2018年2月6日火曜日

panpanya 『二匹目の金魚』

待望の

・panpanya (2018.2) 『二匹目の金魚』. 191pp. 白泉社, 東京.
← 初出 : 楽園, no.20(2016/2)~25(2017/10)/楽園WEB増刊, 2016/7~2017/12.


装丁 : panpanya

が出ました。

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これまでのpanpanya作品については、

2016年11月29日火曜日 panpanya 『動物たち』
2016年8月9日火曜日 panpanya 3連発

をどうぞ。また、おまけでこちらも。

・stod phyogs > 2017年4月30日日曜日 panpanyaの語源?

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カバーをひっぺがすと出てくる、凝った装丁も相変わらず。


同書カバー下

今回は「模様すりガラス」だ。手触りもそのまんま。いつまでも触っていたくなる。これは買った人だけが味わえる幸せ。

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今回の特徴は、同人誌(というより個人誌か)で発表した作品がなく、「楽園」もしくは「楽園WEB増刊」で発表された短編でそろえてあること。

最長でも20ページ程度と、短編でも比較的短い作品ばかり。中には1ページなんていう作品もある。だからサクサク読んでいける。

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今回は作風を変えてきた。

それまでの、異様な描き込みの背景が主人公のような作品がなくなり、軽めの日常ストーリーを追う作品ばかり。前作の『動物たち』収録作から、その傾向は現れてきてはいたが。

雑誌掲載の短編ばかり、ということも影響してるんでしょうね。

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冒頭に「変なもの」を出してきて、作者の妄想でそれを展開させたり、謎解きをしたりするヤツ。もっとも、その謎解きがゴールにたどり着かないまま終わるものもあるのがpanpanyaらしいところ。


同書, p.5

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こんなやつを見つけたり、


同書, p.31

こんな所に行ったりする。


同書, p.83

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同書, p.166-167

これは、「縁日がない期間、屋台が常駐する」という、通称「屋台の巣」だ。

あはは、いいなあこれ。行ってみたい。

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同書, p.133

これは、わずか1ページの作品の冒頭なのだが、もうこのコマだけで、この本を買った元が取れるくらいの素晴らしいコマ。

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同書, p.143

これも、この数コマだけで「この本を買ってよかった!」と思わせてくれる。まさに「えーっ?」だ。

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変な言い方だが、全体に「濃さ」が薄まっている感はある。

また、感覚的ではなく、理詰め(その中身は異様だけど)でストーリーが展開されているので、非常にクールな印象の短編集。

しかし、panpanyaからしか出てこない、珍妙な発想は相変わらずで、この人の持ち味が失われているわけではない。

新しい読者にもとっつきやすいかもしれない。『足摺り水族館』あたりは、panpanya初見の読者には濃すぎるし。

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次回、kashmirのこれも新刊『てるみな 3』を紹介するのだが、両書は同時発売だ。

似た作風の両者の単行本を同時に出す、というのは偶然ではないだろう。

おそらく、両者の間で「棲み分け」が生じているのではないか、と推察する(直接接触も発生しているはず)。今回のpanpanyaの作風変化はその一環ではないか?

その辺は次回、引き続き考察してみよう。

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とにかく、今回も素晴らしい本で100%満足でした。

この本を置いている書店はあまり多くないけど、探してでも買う価値のある本です。是非買って手元に置いて下さい。

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(追記)@2018/02/11

今回のもう一つの特徴。

これまで登場人物は、主人公「おかっぱの女の子」、級友「ロングヘアの女の子」、犬「レオナルド」、「タコ男」、それにモブ的な存在として「イルカ」、「なんかの動物」あたりだけですべてのマンガを演じさせていたが、今回いくつかの作品では、それ以外にも登場人物が現れるようになった。

「かくれんぼの心得」では、男子級友が出てくる。これはまだ「レオナルド」や「動物」のヴァリエーションだが。

「知恵」では、主人公にリヤカーを押しつけて逃げていく男。これは何だ?タコ男の息子か?新しいキャラだ。

そして「春の導き」。なんかいろんな変なキャラがいるぞ!楽しい。セリフがあるような人物は、相変わらずタコ男や動物のヴァリエーションだが、メガネをかけている人物やうさぎ耳などもいる。

おそらく、意図的に登場人物を増やそうと思っているわけではなく、「必要に応じて」だとは思うが、今回のマンガがpanpanya作品の中ではぐっと親しみやすくなっている要因の一つが、この登場人物(ほぼモブだが)の微増にもあるのかもしれない。普通のマンガに近づいている、というか・・・。

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