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2017年10月27日金曜日

萩尾望都 『A-A'』(5) 一角獣種とアスペルガー症候群

この「一角獣種シリーズ」でよく語られるのが、アスペルガー症候群との類似性。

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アスペルガー症候群(Asperger Syndrome、AS)とは、発達障害の一種で「高機能自閉症」とも呼ばれます。

1944年、Austriaの小児科医Hans Asperger(1906-80)がはじめて症例を報告した。1981年、UKの精神科医Lorna Wingが「アスペルガー症候群」という用語を用いた論文を発表し、以後この用語と概念が広く普及した。

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特徴はもう

2017年10月11日水曜日 萩尾望都 『A-A'』(1) 一角獣種とは何か?

でまとめた一角獣種の性格そのまま。

・他人の気持ちを理解しにくい
・他人の発言を額面通りに受け取る(特に皮肉や隠喩などが理解しにくい)
・空気を読むのが苦手
・特定の対象に強く興味を示し集中する
・きちんとしたもの、規則的なものを好む
・同じ行動を反復する
・毎日同じ食べ物を食べ続ける
・大きな声や接触が苦手であることが多い
・知的障害、言語障害はない

その結果、特に対人関係で周囲と軋轢が生じやすく、「変わり者」という扱いをされて、孤立してしまうケースが多い。

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「一角獣種シリーズ」に出てくる3人の一角獣種の中では、「A-A'」アディが典型的なASに似た性格を示すよう。

「4/4カトルカース」のトリルでは、性格よりも「一角獣種」の生理に焦点を当てて取り上げているので、あまりASっぽい感じは出ていない。

「X+Y」のタクトはアディとも似ているけど、おもしろいのは、タクトは「ちょっと変わり者」とは思われてはいるものの、周囲に愛されており、孤立したようなところが全くない。

まあタクトはちっちゃくて、アイドル的な扱いだからかもしれないが・・・。しかし、男だけの集団で、あんな寛容な子ばかりというのは、女性向けマンガ特有のファンタジー。だから、常にあんな風にうまくいくとは思わない方がいい。

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ASは「症候群」などという名前が付いているので、あたかも病気であるかのように思ってしまうが、私はそうは思っていない。原因は不明らしく、従って明確な治療法もない。そもそも治療する必要があるのだろうか?

ASっぽい人は昔からいた。病気という扱いではなく、「ちょっと変わった人だな」くらいの扱いだ。今も、ASと診断されていなくても、普通に周囲に一定数いる。

はっきり診断されているわけではないが、Jazz musicianのThelonious Monk(1917-82)はASだったんではないか、と言われていますね。確かに、伝記を読むとASっぽい行動だ。素晴らしい曲と、特異でおもしろすぎる演奏を多数残してくれた人です。日常生活もまた「The Unique」。

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ASの人が話したりする事、作ったりするもの、行動自体も、Monkのように、とても意外で興味深いものが多い。それが他の人と違っている故に、それを発展させれば、今まで見たことも聞いたこともない、新機軸・新発見・新発明になるんじゃないか、と思ってる。そう、ASの人は人類の宝なのだ。

私の周囲にも「この人ASっぽいな」という人は結構いた。もちろん、なかなか対応がむずかしいんだけど、徐々に対応の仕方がわかってきた。

まず褒めてやる。

これはASに限らないのですが、人は誰でも「自分を否定されること」には弱い。ASの人は特に弱いようです。

褒められて喜ばない人はいないでしょうけど、わざとらしい褒め方、お世辞はあまり効果ないような気がします。ASの人は、言葉を額面通り受け取る傾向があるので、一見うまく行きそうな気もするのですが、何故かわかりません。

とにかくASの人が興味を持って集中していることを、面白がって褒めるのが一番です(これもASの人に限らないのですが)。

ところが、ASの人が集中している対象の中には、「何それ?」という意外なものが多いのです。なかなか理解されないのですよ。だから、これはもう褒める側にも、ASの人と興味を共有する才能がいるのです。努力して身につくものじゃないので、むずかしいですよね。

