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2018年1月14日日曜日

『谷崎万華鏡』

・中央公論新社・編 (2016.11) 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. 227pp. 中央公論新社, 東京.
← 初出 : 中央公論新社 > 特設サイト > 谷崎潤一郎メモリアルイヤー マンガアンソロジー 谷崎万華鏡, 2015/05~2016/10.
http://www.chuko.co.jp/special/tanizaki_mangekyo/


装画:中村明日美子, 装幀:山影麻奈

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中央公論新社が谷崎潤一郎生誕百三十周年を記念して、『谷崎潤一郎全集 全26巻』を刊行。そのタイミングに合わせて、自社websiteで連載したマンガアンソロジーをまとめたものだ。

表紙は、シャープな絵の中村明日美子。谷崎好みの女性とはちょっと違うような気もするが、まあ、谷崎小説の感じ方は人それぞれ違うし、第一私は、谷崎をたいして読んでない(笑)。読んだのもだいぶ忘れてる。

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005-014 久世番子/谷崎ガールズ(オリジナル)
015-042 古屋兎丸/少年
043-066 西村ツチカ/人間が猿になった話
067-082 近藤聡乃/夢の浮橋
083-094 山田参助/飈風
095-120 今日マチ子/痴人の愛
121-132 中村明日美子/続続蘿洞先生
133-150 榎本俊二/青塚氏の話
151-158 高野文子/陰翳礼讃
159-192 しりあがり寿/瘋癲老人日記
193-220 山口晃/台所太平記
221-225 作者あとがき
226-227 主要参考文献/初出

かなり力の入った布陣。その中から気になったものをいくつか。

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・谷崎潤一郎・原作, 古屋兎丸・画 (2016.11) 少年. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.15-42. 中央公論新社, 東京.


同書, p.17

谷崎作品に一番ぴったりのマンガ家は丸尾末広だと思うが、残念ながら丸尾作品はない。断られたかな?

だからというわけでもないのかもしれないが、ここで古屋兎丸は充分丸尾を意識した絵を描いている。なんでも描けるんだけどね、この人は。

谷崎世界よりは、ちょっとジメジメさが足りないような気もするが、充分淫靡だ。

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・谷崎潤一郎・原作, 近藤聡乃・画 (2016.11) 夢の浮橋. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.67-82. 中央公論新社, 東京.


同書, pp.80-81

このアンソロジーの中では、これが一番好き。

こんな作品があるのは知らなかった。これは筒井康隆でたくさん読んだ夢話とよく似ている。そうか、そういうことだったのか。

しかし、近藤聡乃はうまい。切れ長の目で下膨れの女性。幾何学的に整った絵も。一部で使ってあるマンガ的な表現を、とことん抑えたらもっと不気味な作品になっていたかもしれないなあ、なんても思う。

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・谷崎潤一郎・原作, 高野文子・画 (2016.11) 陰翳礼讃. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.151-158. 中央公論新社, 東京.


同書, pp.154-155

なんかすっかり絵本風の絵になってしまった高野先生だが、うまさは相変わらず。谷崎の美文の側面を活かした絵になると、こうなるのかな。

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・しりあがり寿 (2016.11) 谷崎潤一郎 『瘋癲老人日記』×ヘミングウェイ 『老人と海』 REMIX. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.159-192. 中央公論新社, 東京.


同書, pp.182-183

この本一番の問題作だろう。わけがわからない(笑)。最近William S. Burroughsばっかり読んでいるので、これはBurroughsのcut-upだな、とすぐ気づいたよ。この人は、やっぱり「前衛の人」なのだ。

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他の作品も力作揃い。久世番子は安定の面白さ。

西村ツチカは、相変わらず不思議なマンガを描く人だ。

山田参助は『あれよ星屑』の人。本来あっちの人なので、男の裸を描く方が堂に入ってるのがおかしい。

今日マチ子の絵では『痴人の愛』を直球で描くのは無理と見て、現代物に翻案してある。まあチョイスとしてはいいとこでしょう。

中村明日美子は、気味の悪いテーマにはぴったり。

榎本俊二は、今はこんな絵になっているのか。意外に谷崎ワールドとしっくりくる作品になっていてびっくり。

山口晃は安定そのもの。マンガというより絵物語に近いが、晩年の谷崎を飽きずに読ませる。

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濃厚な谷崎原作に比べて、少し脂分が足りない感は否めないが、曲者ばかりをそろえ、どれもおもしろい作品に仕上がっている。

