2018年2月26日月曜日

黒田硫黄 「タイムカプセル」

本人のblog

・黒田硫黄の仕事(as of 2018/02/26)
http://kurodaiou.blog57.fc2.com/

で知りました。

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・岩手県提供の無料マンガサイト! コミックいわて > 黒田硫黄/タイムカプセル(最終更新日時:2018/2/15). 20pp.
http://comiciwate.jp/comic/timecapsule/index.html


同作, p.1

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また変な話(笑)。

半分は懐かしもの、残り半分はSF。なのに、SF的にはオチは投げっぱなし、と相変わらずの黒田節なのでした。

小品だけど、先日の「特品ビーム課長」に続いて、どんどん調子出てきた感じ。いいぞ、いいぞ。この調子でどんどん描いてほしい。売り物のときは全部買うぞ。

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なお、「特品ビーム課長」については、こちらをどうぞ↓

2018年1月27日土曜日 黒田硫黄 「特品ビーム課長」

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また、

・岩手県提供の無料マンガサイト! コミックいわて(as of 2018/02/26)
http://comiciwate.jp/

の目次を見ると、執筆陣には、三宅乱丈、市川ラク、小田ひで次、青木俊直、とりのなん子、しりあがり寿、五十嵐大介、もちろん吉田戦車、鈴木みそ、ひうらさとる、池野恋、月子、など、そうそうたるメンバー。

ぜひご一読を。ちなみに私は岩手県出身ではありません。

2018年2月25日日曜日

水上悟志 『放浪世界』

これもジャケ買い。いいですねこれ。

・水上悟志 (2018.1) 『水上悟志短編集 放浪世界』(BLADE COMICS). 175pp. マッグガーデン, 東京.


装幀 :新井隼也+ベイブリッジ・スタジオ

表紙の絵は、上から見下ろしたところなんだが、実にマンガ的。

この角度からだと、顔は相当見上げる形でないと見えないはず。また、手なども相当ひねらないと見えないはずだ。現実だとひどく不自然なはずなんだが、マンガだと実に均整のとれた絵になる。おもしろい。

絵にもストーリーにも挑戦的なこの作者について、1枚の絵で表現出来てる素晴らしい表紙。

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収録作は、

003-027 竹屋敷姉妹、みやぶられる
← 初出 : ミラクルジャンプ, 2014年6月30日号
029-052 まつりコネクション
← 初出 : モーニング, 2015年2月5日号
055-078 今更ファンタジー
← 初出 : モーニング・ツー, 2017年5号
081-096 エニグマバイキング
← 初出 : 月刊コミックガーデン, 2017年10月号
099-172 虚無をゆく
← 初出 : 月刊コミックガーデン, 2017年11月号

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一番好きなのは、「竹屋敷姉妹」。

メガネの一卵性双生児・冬花と雪花。ルックスが全く同じな上に、服装も行動も同じにし、わざと誰も見分けがつかなくしている。しょっちゅうクラスを入れ替わっても誰も気づかないほど。アホ毛まで一緒だ(笑)。

そこに、二人を見分けられる人間が出現!どうする、竹屋敷姉妹!


同書, pp.12-13

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作者談「モブ顔ヒロイン」(笑)、と言うんだが、この手の地味キャラを主人公/準主人公クラスに置くのは、結構最近トレンドだ。「タイムスリップオタガール」とか「ちおちゃん」とか「大蜘蛛ちゃん」とか『まかない君』の「弥生ちゃん」とか、多い。

これもそうだったな。

2018年1月7日日曜日 秋山はる 『こたつやみかん』

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双子自体おもしろいのだが、二人の行動がさらにかわいいので、ほんとに楽しい作品に仕上がっている。

オチは「ありきたり」と思うかもしれないが、結構微妙な絵の変化で表現しているので、気づかない人も多いかもしれない。

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最近、こういう「ベタな展開」というものは、定期的に出てくる必要があるんだ、と思うようになった。

「今までにない展開、ストーリーを」というのは、どの創作者も求めるものなのだが、それがエスカレートすると、周囲には珍奇なストーリーだらけになり、息苦しくなってくる。

