kashmirについては、
2017年4月15日土曜日 kashmir 『てるみな』/『ぱらのま』
で上記2作を紹介しましたが、今回紹介するのは、それ以前の旧作2つ。
近作、『ななかさんの印税生活入門』、『ゆせそま。』などは、またいつか。
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・kashmir (2007.12~2013.4) 『デイドリームネイション 1~5』(MFコミックス アライブシリーズ). メディアファクトリー, 東京.
← 初出 : コミックアライブ, 2006年8月号~2013年5月号.
Cover design : Hideki Satomi
青を基調に統一した、素晴らしいデザイン・シリーズ。
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連載は7年に渡るが、描かれる期間は6月末~9月末のわずか3ヶ月間。
乳メガネ・小岩井知春(ちはる、高2女子・まじめ)とその幼なじみ・荻野夏穂(かほ、高2女子・ショート/いいかげん)の二人が属する漫研の夏、の物語。
他に、後輩・黒坂(高1男子・エロ本拾いの達人)、OG・久遠寺先輩(大1女子・セクハラ変態)、部長(高3男子・ペド)、後輩・紗英ちゃん(高1女子・ガチエロ絵師まっしぐら)などが口を挟み、わいわい大騒ぎの物語。
同書4巻 p.6
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重要登場人物が、八景さん(山の神さま、笑)。1回めから全裸で漫研部室に登場。以来、ほとんどずっと部室でマンガ読んでるだけ(笑)。時々メイド服も。わけわからん人(?)。
同書1巻 p.9
でも、要所要所で大活躍するし、こういうオールマイティを一人置いておくと、事件を起こすにしても、おさめるにしても、エンジンとして強力だ。長期連載の秘訣だな。
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定石通り、登場人物の中で一番まともな、知春の視点で物語が展開する。
エピソードは、同人誌即売会、夏合宿~喫茶店バイト、文化祭の3つだけ。それで7年連載しちゃうんだからすごいね。
2016年8月6日土曜日 平方イコルスン3連発
2017年7月20日木曜日 平方イコルスン 『スペシャル 2』
で紹介した平方イコルスン 『スペシャル』も、夏休みを挟んで、時間がゆっくり流れているが、こういうマンガ多いんだろうな、自分が知らないだけで。
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若者がたくさん集まって、無駄にたむろするマンガ(個人的に「ワイワイもの」と呼んでいる)は、永島慎二 『フーテン』、『若者たち』の頃から大好き。特に桑田乃梨子 『おそろしくて言えない』が傑作だった。
おそらく、そのワイワイもの好きの原点は、『水滸伝』なのだろうと思う。その性癖にピッタリ合った『デイドリームネイション』は、自分にとっては傑作中の傑作だ。
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夏穂ちゃんがトリックスターとして強力。かわいいし、虚無的だし、暴れる時は暴れるし。言うことないね。
同書1巻 p.69
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夏穂ちゃんは陸上部と兼業なんだが、陸上部の後輩・千澄(高1女子・色黒ポニーテール)がまたド変態で、夏穂の匂いフェチ。こういうスパイスもおもしろい。
同書1巻 p.123
しかし、この千澄は、音井れこ丸 『おじさんとマシュマロ』の若林の原型みたいな変態っぷりだな。いいぞ。
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お次はデビュー作(と思ったら2作目でした、デビュー作は『◯本の住人』)
・kashmir (2007.2~2014.4) 『百合星人ナオコサン 1~5』(Dengeki Comics). KADOKAWA/(アスキー・)メディア・ワークス, 東京.
← 初出 : コミック電撃大王, 2005年5月号~2014年4月号.