何度も言っていることだが、ほんと日本のマンガの豊かさに驚きっぱなしです。

2017年10月30日月曜日

高野文子の娘たち (2) ヨコイエミ 『カフェでカフィを』

2017年3月26日日曜日 「フイチンさん」の娘たち (2) 近藤聡乃 ウラモトユウコ

で、高野文子の影響が色濃く見える二人、近藤聡乃、ウラモトユウコを紹介しましたが、これはもう「フイチンさんの娘たち」というより「高野文子の娘たち」といった方がいいでしょう。

というわけで「高野文子の娘たち (1)」はありませんが、いきなり(2)で進めましょう。

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娘3人目は、ヨコイエミ。

・ヨコイエミ (2017.9) 『カフェでカフィを』(集英社クリエティブコミックス). 191pp. 集英社, 東京/集英社クリエイティブ, 東京.
← 初出 : Office You, 2013年7月号~2015年9月号.


デザイン : 松本哲児(BRIDGE)

最近の新刊マンガはシュリンクがかかっていて、中身が見れません。大手の売れ筋作品では、薄い「立ち読み版」が書店に配布されることもありますが、こういったマイナー作品ではそれもない。

だから表紙で判断せざるを得ないケースが多いのだが、この本も情報なしでそうやって見つけた本。

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表紙はOK。カラーコーディネートもいいですね。

このマンガは、基本「コーヒー」をテーマにした短篇集なのだが、前後の話が何らかの形でつながっているという連作集でもある。最近このパターン多いですね。

1話2話あたりは、ちょっとオシャレ系の雰囲気もあり、大丈夫かな(つまり、オッサンでもついて行けるかな?)、と心配に。


同書, p.34

第3話目まではこういう細い線で描かれている。この辺でもかなり高野風なのだが、「るきさん」よりもっと後、「黄色い本」あたりに近いかな。

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4話「マリアージュ」は、完全に『棒がいっぽん』のころの高野マンガの影響を受けている。


同書, pp.40-41

右ページで会話、左ページでは角度をめまぐるしく変えた「どアップ」、というのは、なかなか迫力ある。これ、高野文子 『棒がいっぽん』収録の「奥村さんのお茄子」とか「バスで四時に」をかなり意識した実験作だ。

また内容も、高野作品「マヨネーズ」のシチュエーションをもうちょっとソフトにした感じ。

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この辺で、「この人、高野文子の娘の一人だ!」と気づいたわけです。この実験はその次の第5話「ミス・ベンダーの旅」にも続きます。


同書, pp.66-67

この話は、なんと缶コーヒーの缶と自動販売機の会話だ。この点でも実験作だ。

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もしかすると、この辺は編集さんあたりに「ちょっとやり過ぎですよ」と注意されたのかもしれない。

その次からは、絵にはあまり凝らずに、会話中心の人間模様にシフトしている。でもそっちもおもしろい。

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12話「カフェ・ド・バスルーム」は、若夫婦が一緒に風呂に入りながら、コーヒー飲んだりアイス食ったりと、いちゃいちゃする話だ。普通はそのまま始まっちゃうわけだが(笑)、その直前の楽しそうな雰囲気をよく描いている。まあ、実体験なんでしょうね(笑)。

しかし、最近は女性の陰毛などは、女性マンガ家も平気で描くようになったなあ。男性器はまだ隠す人多いけど。

アイスを食べるシーンの、目を見開いて大口開ける顔、「うはぁ 恐怖漫画の顔みて」、「んまい」。

これは!楳図かずおファンだな!特に「まことちゃん」の。

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「三爺マンガ同好会」「ぐるぐる」の、ジジイ三人組コントもおもしろいなあ。この作品集は、老人が大活躍するのも特徴です。

この辺は、高野作品「二の二の六」あたりの雰囲気。

p.85の「源さん」に大笑い。これ、1983年のドラマ「源さん」の宇津井健じゃないか(笑)。

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ヨコイエミさんは、1990年代にデビューし連載作も持っていたのだが、その一作で一度フェイドアウト。どうも結婚して一時仕事をセーブしていたような雰囲気。

そして名前を変えて再デビュー。前作は知らないのだが、こんな感じで、のんびり作品を発表していってほしい。

2ヶ月に1本10ページじゃ、なかなか単行本にならないだろうけど。この本も1冊分たまってから出るまで2年もかかってる。

いつかまた(2年後くらい?)取り上げます。

2017年4月12日水曜日

『絶対安全剃刀』の表紙は高野文子の絵ではない?

