウンコ
など、意外にヤバイものを時々ぶっ込んで来るのが変。本性は結構ひねくれた人と見た。もっと色んな面も見たいぞ。
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この作風なら、このマンガは何巻でも読める。長く続いてほしいマンガです。
そろそろまた1冊分たまる頃だ。3巻が出るのは4月くらいかな。
------------------------------------------
最後に、この人ネコを描くのも、ものすごくうまい。
同書1巻, pp.160-161
ネコマンガ・アンソロジーにもいずれ出てくるだろうから、それも楽しみにしていよう。
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(追記)@2018/03/16
と思ったら、次回2018/03/19更新で最終回じゃないか!
・徳間書店/月間COMIC RYU > WEB COMIC > 第1月曜日 > いしがきのぼる/恐竜の飼いかた > 第19話 気をつけよう(後編)(最終更新日3月5日)
http://www.comic-ryu.jp/_kyoryu/comic/19_02.html
残念だなあ。でも次回作も楽しみではある。
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(追記)@2018/03/24
と思ったら、2018/03/19更新分は休載=かわりにイラスト。
ここ最近の傾向だと1話=前後編だから、おそらく最終話もそうだろう。あと2回分読めるわけだな。
2018年3月8日木曜日
熊倉献の対談
2017年2月6日月曜日 熊倉献 『春と盆暗』 → 不思議ちゃん図鑑です
装丁 : 名和田耕平デザイン事務所
で紹介した新人マンガ家・熊倉献さんの対談を見つけました。
・CINRA.NET > 特集 > 黒田隆憲・インタビュー+テキスト, 豊島望・撮影, 矢島由佳子・編集/シュリスペイロフ、好きすぎる漫画『春と盆暗』の熊倉献とご対面(2017/10/06)
https://www.cinra.net/interview/201710-syurispeiloff
ロック・バンド シュリスペイロフの新譜プロモーションの一環として、ヴォーカルの宮本英一と熊倉献の対談。
------------------------------------------
顔出しはNGですが、服装からすると結構地味~な方。だいたい想像通り。
最近何描いているのか知らないが、構想としては「熊と猟友会が戦う話」とか「椅子が交尾して増える話」なんかを考えているとか。
どうも、本人も相当な不思議ちゃんだ(笑)。
恋愛ものは、それまであまり得意ではなかったらしいのは、意外だった。
主役は宮本氏な上に、熊倉さんはおとなしい人らしく、発言は少ない。でもまあ珍しい対談で、結構おもしろかったです。
------------------------------------------
『春と盆暗』から1年経ってしまったので、そろそろ次の作品読みたいなあ(雑誌で追っかける派ではないので)。
また変な作品集を期待してます。
装丁 : 名和田耕平デザイン事務所
で紹介した新人マンガ家・熊倉献さんの対談を見つけました。
・CINRA.NET > 特集 > 黒田隆憲・インタビュー+テキスト, 豊島望・撮影, 矢島由佳子・編集/シュリスペイロフ、好きすぎる漫画『春と盆暗』の熊倉献とご対面(2017/10/06)
https://www.cinra.net/interview/201710-syurispeiloff
ロック・バンド シュリスペイロフの新譜プロモーションの一環として、ヴォーカルの宮本英一と熊倉献の対談。
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顔出しはNGですが、服装からすると結構地味~な方。だいたい想像通り。
最近何描いているのか知らないが、構想としては「熊と猟友会が戦う話」とか「椅子が交尾して増える話」なんかを考えているとか。
どうも、本人も相当な不思議ちゃんだ(笑)。
恋愛ものは、それまであまり得意ではなかったらしいのは、意外だった。
主役は宮本氏な上に、熊倉さんはおとなしい人らしく、発言は少ない。でもまあ珍しい対談で、結構おもしろかったです。
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『春と盆暗』から1年経ってしまったので、そろそろ次の作品読みたいなあ(雑誌で追っかける派ではないので)。
また変な作品集を期待してます。
2018年3月5日月曜日
『ランバーロール 0』 森泉岳土「あの日あなたと クチン2015」ほか
そういうわけで、『ランバーロール0』を見つけてきました。
・ランバーロール・編 (2017.2) 『ランバーロール0』. 111pp. ランバーロール, 出版地不明.
表紙イラスト : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室
006-013 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと クチン2015
014-020 (小説) 滝口悠生/温み
021-021 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
022-027 (小説) 上田岳弘/かつての魔王
028-053 (マンガ) おくやまゆか/しおりしっとり
054-058 (小説) 太田靖久/ノラルンバ
059-059 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
060-067 (小説) 高橋弘希/愛と平和
068-109 (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙
110-111 (あとがき) 安永知澄+森泉岳土+おくやまゆか
------------------------------------------
これで、この本が年1回刊であること、主導しているのは森泉+おくやま+安永の3人であること、小説分野では今のところレギュラーはいないこと、などいろいろわかったぞ。
0号の売れ行きで、ある程度手応えをつかんだのだろう。1号は、増ページな上に、装丁もより凝った作りになった。
0号は1000円+税、01号は1200円+税。ちょっと高いと感じるかもしれないが、まあ、同人誌と思えばそんなこともない。
------------------------------------------
・森泉岳土 (2017.2) あの日あなたと クチン2015. 『ランバーロール0』所収. pp.6-13. ランバーロール, 所在地不明.
0号を見て、森泉の作品は「あの日あなたと」というシリーズものであることがわかった。
今回は、奥さんとマレーシアへ。内容は、なんということはない観光エッセイ。楽しそうではあるが、なるほどこれは商業誌には載らないだろう。
------------------------------------------
今回も森泉はイラストも2枚提供。
同書, p.59
やっぱり黒い部分が多い方が森泉らしさが出る。
------------------------------------------
・安永知澄 (2017.2) 海ちゃんへの手紙. 『ランバーロール0』所収. pp.68-109. ランバーロール, 所在地不明.
