2017年8月19日土曜日

月岡芳年ツアー2017(2) 太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語」 展

芳年ツアー第2弾は、原宿の太田記念美術館の前期。

・太田記念美術館 > 展覧会 > 年間スケジュール > 特別展 月岡芳年 妖怪百物語(as of 2017/06/28)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/%E6%9C%88%E5%B2%A1%E8%8A%B3%E5%B9%B4%E3%80%80%E5%A6%96%E6%80%AA%E7%99%BE%E7%89%A9%E8%AA%9E-2

会期 : 2017年7月29日(土)~8月27日(日)(7月31日、8月7、14、21日は休館します)
開館時間 : 午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
会場 : 太田記念美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
TEL : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料 : 一般 1000円、大高生※学生証をご提示ください。 700円、中学生以下※中学生は学生証(生徒手帳)をご提示ください。 無料(リピーター割引 「月岡芳年 妖怪百物語」および「月岡芳年 月百姿」両展覧会の会期中2回目以降ご鑑賞の方は、半券のご提示にて200円割引いたします。※チケット購入時に半券をご提示下さい。他の割引との併用はできません。
芳年を巡る 入館料相互割引プラン : 下記展覧会のチケットを当館でご提示いただくと、「月岡芳年 月百姿」展を100円割引でご覧いただけます。※1枚につき1名様、1回限り有効、他の割引との併用はできません。
横浜市歴史博物館 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史×妖×芳年 2017年7月29日(土)~8月27日(日)


同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, p.2

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案の定、横浜の「歴史×妖×芳年」展とは「新形三十六怪撰シリーズ」が丸かぶり。

しかし、がっかりしたかというと、そんなことはない。横浜で芳年錦絵の見方を勉強できたおかげで、こちらでは重要技法を見逃すこともなく、じっくり鑑賞することができました。

空摺や正面摺の技を見ようと、伸びをしたり、しゃがんだりしてたのは自分だけだった。

横浜みたいに、技法の解説はないし。太田は浮世絵専門館なので、「そんなの解説するまでもなく、うちの客には常識」ってことなのかもしれない。

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これが図録。一般書籍として、書店でも販売されています。

・日野原健司+渡邊晃・著, 太田記念美術館・監修 (2017.7) 『月岡芳年 妖怪百物語』. 135pp. 青幻舎, 東京.


デザイン : 原条令子

展示作品をコーナーごとに紹介すると、

(1) 初期の妖怪画 16点
(2) 和漢百物語 26点
(3) 円熟期の妖怪画 24点
(4) 新形三十六怪撰 36点

まさに充実の展示です。それにしても、この頃の浮世絵師は多作だ。これでも芳年作品のほんの一部なのだから。

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お気に入りは、


月岡芳年 (1865.8) 和漢百物語 宮本無三四
同書, p.54

躍動感が素晴らしいですね。

他には、やたらと相撲取りの豪傑話(まあ作り話かうわさ話なのだろうけど)が多いのがおもしろい。小野川喜三郎が、三つ目入道に煙草の煙を吹きかけながらの、小馬鹿にした目が素晴らしい。嫌がる三つ目入道の顔との対比も、また絶妙。

しかし芳年が描く妖怪は貧相なものが多く、ちょっとかわいそう。これだけ妖怪画を描いているのに、芳年の立ち位置は飽くまで「退治する側」にある。「妖怪が好きで好きでたまらない」といったタイプではない、と見た。

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月岡芳年 (1885.9) 奥州安達がはら ひとつ家の図
同書, p.80

芳年らしさが発揮された一枚。縦二枚つづりの画面構成を存分に活かした力作だ。

横浜でも太田でも、残念ながら無惨絵系統の展示はほとんどないので、今回の展示の中では、そっち方面の嗜好を垣間見れる貴重な作品。

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なお、今回の図録はページがマットなので、発色が悪いような気がする。横浜と展示が重複している「新形三十六怪撰」で、図録を比較してみるのも面白い。

すると、横浜展示のものとは、摺りが違う版があったりする。これは一点物ではない浮世絵収集の宿命であり醍醐味でもある。

一つ紹介しておこう。


月岡芳年 (1891) 新形三十六怪撰 奈須野原 殺生石之図
同書, p.113


月岡芳年 (1891) 新形三十六怪撰 奈須野原 殺生石之図
横浜市歴史博物館・編 (2017.7) 『丹波コレクションの世界II 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化』. p.90 横浜市ふるさと歴史財団, 横浜.

横浜の図録は、ページがグロスで発色がいい。太田のよりもコントラストを強めにしている。ぼかしなど、微妙な味わいは太田図録の方がよく出ているかもしれない。

しかし、原本の保存状態の違い、図録での図版作製・色調整を考慮したとしても、これは摺り版が違うのではないか、と思った。

太田の展示では、一部の絵柄が刷られていない版を並べて展示してあったりするのも、なかなかおもしろかった。意図的なのか単なるミスプリントなのか、わかっていないそうだ。

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太田記念美術館はこじんまりとしたところなので、作品との距離が近くていい。その分、客が多いと結構窮屈になり、観覧も時間がかかるけど。平日昼間にゆったりした気持ちで見るには、すごくいい場所だと思った。

今回の「妖怪百物語」展は、2017/07/29~08/27と、わずか1ヶ月の短い展示なので、すぐに行った方がいい。もたもたしてると終わっちゃうぞ。

次回、「月百姿」展(2017/09/01~09/24、こちらも短いので注意)ももちろん行きます。

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