前々回の

2017年4月7日金曜日 高野文子 「早道節用守」

で取り上げた

・高野文子 (1982.1) 『高野文子作品集 絶対安全剃刀』. 198pp. 白泉社, 東京.


装幀 : 南伸坊/小倉敏夫

ですが、これは初版第一刷以来、いまだに装幀や編集を変えずに、そのまま流通しています。これはすごいことなんですよ。発売以来、新装版など出す必要がないくらい、常に売れ続けているわけですから。

で、今回その装幀をチェックしていて、とんでもないことに気づいてしまいました。ちょっとショックでもあります。

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装幀者には、南伸坊/小倉敏夫とお二人の名前が出ています。はて、なぜ二人?

小倉敏夫さんは、北村薫の創元推理文庫シリーズの装幀で知ってるが、そのイラストが高野文子だった(人物のポーズが全部同じやつ)。おそらくこの本の装幀をきっかけに、縁ができたものと思われる。

でもなぜ南伸坊まで??装幀に二人がかりも必要ないだろ。

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で、よくよく見ると、裏カバーのカミソリのイラストは南伸坊の絵だ。この特徴的な、律儀で人懐っこい字と線は間違いない。


同書, 裏カバー

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でも、このカミソリの絵だけで、わざわざ南さんを呼んでくるもんだろうか?

などと思いながら、もう一度表紙をじっと見つめると・・・

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なんと、表紙の絵は高野文子ではない!これは南伸坊の絵だ!

中央の二人の女の子を見てほしい。


同書, 表紙(拡大)

この二人は、同書収録の「玄関」の登場人物、「えみこ(向かって左)」と「しょうこ(向かって右)」なのだが、


同書収録「玄関」, p.180

これが高野絵の二人。よく見比べてほしい。タッチがだいぶ違いませんか?

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特に右のしょうこ。これは高野絵か?南絵か?と訊かれたら、確実に南絵と言えますね。南伸坊絵の特徴がよく出ています。

無論、慎重に高野絵をフェイクしているので、まずわからない。当然だ。だから登場以来、30年以上誰も気づいていないのだ(自分ももちろん)。

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南さんは、他人の絵をフェイクすることをよくやっている。昨年のアックスvol.109(2016年2月)表紙の「フェイク河童の三平」は記憶に新しいところです。


同書表紙

詳しくは

2016年2月25日木曜日 水木しげる屁話 アックス 特集 追悼水木しげる 発売!

をどうぞ。

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それと有名なのは、

・内田春菊 (1987.12) 『南くんの恋人』. 青林堂, 東京.



この表紙の絵、作者なんだし、いかにも内田春菊と思ってしまうが、実は南伸坊の絵。

これは、あまりに辛いエンディングを創作してしまい、内田さんが「ちよみちゃん」を描けなくなってしまったので、仕方なく南さんが描いたもの。それにしてもフェイクがうますぎだ。

だが、この事実は別に隠していない。内田春菊本人が語っているのだし。

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しかし『絶対安全剃刀』の方は、南さんが描いたのだとしたら、理由がわからない。いったい、自分の初単行本の表紙を他人に描いてもらうなんて、どういうことなんだろう?

もしそうだとしても、これは高野さんは納得ずくのはず。というのもその後に『おともだち』でも、南さんが装幀をやっているから。

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とにかく謎だらけのこの表紙絵、業界の人に真相を確かめてほしいものだ。

2017年4月7日金曜日

高野文子 「早道節用守」

少し前の高野文子ネタと、江戸絵画ネタの合わせ技で思い出したのがこの作品↓

・山東京傳・原作, 高野文子・改作 (1981.1) 早道節用守(はやみちせつようのまもり). マンガ奇想天外, no.4.
→ 再録 : 高野文子 (1982.1) 『高野文子作品集 絶対安全剃刀』所収. pp.127-142. 白泉社, 東京.