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この「一角獣シリーズ」にもASの人への対応法のヒントがあると思う。アディに気をかけてあげて心を開かせたレグ・ボーン、タクトとは距離を保ちつつ仲間として受け入れているザーズ他の仲間たち。

まあ、所詮フィクションなので、真に受けると逆に危険なのだが、ヒント程度には使えると思う。

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萩尾先生は、どこから「一角獣種」のアイディアを得たのだろうか?執筆当時(1981~84年)は、ASという用語、概念はまだ専門家の間にしか知られていなかったと思うので、何か本で得た知識ではなさそうだ。周囲にASの人がいてモデルにしたのだろうか?

萩尾先生の「A-A'」へのコメントを見ると、今にして思えばある意味ASの象徴かもしれない、というような話をされているので、意識してASをモデルにしたわけじゃなさそう。

一部自分にも当てはまるらしいが、やはり周囲にASの人がいたんじゃないか、という気がする。

まあ、この辺はいつか業界の人に詳しく訊いてほしいところですね。

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なお、ASや発達障害に関しては、マンガもたくさん出ています。解説/HOW TOマンガや、実体験を(やや誇張して)描いたエッセイ・マンガの形態がほとんどです。創作モノとして昇華させた作品は知らないので、いつかそういう作品も見つけてみたい(あると思ってる)。

それにしても、「アスペルガー」というテーマに限っても、これだけたくさんマンガがあるって、やっぱり日本のマンガの多様性はすごい。

2017年10月24日火曜日

萩尾望都 『A-A'』(4) X+Y

・萩尾望都 (1984.7-8) X+Y(前編・後編). プチフラワー, 1984年7月号~8月号.
→ 収録 : 『A-A'』(小学館文庫). pp.101-200. 小学館, 東京.


『A-A'』(小学館文庫版), pp.102-103.

このエピソードのメインテーマは、「性転換」と、そして「BL(ボーイズラブ)」だ!

主人公は一角獣種のタクトと、「4/4カトルカース」のモリが再登場。前作の解決編ともいえる。

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地球の大学のエリート集団に属するタクトは、小柄な一角獣種美少年。友人ザーズのいとこメリメと初体験するが、うまくいかなかった(「プチフラワー」でいきなりこれだ!)。

医務室でジョージとアンアンに検査してもらったところ、ついでの遺伝子検査で、とんでもないことがわかった。タクトは性染色体が「X+X」つまり女性だったのだ。この事実に反発するタクト。

一方、タクトのチームは、火星カナル・プラン(要するにテラフォーミング)・コンペティションで、見事地球代表となる。そしてチームは火星へ。

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火星についたチームは、さっそく凧(カイト=ハングライダー)レースに遭遇。墜落してしまった凧に乗っていたのはモリ。「4/4カトルカース」のモリの4年後だ。

一目見て、タクトが一角獣種であることに気づくモリ。一方、モリも強い念動力使いであることが、チームにばれる。チームの「TAKO計画」には、念動力使いが必要なのだ。

カナル・プランでのプレゼンテーションでは、保水用ゲルの実験に失敗し、会場を水だらけにしてしまう。メッセンジャーとして参加していたモリも、巻き添えでびしょ濡れ。チームの宿舎に招かれ、そこでモリはタクトと「共鳴」を起こし、タクトを浮かび上がらせてしまう。

凧デートに出かけるモリとタクト。タクトにトリルの面影を見、モリはタクトに告白。しかし、タクトは一角獣種らしい「コミュ障」ぶりを発揮し、冷静に拒否。モリはタクトに怒りをぶつけてしまう。


『A-A'』(小学館文庫版), p.149.

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『A-A'』(小学館文庫版), pp.102-103.