0号では、安永作品が3分の1を占めている。これも「海ちゃんへの手紙」というシリーズものになっている。
内容は、「マッサージ店人情もの」という珍しいジャンル。これはちょっと尺を整理すれば、「ビッグコミックオリジナル」あたりで好まれそうな話だ。意外に早くメジャー誌に昇格して来るかもしれない。
------------------------------------------
おくやま作品も、しみじみしていい。2号以降は「むかしこっぷり」を続けるのかな?
------------------------------------------
奥付に名前が挙がっている谷口愛さん(リトルプレス「歩きながら考える」編集長)が、実質的に編集を担当しているようだ(営業も委託してる?)。
なるほど、年一回の刊行ペースといい、取り扱い書店が限定的(置いてある場所は、「歩きながら考える」も「ランバーロール」も共通している)といい、営業方針が似ている。
------------------------------------------
というわけで、なかなかおしゃれなアート系のマンガ・小説誌なのだが、上記の3人が仲良くしてる間はまた出るだろうから、来年2月また買います。
・ランバーロール・編 (2017.2) 『ランバーロール0』. 111pp. ランバーロール, 出版地不明.
表紙イラスト : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室
006-013 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと クチン2015
014-020 (小説) 滝口悠生/温み
021-021 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
022-027 (小説) 上田岳弘/かつての魔王
028-053 (マンガ) おくやまゆか/しおりしっとり
054-058 (小説) 太田靖久/ノラルンバ
059-059 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
060-067 (小説) 高橋弘希/愛と平和
068-109 (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙
110-111 (あとがき) 安永知澄+森泉岳土+おくやまゆか
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これで、この本が年1回刊であること、主導しているのは森泉+おくやま+安永の3人であること、小説分野では今のところレギュラーはいないこと、などいろいろわかったぞ。
0号の売れ行きで、ある程度手応えをつかんだのだろう。1号は、増ページな上に、装丁もより凝った作りになった。
0号は1000円+税、01号は1200円+税。ちょっと高いと感じるかもしれないが、まあ、同人誌と思えばそんなこともない。
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・森泉岳土 (2017.2) あの日あなたと クチン2015. 『ランバーロール0』所収. pp.6-13. ランバーロール, 所在地不明.
0号を見て、森泉の作品は「あの日あなたと」というシリーズものであることがわかった。
今回は、奥さんとマレーシアへ。内容は、なんということはない観光エッセイ。楽しそうではあるが、なるほどこれは商業誌には載らないだろう。
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今回も森泉はイラストも2枚提供。
同書, p.59
やっぱり黒い部分が多い方が森泉らしさが出る。
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・安永知澄 (2017.2) 海ちゃんへの手紙. 『ランバーロール0』所収. pp.68-109. ランバーロール, 所在地不明.
0号では、安永作品が3分の1を占めている。これも「海ちゃんへの手紙」というシリーズものになっている。
内容は、「マッサージ店人情もの」という珍しいジャンル。これはちょっと尺を整理すれば、「ビッグコミックオリジナル」あたりで好まれそうな話だ。意外に早くメジャー誌に昇格して来るかもしれない。
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おくやま作品も、しみじみしていい。2号以降は「むかしこっぷり」を続けるのかな?
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奥付に名前が挙がっている谷口愛さん(リトルプレス「歩きながら考える」編集長)が、実質的に編集を担当しているようだ(営業も委託してる?)。
なるほど、年一回の刊行ペースといい、取り扱い書店が限定的(置いてある場所は、「歩きながら考える」も「ランバーロール」も共通している)といい、営業方針が似ている。
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というわけで、なかなかおしゃれなアート系のマンガ・小説誌なのだが、上記の3人が仲良くしてる間はまた出るだろうから、来年2月また買います。
2018年3月4日日曜日
『ランバーロール 01』 森泉岳土「あの日あなたと ヴェネツィア2016」ほか
・ランバーロール・編 (2018.2) 『ランバーロール01』. 159pp. ランバーロール, 出版地不明.
表紙画 : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室
という雑誌というか本を見つけました。
------------------------------------------
表紙画は森泉岳土。相変わらず嫌味なくらいうまい、美しい。ロゴもユニーク(読めない!)。
森泉(モデルさんではない方(笑))については、これまで3度取り上げていますので、「この人の絵、何?」という人はそちらでどうぞ。
2017年10月15日日曜日 森泉岳土 『報いは報い、罰は罰』
2016年12月31日土曜日 森泉岳土 『うと そうそう』
2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発
------------------------------------------
同人誌的な内容だが、ISBNがついているので、一応通常の流通ルートに乗る商業誌。雑誌コードはついていないので、本という扱い。
奥付には、版元「ランバーロール」の所在地記載がない。この辺は同人誌的。
それでも装丁はやたらと立派で、プロに依頼してるし、こっちは商業誌的、というキメラのような雑誌だ。
------------------------------------------
内容は、マンガが5編に短編小説が4編という構成。
006-015 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと ヴェネツィア2016
016-022 (小説) 戌井昭人/アライちゃん
023-023 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
024-033 (マンガ) ササキエイコ/工場
034-042 (小説) 加藤秀行/マルシェ
043-043 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
044-061 (マンガ) おくやまゆか/むかしこっぷり 塀の上の二人のはなし
062-071 (小説) ふくだももこ/カナちゃん
072-073 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
074-084 (小説) 松波太郎/5、4、3、2、1、0.9
085-085 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
087-119 (マンガ) 横山雄/彗星のこども
120- (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙 すごいひと
------------------------------------------
中心になっているのは誰かわからないが、森泉は表紙・巻頭だし、その他にイラストも4枚提供してるし、彼が雑誌の顔として全面的に協力しているのは間違いない。
同誌, p.43
------------------------------------------
・森泉岳土 (2018.2) あの日あなたと ヴェネツィア2016. 『ランバーロール01』所収. pp.6-15. ランバーロール, 所在地不明.