装幀 : 南伸坊/小倉敏夫


同書, p.127

発表以来30年以上、この作品の評価っていまだ全く定まっていない。いや、自分もさっぱりわかっていないのだが。

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この作品は、江戸中期のいわゆる「黄表紙」をそのまんまマンガ化したもの・・・と思っていたのだが、実はそうではなかった(後述)。

首にかけると、ものすごい勢いでどこかへすっ飛ばされてしまうお守り(韋駄天の守)が、吉原から天竺、唐(もろこし、つまり中国)をめぐり、吉原の花魁(おいらん)・花荻の奪い合いに使われる。日本は江戸時代なのに、天竺にはお釈迦様はいるわ、唐には始皇帝はいるわ、というデタラメで、とっても下らないお話。

「下らない」、「滑稽」、「下品」、「地口(駄洒落)」これが黄表紙のキーワード。絵が大きく描かれており、吹き出しなどもあるし、黄表紙とは実にマンガ的な読み物なのだ。

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冒頭、惡二郎が、犬に「韋駄天の守」のことを教えられ、盗みをそそのかされるシーン↓


同書, p.129

犬がのそのそと出てきて、ごろんと寝転んだかと思うと、半纏を着て懐手をしている。黄表紙らしいね。これ大好きな絵だ。

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ところが、実はこのシーン、原作にはない。犬など出てこないのだ!なんと!驚くではないか。

原作は全編ここで見ることができる↓

・WASEDA University 早稲田大学 > Academics 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 : 古典籍データベース > その他のコレクション > 江戸文学コレクション > 江戸文学100選 : 黄表紙 > 山東京伝 > 7 > 早道節用守. 上,中,下 / 山東京伝 作(as of 2017/04/06)
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_01961_0028/index.html

行書の変体仮名を読める人は、ほとんどいないだろうから、活字化したものも紹介↓

・関根黙庵・編 (1915) 『黄表紙名作集』. 296pp. 一星社, 東京.
→ 再発 : (1922.2) 『繪入黄表紙名作集』. 296pp. 平安堂書店, 東京.
→ 電子化 : Google Books UK > 繪入黄表紙名作集: 全(電子書籍無料、デジタル化された日:2010年1月6日)
https://books.google.co.uk/books/about/%E7%B9%AA%E5%85%A5%E9%BB%84%E8%A1%A8%E7%B4%99%E5%90%8D%E4%BD%9C%E9%9B%86.html?id=Zo-K8iRMQrMC

収録作は↓「早道」は最後の方。

・恋川春町 金々先生栄華夢. 
・喜三二 親敵討腹皷 鈍作万八噺. 
・喜三二 鐘入七入化粧. 
・恋川春町 楠無益委記. 
・唐来三和 莫切自根金生木. 
・山東京伝 延寿反魂談. 
・奈蒔野馬平人 啌多雁取帳. 
・喜三二 長生見度記. 
・十返舎一九 明眠千人盲仙術. 
・山東京伝 江戸生艶気蒲焼. 
・芝全交 大悲千録本. 
・竹杖爲軽 夫従以来記. 
・山東京伝 小人国毇(こごめ)桜. 
・樹下石上 万福長者寶蔵開. 
・恋川春町 悦贔負蝦夷押領. 
・十返舎一九 竹本義太夫武士. 
・大栄山人 尽用而二分狂言. 
・山東京伝 早道節用守. 
・芝全交 白髪大明神御渡申.

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高野版「早道」を見ると、なんと原作を真似たような絵はほとんどない。テレメンティコなどは、原作ではオヤジだが、高野版では子供だ。ぜんぜん違う。

高野版「早道」は、どうやら原作の絵は見ずに、文章だけを見て想像をふくらませた作品らしいのだ。驚きですよね。

もっとも、全編を通じて黄表紙らしい絵になっているので、「早道」以外の黄表紙作品を参考にしていることは伺える。

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この作品が発表された1981年1月号(発売は1980年12月)当時、黄表紙「早道」が読める本を探してみると、実は上に挙げた関根(1915)あるいは(1922)しかなさそうなのだ。

高野先生は絵入り「早道」を見ていないようなので、ますます、絵はわずかしかない(「早道」の絵も1枚だけ)この本を参照している可能性が高くなる。

いったいなんでまた、大正時代の黄表紙本などを当時読もうと思ったのか、謎は深まるばかり。

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しかし舌を巻きますね。絵を見ずに独自のイマジネーションをふくらませて、ここまでの作品にしてしまうのですから。


