一部で熱狂的な人気を誇るツルケンの「はじめての2巻」だそうで、1巻を持っていることもあり、さっそく買いました。
1巻を紹介していないので、一緒に紹介しましょう。
・鶴田謙二 (2011.10) 『冒険エレキテ島1』(AFTERNOON KCDX). 190pp. 講談社, 東京.
← 初出 : 講談社・編 (2010.7) 『漫画BOX AMASIA』. 講談社, 東京./アフタヌーン, 2011年11月号.
・鶴田謙二 (2017.11) 『冒険エレキテ島2』(AFTERNOON KCDX). 190pp. 講談社, 東京.
← 初出 : アフタヌーン, 2012年10月号~2017年12月号.
COVER DESIGN : Tadashi HISAMOCHI(hive&co.,ltd.)
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1巻の頃、作者はガンガンに盛り上がっていたのだろう。2年くらいで長もの2本描いて、すぐ単行本が出たようだ。遅筆で有名なこの人にしたら、すごいね。
実はツルケンを読み始めたのは最近。デビューの頃から横目でずっと見てはいたのだが、じっくり読むまでは行かなかったが、これはすごく面白そうなので買ってみたのだった。
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いやあ、1巻すごく面白い。
主人公の「みくら」(二十代前半?)は、複葉水上機で伊豆諸島~小笠原諸島の貨物配達業をしている。
同書1巻, pp.154-155
見ての通り、この緻密な絵は文句なし。めったに単行本が出ないにもかかわらず、熱狂的な固定ファンが多いのも納得だ。
でも、これは遅筆は当然だわ。一人で描いているんだろうし。
この人は、すらりとした若い女の子の裸を描くのも大好き。それでこのマンガでも、みくらはほとんど水着あるいは裸(笑)。だから、描かれる季節は常に夏だ。
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もともとは小笠原出身の白人(19世紀移民の子孫)であるブライアンおじいちゃんと一緒に仕事をしていたのだが、物語冒頭でブライアンじいちゃんは亡くなってしまう。
じいちゃんの遺品から、約3年に一度、海流に乗って近海に現れるという「エレキテ島」の資料を発見。そしてエレキテ島宛の荷物も発見。
この荷物を届けることを名目に、みくらはエレキテ島探索を開始。なんと第1話の最後ですぐに見つかってしまう。しかし、チラ見だけ。うまいね、この辺。
同書1巻, pp.60-61
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1巻後半は3年後の再探索。海上や横須賀でいろいろ調査するあたりも面白いよ。走り回るだけが探索ではないのだ。
バックグラウンドとして、御蔵島中学時代の恩師・流郷先生(もエレキテ島を調べていたが現在行方不明)への淡い恋心も、物語に深みを与えている。
そしてそろそろエレキテ島が現れる頃・・・、と探索に出発するところで1巻は終わり。
1巻はストーリーに動きが多いので、非常に楽しめる。みくらちゃんもきれいだし。
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そして2巻。第2話で、なんとエレキテ島を発見し上陸。ここまでは早い展開。
同書2巻, pp.30-31
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この後は島の探索に入る。これだけの島で、めったに人に会わないのが解せないが、まあ作者は何か考えているんでしょう(だといいなあ)。
そうそう、荷物はどうなったか?届けることができたのか?これは本を買って確かめてほしい。
そして、あとは島をうろうろ。2巻は以上(笑)。
同書2巻, pp.76-77
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延々と島の風景(南欧の島みたいな風景)が続くが、これが作者が描きたかった絵なのだろう。セリフもなく、みくらの姿と島の風景がとにかく延々続くのだ。
さすがにツルケン・ファン以外にはお勧めできない展開だが、この作者らしいなあ。
この展開は、作者が島の風景を描き飽きるまで続くでしょう。まあツルケン・ファンはそれも楽しいんだと思うけど、オレはもう飽きた。
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意外に早く島に到達させてしまったので、この先の展開をまだ充分煮詰めておらず、しばらくは風景を描きながら展開を考えているような気もする。まあ、中途半端にあわてて話を進めるよりは、じっくり考えてから進めてほしい。
自分は、この人の設定が甘いところとちょっと相性悪い。あと、わりと飽きっぽい人なので、だんだん話がダレてくる。
冬目景とも似た資質。マンガを描くモティベーションが、ストーリー・テリングよりも「絵を描きたい」というマンガ家はどうしてもそうなる、のは知ってるからいいんだけど、この話はなんとか完結させてほしいなあ。
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まだ流郷先生も出てきていないし・・・。でも出てくるのかなあ?その辺も楽しみではある。
さて、3巻はいつ出るのだろうか?アフタヌーンの連載も飛び飛びで、おそらく描きためてはしばらく連載、その後1~2年休み、という繰り返しなので、この調子で続けるのだろう。
雑誌で追う気まではしないが、3巻も出たらまた買うぞ。2巻のように6年後に出たら御の字、10年後も覚悟してる。
結局出なかったら・・・その時は「まあツルケンだし」と思って諦めよう。
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ストーリー展開にちょっと不満があるとしても、この絵が気に入った人なら買って損はない。特にカバーの海の青が美しい絵が好きなら、持っていてカバーを眺めているだけでも十分楽しめると思う。
さて、次はいつ出るのか?それまでは、この絵を舐めるように隅々まで眺めて楽しむのだ!
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(追記)@2017/12/07
このマンガでは、バックグラウンドとして描かれている小笠原の白人系移民の子孫という設定が好きだ。
ブライアンじいちゃんはまんま白人のようだが、お父さん(ブライアンの息子)はハーフのよう。
みくらちゃんの顔には、特に白人っぽさはないが、スタイルの良さにその片鱗が伺える。といっても、ツルケンが描く女の子は、みんなこんな感じなんだけど。
登場人物では、1巻で2度出てくる(海洋生物研究所)所長が私のお気に入り。この人、コメディアンの大泉滉(1925-98)そっくりなのだ。大泉滉はロシア・クウォーター。
この所長先生も、小笠原の白人移民の子孫、あるいは外国人なのかもしれない。もしかすると、三宅島に長年住んでいた海洋学者Jack Moyer先生(1929-2004)がモデルなのかも・・・。
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