は、ItalyのUdineで毎年開催されているIl Far East Film Festival 18(第18回ウーディネ極東映画祭)(2016年4月)で、岳父である映画監督・大林宣彦が、Gelso d’Oro alla Carriera(生涯功労賞)を受賞した際に、一家でItaly、特にVeneziaを訪れた時の思い出を綴る小品。
内容は一見軽いが、大林監督は末期癌であることを公言しているので、実は家族にとっては大切な思い出だ。
「ああ くつろぐ」
------------------------------------------
森泉が、大林監督の娘さんと結婚しているのは、知っている人は知っているが、知らない人も多いかもしれない。アーティストとして自立しているから、それを売りにする必要は全くないので、表に出すことはあまりない(かといって隠しているわけでもない)。
しかし、やはり大林監督の時間が少なくなっているせいもあって、最近は両者のコラボが増えてきた。『うとそうそう』の推薦シールや解説(になってなかったけど)に大林監督が登場しているし、大林監督の最新映画『花筺』のポスターも森泉だ。
------------------------------------------
線画だけのシンプルな絵だが、「水で描いてそこに墨を垂らす」といういつもの森泉画法で描かれている。
大きく描いて、それを絵ごとにスキャナーで取り込み、画像ソフト上でコマ構成するというやり方らしいが、ここまで縮小されていると、そんな凝った画法が使われていることに気づかない人も多いだろう。
しかし、この線の妙な不均質さに「筆にしても変だ」と嗅ぎつけた人は、
・ジャパン・クリエーターズ Wannabe.jp > Illustration イラスト > Illustrator FILE 10:森泉岳土(2015年8月24日更新)
http://wannabe.jp/illustration/column/moriizumi/index.html
をどうぞ。
イラストの方は、お得意の「人物シルエット+にじみベタ塗り」が多用された森泉らしいもの。これが4枚も見れるのだから幸せだ。
------------------------------------------
他の作者で知っているのは「おくやまゆか」だけ。これも死期の迫った父親の記憶を代筆した、いい作品だ。
ササキエイコ、横山雄は、どちらもアート系のマンガだ。森泉人脈らしい作品群。
こういった中に入ると、普通の絵柄の安永作品が居心地悪そう(笑)。
------------------------------------------
小説の方は、いずれも文学賞を取っているような、それなりに有名な人たちらしいが、私はほとんど小説というものを読まないので、全然知らなかった。
小説はほとんど読まない、とはいえ、「ツツイスト」ではあるので、戌井作品、松波作品などには、どうしても筒井康隆の影響を見てしまう。いずれも面白い実験小説だ。
------------------------------------------
ランバーロールは、どのようなペースで発刊されるのかわからないが、毎回森泉作品が読めるのなら、また買おうと思う。
どうも、創刊準備号である『ランバーロール 0』というのもあるらしいので、探しに行ってみる。
表紙画 : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室
という雑誌というか本を見つけました。
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表紙画は森泉岳土。相変わらず嫌味なくらいうまい、美しい。ロゴもユニーク(読めない!)。
森泉(モデルさんではない方(笑))については、これまで3度取り上げていますので、「この人の絵、何?」という人はそちらでどうぞ。
2017年10月15日日曜日 森泉岳土 『報いは報い、罰は罰』
2016年12月31日土曜日 森泉岳土 『うと そうそう』
2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発
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同人誌的な内容だが、ISBNがついているので、一応通常の流通ルートに乗る商業誌。雑誌コードはついていないので、本という扱い。
奥付には、版元「ランバーロール」の所在地記載がない。この辺は同人誌的。
それでも装丁はやたらと立派で、プロに依頼してるし、こっちは商業誌的、というキメラのような雑誌だ。
------------------------------------------
内容は、マンガが5編に短編小説が4編という構成。
006-015 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと ヴェネツィア2016
016-022 (小説) 戌井昭人/アライちゃん
023-023 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
024-033 (マンガ) ササキエイコ/工場
034-042 (小説) 加藤秀行/マルシェ
043-043 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
044-061 (マンガ) おくやまゆか/むかしこっぷり 塀の上の二人のはなし
062-071 (小説) ふくだももこ/カナちゃん
072-073 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
074-084 (小説) 松波太郎/5、4、3、2、1、0.9
085-085 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
087-119 (マンガ) 横山雄/彗星のこども
120- (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙 すごいひと
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中心になっているのは誰かわからないが、森泉は表紙・巻頭だし、その他にイラストも4枚提供してるし、彼が雑誌の顔として全面的に協力しているのは間違いない。
同誌, p.43
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・森泉岳土 (2018.2) あの日あなたと ヴェネツィア2016. 『ランバーロール01』所収. pp.6-15. ランバーロール, 所在地不明.