同書, p.139

唯一、花魁・花荻が惡二郎に棒にくくりつけられる絵だけは原作と似ている。これは他に別ルートで絵を入手していたのだろうか?ますます謎だ。

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根本的に、黄表紙をマンガ化する気になったきっかけは、いったい何だろう?さっぱりわからない。

それまでも、前衛演劇めいた「ふとん」、大友克洋タッチの実験「方南町経由」、カラートーン実験「たぁたぁたぁ」など、登場するたびに我々読者を驚かせてきた高野先生だが(全部リアルタイムで雑誌で読んでる自分が怖い)、ここでまた読者はひっくりかえることになった。

しかし、この作品の前にも後にも、これに類する作品はひとつもない。江戸絵画タッチの絵は、これっきりで使い捨て。なんと贅沢な実験だ。

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この作品は、高野作品の中でも孤立度が特に高くて、どういう評価をしていいのか、誰もわからない。

本人は「黄表紙が面白そうだったから真似したくなっただけ」なんて、あっさり言いそうだけど。

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このマンガが出る直前、実は私は、大学で半年だけ黄表紙の授業を受けていたのです。

講師は、いまや黄表紙研究の第一人者・棚橋正博先生でした。変な授業で面白かったなあ。全然授業出てなかった私も、これだけは出席率よかった。

その後、教養文庫の『江戸の戯作絵本(全6巻)』買ったりして(うち3冊しか持ってないけど)、積ん読する程度ではあったが、興味は持ち続けていた矢先の高野作品だったのです。

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高野版「早道」への反響はほとんどなかったと思う。認知症の老女を幼女として描いた「田辺のつる」には、あんなに反響があったのに(まあ、あれはすごくわかりやすいし、論評も実にしやすい作品だったんだけど)。

やはりあれは「高野実験マンガ・シリーズ」の一環で、その後は本人もこの実験を続ける気は全くなかったし、他のマンガ家も誰もトライしている様子はなかった。とにかく、みんなわけがわからなかったのだ。

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しかし最近、江戸絵画のパロディでマンガを描く人が出てきて驚いた。それが、今をときめく、コレ↓

・仲間りょう (2013~) 磯部磯兵衛物語 浮世はつらいよ. 週刊少年ジャンプ連載.


同1巻


同1巻, p.64-65

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作者の薄っぺらい江戸時代の知識で描かれる、いいかげんな作風は、高野「早道」よりも黄表紙の精神に意外に近いかもしれない。

時折、こういうヘンなマンガが湧いてくるところが、ジャンプの底力なんだよなあ。やっぱり日本マンガの層の厚さはスゴイ、とあらためて思い知らされました。

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(追記)@2017/04/07

実は江戸絵画(浮世絵)よりも古い日本画を作風にしてる人もいるのです。私以外誰もそれを指摘しないけど・・・。

それが「ほしよりこ」さん。平安時代あたりの絵巻物の絵(それもモブを描くタッチ)です。詳しくはこちらをどうぞ↓

2015年10月6日火曜日 ほしよりこ 『逢沢りく 上・下』

2017年3月26日日曜日

「フイチンさん」の娘たち (2) 近藤聡乃 ウラモトユウコ

明らかに「るきさん」の絵を意識した作品がこれ↓

・近藤聡乃 (2015.6~2016.11(続刊)) 『A子さんの恋人 1~3(続刊)』(BEAM COMIX). KADOKAWA, 東京. 
← 初出 : ハルタ, 2014-APRIL~2016-OCTOBER(連載継続中).


装丁 : 芦田慎太郎(芦田デザイン事務所)

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・natalie ポップカルチャーのニュースサイト ナタリー > コミックナタリー > 特集・インタビュー > 唐木元・取材・文・撮影/近藤聡乃インタビュー (2015年6月15日)
http://natalie.mu/comic/pp/akosan

でも話しているように、近藤先生は「るきさん」が大好きで、そういうマンガを描いてみたと思っていたそうなのだ。


同書1, p.19

絵を見ると、「るきさん」よりも、もう少し後、高野先生があちこちで描くようになった、イラストというか軽いカットの方に似ていますね。

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それにしても達者な絵だ。1960年代の「略画集」に載ってるような、軽いタッチなんだが、この流れるような絵でどんどん読まされてしまう。

