2017年8月7日月曜日

アルチンボルド→国芳の流れ

2017年7月1日土曜日 「アルチンボルド展」に行ってきました

でも触れましたが、Arcimboldoの寄せ絵と歌川国芳の寄せ絵は、確実とは言えないまでも、「ある程度関係ありそうだ」というところまではわかっています。

でも、絵なしではその流れはわかりにくいですね。というわけで、絵をつけました。

------------------------------------------


Giuseppe Arcimboldo (1578) Eve and the Apple, with Counterpart (right, Adam).
デ・ジローラミ・チーニー(2017)p.222より.

Eve像は省略。この絵がArcimboldo自身の筆になるものかどうかは確実ではないらしく、作者が「アルチンボルドの工房」となっている場合もあります。

------------------------------------------

その後、Arcimboldoの追随者が現れますが、ほとんどはヘタな模倣でした。

「裸体寄せ絵肖像画」で、上記Eve & Adam画にそっくりな絵は、18~19世紀に現れます。


Bartolomeo Bossi(18~19C) Composite Head of a Man.
フェリーノ=パグデン+渡辺・編 (2017)p.155より.

この絵は、今回の展覧会が世界初公開。Eve画は省略。

Arcimboldoから約200年たって、突如そっくりさんが現れたかのように見えますが、おそらく「現在見つかっているのはこれだけ」ということなのでしょう。Eve & Adam画の模倣者は、Arcimboldo以降連綿と続いていたと思われます。

------------------------------------------

そういった寄せ絵の一部は、模写という形で19世紀の日本に伝わります。


松平斉民・収集 (19C) 人物画. 『芸海余波 第五集』所収. 早稲田大学図書館所蔵, 東京.
府中市美術館・編(2017)p.84より.

この絵は、ArcimboldoともBossiとも若干違います。おそらく、この手の「裸体寄せ絵肖像画」はたくさんあったのでしょう。そのうちの一つが、模写という形で日本まで届いていたということです。

これは大発見。府中市美術館エライ!

------------------------------------------

そして、勉強家である歌川国芳が、この本を見たか、あるいは別ルートで、この手の「裸体寄せ絵肖像画」を見た可能性は充分あるでしょう。

もしかすると、「西洋には、こういう変な絵があるよ」と人づてで聞いただけなのかもしれません。国芳なら、そんな情報だけからでも「裸体寄せ絵肖像画」を描いてしまいそうな気がします。

------------------------------------------

そして描かれたのが、一連の「裸体寄せ絵肖像画」


歌川国芳 (ca.1848) 人かたまつて人になる.
府中市美術館・編(2017)p.84より.

これは横顔なので、Arcimboldoの流れをくんでいる、とも言えそうですが、


歌川国芳 (ca.1848) みかけハこハゐがとんだいゝ人だ.
府中市美術館・編(2017)p.85より.

こういう斜めからの角度は、国芳独自の発想でしょう。

------------------------------------------

というわけで、Arcimboldo→国芳という流れは、ある程度つながるわけですが、まだ「『芸海余波』→国芳」の部分がmissing linkになっています。

でも、昨今の国芳研究には目覚ましいものがあるので、その部分も早晩解決しそうな気がします。期待していましょう。

それにしても、「時空的に離れた二者がつながっている」ことがわかった瞬間は、ほんとうに驚きだし、また楽しいですよね。まさに学問の醍醐味です。

------------------------------------------

なお、「アルチンボルド展」図録に収録されているバイヤー(2017)では、Arcimboldo流「裸体寄せ絵肖像画」の日本への伝来については、「かといって否定されるべきものでもない」と言うにとどめています。

しかしバイヤー先生が「国芳展」図録を見たら、両者の関係性について、より発展的な考察が展開されることになるでしょう。こちらも今後に期待しましょう。

------------------------------------------

文献 :

・府中市美術館(金子信久+音ゆみ子)・編著 (2017.3) 『歌川国芳 21世紀の絵画力』. 287pp. 講談社, 東京.
・シルヴィア・フェリーノ=パグデン+渡辺晋輔・責任編集 (2017.6) 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』. 244pp. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.
・アンドレアス・バイヤー・著, 岩谷秋美・訳 (2017.6) 多重形象化の芸術 ジュゼッペ・アルチンボルドの寄せ絵と二重化されたイメージの意味生産. 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』所収. pp.137-141. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.
・レアナ・デ・ジローラミ・チーニー・著, 笹山裕子・訳 (2017.6) 『アルチンボルド アートコレクション』. 255pp. グラフィック社, 東京.
← 英語原版 : Leana De Girolami-Cheney (2013.10) ARCIMBOLDO (MEGA SQUARE). 256pp. Parkstone Press, NY, USA.

===========================================

なお、府中市美術館の「国芳展」については、こちらをどうぞ↓

2017年3月29日水曜日 府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展
2017年4月24日月曜日 府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展 2回目

===========================================

(追記)@2017/08/10

なお、

・松平斉民・収集 (19C) 『芸海余波 第五集』. 早稲田大学図書館所蔵, 東京.

は、早稲田大学図書館のサイトで見ることができます。

・早稲田大学 > 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 > 古典籍総合データベース >芸海余波. 第1-16集 > 芸海余波 第5集(as of 2017/08/09)
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01646/i05_01646_0005/i05_01646_0005.html

このうち、前述の「裸体寄せ絵肖像画」(模写)のページは、

・早稲田大学 > 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 > 古典籍総合データベース >芸海余波. 第1-16集 > 芸海余波 第5集 > 16枚目 (as of 2017/08/09)
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01646/i05_01646_0005/i05_01646_0005_p0016.jpg

「裸体寄せ絵肖像画」(模写)のクローズアップは

・早稲田大学 > 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 > 古典籍総合データベース >芸海余波. 第1-16集 > 芸海余波 第5集 > 図55 (as of 2017/08/09)
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01646/i05_01646_0005/i05_01646_0005_p1055.jpg

0 件のコメント:

コメントを投稿