は、ItalyのUdineで毎年開催されているIl Far East Film Festival 18(第18回ウーディネ極東映画祭)(2016年4月)で、岳父である映画監督・大林宣彦が、Gelso d’Oro alla Carriera(生涯功労賞)を受賞した際に、一家でItaly、特にVeneziaを訪れた時の思い出を綴る小品。
内容は一見軽いが、大林監督は末期癌であることを公言しているので、実は家族にとっては大切な思い出だ。
「ああ くつろぐ」
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森泉が、大林監督の娘さんと結婚しているのは、知っている人は知っているが、知らない人も多いかもしれない。アーティストとして自立しているから、それを売りにする必要は全くないので、表に出すことはあまりない(かといって隠しているわけでもない)。
しかし、やはり大林監督の時間が少なくなっているせいもあって、最近は両者のコラボが増えてきた。『うとそうそう』の推薦シールや解説(になってなかったけど)に大林監督が登場しているし、大林監督の最新映画『花筺』のポスターも森泉だ。
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線画だけのシンプルな絵だが、「水で描いてそこに墨を垂らす」といういつもの森泉画法で描かれている。
大きく描いて、それを絵ごとにスキャナーで取り込み、画像ソフト上でコマ構成するというやり方らしいが、ここまで縮小されていると、そんな凝った画法が使われていることに気づかない人も多いだろう。
しかし、この線の妙な不均質さに「筆にしても変だ」と嗅ぎつけた人は、
・ジャパン・クリエーターズ Wannabe.jp > Illustration イラスト > Illustrator FILE 10:森泉岳土(2015年8月24日更新)
http://wannabe.jp/illustration/column/moriizumi/index.html
をどうぞ。
イラストの方は、お得意の「人物シルエット+にじみベタ塗り」が多用された森泉らしいもの。これが4枚も見れるのだから幸せだ。
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他の作者で知っているのは「おくやまゆか」だけ。これも死期の迫った父親の記憶を代筆した、いい作品だ。
ササキエイコ、横山雄は、どちらもアート系のマンガだ。森泉人脈らしい作品群。
こういった中に入ると、普通の絵柄の安永作品が居心地悪そう(笑)。
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小説の方は、いずれも文学賞を取っているような、それなりに有名な人たちらしいが、私はほとんど小説というものを読まないので、全然知らなかった。
小説はほとんど読まない、とはいえ、「ツツイスト」ではあるので、戌井作品、松波作品などには、どうしても筒井康隆の影響を見てしまう。いずれも面白い実験小説だ。
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ランバーロールは、どのようなペースで発刊されるのかわからないが、毎回森泉作品が読めるのなら、また買おうと思う。
どうも、創刊準備号である『ランバーロール 0』というのもあるらしいので、探しに行ってみる。
2018年3月3日土曜日
大沖 『はるみねーしょん 7』
2017年5月13日土曜日 大沖 『はるみねーしょん』
で紹介した『はるみねーしょん』の最新巻7巻が出ました。
・大沖 (2018.3) 『はるみねーしょん 7』(MANGA TIME KR COMICS). 119pp. 芳文社, 東京.
← 初出 : まんがタイムきららキャラット, H28年9月号~H30年2月号.
装丁 : 里見英樹
今回は帯付きで紹介します。
えー、「舞台はついにジャングルへ!自然を愛する熱帯編スタート!!」とありますが、それは表紙だけ(笑)。中身はジャングルも熱帯も全然関係ありません。テキトー。
------------------------------------------
これまで、はるみ、ユキ、香樹の3人だけで、延々ダジャレ四コマをやってきたわけだが、この巻では、なんと登場人物が増えた。
それが「はるみ」の妹「あるみ」だ。
同書, pp.48-49
------------------------------------------
見分けがつかないかもしれないが、あるみの特徴は、
・はるみよりも髪の毛が長い
・まつげが描かれている
・髪の分け方が逆
です。わかりにくい・・・。
しかし、性格はほとんど同じ(笑)。もちろん空も飛ぶ。
------------------------------------------
しかし、今のところ、あるみの出番はそれほど多くない。
クラスメイトのアキ(ユキの妹)、アヤコのツッコミ力が少し足りないせいかな?二人とも普通の子だしなあ・・・。
------------------------------------------
あと、全体にダジャレの数が激減。なんとかダジャレ抜きのギャグでこなそうとしているが、切れ味が少し鈍った感は否めない。
ペンタブのせいか、線も初期より重い感じになっているし、大沖の作風自体ちょっと変わってきている。私は前の絵のほうが好きだなあ。
まあでも、ギャグも線も親しみやすくなった、とも言える。意外とこっちの方が一般受けはいいかもしれない。
------------------------------------------
「ひらめきはつめちゃん」、「わくわくろっこモーション」は終わってしまったが、「はるみねーしょん」の方はまだまだ続きそう。
「はるみねーしょん」の他に、現在
・大沖 (2017.10~) たのしいたのししま. 別冊少年マガジン, 2017年10月号~
を連載中。
WEBでも一部読めます。
・講談社/マガポケ > 連載作品一覧 > 木曜日 > たのしいたのししま 引っ越してきたのは島! 大沖 (as of 2018/03/02)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113192
------------------------------------------
比較的低年齢向けの作りだが、「大沖作品は、子どもたちに読んでほしい」と前から思っていたので、いい方針だと思う。
こちらもぜひどうぞ。
で紹介した『はるみねーしょん』の最新巻7巻が出ました。
・大沖 (2018.3) 『はるみねーしょん 7』(MANGA TIME KR COMICS). 119pp. 芳文社, 東京.
← 初出 : まんがタイムきららキャラット, H28年9月号~H30年2月号.