あまりにもクラシックな展開の、「おしん」や「韓流ドラマ」が突如大ヒットしたりするのはそのせい。

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特にマンガの世界は回転が早く、マンガを読み始めて間もない若者には、「ベタな展開」の昔のマンガに触れる機会は少ない。

人間の成長では「ベタな展開」から学ぶところが多いはずで、それをマンガでも供給し続けてほしい。幸い、マンガの世界では、ストーリーがベタでも、作者の独自性を表現できる部分はいくらでもある。

なんだかんだいっても、結局「大ヒット」はベタな作品から生まれることが多いのだ。

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本書の目玉が「虚無をゆく」。


同書, pp.110-111

「この世は実は全部自分の妄想なのではないか?」「まともなのは自分だけで、世界の人間は全部ロボットなのではないか?」など、中二病にありがちな妄想を、そのまま74ページの中編にまで仕上げた力技にまいった。

展開も設定も結構強引なのだが、「この作品をどうしても描きたい」という作者の熱意がガンガン伝わってきて、熱い作品となった。

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巨大ロボット「盤古」が不格好なのはわざとでしょうね。「メカのかっこよさで、この作品を褒められたくない」という作者のメッセージ。

それまで描いていた漆黒の宇宙空間を、一転、星であふれる空間に描くラストシーンも見事だ。

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しかし、ジャケ買いで、こういういい作品に出会えるのは本当にうれしい。

隅々にまで作者の熱意が入っている作品は、表紙にもそれが現れるのだ、と実感した。

他の作品も読んでみよう。

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(追記)@2018/02/25

「今更ファンタジー」は、子供もいる三十代になってもまだ何気にひきずっていた「中二病」に完全に引導を渡す話なんだが、それを作者自身も実践したのが「虚無をゆく」という作品。

なるほど、筋が通った短編集だ。

2018年2月12日月曜日

久野遥子 『甘木唯子のツノと愛』

これはジャケ買いでした。

・久野遥子 (2017.7) 『甘木唯子のツノと愛』(BEAM COMIX). 208pp. KADOKAWA, 東京.


装幀 : 森敬太(セキネシンイチ制作室)

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とても整った絵で、デザインも美しい。

ところが、その中身はというと、いたるところが未整理の混沌とした内容で、すごく難解なマンガ。

しかし、こういうモヤモヤするマンガには、マンガ読みの血が騒ぐ。とてもエキサイティングでした。

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作者は2010年デビュー。しかし、その後は主にアニメの分野で活躍。マンガはごくたまに描くだけ。

本書に収録された作品も2010年が2本、2012年、2017年が表題作と、飛び飛び。絵柄も一定しない。

005-036 透明人間 ← 初出 : 月刊コミックビーム, 2010年11月号
039-076 IDOL ← 2010年 第12回えんため賞 特別賞 受賞作
079-106 へび苺 ← 初出 : 月刊コミックビーム, 2012年11月号
109-204 甘木唯子のツノと愛 ← 初出 :月刊コミックビーム, 2017年5~7月号

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絵柄としてもストーリーとしても、自分は「へび苺」が好きですね。


同書, pp.84-85

すごく変な話なんだけど、これが一番話がまとまっている感はある。

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4つの作品が収録されているが、どれも二人の主人公を並置しているのがこの人の特徴。

描きたい素材をギューギューに詰め込んでくるんだが、どれもあんまり説明しないので、すごくわかりにくい。

「透明人間」でも、結局ハムスターを逃した理由がよくわからない。女子のいじめ問題というのは、男子にはわかりにくいせいもあるんだが・・・。

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「IDOL」は設定も絵も結構おもしろい。何か、初期の大友克洋っぽくもある。

先生の「性癖」は、なくても話は成立したような気もする。また、そういう性癖だとしても、押入れのアレはないなあ。そういう人はまた別の性癖だ。

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さあ、問題の「甘木唯子・・・」は、絵も手塚系のスッキリとした絵に変わって、一見読みやすくなっている。が、話は難解。

中1に進学したばかりの唯子と、チビの兄ひろきの物語。

これも主人公は二人なんだが、実際はひろきの内面が表に染みだしたようなお話。唯子のツノも、ひろきの感情が投影されて、二人の間でだけ具現化したものだ。


同書, pp.108-109

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すべて、家出した母に対する、ひろきのアンビバレントな感情に収斂していく話であるのは分かったが、暗喩だらけなので、1回読んだくらいでは何がなんだか分からない。神話のような話だ。