チームは土星タイタン代表に認められ、土星に視察旅行に。チームのカナル・プランは、土星の輪の一部を雪ダルマ状にして火星まで運ぶ計画なのだ。

気になってタクトにコンタクトしたモリだが、タクトはモリの記憶を失っていた。「自分の念動力のせいらしい」と感じたモリは、チームの後を追って土星へ。

タイタンからミマスに移ったチーム。タクトとモリは凧の実験に。そこで二人は遭難してしまう。モリは、ケガをしていたものの無事発見。しかしタクトは行方不明。

ケガを押してタクトを探しに出たモリ・・・。二人はどうなる?

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エンディングでは、チームはタクトの父親ムーンサルト博士に会いに、小惑星帯トロヤ群に行く。そこで聞かされたのが、ムーンサルト博士の性転換実験と、タクトの出生と性転換の秘密、なぜ、タクトに7歳以前の記憶がないかの理由・・・。

タクトは男のままか?女になるのか?

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一角獣種、性転換、BLに加えて、火星のテラ・フォーミングまでが背景として加わり、SF要素のテンコ盛りだ。

これだけ盛り込んだ設定を、100ページにうまく収める力量に唸らされる。テラ・フォーミングがらみは、ちょっと消化不良気味でもあるが・・・。

性転換ネタも、まあ~お話ならでは、のことだよね。突っ込みどころは満載。

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地球→火星→土星系タイタン→土星系ミマス→小惑星帯トロヤ群とめまぐるしく移動することもあり、ロードムービー的な楽しみ方も可能。

前作で後悔を残したモリが成長し、悩みつつ試行錯誤しつつむくわれる完結編だ。

そういえば、タクトにはショタ要素もあるので、ショタ好きにも楽しめるかな。ああ、もう万能のマンガだ。

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小柄で、文字通り中性的なタクトが魅力。これに一角獣種特有のクールネスを持っているのだから、マンガの主人公としては強力だ。

いや、実際にいたら、相手するのは結構大変そうだが・・・。

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これで「一角獣種シリーズ」は終わりのようだが、もっと読みたいなあ。深みのあるテーマなので、どんな道具立てとくっつけても相性がいい。

もう1回ツヅク

2017年10月20日金曜日

萩尾望都 『A-A'』(3) 4/4カトルカース

続いては、「一角獣種シリーズ」2作目

・萩尾望都 (1983.11) 4/4 カトルカース. プチフラワー, 1983年11月号.
→ 収録 : 『A-A'』(小学館文庫). pp.51-100. 小学館, 東京.


『A-A'』(小学館文庫版), p.51.

今回のメインテーマは「念動力」と「共鳴」。

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舞台は木星の衛星イオの大規模基地。

NASAの外惑星探査機Voyager 1号が木星に到達したのは1979年。その時に、衛星イオは活発な火山活動が存在し、表面は硫黄分に富む溶岩で覆われていることが明らかになった。

この作品が描かれた当時、その情報はだいぶ知られていたはずだが、この作品には全く反映されていない。

舞台はほとんど基地のドームの中なので、全然影響ないけど。

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主人公は14歳のモリ。超能力養成学校(?)の学生。だが、その力をうまく発揮できないのが悩み。

モリはペルー出身。幼いころ、その念動力とカレイドスコープ・アイ(万華鏡のようにきらめく瞳)のせいで、村人に殺されかかったことがある。しかし念動力により村を全滅させた。その後、念動力をうまく扱えなくなった。

ある日、モリは一角獣種の娘トリルが落下するのを、空中で止めるという大技を披露する。

トリルは、サザーン博士が育ている一角獣種の純粋種であった。知能障害があり、言葉もうまく喋れない。サザーン博士は、一角獣種の繁殖と改良について研究しているアブナイ先生だ。


『A-A'』(小学館文庫版), p.77.