装丁 : 里見英樹
今回は帯付きで紹介します。
えー、「舞台はついにジャングルへ!自然を愛する熱帯編スタート!!」とありますが、それは表紙だけ(笑)。中身はジャングルも熱帯も全然関係ありません。テキトー。
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これまで、はるみ、ユキ、香樹の3人だけで、延々ダジャレ四コマをやってきたわけだが、この巻では、なんと登場人物が増えた。
それが「はるみ」の妹「あるみ」だ。
同書, pp.48-49
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見分けがつかないかもしれないが、あるみの特徴は、
・はるみよりも髪の毛が長い
・まつげが描かれている
・髪の分け方が逆
です。わかりにくい・・・。
しかし、性格はほとんど同じ(笑)。もちろん空も飛ぶ。
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しかし、今のところ、あるみの出番はそれほど多くない。
クラスメイトのアキ(ユキの妹)、アヤコのツッコミ力が少し足りないせいかな?二人とも普通の子だしなあ・・・。
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あと、全体にダジャレの数が激減。なんとかダジャレ抜きのギャグでこなそうとしているが、切れ味が少し鈍った感は否めない。
ペンタブのせいか、線も初期より重い感じになっているし、大沖の作風自体ちょっと変わってきている。私は前の絵のほうが好きだなあ。
まあでも、ギャグも線も親しみやすくなった、とも言える。意外とこっちの方が一般受けはいいかもしれない。
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「ひらめきはつめちゃん」、「わくわくろっこモーション」は終わってしまったが、「はるみねーしょん」の方はまだまだ続きそう。
「はるみねーしょん」の他に、現在
・大沖 (2017.10~) たのしいたのししま. 別冊少年マガジン, 2017年10月号~
を連載中。
WEBでも一部読めます。
・講談社/マガポケ > 連載作品一覧 > 木曜日 > たのしいたのししま 引っ越してきたのは島! 大沖 (as of 2018/03/02)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113192
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比較的低年齢向けの作りだが、「大沖作品は、子どもたちに読んでほしい」と前から思っていたので、いい方針だと思う。
こちらもぜひどうぞ。
2018年3月1日木曜日
Spectator vol.41 「つげ義春」
最近また、何度目かわからない「つげ義春ブーム」。
今回火をつけたのは、
・芸術新潮, vol.65, no.1, 2014年1月号, 「デビュー60年 つげ義春 マンガ表現の開拓者」. 新潮社, 東京.
→ 再構成 : つげ義春ほか (2014.9) 『つげ義春 夢と旅の世界』(とんぼの本). 158pp. 新潮社, 東京.
なぜか、この本が2017年に日本漫画家協会賞大賞を受賞。授賞式には、つげ先生ズル休み(笑)。
------------------------------------------
ガロの後継誌であるアックスも
・アックス, no.119[2017.10], 「特集 つげ義春 生誕80周年 祝・トリビュート!」, 青林工藝舎, 東京.
で特集。再構成・再発が何度目かわからない
・つげ義春 (2018.1) 『つげ義春作品集 ねじ式(改訂版)』. 456pp. 青林工藝舎, 東京.
も発売。ちょっとした「つげブーム」なのだ。最後(注)のマンガ作品「別離」(1987)からでも、すでに30年なのに。
(注)
まだご存命だが、インタビューによると、もうマンガを描く気はないようなので、「最後の」と呼んでいいだろう。もう80歳なんだから、無理して漫画を描く必要はないと思う。水木さんなんかは異常なのだ。
------------------------------------------
そんな中、またも出た「つげ本」。しかし今回はちょっと別格だ。すごい。
・Spectator, vol.41[2018.2], 「つげ義春」. 240pp. エディトリアル・デパートメント, 長野(幻冬舎出版, 東京).
アートディレクション : 峯崎ノリテル((STUDIO)), デザイン : 正能幸介((STUDIO))
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この雑誌の存在は、今回はじめて知った。年3回出ているらしい。
Vol.31以降のバックナンバー・リストを見ると、
「ZEN(禅)とサブカルチャー」、「ボディトリップ」、「クリエイティブ文章術」、「ポートランドの小商い」、「発酵のひみつ」、「コペ転」、「北山耕平」、「赤塚不二夫・創作の秘密」、「パンク・マガジン『Jam』の神話」、「カレー・カルチャー」
と一定の色がない。最後の「カレー・カルチャー」はちょっとだけ、立ち読みしたことがあったが、それがSpectatorとは認識していなかった。
まあ、取り上げるテーマがサブカル中心であるのはわかった。
------------------------------------------
編集長は青野利光。知らない人だ。
そして編集に入っているのは、流浪の編集者・赤田祐一。今回の特集は、赤田氏の意向が大きく反映されているそうな。
------------------------------------------
目次をあげておこう。
Spectator, vol.41, p.19
Spectator, vol.41, p.21
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マンガ作品は、3作。貸本時代の「おばけ煙突」(1958)、ガロ時代の「ほんやら洞のべんさん」(1968)、後期の「退屈な部屋」(1975)、と、つげ作品入門編としてはバランスいい。
------------------------------------------
・高野慎三・作成, 浅川満寛・増補, スペクテイター編集部・構成 (2018.2) つげ義春年譜. Spectator, vol.41, pp.93-100.
← 初出 : つげ義春 (2017.11) 『改訂版 つげ義春作品集 ねじ式』. 青林工藝舎, 東京.
これは、微に入り、細に入った年譜。つげさんは作品数はそんなに多くないので、(マンガ以外も含む)作品リストにもなっている。資料的な価値もかなり高い。
------------------------------------------
論考では、これまでの「つげ本」では見たことがないユニークなものが目につく。
・つげ義春・文, 河井克夫・挿画 (2018.2) つげ義春の幼年時代. Spectator, vol.41, pp.85-92.
← 文初出 : つげ義春 (1968.4) 断片的回想記. 『つげ義春作品集』所収. 青林堂, 東京.
