・中央公論新社・編 (2016.11) 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. 227pp. 中央公論新社, 東京.
← 初出 : 中央公論新社 > 特設サイト > 谷崎潤一郎メモリアルイヤー マンガアンソロジー 谷崎万華鏡, 2015/05~2016/10.
http://www.chuko.co.jp/special/tanizaki_mangekyo/
装画:中村明日美子, 装幀:山影麻奈
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中央公論新社が谷崎潤一郎生誕百三十周年を記念して、『谷崎潤一郎全集 全26巻』を刊行。そのタイミングに合わせて、自社websiteで連載したマンガアンソロジーをまとめたものだ。
表紙は、シャープな絵の中村明日美子。谷崎好みの女性とはちょっと違うような気もするが、まあ、谷崎小説の感じ方は人それぞれ違うし、第一私は、谷崎をたいして読んでない(笑)。読んだのもだいぶ忘れてる。
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005-014 久世番子/谷崎ガールズ(オリジナル)
015-042 古屋兎丸/少年
043-066 西村ツチカ/人間が猿になった話
067-082 近藤聡乃/夢の浮橋
083-094 山田参助/飈風
095-120 今日マチ子/痴人の愛
121-132 中村明日美子/続続蘿洞先生
133-150 榎本俊二/青塚氏の話
151-158 高野文子/陰翳礼讃
159-192 しりあがり寿/瘋癲老人日記
193-220 山口晃/台所太平記
221-225 作者あとがき
226-227 主要参考文献/初出
かなり力の入った布陣。その中から気になったものをいくつか。
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・谷崎潤一郎・原作, 古屋兎丸・画 (2016.11) 少年. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.15-42. 中央公論新社, 東京.
同書, p.17
谷崎作品に一番ぴったりのマンガ家は丸尾末広だと思うが、残念ながら丸尾作品はない。断られたかな?
だからというわけでもないのかもしれないが、ここで古屋兎丸は充分丸尾を意識した絵を描いている。なんでも描けるんだけどね、この人は。
谷崎世界よりは、ちょっとジメジメさが足りないような気もするが、充分淫靡だ。
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・谷崎潤一郎・原作, 近藤聡乃・画 (2016.11) 夢の浮橋. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.67-82. 中央公論新社, 東京.
同書, pp.80-81
このアンソロジーの中では、これが一番好き。
こんな作品があるのは知らなかった。これは筒井康隆でたくさん読んだ夢話とよく似ている。そうか、そういうことだったのか。
しかし、近藤聡乃はうまい。切れ長の目で下膨れの女性。幾何学的に整った絵も。一部で使ってあるマンガ的な表現を、とことん抑えたらもっと不気味な作品になっていたかもしれないなあ、なんても思う。
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・谷崎潤一郎・原作, 高野文子・画 (2016.11) 陰翳礼讃. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.151-158. 中央公論新社, 東京.
同書, pp.154-155
なんかすっかり絵本風の絵になってしまった高野先生だが、うまさは相変わらず。谷崎の美文の側面を活かした絵になると、こうなるのかな。
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・しりあがり寿 (2016.11) 谷崎潤一郎 『瘋癲老人日記』×ヘミングウェイ 『老人と海』 REMIX. 『谷崎万華鏡 谷崎潤一郎マンガアンソロジー』. pp.159-192. 中央公論新社, 東京.
同書, pp.182-183
この本一番の問題作だろう。わけがわからない(笑)。最近William S. Burroughsばっかり読んでいるので、これはBurroughsのcut-upだな、とすぐ気づいたよ。この人は、やっぱり「前衛の人」なのだ。
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他の作品も力作揃い。久世番子は安定の面白さ。
西村ツチカは、相変わらず不思議なマンガを描く人だ。
山田参助は『あれよ星屑』の人。本来あっちの人なので、男の裸を描く方が堂に入ってるのがおかしい。
今日マチ子の絵では『痴人の愛』を直球で描くのは無理と見て、現代物に翻案してある。まあチョイスとしてはいいとこでしょう。
中村明日美子は、気味の悪いテーマにはぴったり。
榎本俊二は、今はこんな絵になっているのか。意外に谷崎ワールドとしっくりくる作品になっていてびっくり。
山口晃は安定そのもの。マンガというより絵物語に近いが、晩年の谷崎を飽きずに読ませる。
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濃厚な谷崎原作に比べて、少し脂分が足りない感は否めないが、曲者ばかりをそろえ、どれもおもしろい作品に仕上がっている。
何度も言っていることだが、ほんと日本のマンガの豊かさに驚きっぱなしです。
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