モリの15歳の誕生日にトリルを招いたところ、モリの念動力が大暴れ。モリとトリルは「共鳴」という現象を起こしており、それによりモリの念動力が増幅されることがわかった。

サザーン博士からトリルを奪い、連れ出すモリ。そこで二人はさらに大きな事件を起こしてしまう。

イオにいれなくなったモリは、火星に旅立つ。しかし、トリルも研究所から逃げ出してしまう。戻ろうとするモリが見つけたトリルは・・・。

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SFの設定を除くと、古典的な「A boy meets a girl」+「ロミオとジュリエット」ストーリーだ。

このエピソードでは「一角獣種」の性格よりも、その歴史、現状、生理が重要なキーとなっている。

サザーン博士は、トリルの卵子を取り出し人工授精させようとしたり、自分でも犯したりしている(よう)で、実はとてもハードでヤバイ話。こんなのが少女マンガ誌(というより、プチフラワーは女性版「青年誌」だが)に載っていたんだから、すごいよね。

主人公は一貫してサイキック男子なので、ちょっと「一角獣種」の効果が薄いけど、悲劇としてよくまとまった逸品だ。

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後悔を残したモリは、次の「X+Y」にも登場し、ダブル主役をはることになる。

2017年10月14日土曜日

萩尾望都 『A-A'』(2) A-A'

まずは表題作の「A-A'」から。

・萩尾望都 (1981.8) A-A'. プリンセス, 1981年8月号.
→ 収録 : 『A-A'』(小学館文庫). pp.4-49. 小学館, 東京.


『A-A'』(小学館文庫版), pp.4-5.

昔は、正統派少女マンガ誌に、こんなハードSFが載っていたのですよ。

当時のプリンセスには、SFマンガでは他に山田ミネコがいたが、主力は、貸本時代から活躍する細川智栄子や「わたなべまさこ」など。ちょっと古くさいマンガが多かった。

細川智栄子「王家の紋章」なんて、いまだ現役作品だ!

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「一角獣種シリーズ」は、前回まとめた一角獣種の性格がもたらす軋轢を背景に、もう一つSFガジェットを大きなテーマとしておいている。

「A-A'」では、それが「クローン」だ。

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プロキシマ星系第5惑星ムンゼル探査基地に派遣されていたアデラド・リー(一角獣種、19歳、女性)は、事故で死んでしまう。地球で眠りから覚めたアデラドは、自分がアデラド本体のクローンであることを知る。

A=アデラド(アディ)、A'=アデラドのクローン、ということ。

宇宙探査隊員は、事故死にそなえ、地球を発つ前にクローン作成を義務付けられているのだ。そして本体が事故死の場合は、クローンが代役を務めるため、探査基地に再度派遣される。

二代目アディは、初代アディ3年前のクローンなので、16歳のまま。保存されていた記憶も3年前で止まっているわけ。

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ムンゼル基地に到着した二代目アディは、一角獣種のコミュ障をいかんなく発揮し、周囲をとまどわせる。


『A-A'』(小学館文庫版), p.15.

実は3年前には初代アディも同様だったのだが、レグ・ボーンのおかげで次第に心を開くようになり、二人は恋人同士となったのだった。

二代目アディに対するレグの反応は複雑。「初代アディそのままだ」「いや、アディは死んだのだ。今いるアディは別人だ」という葛藤。再びアディを気にかけるが、二代目アディは一向に心をを開かない。

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レグと二代目アディが調査に向かった先で、二人は偶然、「あるもの」を発見。その「あるもの」に絶望したレグは、二代目アディの心を開かせることもあきらめ、αケンタウリ星系トリマン・コロニーAに転属してしまう。

そこに、トリマン・コロニーAの爆発事故のニュース。レグも事故死。これに対する二代目アディの反応(内面)は、「爆発の光度はどれぐらいだったろう?」。

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アディの冷たい反応に呆れる隊員たちであったが、ある日アディが拒食症に陥っていることに気づき、彼女なりにショックを受けていることを知る。