Spectator, vol.41, p.86
アックス(exガロ)系マンガ家・河井克夫が、夢日記シリーズの頃のつげさんの絵を真似て描いている。うまいよねえ。
この時代のつげさんの絵は、誰が見てもヘタ。絵のパースも狂っていて、みなつげさんの精神状態を危惧したもんだった。
しかし、自分で自分の作品をすべて語ってしまった『つげ義春漫画術』などによれば、夢の奇妙さを表現するため、わざとヘタに描いたという。わざとヘタに描くのは、結構大変だったそうな。
ホント・・・創作者っていう人たちは、食えない人たちですね。一杯食わされた(矛盾した表現)。
------------------------------------------
・浅川満寛 (2018.2) 劇画の新たな展開 つげ義春の登場. Spectator, vol.41, pp.63-71.
辰巳ヨシヒロ(1935-2015)を中心とした、同時代の劇画家の作品と比較しながら、マンガ家・つげ義春の成長過程を分析した力作。
辰巳らの影響を受けているのは間違いないが、同時に他のマンガへのつげ作品の影響も大きかった。それがよくわかる力作論考だ。
これを読んだあとで、もう一度「おばけ煙突」を読み返すといい。
------------------------------------------
・遠藤政治・談, 浅川満寛・取材と文 (2018.2) つげと僕が二〇代だった頃 遠藤政治氏に聞く. Spectator, vol.41, pp.73-80.
「下宿の頃」(1973)の円堂さんのモデルである、元・マンガ家~アニメーターの遠藤政治氏のインタビュー。いやあ、これはよくぞインタビューしてくれた。
だいぶご高齢なのに、しっかりしていらっしゃる。話も抜群に面白い。
何かと芝居じみた、つげさんの行動がだいぶわかってきた。あのハンサム具合に加えて、この行動でしょ。もてるはずだわ>つげさん。
とにかく、おもしろすぎるインタビューなので、何度でも繰り返し読みたくなります。
------------------------------------------
・藤本和也+足立守正・対談+構成 (2018.2) 名作の読解法 「ねじ式」を解剖する. Spectator, vol.41, pp.112-120.
今回の目玉論考。これは「ねじ式」(1968)の元絵を見つけてくる、という試みだ。びっくりした。
Spectator, col.41, p.115
「ねじ式」の絵が、つげさん独自の絵だけでない、というのは読めばすぐわかる。他の作品と比べて絵柄が違いすぎるのだ。
おそらく何か元絵があるのだろう、とは思っていたのだが、これだけいろんな写真から引用していたとは驚いた。
------------------------------------------
著者らは、日頃は主に水木作品の元絵を見つけてはWEB上で発表している人たち。
こういった作業は、水木先生を神格化して崇めている人たちには、すこぶる評判が悪い。「あら探しをしている」と映るようなのだ。
貸本時代の水木作品では、米沢嘉博もその翻案元ネタを探す、という作業をやっていたが、これも水木ファンには疎まれたようだ。
------------------------------------------
しかし、こういった作業は、文学、音楽、絵画の世界では当たり前のように行われている。そんなにアレルギー反応を起こすようなものではないはずだ。
最近Jazzの世界でも、Be-Bopの巨人Charlie Parkerでさえ、独創性にあふれたアドリブと思われていたものが、実は当時の流行歌からの引用だらけであることが判明してきているし。
------------------------------------------
これは「つげ作品」が、単なる消費財から徐々に文化財へと移り変わりつつある過程での、必然的な現象、とみていいだろう。
とにかくおもしろいぞ。これだけを目当てに買う価値は十分ある。
------------------------------------------
これによって、「ねじ式」をシュールレアリズムの文脈で語るだけではなく、「コラージュ作品」という、新たな視点で語ることが可能になった。その方向での評価は始まったばかりなので、今後いろいろな論考が出てくるだろう。楽しみだ。
------------------------------------------
・山口芳則 (2018.2) あの頃の、つげ義春とぼく. Spectator, vol.41, pp.193-196.
水木プロで共に仕事をしていた山口氏は、この手の水木プロ回顧では常連。つげさんの生の姿をよく伝えてくれている。
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・つげ義春 (2018.2) 「つげ義春日記」より. Spectator, vol.41, pp.201-205.
← 再録 : つげ義春 (1983.12) 『つげ義春日記』. 講談社, 東京.
← 初出 : つげ義春 (1983.3~12) つげ義春日記. 小説現代, 1983年3月号~12月号.
『つげ義春日記』は、隣人のプライバシーなどを実名入りで無断で発表してしまったため、クレームがつき絶版となった。今後も復刻の見込みはない(少なくとも初出のままでは不可能)なので、ごくごく一部とはいえ、今回の再録は貴重。
私は、『つげ義春日記』もちろん持ってますよ。
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・坪内祐三 (2018.2) 川崎長太郎とつげ義春のリアリズム. Spectator, vol.41, pp.210-212.
つげさんも大好きな、私小説家・川崎長太郎の作品を取り上げて、私小説の虚実ないまぜの世界を探る。
つげさんも、作者本人としか思えない登場人物・舞台で、私小説ならぬ私マンガと思わせる作品をあれだけ描いておきながら、「マンガと現実の自分を同じだと誤解する人がいるので困る」とか言うんだから、参る。ホント、食えない人たちだ>創作者という人種。
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そして巻末に、
・つげ義春・談, 浅川満寛・取材構成+聞き手, Spectator編集部・赤田祐一・聞き手 (2018.2) 「貧乏しても気楽に生きたい」 つげ義春氏の近況. Spectator, vol.41, pp.225-230.