ひろきが野重さんと出会い、さらに野重さんと唯子が接触することで、物語に変化が訪れるのだが、これもなぜそうなったのか、その必然性が分かる人は少ないだろう。

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遊園地、ひろきの低身長、剣道、写真など、意味ありげな小道具がたくさん出てくるんだが、それがどういう役割なのかいまいちはっきりしない。出し方がうまく整理できないまま、見切り発車でどんどん出してきたような感じ。

やはりこの人はアニメの人なのだ。自分が描きたいカットをたくさん並べてくるが、めまぐるしくシーンを変えるので、そのつながりがわかりにくい。宮﨑駿の『ハウルの動く城』あたりを見た時と似た感じ。

これ、アニメだったら、雰囲気でどんどん見ていけるようになるだろうか?

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脇役の野重さんがとても魅力的。ひろきと野重さんの話だけでも、一つまとまった話が作れるのになあ、惜しい。


同書, pp.168-169

やっぱり詰め込み過ぎだあ(笑)。

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ラストも今ひとつわかりにくいが、自分の中では一応納得できた。

エンディングは、正にアニメのエンドロールがかぶさるような作りで、アニメ作家らしい。

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マンガと一緒で、どうも書いている方もまとまりがないが、そのまとまりのなさが実はこのマンガの魅力、この作家の魅力なのかもしれない。

ツボにはまった時の破壊力はすごそうだが、今回はまだそこまで行かなかった。

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昔の絵も魅力的だが、せっかく絵柄を親しみやすいものに変えたのだから、この絵柄で何作か見てみたい。

次回はもう少しストレートな内容で、30ページ位の作品を読んでみたいぞ。これだけの実力があるんだから、絶対面白いはず。

2018年2月11日日曜日

森田るい 『我らコンタクティ』

新人の単行本デビュー作

・森田るい (2017.11) 『我らコンタクティ』(アフタヌーンKC). 255pp. 講談社, 東京.
← 初出 : アフタヌーン, 2017年5月号~11月号.


装丁 : 名和田耕平デザイン事務所

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UFO(あるいは宇宙人)に宇宙で映画を見せるために、ロケットを打ち上げようとする「かずき」と、これに巻き込まれるゲスい女子「カナエ」の物語。

かずきはボーッとしてるようで、本当は実力あるという男子(優秀すぎるきらいはあるが)。カナエは最初こそロケットを金づるとしてしか見ていなかったが、徐々に本気になっていく。

テーマはロケット開発だが、中身の実際は青春モノだ。登場人物はそれほど多くないが、仲間が集まってくるという「水滸伝」要素もあり、なかなかよい。

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前半は、かずきの兄とその不倫相手・梨穂子さん、兄弟の葛藤という人間ドラマがあって、ロケット製作はその合間に挟まる感じで、ちょっとタルい。

それが兄弟和解があって、ロケット打ち上げに向かう後半のスピード感は素晴らしい。

まあ、設定は甘々なんだけど。特に金の出所とか映画の光源とか。

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人物は、強弱のない細い線で描かれる。昨今多い、いかにもなペンタブ線だ。まるで真鍋博。

そんな中に一人だけ、目力が強力な女子を主人公として置いたのが成功の秘訣だろう。でなかったら、ずっと地味なマンガになっていたはず。

こういう絵はもっと地味な日常マンガ向きなんだが、この絵でアクション要素もあるこういうマンガにするのは相当な実力だ。シンプルながら、人物はちゃんと立体として表現されているし。

背景も端正ながらうまいし、画面構成も美しい。


同書, pp.212-213

これでスピード感あるストーリー、少し甘いけどよく考えてある設定と、マンガとしてほぼ完璧な出来だ。作者も相当満足感があるんではないだろうか。

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調べてみると、2013年アフタヌーン四季賞で入賞。その後短編を数本発表。他には主に同人誌方面で活動していたらしい。

なんでまた、急にこんな大作を手がけたんだろう?表に出ないけど、誰か科学・工学に強い協力者がいるんじゃないか、という気がする。

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こんな傑作をモノにしてしまうと、今後もストーリー性の強い作品を世間から求められてしまうような気がするが、大丈夫だろうか?この人の地は、それとは違うような気もするので、ちょっと心配。