Cover Design : Satomisan=里見英樹(よつばスタジオ)
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こちらは連載期間がさらに長く、9年間だ。
完全ギャグマンガ。ある日、みすずちゃん(女子中学生・廃墟マニア/おとなしい)の家に、突如現れた「百合星人」のナオコサン。宇宙人の証拠に、ホレ、耳がエルフ。
そのナオコサンがなぜか家に居候。「ドラえもん」型の設定だ。
このナオコサンが巻き起こす騒動に、みすずちゃんをはじめ、弟・涼太(小学生)、親友・柊ちゃん(ひいちゃん、女子中学生・メガネ/百合+エロ絵師属性大)、涼太の同級生・彩ちゃん(女子小学生・ツンデレ)、ライバル・ヤオイ星人(バイトしながら同人誌を描いてる)らが巻き込まれる。
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ナオコサンはトラブルメーカー型キャラで、マンガの中身も騒々しくめまぐるしいスラップスティック。宇宙人だからメカも出し放題だし、トラブルメーカーとして最強。
同書3巻 p.156
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これは、吾妻ひでお『やけくそ天使』直系の、SF風味ありのギャグマンガだ。
今まで吾妻ひでお系ギャグマンガと呼ばれるものは、だいぶ見てきたが、これが吾妻ギャグに一番近い。後継者と言っていいだろう。
ところどころ、吾妻風ガジェットも登場するし、kashmirが吾妻ファンなのは間違いない。
同書1巻 p.88
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「百合星人」といっても、百合要素は全くない。ナオコサンは幼女好きなので、広義の「百合」と言えないこともないが、中身は男なので単なる「ペド」です。
むしろ、とってつけたように、柊ちゃんが百合要素を薄~く担当。
「幼女」だの「エロ本」だのという言葉が頻出するが、口で言っているだけなので、絵にエロ要素は皆無(笑)。
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みすずちゃんのセリフだけが、連載初回から吹き出しじゃなく、ナレーションのようにコマの中にむき出しになっている。これ、面白い手法だ。
同書2巻 p.23
なぜこんな手法を思いついたのか謎だが、内面のセリフも多いみすずちゃんにぴったりだ。
これは、下記の謎解きの布石になっているような、なっていないような・・・。
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ナオコサンは、遠いところにいる(という設定の)奈緒子お姉さんが、帰って来た・・・はずなのに、なぜか全然別人だった、という設定。5巻では、その謎解きになっているような、なっていないような、SFファンタジー連作で一応決着をつけている。
同書5巻 p.132
この辺もkashmirの多芸ぶりが光る。ちょっと苦しい辻褄の付け方だったような気も・・・。
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みすずちゃんの「廃墟好き」あたりからも、今の「てるみな」「ぱらのま」へ向かう片鱗が伺えるし、まさにkashmirの原点といえるマンガだ。
同書4巻 p.104
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この手の本は、バラバラなら古本で安く拾えることもあるが、もともと部数はそんなに多く出ないものなので、全巻揃えるのは結構大変だった。特に最終巻はなかなかなくてねえ。
こういう中途半端に新しいマンガを探すのは、活字の本や本当に古い(1980年代以前)マンガを探すのとは、また違った苦労がある。
この手のマンガが、復刻されたり文庫化されたりすることはまずないので、見つけたらその時に買っておくしかない。特にセット物で見つけた時は、問答無用で買え、だ。
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最近の、美少女萌え系マンガ(に一応置かれているもの)というのは、定まった評価がないし、ほとんどは自分の性に合わない。しかし、その中にごくたまに、こういう風に自分でもついて行ける作品が混じっているのだ。
それを見つけ出すのはなかなか楽しいのだが、歩止まりも悪い。まあ性分だから仕方ない。苦労しつつ、密林(Amazon.co.jpじゃないよ)探索を楽しもう。
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(追記)@2017/10/01
ちなみに「デイドリームネイション」とは、Sonic Youthの1988年発表のアルバム名。内容とは全く関係ない。
こういうの多いけど、題名が単なる判別記号になってしまい、作品への愛着度も下がるなあ。
冬目景『イエスタディをうたって』でも、Yesterdayなんか一回も出てこない。高野雀『13月のゆうれい』では、一応最後になにやら関連付けるセリフを置いているが、「はいはい、つじつま合わせね」といった程度の感想しかない。
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