アックス(青林工藝舎)に載っていたころも時々見ていたけど、当時はもっと黒っぽい淫靡な絵を描いていた。佐伯俊男や丸尾末広あたりの影響が垣間見られる絵でした。

それがいまや正反対、「るきさん」の絵なんだから驚く。「A子さん」以外にこの人の本持っていないんだが、どういう経緯で今の絵に至ったのか、昔の本も探して読んでみよう。

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ニューヨーク(NYC)滞在からとりあえず一時帰国したマンガ家A子が、日本の元カレA太郎とNYCに置いてきた彼氏A君との間で揺れ動く、という、いつもの自分ならとうてい興味の持てないストーリー。

なんだか、20年位前なら柴門ふみあたりが描きそうな話だ。

それがこの絵で、コメディタッチで描かれるとどんどん読めてしまうから不思議。もっとも、そのテーマは酒の肴みたいなもんで、実際はK子+U子の悪友二人とのダベリ・コントを描くのが主になっています。

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困ったことに、登場人物が意地の悪い連中ばかりで、全然感情移入できない!これは読んでて辛い・・・はずなんだが、面白いのでどんどん読めてしまうという、このアンビバレンス。

主人公のA子は優柔不断で、なぜモテモテなんだかさっぱりわからない(「ふたりはもててるとは言わないわよ」U子)。

あー、これはあれだ。少女マンガによくある、どこが魅力的なんだかさっぱりわからないガサツな女子が、なぜか王子様的な男子(複数)にドカスカ言い寄られるという・・・。まあ作者自身の主人公への投影と願望が多分に入ったものなのだろう、とは思うけど・・・。

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まあ、とにかくまだ続くようだから、4巻も読んでみよう(連載で追う気まではない)。

それにしても、「るきさん」風の絵でこんな話を描く人が出てくるとは、あらためて日本マンガの底力を思い知りました。

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続いての「フイチンさんの娘」はコレ↓

・ウラモトユウコ (2014.2) 『彼女のカーブ』. 174pp. 太田出版, 東京.
← 初出 : (2013~14) 彼女のカーブ 1~10. マンガ・エロティック・エフ, vol.75~84.


装幀 : 名久井直子

表紙がエッチくさいですが、中身は全然エッチではありません。本屋で恥ずかしがらずに買ってください。

まあ、「フェチ」がお題の連作集ですが、ほんとに「軽くフェチ」という程度。中高生ものも3本あるし。

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近藤聡乃よりは意識的ではなく、「るきさん」風の絵は味付け程度の使い方。絵の基本は、志村貴子あたりの絵にあると見た。しかしザザッと書き飛ばしたようにみえる部分では、「るきさん」的なタッチが出る。


同書「桶屋さんのデコルテ」, p.6

この桶屋さん大好き(どうでもいいが、巻末番外編では桶谷さんになってる、実は別人なのか?)。

他にも「キミの脚」など、どれもおもしろい。男にも女にもおすすめできる一冊です。

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・ウラモトユウコ (2014.6) 『かばんとりどり』(ZENON COMICS). 175pp. ノース・スターズ・ピクチャーズ, 武蔵野.
← 初出 : WEBコミックぜにょん, 2013年6月~2014年5月
http://www.zenyon.jp/


デザイン : 須永薫 AFTERGLOW

これも短篇連作集です。こちらは「かばん」がお題。

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同書「リモコンの話」, p.15

この辺もいいですね。

この人、結構ねっちりした女子を描くのも好きで、その時は丁寧な筆致なんだが、こういう絵の時は「達者」というより、まだ「単に雑な絵」に見えてしまう。絵の修業はまだまだ、と言えるかもしれない。

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絵はかわいいし、話もどれも面白いので、今後も楽しみな作家だ。上の2冊のように、お題を出されて、それにきっちり応えられるストーリー展開能力はたいしたもの。

活字本の表紙とかイラストでもひっぱり凧です。あと、中学生ものがすごくうまいのも特長。

最新作の「ハナヨメ未満」は設定が強引すぎて、あまり入り込めなかったが。また、最近の絵は「るきさん」風からどんどん離れて行っています。

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この二人まで行くと、「フイチンさん」を直接感じ取ることはできないかもしれないが、上田としこの洒脱な絵と作風が、少しずつ形を変えながらもしっかり受け継がれている、と思うとうれしくなります。日本マンガの層の厚さを感じてください。

