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2017年4月22日土曜日

サントリー美術館 「絵巻マニア列伝」展、特に「放屁合戦絵巻」

前回の「暁斎展」を見たあと、渋谷から六本木に移動して、この「絵巻マニア」展を見たのでした。展覧会のハシゴ。

東京ミッドタウンははじめて行ったのだが、どこも高級すぎて私には無縁の店ばかり。サントリー美術館くらいか、用があるのは。

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・サントリー・ホールディングス/サントリー > 文化・社会・スポーツ > 芸術・文化・学術 > サントリー美術館 > 展覧会 > 六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝(as of 2017/04/22)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_2/


同展パンフレット/ポスター, 表

「開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」
会場 : サントリー美術館(六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階)
会期 : 2017年03月29日 ~ 2017年05月14日
入場料 : 一般 当日 1300円(前売 1100円)  大学・高校生 当日 1000円(前売 800円)
開館時間 : 10:00から18:00まで 金曜日は20:00まで, 土曜日は20:00まで
休館日 : 火曜休館 火曜日が祝日の場合は火曜日開館、翌日休館
住所 : 〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンサイド
電話 : 03-3479-8600
ファックス : 03-3479-8643
アクセス : 都営地下鉄大江戸線六本木駅直結, 東京メトロ日比谷線六本木駅と直結予定, 東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩約3分

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これは図録↓

・サントリー美術館・編集 (2017.3) 『開館10周年記念展 絵巻マニア列伝』. 239+VIIIpp. サントリー美術館, 東京.


デザイン : 高岡健太郎(日本写真印刷コミュニケーションズ)

表紙デザインがシンプルすぎる。絵巻を入れたものにしてほしかったが、もしかすると予算が尽きたか?

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この展覧会は、絵巻を愛好したり、保護したりした人々が残した文献を示しながら、絵巻の歴史をたどる、というユニークな企画。

絵巻物となると、一般には「美術」というより「日本史」の文脈で紹介されるケースが多く、通常の美術展よりはとっつきにくいかもしれない。

そのせいか、無茶込みだった「暁斎展」に比べ、休日なのにそこそこの入りで、じっくり観覧することができました。

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この展覧会に行った主目的は、「放屁合戦絵巻」と「福富草紙」。どちらも「屁」を題材とした珍しい絵巻。

こういった絵巻では、幕末の「屁合戦絵巻」(早稲田大学所蔵)が一番有名。

・早稲田大学 > Academics 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 Collections & Publications : 古典籍総合データベース > 屁合戦絵巻(as of 2017/04/22)
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/chi04/chi04_01029/

で見ることができる。

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サントリー美術館の「放屁合戦絵巻」の方は、平安時代12世紀中頃の定智・筆の原本を、室町時代1449年に模写した模本。原本は現存しない。

平安末期の風俗を知る上でも重要な作品なのだが、そんなことよりあまりの下らなさに、笑いをこらえられない。


同展図録, pp.94-95, 図版38

調べてみたが、同絵巻を概観できるサイトがなかったので、低解像度で図録図版を紹介します。新たに同絵巻の全貌を見ることができるサイトが出てきたら、これは消します。

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巻頭では、坊さんたちが豆を食べたり、全裸で腹ばいになって腹を冷やしたりと、放屁の準備に余念がない。

そうして始まった放屁合戦。着衣では屁の勢いが衰えるので、尻だけ丸出し、あるいはなぜか全裸(笑)。間抜けだ。

屁は放物線、というより直線で描かれ、そのすごい勢いが伺える、ってまあこれは誇張なのだろうけど。

屁を扇でよけるわ、帽子が屁で飛ばされるわ、陰部丸出しで全裸でんぐり返しをする男はいるわ、大勢の屁を袋に詰めて一気に吹き出すわ、大騒ぎ。

最後は、この放屁術師範らしい老尼さんが出てきて、屁で扇を割る模範演技を見せて終わり。

なんだこりゃ!