でもまあ、地味な日常ものの人だと思っていたのに、ストーリー性の強い意欲作をガンガン発表し始め、びっくりさせられっぱなしの田中相みたいな例もあるので、どうなるか楽しみではある。

そういえば、田中相も紹介したことなかったなあ。そのうち気合入れて紹介します。

2018年2月8日木曜日

kashmir 『てるみな 3』

こちらも待望の

・kashmir (2018.2) 『东京猫耳巡礼记 てるみな 3』. 137pp. 白泉社, 東京.
← 初出 : てるみなNeu Gleis 01~12. 楽園WEB増刊, 2015/4~2017/12.


装丁 : 平谷美佐子

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1~2巻については、こちらをどうぞ。

2017年4月15日土曜日 kashmir 『てるみな』/『ぱらのま』

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連載がWEB増刊だけになってしまったので、2巻から3年もかかってしまったが、勢いは変わることがない。偏執狂的な背景描き込みはむしろ加速している。

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今回最大の見所は、箱根登攀鉄道の箱根(旧)山頂駅(標高2700m)へ向かう路線の絵。


同書, p.18

見よ!この描き込み。おそらく、これを楽しんで描いている。

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箱根山はもともと2700mの高山だったのだが、火山の噴火によるカルデラ陥没で低くなってしまった。しかし、その旧山頂を鉄道で再現しているのだ。

とまあ、そういう妄想理論(笑)。この暴走しまくり、楽しいぞ!

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同書, p.32

これは、急多川線・多河原駅と西川線・是を結ぶ新線、「多魔多魔線」だ。

路線の大半が多川の下を通っているので、トンネルの天井からは漏水ならぬ「漏」が激しい(笑)。このホラ話、いいぞ、いいぞ。

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しかし、何と言っても素晴らしいのは、2回に渡る「銚子編」だな。


同書, p.77

これは銚子の町並み。どこへ行っても異様な干物だらけ。あはは。

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そして醤油(笑)。醤油工場の見学対応係のおねーさんが、とてもアブナくて魅力的だ。


同書, p.83

この溶けたような瞳の描き方は初めて見た。異様だが、いいなあ、これ。アブナさを、こういう風に表現できるんだ。

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今回「あれっ?」と思ったのはこれ。


同書, p.70

読めない字で書かれたおつかいアイテムだ。

これ、panpanyaの「完全商店街」そのまんまじゃないか!

2016年8月9日火曜日 panpanya 3連発

を参照のこと。

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WEB増刊で最初見た時は、「こんな、まんまのパクリ、いいのかよ?」と思ったものだが、今回同時発売の『二匹目の金魚』と『てるみな3』を両方見て、なんとなく事情がわかってきた。

panpanyaの方は、執拗な風景描き込みは今回控えめ。一方、kashmirの方は加速している。

これ、両者の間で何か意識的な「棲み分け」が発生しているようなのだ。

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つまり、風景が主人公になるような、執拗な描き込み路線は、少なくとも「楽園」誌上(あるいはWEB増刊)では、panpanya→kashmirへと継承(あるいは暖簾分け)されたのだ。

だから、『二匹目の金魚』の方は理詰めのストーリー重視。『てるみな3』の方は描き込み重視路線を継続、となっているのではないだろうか?

おそらく両者の間に個人的な交流、それも信頼関係ができているんだと思う。

さっきの「読めない字」を、kashmirがそのまんま出してきたのは、無断ではなく、panpanyaの了解の上。そしてこれで、上述の「継承」が宣言されている、とみた。

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なんちゃって、実際は全然違うかもしれませんが(笑)。

こういう深読みをしたくなるpanpanya、kashmirのマンガ。どちらも素晴らしい。あと何年もこういうマンガを描き続けてほしい。

豊穣なる日本マンガの最先端を、リアルタイムで楽しめる我々は幸せです。

2018年2月6日火曜日

panpanya 『二匹目の金魚』

待望の

・panpanya (2018.2) 『二匹目の金魚』. 191pp. 白泉社, 東京.
← 初出 : 楽園, no.20(2016/2)~25(2017/10)/楽園WEB増刊, 2016/7~2017/12.