アディ同様、レグもクローンの出番となる。再びムンゼル基地に配属された二代目レグ。

到着した二代目レグを迎えたアディは・・・。

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クローンをメイン・テーマにした作品だが、これが「一角獣種」という背景に乗っていることで、とても深みのある作品になっている。

SFはやはり設定が命だ。設定がテキトーだと、舞台はSFっぽくても、単にドンパチやってるだけで、実は舞台はどこでもいい話になってしまう。

「一角獣種」を中心においていることもあり、このシリーズは終始静かに進む。が、ところどころに大きな見どころを置いているので、退屈するようなことは一切ない。ここでは、「あるもの」発見が大きな見どころ。

ラストシーンは、カタルシスと感動をもたらす名場面になっている。その一瞬で物語をバスッと断ち切るテクニックも名人芸だ。

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アディの冷たい無表情がいいですね。そのクールさの下から少しずつ感情がにじみ出てくる際の、微妙な描写もおもしろい。

あまり有名じゃないけど、萩尾中編SFの傑作の一つだと思う。是非ご一読を。

2017年10月11日水曜日

萩尾望都 『A-A'』(1) 一角獣種とは何か?

先日、雪崩が起きまして。いや室内で(笑)。

それで地層の下部に埋設されていたものが多数発掘されました。これがその一つ。

・萩尾望都 (2003.9) 『A-A'』(小学館文庫). 308pp. 小学館, 東京.


カバーデザイン : 小松美紀子+ベイブリッジ・スタジオ

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これは、「一角獣種シリーズ」3作(1981~84)を中心として、「ユニコーンの夢」(1974)、「6月の声」(1972)、「きみは美しい瞳」(1985)を収録した作品集。

「一角獣=ユニコーン」ということで、「ユニコーンの夢」が収録されたのだと思うが、内容は「一角獣種シリーズ」とは関係ない。他の作品も関係ない。

ここでは「一角獣種シリーズ」についてのみ触れる。

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先に初出と書誌を、

初出:

・「A-A'」. プリンセス, 1981年8月号.
・「4/4 カトルカース」. プチフラワー, 1983年11月号.
・「X+Y 前編」. プチフラワー, 1984年7月号.
・「X+Y 後編」. プチフラワー, 1984年8月号.

収録:

(1) 萩尾望都 (1984.11) 『A-A'』(萩尾望都作品集17). 小学館, 東京.(「一角獣種シリーズ」3作を収録)
(2) 萩尾望都 (1995.9) 『A-A' SF傑作選』(小学館叢書). 小学館, 東京.(「一角獣種シリーズ」3作+7作を収録)
(3)萩尾望都 (2003.9) 『A-A'』(小学館文庫). 小学館, 東京. (「一角獣種シリーズ」3作+3作を収録)

(2)と(3)は、「一角獣種シリーズ」以外の収録作として「ユニコーンの夢」、「6月の声」が共通している。

参考:
・萩尾望都作品目録 > 作品目録(as of 2017/10/07)
http://www.hagiomoto.net/works/

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「一角獣種シリーズ」は、地球人が太陽系の外惑星(火星・木星系・土星系)~太陽系外に進出している時代のお話。つまりSFだ。

シリーズを通して「一角獣種」という種族が登場する(必ずしも主人公ではない、というか単独の主人公にしづらい)。

「一角獣種」とは、同じ地球人類なのだが、宇宙開拓黎明期(21世紀はじめ)に、宇宙開拓に向くよう遺伝子操作で開発された種族。

シリーズ中に、断片的に「一角獣種」についての説明があるが、意識して整理しておかないと、よくわからなくなる。

その説明を抜き出して、「一角獣種」の設定を整理しておこう。

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「A-A'」

p.16
チャイ「ン・・・まァ しようがないなァ。 もともと アデラドは無愛想の型(タイプ)だし・・・。 なんせ 赤いたてがみの一角獣種の生き残りだものな。」
無名「21世紀初頭に 宇宙旅行のため開発された 遺伝子変異種でしょう? 風変わりなのよね。」