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実はこの老尼さん、放屁曲芸の達人・高向秀武(たかむこのひでたけ)の娘だとされている。

その高向秀武と、これを真似しようとして失敗する福富の物語(いわゆる「正直爺さん・意地悪爺さん」譚の一種)を描いた「福富草紙」(15世紀)が、この「放屁合戦絵巻」と一緒に展示されている。

しかし、この高向秀武、その娘の放屁術師範、実在したのだろうか?絵巻の内容を見ると、とても現実のことには思えないが・・・。

そんなことも考えてしまうこの展示、「屁」ファンには必見。

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「放屁合戦絵巻」はサントリー美術館の所蔵なので、いずれまた公開される時があるだろう。その時に、また見に行きたい。

また、こういった「放屁合戦絵巻」はいろんな時代、あちこちにあるらしいので、一度、それらを一堂に会した「放屁合戦大絵巻展」を開催してほしい。これはサントリー美術館の仕事になるでしょう。

図録収録の

・上野友愛 (2017.3) 数寄から広がる絵巻好き. サントリー美術館・編集, 図録『開館10周年記念展 絵巻マニア列伝』所収. pp.191-193. サントリー美術館, 東京.

も必読。

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他にも貴重な絵巻が続々登場。


同展パンフレット/ポスター, 裏

複製とはいえ、「伴大納言絵巻」(平安時代12世紀)を見れたのはよかったなあ。右から左へと時間が進んでいく展開、モブの描き分け、人の向きが意味する所、など絵巻の基本を学ぶにも最適な素材です。

他に印象的だったものを上げておくと、

「病草紙断簡」(平安時代12世紀)-変な病気の人を描いた草紙

「後三年合戦絵巻」(室町時代1347年)-平安時代奥州での戦を描いた絵巻、保存状態は悪いが迫力ある

「九相図」(鎌倉時代14世紀)-死体が腐っていく様を描いた気持ち悪い絵巻。前期展示はその江戸時代17世紀の模本だったが、原本に非常に忠実

「玄奘三蔵絵」(鎌倉時代14世紀)-そんな古いのものとは思えない保存のよさ。色彩の美しさに目を見張る。

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松平定信が絵巻保存、修復、模本作製に大きな功績があったことは、今回はじめて知った。まさに絵巻マニアだ。

「蒙古襲来絵詞」(鎌倉時代13世紀)もそんな定信のすすめで、熊本藩から江戸に運ばれて模本が作成されることにより、広く知られるようになった。

現在は宮内庁所蔵であるその原本が、今回観覧できるのだ。実に感動ですよ。歴史の教科書でしか見たことのないあの武者絵が目の前に。

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この展覧会の趣旨である、文献に記された記録とともに絵巻を楽しむ、という点では、古文書の筆使いを見るのも楽しい。なかなか読めないけど。

地味ながら、すごく面白い展覧会でした。是非どうぞ。

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展覧会に行く前に、この辺で予習しておくのもいいですよ。

・ほぼ日/ほぼ日刊イトイ新聞 > ほぼ日手帳2017spring > ほぼ日手帳マガジン > サントリー美術館学芸員・上野友愛・談/見方がわかれば、おもしろい!絵巻-emaki-の世界1~3(2017-04-14-FRI~04-16-SUN)
http://www.1101.com/store/techo/ja/magazine/2017/emakinosekai/2017-04-14.html?device=pc
・産経新聞社/産経ニュース > ライフ > 学術・アート > 産経新聞文化部・黒沢綾子/2017.4.22 11:00 【展覧会に行こう!】 「絵巻マニア列伝」 下ネタも不眠の悩みも…いにしえのオタクたちの愛好品から見えるのは今と変わらぬ姿
http://www.sankei.com/premium/news/170422/prm1704220021-n1.html

2015年10月6日火曜日

ほしよりこ 『逢沢りく 上・下』

本エントリーは
stod phyogs 2015年10月6日火曜日 ほしよりこ 『逢沢りく 上・下』
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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・ほしよりこ (2014) 『逢沢りく 上』. 221pp. 文藝春秋, 東京.
・ほしよりこ (2014) 『逢沢りく 下』. 244pp. 文藝春秋, 東京.
















