2016年9月27日火曜日

諸星大二郎 「(眼鏡なしで)右と左に見えるもの」

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stod phyogs 2016年9月27日火曜日 諸星大二郎 「(眼鏡なしで)右と左に見えるもの」
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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びっくりしました。

・諸星大二郎 (2016.10) (眼鏡なしで)右と左に見えるもの エリック・サティ氏への親愛なる手紙. ビッグコミック10月17日増刊, vol.49, no.23, pp.41-60.


















これ何!?ってくらいわけがわからない。この歳(67歳)になって、こんな、見たことも聞いたこともないマンガを描くのか!全然老成しない人だ!

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タイトルにある通り、これはErik Satie作曲1ère Gymnopédie : Lent et douloureux(ジムノペディ1番「ゆっくりと苦しみをもって」)他の曲名とその音楽に発想を得た作品、というとんでもないものだ。

そのタイトルも「(眼鏡なしで)右と左に見えるもの」に始まり、

「ナマコの胎児」
「いやらしい気取り屋の三つのお上品なワルツ」
「大頭の友人という存在をやっかむ」
「彼のジャムパンを失敬するやり方」
「(いつも片目をあけて眠る見事に太った)猿の王様を目覚めさせる」

といった異常なもの。

モロ☆先生が異常なんじゃなくて、Satieが異常なんですけどね。でもモロ☆先生の感性にビッタリなんでしょう。

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これでどうして、パリを舞台にした、二人の男がこの世の危機を察知したり、これを救ったりする話になるのかわけがわからない。

まあ、わけのわからないタイトルとその音楽を、絵とストーリーにしていくんだから、わけのわからないマンガになるのは当然なのだが。

それにしても、どっからそんな発想が出てくるのか???

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ストーリーは一応ありますが、ないと言ってもいいので、あまり深刻に裏読みする必要はありません。

流れに乗って、そう、音楽を聞くように読んで(というより見て)いけばいいのです。

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モロ☆先生の息子さんは、音大で作曲の勉強をしているそうなので、

・ぐるなび みんなのごはん > グルメマンガ > 田中圭一のペンと箸 漫画家の好物 > 第17話:諸星大二郎と吉祥寺のタイ料理(2016-01-21)
http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/penhashi/2851

息子さんの影響かな?なんて思いましたが・・・

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ためしに「諸星大二郎 サティ」で検索してみると、2chのモロ☆スレの過去ログがひっかかってきました。

・2ちゃんねる > 漫画 > 過去ログ > トーモロコシガ☆諸星大二郎3☆ホーサクダヨ~(2006/11/18-2007/10/19)
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/sf/1163832737/l50

その973が、「コミコミ」という雑誌(1985年2月号)に載っていたらしいモロ☆先生のオリジナルカセットの収録曲タイトル。

モロ☆の昔のオリジナルカセット(1985年・2月コミコミ) 
タイトル「ツァラトゥストラの干物」 

A面:サマータイム(ガーシュイン)/夢のあとに(フォーレ)/ネイチャー・ボーイ(ナットキング・コール)/プレイバック・PARTⅡ(山口百恵)/幻想曲ハ短調(バッハ)/越殿楽/テクテク・マミー(E・S・アイランド)/セントルイスブルース(ベルリンフィルの12人のチェロ奏者)/ピグミーの歌/ソルヴェーグの歌 

B面:ツァラトゥストラかく語りき(R・シュトラウス)/ロックンロール・ウィドウ(山口百恵)/はららごの干物「ナマコの胎児」(サティ)/カルメン・シータ 2声のインベンション第2番(バッハ)/ハイサイおじさん(喜納昌吉)/10 番街の殺人(ベンチャーズ)/ソプラノ・メゾソプラノ2組の混声合唱と管弦楽のためのレクイエム(リゲティ)/夢のカリフォルニア(パパス&ママス)/獅子の泣き歌/シンコペイテッド クロック(アンダーソン)

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なんと、モロ☆先生は昔からSatieを聴いていたのだ。

影響を受けたのは、逆で、このカセットみたいなのを聴かされていた息子さんの方だったのだ。驚き。

それが、その30年後に、こうしてマンガ作品として昇華されてくるという・・・、まさに底なしの創作力。

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とにかく言葉で表現するのは無理なので、ぜひ買ってじっくり読んでほしい。立ち読みでこのマンガの魅力を理解するのは不可能。

私も最初立ち読みですまそうと思ったのだが、無理だった。買って何度も読まないと、理解できないはず(いや、何度読んでも理解は不可能なんですけどね)。

「考えるな、感じろ」(映画「燃えよドラゴン」より)というBruce Leeの言葉を紹介して終わり。

それにしてもすごいマンガだった。

2016年9月25日日曜日

『終電ちゃん 2』発売!

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stod phyogs 2016年9月25日日曜日 『終電ちゃん 2』発売!
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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・藤本正二 (2016.9) 『終電ちゃん 2』(モーニングKC-2658). 158pp. 講談社, 東京.


















装丁:杉本智行(uni-co)

が発売になりました。

1巻のお話は、こちらでどうぞ。

2016年8月16日火曜日 終電ちゃんに叱られたい

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全7話ですが、中央線の終電ちゃんの主な登場回は3回のみ。他は山手線の終電ちゃん、大阪環状線の終電ちゃん、東海道新幹線の終電ちゃん、長崎の終電ちゃん二人。

表紙は山手線の終電ちゃんですが、第12話にしか出てきません。

全体に散漫になって、1巻の熱気はもうないですね。ページ数も少ないし。狂言回しの寺岡がうまく機能するか・・・、この辺が今後の課題でしょう。

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中央線の終電ちゃんが背負ってる勾配標。あれ、少し反ってるのがいいですね。

線路沿いで見ると、勾配が書いてる板はやっぱり反ってます。木製だから、どこでの勾配標も少し反ってるのです。これがちゃんと描いてあるのが素晴らしい。

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しかし、この勾配標、終電ちゃんはひもで背負ってるんだが、そのひもがかかってるのは終電ちゃんの首(笑)。大丈夫なんだろうか?

まあもう50年以上あのまんまなんだから、もうひもも体と一体化してるのかも知らん。

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ちょっと驚いたんですが、奥付の発行日が、2016年9月23日になっていました。

最近本を発売当日に買うなんてことをしたことがなかったので、知らなかった。いつからそうなってるんですか?

出版業界では、奥付の発行日は実際の発売日の1ヶ月先にすることが通例でしたが、ついにこの悪しき慣例が改善される日が来たのか。感慨深いねえ。

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あと最近感じるのは、出荷時からシュリンク(薄いビニールですね)がかかっているマンガがずいぶん増えたこと。もちろん『終電ちゃん 2』もそう。これによって書店の負担はだいぶ減ったことだろう。

また、バーコードはシュリンクに貼られているので、裏カバーからバーコードが消えた。これによって、裏カバーのデザイン制限がだいぶなくなった。装丁/デザイン担当は喜んでいるでしょう。おそらくカバー絵を描くマンガ家も。

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そのかわり、出版社名と値段も裏カバーから消えた。これは残してもよかったんじゃないかな。特に値段。

バーコード付きシュリンクをはがすと、値段は本のどこにもなくなってしまう。後年、値段を知りたい人は、どっか別のルートで調べなきゃいけなくなる。これは要再考。

本から値段の表示が消えたということは・・・もしかしてこれは、再販制度撤廃の序曲?なんて思ったりして。

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(追記)@2016/09/25

おまけですが、3巻の冒頭は、熱血終電ちゃんが帰ってきます。すでにモーニング掲載済みなのだ。熱血と友情・・・ジャンプみたいだな。