インタビューはめったに受けない人なのだが、ちょこちょこインタビューは現れてくるので、つげさんの近況というのは、ある程度把握できている。今回のインタビューでも、それと比べて大きな発見はない。
しかし今回は、日常生活よりも、心境についてかなり多く語っているので、ちょっと見逃せないインタビューだ。仏教についての知識・興味なども、これではじめて知った。
「早く死にたい」としきりに語っているが、これもある程度自己演出の一環かもしれない。全くもう・・・。
話しぶりはしっかりされており、語る内容も明晰。ボケたような感じは全くない。まだまだ大丈夫そう。最後のページの微笑もイイ!
このインタビューだけを目当てにしてでも、十分買う価値があるぞ。
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とにかく、数ある「つげ本」の中でも、一・二を争う力の入った特集。
この雑誌を置いている書店は少ないようで、いったいどこで入手できるかは知らない。まあ巨大書店ならあるでしょう。
私は、発売直後に運よく見つけて買ったからよかったものの、ヘタしたら気づかないまま品切れになっていたかもしれない。よかった。
事実、自分が買った書店でも、当初5冊くらいあったのだが、3日後にはもう全部なくなっていた。
書店で出くわすのは結構大変そうなので、通販を使ってでも早めに手に入れた方がいい。それだけの価値がある特集です。
今回火をつけたのは、
・芸術新潮, vol.65, no.1, 2014年1月号, 「デビュー60年 つげ義春 マンガ表現の開拓者」. 新潮社, 東京.
→ 再構成 : つげ義春ほか (2014.9) 『つげ義春 夢と旅の世界』(とんぼの本). 158pp. 新潮社, 東京.
なぜか、この本が2017年に日本漫画家協会賞大賞を受賞。授賞式には、つげ先生ズル休み(笑)。
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ガロの後継誌であるアックスも
・アックス, no.119[2017.10], 「特集 つげ義春 生誕80周年 祝・トリビュート!」, 青林工藝舎, 東京.
で特集。再構成・再発が何度目かわからない
・つげ義春 (2018.1) 『つげ義春作品集 ねじ式(改訂版)』. 456pp. 青林工藝舎, 東京.
も発売。ちょっとした「つげブーム」なのだ。最後(注)のマンガ作品「別離」(1987)からでも、すでに30年なのに。
(注)
まだご存命だが、インタビューによると、もうマンガを描く気はないようなので、「最後の」と呼んでいいだろう。もう80歳なんだから、無理して漫画を描く必要はないと思う。水木さんなんかは異常なのだ。
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そんな中、またも出た「つげ本」。しかし今回はちょっと別格だ。すごい。
・Spectator, vol.41[2018.2], 「つげ義春」. 240pp. エディトリアル・デパートメント, 長野(幻冬舎出版, 東京).
アートディレクション : 峯崎ノリテル((STUDIO)), デザイン : 正能幸介((STUDIO))
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この雑誌の存在は、今回はじめて知った。年3回出ているらしい。
Vol.31以降のバックナンバー・リストを見ると、
「ZEN(禅)とサブカルチャー」、「ボディトリップ」、「クリエイティブ文章術」、「ポートランドの小商い」、「発酵のひみつ」、「コペ転」、「北山耕平」、「赤塚不二夫・創作の秘密」、「パンク・マガジン『Jam』の神話」、「カレー・カルチャー」
と一定の色がない。最後の「カレー・カルチャー」はちょっとだけ、立ち読みしたことがあったが、それがSpectatorとは認識していなかった。
まあ、取り上げるテーマがサブカル中心であるのはわかった。
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編集長は青野利光。知らない人だ。
そして編集に入っているのは、流浪の編集者・赤田祐一。今回の特集は、赤田氏の意向が大きく反映されているそうな。
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目次をあげておこう。
Spectator, vol.41, p.19
Spectator, vol.41, p.21
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マンガ作品は、3作。貸本時代の「おばけ煙突」(1958)、ガロ時代の「ほんやら洞のべんさん」(1968)、後期の「退屈な部屋」(1975)、と、つげ作品入門編としてはバランスいい。
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・高野慎三・作成, 浅川満寛・増補, スペクテイター編集部・構成 (2018.2) つげ義春年譜. Spectator, vol.41, pp.93-100.
← 初出 : つげ義春 (2017.11) 『改訂版 つげ義春作品集 ねじ式』. 青林工藝舎, 東京.
これは、微に入り、細に入った年譜。つげさんは作品数はそんなに多くないので、(マンガ以外も含む)作品リストにもなっている。資料的な価値もかなり高い。
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論考では、これまでの「つげ本」では見たことがないユニークなものが目につく。
・つげ義春・文, 河井克夫・挿画 (2018.2) つげ義春の幼年時代. Spectator, vol.41, pp.85-92.
← 文初出 : つげ義春 (1968.4) 断片的回想記. 『つげ義春作品集』所収. 青林堂, 東京.
Spectator, vol.41, p.86
アックス(exガロ)系マンガ家・河井克夫が、夢日記シリーズの頃のつげさんの絵を真似て描いている。うまいよねえ。
この時代のつげさんの絵は、誰が見てもヘタ。絵のパースも狂っていて、みなつげさんの精神状態を危惧したもんだった。
しかし、自分で自分の作品をすべて語ってしまった『つげ義春漫画術』などによれば、夢の奇妙さを表現するため、わざとヘタに描いたという。わざとヘタに描くのは、結構大変だったそうな。
ホント・・・創作者っていう人たちは、食えない人たちですね。一杯食わされた(矛盾した表現)。
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・浅川満寛 (2018.2) 劇画の新たな展開 つげ義春の登場. Spectator, vol.41, pp.63-71.
