・石黒正数 (2017.2) 『それでも町は廻っている 公式ガイドブック 廻覧板』(コミック004). 175pp. 少年画報社, 東京.
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『それ町16(最終巻)』と同時発売の副読本。A4という大判の本です。
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いやあ、濃いですね。すぐには読みきれない。特濃だ。
単行本表紙イラスト、雑誌表紙イラスト、オールカラー・キャラクター図鑑、全エピソードの作者自身による解説、単行本未収録エピソード、雑多なオマケイラストなどなど。
これでもか、というくらい『それ町』が詰め込んである。
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一番驚くのは、やはり「全エピソードの作者自身による解説」でしょう。やりすぎですよね。
これは、つげ義春が自分の全作品を語ってしまうという、空前絶後の企画(と思ってた)
・つげ義春+権藤晋 (1993.9-.10) 『つげ義春漫画術 上・下』. 305pp.+426pp.ワイズ出版, 東京.
以来ではなかろうか。
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『それ町』は、前回も書いたように、時系列がバラバラに並べてあるので、どの話とどの話が連続しているのかわかりにくい。それがまたカルトなファンを生む所以でもあるのだが。
それを「どれとどれがつながる」だとか「落ちの種明かし」だとか「読者が気づかないような種明かし」だとか、どんどん作者が解説してしまうのだ。
この作者、完全にこの作品を終わらせる気だ・・・。
この解説の後では、『それ町』について、重箱の隅をつつくようなレビューはほとんど成立しなくなる。ペンペン草も生えません。
なんてことするんだ!
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かねてより「最終巻に収録する」と宣言していたが入りきらなかった、3年間の年表、つまり「全エピソードを時系列に並べ直したもの」も収録されている。
こういうものをきっちり作って「前後に矛盾がないように」とか、「いずれ描くエピソードの伏線を入れておこう」とか、考えながら連載してたわけだ。いやー、すごいですね。前回「設定魔」と呼んだのは、そういうわけなのです。
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単行本未収録作で貴重なのは、TVアニメ化BluRay BOXのオマケマンガ「辰野俊子バンド」だろう。
このエピソードは全16巻の中でも、最重要エピソードである、学園祭でのバンド演奏を描いた3巻第021話「迷路楽団」の合間を描いたエピソードです。
同書, p.144
この最後のコマが見れるだけでも、この『廻覧板』は買いですよ。
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ここでも紺先輩がすごくいいわけなんですが、『廻覧板』でたびたび描かれているカラーの紺先輩は、なぜかあんまりよくない。紺先輩は白黒が似合いますね。
カラーでは、むしろタッツンの魅力がよく出ている。
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この本には、下絵や設定資料なども収録されているんだが、特にこういう大判で見ると、絵のうまさがはっきりわかる。
『それ町』では、デフォルメした絵を描く機会が多いのだが、服の皺なども細かく描かれており、絵の達人であることがわかる。
短篇集などでは、大友克洋タッチの作品も多く、本来は写実的な絵の人であることがわかる。
同書, カバー表4
これは、雑誌に載った(いや、作者のTwitterだったかな?)予告編での、最終回「ニセ内容」らしいのですが、これ大友克洋の「Fire Ball」へのオマージュですな。
え、「Fire Ball」知らない?でしたら、
・大友克洋 (1990.4) 『彼女の想い出 大友克洋短篇集1』(KCデラックス ヤングマガジン). 257pp. 講談社, 東京.
でどうぞ。超・超・超名作ですよ。
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『それ町 16』は、最終巻からいきなり読み始めても充分楽しめるが、『廻覧板』から始めるのはやめた方がいい。あまりの内容の濃さに、本編を読む気を失う可能性がある。
全16巻を揃えてから、この『廻覧板』に戻ってほしい。もっとも、その時にこの『廻覧板』手に入るかどうかは知らん。数年後にはプレミアついてそうな気もする・・・。
まあとにかく、ディープな『それ町』ファンには必携のこの一冊。早く買わないと、なくなるぞー(増刷なければ、の話だが)。
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