p.19
初代アディ「レグ・ボーン。わたしは とてもめずらしい種族なんだそうだ。」
レグ「一角獣種? いい名だ。 はじめて聞くが。」
初代アディ「わたしも 成長して宇宙開発計画に参加するまで 知らなかった。この髪は ただの色ちがいだと思っていた。 わたしの種は 盛り上がった頭部と そこの赤いたてがみが特徴で 一角獣と名づけられた人工の変異種だそうだ。ごくたまに わたしのように 隔世遺伝であらわれる。」

p.22
ジェルミ「あなた 地鳴りを聞いたのね? アデラド。」
レグ「おい!熱くないか。こんなに湯をかぶって。」
二代目アディ「別に・・・。」
レグ「医務室だ! おいで アディ!」
無名1「思い出したぞ!一角獣種は 視聴覚範囲が我われと少しずれてるのだった!」
無名2「遅い!」

p.28
レグ「たそがれのムンゼル というのは当たっているな。こう見ると淡く青くぼやけていて。」
二代目アディ「私の目には 明るく遠くまで見渡せる。」
レグ「・・・ああ。」
レグ(内面)「彼女の目には 暗い光も明るく見える。赤外線の波長まで見えるはずだ。」

p.44-45
チャイ「さあ いいかね?宇宙旅行用に開発された一角獣種がだな? なぜ土星に帝国をつくれなかったと思う? 問題は はきけだ! パンはあるのに はきけで食べられなくなり きまじめに仕事をつづけ コロコロ餓死したんだ。 拒食症だが きみの種は ストレスからすぐこれにかかりやすい。おまけに動きはにぶいし 注意力はない。ああ世話がやける。」
ジェルミ「前も病気にかかったのよ。 3年前はね わたしたちは みんなであなたにとまどってたのよ。 一本調子のしゃべりかた。泣き笑いも 怒りもしないお人形・・・。 どう接していいやら・・・。 誰もがあなたを無視してた。 あなたもわたしたちを無視してた。 そしたらレグが気づいたの。あなたが15日間なにも食べてないって。 あなたはちゃんと対応していたのね。感情もある。 ただ 表現のサイクルが ふつうの人とちがうので・・・ふつうに泣き笑いをしないので・・わたしたちにはよくわからないのよ。」

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「4/4 カトルカース」

p.58
モリ「マム 一角獣種ってなにさ」
ママミア「百年以上前につくられた改良種よ。ほら 核戦争のころね。わたしが鳥の改良種をつくってるように 人間をつくった時代があったのさ。 その子孫だろう。いまどき純血種ってのはめずらしいねえ。」

p.60
サザーン博士「またか。いや しょっちゅうなんだよ。走りだすと止まれないんだ。不器用で。」 

p.61
サザーン博士「だいたいこの種は 環境不適合型で短命なんだ。」

p.61-62
モリ「赤いオーロラが出てんですよ。上のほう。」
サザーン博士「---赤いオーロラ? 暗くて見えんがね。一角獣種は赤外線光波が見えるんだ。------赤外線オーロラが出てるんだろう。」

p.65-66
サザーン博士「気のせいさ。一角獣種には感情などないんだよ。」
モリ(内面)「!」
サザーン博士「もともと コンピューターを扱うために開発された種なのだ。感情がなければミスもない というわけさ。」
(中略)
サザーン博士「人は何からできているか? それは四つの断片よりなる。理性 知性 経験 これらはいいさ。 最後に感情! 非論理的 非生産的な感情! しかるに一角獣種はなにからできているか?数式 記録 記憶 記号!彼らはすばらしき未来人だ!」