2017年3月25日土曜日

「フイチンさん」の娘たち (1) よし子ちゃん モコちゃん 高野文子「るきさん」

上田としこの「フイチンさん」、そしてそのバリエーションとも言える「お初ちゃん」は、その後の日本マンガ、日本アニメに少なからぬ影響を与えています。

まず影響が見られたのはTVアニメの世界。

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・<TVアニメ> 横山光輝・原作, 東映動画・制作 (1966.12~1968.12) 魔法使いサリー(全109話). NETテレビ.

サリーのクラスメートである「よし子」ちゃん(通称:よっちゃん)。知らない方はこちら↓でどうぞ。

・YouTube > よっちゃんの視力検査 (uploaded by EGO Channel, 2014/03/03)
https://www.youtube.com/watch?v=rdgDw2rDSTw

三つ子のお姉さんのあの子です。面長で背が高く、気が強く活発。表情豊かでよく動く。そして特徴的なのは、やっぱり「お下げ」。

これは確実にフイチンさん/お初ちゃんの影響があるでしょう。当時まだ「お初ちゃん」は連載中です。

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「魔法使いサリー」の後続番組

・<TVアニメ> 赤塚不二夫・原作,東映動画・制作 (1969.1~1970.10) ひみつのアッコちゃん(全94話). NETテレビ.

にも「フイチンさんの娘」が登場します。やはりアッコちゃんのクラスメートの「モコちゃん」です。

知らない方はこちらで↓

・大場★打太/いくつになってもアニメファン 略してINAF > Deep Closet > NEXT > 魔法少女・変身少女・戦うヒロインたち… ひみつのアッコちゃん(07/25/2004更新)
http://inaf.2-d.jp/C_d/___95i/akko.html

よし子ちゃんにくらべると少し地味かもしれませんが、やはり気が強く活発。そしてもちろん「お下げ」なのです。

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実は原作のマンガでは、よし子ちゃん、モコちゃんとも、それほどフイチンさん的ではありません。モコちゃんなどは、マンガではツインテールですらないし。

・しら/こんなんみっけ 穴子さんの年齢は27歳! > 横山光輝「魔法使いサニー」 2009/10/26(月) 午後 6:49
http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/8743548.html

・赤塚不二夫公認サイト これでいいのだ!! > マンガ > ひみつのアッコちゃん > キャラ紹介 (as of 2017/03/23)
http://www.koredeiinoda.net/manga/s_mokochan.html

これは、私は「フイチンさん」、「お初ちゃん」の動きを感じさせる絵が、マンガ家よりもアニメーターの琴線に強く触れたため、彼らがアニメ版にフイチンさん・キャラを持ちこんだのではないか、と推察しています。

あの絵を見たら、アニメーターなら絶対動かしたくなりますよね。

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実はその通り、「フイチン再見!」最終回にも描かれていますが、「フイチンさん」はアニメ化されたことがあるのです。

・<劇場アニメ> 上田としこ・原作, 湖山禎崇・監督, アニマル屋・制作 (2004.3) 『フイチンさん』. 55分. あにまる屋自主配給.
→ <DVD> (2006.5) グッドシップス, 東京.

参考:

・アニメ制作会社 エクラアニマル > 活動 作品紹介 > フイチンさん(as of 2017/3/23)
http://www.anime.or.jp/katudou/fuitin.html

予告編を見る限り、フイチンさんは頭身も小さくなり、上田「フイチン」とはちょっと違った印象を受けますが、美しいハルビンの風景など、評価は非常に高いアニメです。

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アニメではないが、石黒正数「それ町」の針原さんも、どうも「よし子ちゃん」や「モコちゃん」の系列に属するような気がします。もはやお下げですらないけど。

彼女らに共通するのは、「主役ではなく脇役」であること。子供向けアニメとはいえ、いつも楽しい話ばかりではありません。時には悲しい話やシリアスな話もあります。そういった場面もある連続アニメでは、「フイチンさんキャラ」はどうしても脇役止まりになってしまいます。

「フイチンさんキャラ」を主役として動かすには、相当な力量が必要なことがわかります。上田先生のすごさはそこなのです。

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さて、その「サリー」「アッコちゃん」以後、しばらくは「フイチンさんキャラ」というのは思い浮かばないのですが、1980年代に突然変異的に「フイチンさん」的な絵が現れます。

それがコレ↓

・高野文子 (1993.6) 『るきさん』. 120pp. 筑摩書房, 東京.
← 初出 : Hanako, 1988年6月2日号~1992年12月17日号.
→ 再発 : (1996.12) (ちくま文庫). 筑摩書房, 東京.
→ 再発 : (2015.6) (新装版). 126pp. 筑摩書房, 東京.