辰巳ヨシヒロ(1935-2015)を中心とした、同時代の劇画家の作品と比較しながら、マンガ家・つげ義春の成長過程を分析した力作。
辰巳らの影響を受けているのは間違いないが、同時に他のマンガへのつげ作品の影響も大きかった。それがよくわかる力作論考だ。
これを読んだあとで、もう一度「おばけ煙突」を読み返すといい。
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・遠藤政治・談, 浅川満寛・取材と文 (2018.2) つげと僕が二〇代だった頃 遠藤政治氏に聞く. Spectator, vol.41, pp.73-80.
「下宿の頃」(1973)の円堂さんのモデルである、元・マンガ家~アニメーターの遠藤政治氏のインタビュー。いやあ、これはよくぞインタビューしてくれた。
だいぶご高齢なのに、しっかりしていらっしゃる。話も抜群に面白い。
何かと芝居じみた、つげさんの行動がだいぶわかってきた。あのハンサム具合に加えて、この行動でしょ。もてるはずだわ>つげさん。
とにかく、おもしろすぎるインタビューなので、何度でも繰り返し読みたくなります。
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・藤本和也+足立守正・対談+構成 (2018.2) 名作の読解法 「ねじ式」を解剖する. Spectator, vol.41, pp.112-120.
今回の目玉論考。これは「ねじ式」(1968)の元絵を見つけてくる、という試みだ。びっくりした。
Spectator, col.41, p.115
「ねじ式」の絵が、つげさん独自の絵だけでない、というのは読めばすぐわかる。他の作品と比べて絵柄が違いすぎるのだ。
おそらく何か元絵があるのだろう、とは思っていたのだが、これだけいろんな写真から引用していたとは驚いた。
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著者らは、日頃は主に水木作品の元絵を見つけてはWEB上で発表している人たち。
こういった作業は、水木先生を神格化して崇めている人たちには、すこぶる評判が悪い。「あら探しをしている」と映るようなのだ。
貸本時代の水木作品では、米沢嘉博もその翻案元ネタを探す、という作業をやっていたが、これも水木ファンには疎まれたようだ。
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しかし、こういった作業は、文学、音楽、絵画の世界では当たり前のように行われている。そんなにアレルギー反応を起こすようなものではないはずだ。
最近Jazzの世界でも、Be-Bopの巨人Charlie Parkerでさえ、独創性にあふれたアドリブと思われていたものが、実は当時の流行歌からの引用だらけであることが判明してきているし。
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これは「つげ作品」が、単なる消費財から徐々に文化財へと移り変わりつつある過程での、必然的な現象、とみていいだろう。
とにかくおもしろいぞ。これだけを目当てに買う価値は十分ある。
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これによって、「ねじ式」をシュールレアリズムの文脈で語るだけではなく、「コラージュ作品」という、新たな視点で語ることが可能になった。その方向での評価は始まったばかりなので、今後いろいろな論考が出てくるだろう。楽しみだ。
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・山口芳則 (2018.2) あの頃の、つげ義春とぼく. Spectator, vol.41, pp.193-196.
水木プロで共に仕事をしていた山口氏は、この手の水木プロ回顧では常連。つげさんの生の姿をよく伝えてくれている。
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・つげ義春 (2018.2) 「つげ義春日記」より. Spectator, vol.41, pp.201-205.
← 再録 : つげ義春 (1983.12) 『つげ義春日記』. 講談社, 東京.
← 初出 : つげ義春 (1983.3~12) つげ義春日記. 小説現代, 1983年3月号~12月号.
『つげ義春日記』は、隣人のプライバシーなどを実名入りで無断で発表してしまったため、クレームがつき絶版となった。今後も復刻の見込みはない(少なくとも初出のままでは不可能)なので、ごくごく一部とはいえ、今回の再録は貴重。
私は、『つげ義春日記』もちろん持ってますよ。
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・坪内祐三 (2018.2) 川崎長太郎とつげ義春のリアリズム. Spectator, vol.41, pp.210-212.
つげさんも大好きな、私小説家・川崎長太郎の作品を取り上げて、私小説の虚実ないまぜの世界を探る。
つげさんも、作者本人としか思えない登場人物・舞台で、私小説ならぬ私マンガと思わせる作品をあれだけ描いておきながら、「マンガと現実の自分を同じだと誤解する人がいるので困る」とか言うんだから、参る。ホント、食えない人たちだ>創作者という人種。
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そして巻末に、
・つげ義春・談, 浅川満寛・取材構成+聞き手, Spectator編集部・赤田祐一・聞き手 (2018.2) 「貧乏しても気楽に生きたい」 つげ義春氏の近況. Spectator, vol.41, pp.225-230.
インタビューはめったに受けない人なのだが、ちょこちょこインタビューは現れてくるので、つげさんの近況というのは、ある程度把握できている。今回のインタビューでも、それと比べて大きな発見はない。
しかし今回は、日常生活よりも、心境についてかなり多く語っているので、ちょっと見逃せないインタビューだ。仏教についての知識・興味なども、これではじめて知った。
「早く死にたい」としきりに語っているが、これもある程度自己演出の一環かもしれない。全くもう・・・。
話しぶりはしっかりされており、語る内容も明晰。ボケたような感じは全くない。まだまだ大丈夫そう。最後のページの微笑もイイ!
このインタビューだけを目当てにしてでも、十分買う価値があるぞ。
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とにかく、数ある「つげ本」の中でも、一・二を争う力の入った特集。
この雑誌を置いている書店は少ないようで、いったいどこで入手できるかは知らない。まあ巨大書店ならあるでしょう。
私は、発売直後に運よく見つけて買ったからよかったものの、ヘタしたら気づかないまま品切れになっていたかもしれない。よかった。
事実、自分が買った書店でも、当初5冊くらいあったのだが、3日後にはもう全部なくなっていた。
書店で出くわすのは結構大変そうなので、通販を使ってでも早めに手に入れた方がいい。それだけの価値がある特集です。