装丁 : panpanya

が出ました。

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これまでのpanpanya作品については、

2016年11月29日火曜日 panpanya 『動物たち』
2016年8月9日火曜日 panpanya 3連発

をどうぞ。また、おまけでこちらも。

・stod phyogs > 2017年4月30日日曜日 panpanyaの語源?

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カバーをひっぺがすと出てくる、凝った装丁も相変わらず。


同書カバー下

今回は「模様すりガラス」だ。手触りもそのまんま。いつまでも触っていたくなる。これは買った人だけが味わえる幸せ。

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今回の特徴は、同人誌(というより個人誌か)で発表した作品がなく、「楽園」もしくは「楽園WEB増刊」で発表された短編でそろえてあること。

最長でも20ページ程度と、短編でも比較的短い作品ばかり。中には1ページなんていう作品もある。だからサクサク読んでいける。

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今回は作風を変えてきた。

それまでの、異様な描き込みの背景が主人公のような作品がなくなり、軽めの日常ストーリーを追う作品ばかり。前作の『動物たち』収録作から、その傾向は現れてきてはいたが。

雑誌掲載の短編ばかり、ということも影響してるんでしょうね。

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冒頭に「変なもの」を出してきて、作者の妄想でそれを展開させたり、謎解きをしたりするヤツ。もっとも、その謎解きがゴールにたどり着かないまま終わるものもあるのがpanpanyaらしいところ。


同書, p.5

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こんなやつを見つけたり、


同書, p.31

こんな所に行ったりする。


同書, p.83

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同書, p.166-167

これは、「縁日がない期間、屋台が常駐する」という、通称「屋台の巣」だ。

あはは、いいなあこれ。行ってみたい。

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同書, p.133

これは、わずか1ページの作品の冒頭なのだが、もうこのコマだけで、この本を買った元が取れるくらいの素晴らしいコマ。

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同書, p.143

これも、この数コマだけで「この本を買ってよかった!」と思わせてくれる。まさに「えーっ?」だ。

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変な言い方だが、全体に「濃さ」が薄まっている感はある。

また、感覚的ではなく、理詰め(その中身は異様だけど)でストーリーが展開されているので、非常にクールな印象の短編集。

しかし、panpanyaからしか出てこない、珍妙な発想は相変わらずで、この人の持ち味が失われているわけではない。

新しい読者にもとっつきやすいかもしれない。『足摺り水族館』あたりは、panpanya初見の読者には濃すぎるし。

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次回、kashmirのこれも新刊『てるみな 3』を紹介するのだが、両書は同時発売だ。

似た作風の両者の単行本を同時に出す、というのは偶然ではないだろう。

おそらく、両者の間で「棲み分け」が生じているのではないか、と推察する(直接接触も発生しているはず)。今回のpanpanyaの作風変化はその一環ではないか?

その辺は次回、引き続き考察してみよう。

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とにかく、今回も素晴らしい本で100%満足でした。

この本を置いている書店はあまり多くないけど、探してでも買う価値のある本です。是非買って手元に置いて下さい。

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(追記)@2018/02/11

今回のもう一つの特徴。

これまで登場人物は、主人公「おかっぱの女の子」、級友「ロングヘアの女の子」、犬「レオナルド」、「タコ男」、それにモブ的な存在として「イルカ」、「なんかの動物」あたりだけですべてのマンガを演じさせていたが、今回いくつかの作品では、それ以外にも登場人物が現れるようになった。

「かくれんぼの心得」では、男子級友が出てくる。これはまだ「レオナルド」や「動物」のヴァリエーションだが。

「知恵」では、主人公にリヤカーを押しつけて逃げていく男。これは何だ?タコ男の息子か?新しいキャラだ。

そして「春の導き」。なんかいろんな変なキャラがいるぞ!楽しい。セリフがあるような人物は、相変わらずタコ男や動物のヴァリエーションだが、メガネをかけている人物やうさぎ耳などもいる。

おそらく、意図的に登場人物を増やそうと思っているわけではなく、「必要に応じて」だとは思うが、今回のマンガがpanpanya作品の中ではぐっと親しみやすくなっている要因の一つが、この登場人物(ほぼモブだが)の微増にもあるのかもしれない。普通のマンガに近づいている、というか・・・。