装幀 : TAKE ONE(鈴木哲也)

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お下げでこそなく、また動きもそれほどではないが、この線はまさに「フイチンさん」「お初ちゃん」です。


同書, p.103

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当時、高野先生は「フイチンさん」(おそらく講談社漫画文庫版)にはまっていたらしく、

・<TV番組> NHK (2000.5.2) BSマンガ夜話 第14弾 第2夜 るきさん 高野文子. NHK-BS2.

では、いしかわじゅん氏が、高野先生のダンナ・秋山協一郎氏による「最近、うちの奥さん、「フイチンさん」ばっかり描いてるんだよ」という証言を紹介しています。これはおそらく「るきさん」が始まる前の話だと思われます。

この人は、どんどん絵柄を変えていく人で、前単行本(1987.8)『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』では、1950年代USAアクション映画風の絵に変わり、びっくりさせていました(違和感もありまくりでしたが)。

それが次作品『るきさん』では、また大きく変わり、「フイチンさん」ですからね。びっくりしっぱなしです。

「るきさん」以降は、この頃のシンプルな線が基本になり、初期の刺さるようなシャープな線ではなくなりました。

「るきさん」については、カラーコーディネートやデザインの実験などいろいろ語りたくなるのですが、実はあまり深読みする必要はありません。そのまま楽しめばいい作品だと思っています。

「るきさん」については、いつかまた語る機会があるでしょう。

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この後、高野先生は、

・高野文子 (1995.7) 『棒がいっぽん』(MAG COMICS). 204pp. マガジンハウス, 東京.


装丁 : 藤井進

という単行本を放ちます。これがまたすごい作品ばっかり。

特に

・高野文子 (1995.7) 奥村さんのお茄子(単行本版). 『棒がいっぽん』所収. pp.137―204. マガジンハウス, 東京.

は、驚天動地の怪作でした。これもいくらでも語りたくなる作品なのですが、今回は先へ進みましょう。

その「お茄子」に出てくるスーパーのおねーさんも、「フイチンさん」っぽいのです。


同書, p.194

こういうコミカルな動きを描くようになったのも「るきさん」以降。

この後、高野先生はまた別の絵になっていくのですが、その辺の話題もいずれまた。

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初期の高野作品は、岡崎京子や桜沢エリカといった女性マンガ家に大きな影響を与えていますが、「るきさん」周辺の作品では、その下の世代の女性マンガ家たちにも大きな影響を与えています。

彼女らの作品は、「フイチンさんの娘」というよりは「るきさんの娘」であり、「フイチンさんの孫娘」といった感じなのですが、系譜として連続するものであることは間違いありません。

以下次回

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(追記)@2017/03/26

「るきさん」を連載していたHanako(週刊誌)のマンガ部門は、高野さんのダンナ秋山協一郎氏が編集を担当していたのです。「るきさん」は、吉田秋生「ハナコ月記」、江口寿史「ご近所探検隊」、しりあがり寿「O.SHI.GO.TO.」との毎週交代での連載。

その後、マガジンハウスは1994年に「COMICアレ!」というマンガ雑誌を発行(1994/05~1997/03)。その編集も秋山氏(実質的に編集長)。「お茄子(雑誌版)」はもともとは「アレ!」で発表されたものでした。

そこで発掘されたのが、マガジンハウスの旧名・平凡出版・刊の雑誌「平凡」に連載されていた「お初ちゃん」でした。復刻「お初ちゃん」は、しばらく「アレ!」にも連載されていたのです。

そして、抜粋とはいえ単行本化されたのは、本当によかった。

高野先生に「フイチンさん」を薦めたのも秋山氏だったといいますから、上田としこ「フイチンさん」「お初ちゃん」と「るきさん」を繋ぐ鍵は、実は秋山氏だったことになります。