待望の
・panpanya (2018.2) 『二匹目の金魚』. 191pp. 白泉社, 東京.
← 初出 : 楽園, no.20(2016/2)~25(2017/10)/楽園WEB増刊, 2016/7~2017/12.
装丁 : panpanya
が出ました。
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これまでのpanpanya作品については、
2016年11月29日火曜日 panpanya 『動物たち』
2016年8月9日火曜日 panpanya 3連発
をどうぞ。また、おまけでこちらも。
・stod phyogs > 2017年4月30日日曜日 panpanyaの語源?
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カバーをひっぺがすと出てくる、凝った装丁も相変わらず。
同書カバー下
今回は「模様すりガラス」だ。手触りもそのまんま。いつまでも触っていたくなる。これは買った人だけが味わえる幸せ。
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今回の特徴は、同人誌(というより個人誌か)で発表した作品がなく、「楽園」もしくは「楽園WEB増刊」で発表された短編でそろえてあること。
最長でも20ページ程度と、短編でも比較的短い作品ばかり。中には1ページなんていう作品もある。だからサクサク読んでいける。
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今回は作風を変えてきた。
それまでの、異様な描き込みの背景が主人公のような作品がなくなり、軽めの日常ストーリーを追う作品ばかり。前作の『動物たち』収録作から、その傾向は現れてきてはいたが。
雑誌掲載の短編ばかり、ということも影響してるんでしょうね。
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冒頭に「変なもの」を出してきて、作者の妄想でそれを展開させたり、謎解きをしたりするヤツ。もっとも、その謎解きがゴールにたどり着かないまま終わるものもあるのがpanpanyaらしいところ。
同書, p.5
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こんなやつを見つけたり、
同書, p.31
こんな所に行ったりする。
同書, p.83
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同書, p.166-167
これは、「縁日がない期間、屋台が常駐する」という、通称「屋台の巣」だ。
あはは、いいなあこれ。行ってみたい。
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同書, p.133
これは、わずか1ページの作品の冒頭なのだが、もうこのコマだけで、この本を買った元が取れるくらいの素晴らしいコマ。
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同書, p.143
これも、この数コマだけで「この本を買ってよかった!」と思わせてくれる。まさに「えーっ?」だ。
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変な言い方だが、全体に「濃さ」が薄まっている感はある。
また、感覚的ではなく、理詰め(その中身は異様だけど)でストーリーが展開されているので、非常にクールな印象の短編集。
しかし、panpanyaからしか出てこない、珍妙な発想は相変わらずで、この人の持ち味が失われているわけではない。
新しい読者にもとっつきやすいかもしれない。『足摺り水族館』あたりは、panpanya初見の読者には濃すぎるし。
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次回、kashmirのこれも新刊『てるみな 3』を紹介するのだが、両書は同時発売だ。
似た作風の両者の単行本を同時に出す、というのは偶然ではないだろう。
おそらく、両者の間で「棲み分け」が生じているのではないか、と推察する(直接接触も発生しているはず)。今回のpanpanyaの作風変化はその一環ではないか?
その辺は次回、引き続き考察してみよう。
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とにかく、今回も素晴らしい本で100%満足でした。
この本を置いている書店はあまり多くないけど、探してでも買う価値のある本です。是非買って手元に置いて下さい。
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(追記)@2018/02/11
今回のもう一つの特徴。
これまで登場人物は、主人公「おかっぱの女の子」、級友「ロングヘアの女の子」、犬「レオナルド」、「タコ男」、それにモブ的な存在として「イルカ」、「なんかの動物」あたりだけですべてのマンガを演じさせていたが、今回いくつかの作品では、それ以外にも登場人物が現れるようになった。
「かくれんぼの心得」では、男子級友が出てくる。これはまだ「レオナルド」や「動物」のヴァリエーションだが。
「知恵」では、主人公にリヤカーを押しつけて逃げていく男。これは何だ?タコ男の息子か?新しいキャラだ。
そして「春の導き」。なんかいろんな変なキャラがいるぞ!楽しい。セリフがあるような人物は、相変わらずタコ男や動物のヴァリエーションだが、メガネをかけている人物やうさぎ耳などもいる。
おそらく、意図的に登場人物を増やそうと思っているわけではなく、「必要に応じて」だとは思うが、今回のマンガがpanpanya作品の中ではぐっと親しみやすくなっている要因の一つが、この登場人物(ほぼモブだが)の微増にもあるのかもしれない。普通のマンガに近づいている、というか・・・。
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