感動作という触れ込みだったが、残念ながら私は全く泣けなかった。それはどうも、主人公のりくに感情移入が全く出来なかったからに違いない。

りくだけではなく、東京(だよね?きっと)サイドの人々には全くなじめない。ま、それも作者の術中にハマっているんだろうけど。だから上巻前半は読むのが苦痛で苦痛で・・・。

かといって、上巻後半から現れる大阪の人々になじめたかというと、そうでもない。ただし、風景としては大変楽しんだ。おじいちゃんとおばあちゃんが、クマのチョコについて話してるとこなんか最高。ダブルボケのオチもしっかりあるし。

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結局このマンガは、主人公りくが大阪の風景に主役を乗っ取られるお話だったのだ、と思ってる。

そう考えると、ラストのりくの号泣は、主役を奪われた悔し涙に見えてくる、ってのはメタフィクション的な見方に毒されすぎ?

一見、おしゃれだが悩み多き東京と、コテコテでお気楽な大阪を対立概念として描いているように見え、そのどちらかの選択を迫っているように感じる(ほぼ8割方は大阪派になるよう仕向けられているけど)が、ほしさんの中では、きっとどちらの世界も好きなのに違いない。「猫村さん」でも、上品だが下世話な不倫話が矛盾なく流れているし。

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風景に主役を奪われる、というテーマはどっかにあったな・・・と思ってたんだが、思い出した。映画『ブレードランナー』ですね。

カルト的な人気を誇る『ブレードランナー』だが(私もライフタイムNO.1映画です)、主役デッカードを演じたハリソン・フォードは長らく「あの映画は嫌いだ」と言い放っていた。

私も『ブレードランナー』は何十回と見ているのだが、一向に飽きない。それはストーリーとは直接関係ない設定や美術が面白すぎるから。

「二つで十分ですよ」の寿司屋(orうどん屋)のオヤジ、強力わかもとの巨大ネオン看板、ハレ・クリシュナ、シリアルナンバーの入った蛇のウロコを見る露店の走査電顕屋などなど・・・、思い出すだけでワクワクする世界。

『ブレードランナー』人気は、この特異な設定・美術による所が大きく、ハリソン・フォードは自分の演技への評価ではなかった点がおもしろくなかったらしい。

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人生万事を計画通りに進むはず、と思っている人間が、風景に主役を乗っ取られる恐怖と驚きがりくの号泣だった、と思ってる。いや、意外な感動と変化に自分自身が驚いている動揺も、もちろんなんだが。

中学の制服を着て町をうろつき、ラーメンを食べるりくのママもおもしろい。こういうのが出てくる下巻が圧倒的に面白いのは当然なのだが、あのかったるい上巻あってこそのカタルシスなのだろう。

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これで『逢沢りく』が理解できたとも思わないが、一応、『逢沢りく』=『ブレードランナー』説ということで、引き出しに収めておきましょう。もう少し時間がたったら、また読んでみよう。きっと少し考えも変わってくるかもしらん。

しかし、自分の理解の範疇の外にあるモノにぶち当たるのは、楽しい体験ですね。

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ところで「ほしよりこ」さんの絵って、日本のマンガの文脈からはずれてますよね(絵だけじゃなくて、コマ割りなんかもそうですが)。あの絵はどっから来たんだろう?とずっと考えていたんですが、ある日ひらめきました。

あの絵は日本の古い絵巻物の絵ですな。『信貴山縁起絵巻』とか『伴大納言絵巻』とかの、有象無象のモブを描くときの絵。特に横顔を見ると一目瞭然(絵巻物は横顔が多い)。

美大ではその辺を勉強していたんだろうか・・・。そういう観点で見ると、なんか猫村さんを『鳥獣戯画』の中に入れてみたくなる。

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(追記)

後半頻出する「あの転校生、足めっちゃ速いなあ」っていう、ストーリーに全くからんでこない設定がおもしろい。こういうのが好きだ。

自然と発生した設定なんだろなあ。他にも全然回収しないで終わる小ネタ設定がいくつかあるけど、この放り出され感も好きです。