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「X+Y」

p.105
ザーズ「なんでもないんだ。ただ このゆーずーのきかない一角獣種が---。」

p.108
メリメ「ここがあなたの部屋?」
タクト「そう 彼の。」
(中略)
メリメ「(前略)そのへんな三人称だけのしゃべりかたも慣れるわ。」

p.114
ジョージ「うううむ!わしは彼を7歳のときから知ってるが いまだにようわからん。」
アンアン「ああいう無反応って一角獣種特徴なの? おしゃべりザーズと比べて単におとなしい子だと思ってたのに・・・。」
ジョージ「らしいが・・・。 よくわからん。隔世遺伝の珍種だからなァ 一角獣種というのは。」

p.138
モロゾフ先生「一角獣種が かなり多く頭から出している波長に アルファ波があります。 これは5歳未満の幼児に多く見られるものですが モリはこのアルファ波によく反応します。」

p.149
モリ「おまえに なにが"わかる"んだ! おまえは少しでもオレの気持ちを"考えて"いるのか! "考えて"ない! "わからない"ことは "考えない"からな。」
タクト「・・・ なにを怒っているのだ。モリ。」
モリ「おまえがオレをふったからだ!」

p.154
ザーズ「タクトは ウソや冗談がいえるほど 情緒教養度高くないんだ。」

p.155
ザーズ「あせんなよ。あいつは人見知りするんだ。一角獣種ってそうなんだよ。」

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少し補足を。

物語の舞台がいつなのかはわからないが、「一角獣種」が作られた21世紀初頭から100年以上後の時代。人々の間では、その記憶も薄れている。

その21世紀初頭には核戦争があったらしいが、本連作では語られるだけで、ストーリー展開に影響を与えない。

21世紀初頭以降、「一角獣種」が新たに作られることはなく、現在「一角獣種」という種族が独立して存在しているわけではない。

「一角獣種」は、他の地球人類と同一種(重要な遺伝子は完全に一致)。なので、他の地球人類とは普通に婚姻・生殖が可能。物語の現在は、他の地球人類と婚姻が進み、「一角獣種」というまとまった種族は存在していない。しかし隔世遺伝により、時おり「一角獣種」の特徴を持つ子が生まれてくる。

ある時、「一角獣種」たちは土星に帝国を作ろうとして失敗したらしい。映画「ブレードランナー」の「レプリカントの反乱」みたいだ。

遺伝子操作の目的は、情緒を抑制し、論理的な作業の効率を上げ、人為的ミスを減らすこと。集中力がすごい。

遺伝子操作の副作用として、身体的な特徴(頭部中央が盛り上がり、その部分の髪が赤くなるため、トサカのように見える)、感覚異常(赤外線が見える、聴覚に優れる、温度変化に鈍感)、運動能力異常(にぶい、反射的な運動が苦手)、ストレスに弱く拒食症になりやすい、などの特徴がある。これは、遺伝子操作で意図して発露させたものではない。

なんといっても、精神面で、情緒(泣く、笑う、怒る)・表情の変化に乏しい、相手の考えていることが想像できない、従って表面上は、常にぶっきらぼうな態度、相手を傷つけるような発言が多い、何を考えているのかわからない、といった形として現れるのが大きな特徴。そのため、この面で周囲と軋轢が生じやすい。

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萩尾先生のすごいところは、「一角獣種」の歴史だけで1冊分描けるくらいの設定を作っておきながら、これをメインテーマにはせず、重要ではあるがシリーズの背景としてしか使っていないところ。

贅沢すぎる!

おそらく、もっともっと詳しい設定があるはずだ。もったいないなあ。マンガじゃなくて小説でもいいから、これまでの一角獣種の歴史=「一角獣種サーガ」を残してほしいなあ。

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この「一角獣種」の性格、発達障害の一種「アスペルガー症候群(AS)」に似ているということで評判なのだが、私も読んですぐそう思った。

その話題は最後にするとして、次回は各エピソードを見ていこう。