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2017年9月16日土曜日

月岡芳年ツアー2017(3) 太田記念美術館 「月岡芳年 月百姿」 展

芳年ツアー第3弾。太田記念美術館の後期。

今年はもうないかな。でも、芳年作品はまだまだあるので、展覧会があれば、少し遠出してでも行くぞ。

しかし、やっぱり札幌の芳年展に行けなかったのは、かえすがえすも心残り。

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・太田記念美術館 > 展覧会 > 年間スケジュール > 特別展 月岡芳年 月百姿(as of 2017/06/28)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/%E6%9C%88%E5%B2%A1%E8%8A%B3%E5%B9%B4%E3%80%80%E6%9C%88%E7%99%BE%E5%A7%BF

会期 : 2017年9月1日(金)~9月24日(日)(9月4、11、19日は休館します)
開館時間 : 午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
会場 : 太田記念美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
TEL : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料 : 一般 1000円、大高生※学生証をご提示ください。 700円、中学生以下※中学生は学生証(生徒手帳)をご提示ください。 無料(リピーター割引 「月岡芳年 妖怪百物語」および「月岡芳年 月百姿」両展覧会の会期中2回目以降ご鑑賞の方は、半券のご提示にて200円割引いたします。※チケット購入時に半券をご提示下さい。他の割引との併用はできません。

しまった!前回の半券忘れた。まあ前回、横浜の半券で割引してもらったからいいか。

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同展パンフレット, p.4


同展パンフレット, p.3

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「月百姿」は、芳年晩年の「月」をテーマにしたシリーズ。明治中期の作品だ。その百点を全点展示。見応えあったなあ。

晩年の筆致はかなり硬質になっており、闊達なところに乏しく、「硬すぎる」と感じるかもしれないが、その繊細かつ細かい描写を見ていくのが今回の見所だ。

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「月」というと、たいていは満月。この「月百姿」も大半は満月なのだが、三日月、上弦、下弦、二十三夜月、叢雲に隠れる月、とヴァリエーションもかなりあり、そのリズムを楽しむこともできる。

果ては、月を描かず、それを眺める人物で表現した絵、あるいは月の気配すらないものまである。これはもう、「このお話知ってるでしょ」という鑑賞者との間の暗黙の了解で成り立っているのだが、当時流行りのお話がネタ元なので、現代人の我々には解説がないとなかなか厳しい。明治人に生まれ変わるVirtual Realityって作れないもんか・・・。

また、浮世絵/錦絵最末期の彫り、摺り技術の到達点も見どころだ。本当に唸らされる。惜しい文化を亡くした。

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これが図録。今回も、一般書籍として書店でも販売されています。

・日野原健司・著, 太田記念美術館・監修 (2017.8) 『月岡芳年 月百姿』. 135pp. 青幻舎, 東京.


デザイン : 原条令子

「月」がテーマなのに、月を思わせる円を青で塗ったデザインが大胆だ。

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気に入った作品、あるいは気になったものをいくつか。


月岡芳年 (1886.9) はかなしや波の下にも入ぬべしつきの都の人や見るとて 有子
同書, p.14

身投げの直前に琵琶を弾く有子(ありこ)。『源平盛衰記』より。

ここでは月本体は描かれておらず、水面に反射する光で月の存在を表現しています。日本ならではの繊細な表現。

「月百姿」シリーズでは、空摺り、正面摺りの手法がふんだんに使われています。紙の裏から版木を当て、墨を付けずに摺り、画面に凹凸や部分的に光沢を出す手法です。たいていは、白、黒などの単色ベタ塗り面上に、柄を浮かび上がらせたり、光沢模様を出すために使われています。

このシリーズでは、白の四角に囲まれた題字にはすべて空摺りが入っていました。また、白地~薄色の着物にはたいてい空摺りで柄が浮かんでいましたね。

見渡したところ、しゃがんだり横から眺めたりして、空摺り、正面摺りを観察していたのは私だけだった。もったいない。空摺り、正面摺りは、図録や画集ではほとんど出ないので、現物を見た人だけが楽しめる技法なのに・・・。

さて、この絵では、空摺りが使われているのは、着物の柄ではなく、なんと水面の月光反射。画面下から上に伸びていく月光反射は上部では白い背景に消えていくのですが、実は画面の凹凸でその連続が見れるのです。これは是非、現物を見てもらうしかない。

なお本書では、正面摺りの解説が、p.64、p.88、p.106にあります。

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月岡芳年 (1886.3) 源氏夕顔巻
同書, p.42

薄墨で表現された夕顔の幽霊。色、線の繊細さ、素晴らしい。ボサボサの髪もまた哀れを誘う。前景に、実際の夕顔を配する構成も粋だ。

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月岡芳年 (1889) 雨中月 児島高徳
同書, p.72

南北朝時代、南朝の武将・児島高徳が後醍醐天皇の無事を祈る姿。

ここで注目は雨の表現。これは白い墨で刷ってあるのだ。こういう白墨を使った技法ははじめて見た。この技術、どの程度広まっていたのだろうか。興味あるなあ。

いずれにしろ、その後まもなく、この技法含め、浮世絵/錦絵まるごと滅びるわけですが・・・。

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月岡芳年 (1886.2) 烟中月
同書, p.90

明治時代とは思えない、モダンでスタイリッシュな画面処理だ。右側の炎の部分には、なにか英文コピーを入れたくなるではないか。芳年は、20世紀の広告美術を先取りしていたのかもしれない。

対面の屋根に、鏡写しのように同じポーズの人物をシルエットで置くアイディアもクールだ。

あと、炎の黄色。この鮮やかさは、スキャン画像や図録、画集ではうまく出ない。これも現物を見た人だけが楽しめる特権。

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月岡芳年 (1886.2) 月夜釜 小鮒の源吾 嶋矢伴蔵
同書, p.118

石川五右衛門の子分二人。見張り番が入ったままの大釜を盗んでしまい、中から声が聞こえるのを不審がっている様子。これも解説なしでは、なんだかさっぱりわかりませんね。でも、絵だけでも楽しめる一枚。

以前、

2017年9月3日日曜日 中谷伸生 『耳鳥斎アーカイヴズ』

でも、大坂の戯画「鳥羽絵」にちょっとだけ触れましたが、この絵はその鳥羽絵の影響というか、ちょっとパロってみました、という珍しい絵だ。鳥羽絵の特長は、異様に細長い腕と脚。

芳年は、こういうマンガ的な絵も描いていたんだなあ。もうちょっと、この路線も見てみたかった。

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過去3回の展覧会で、だいぶ芳年とお近づきになれたような気がする。

しかしまだ、「血みどろ絵」はあまり見ていない。

今回の一連の展覧会では、意図的に「血みどろ絵」ははずされている。それは1970年代に芳年が注目された時に、こういった残虐絵ばかりが注目されたせい。その反動でしょう。

芳年は作品数も多いので、近々またどこかで展覧会がありそうな気がする。また行くぞ。

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(追記)@2017/09/16

・菅原真弓 (2009.11) 『浮世絵版画の十九世紀 風景の時間、歴史の空間』. 396pp. ブリュッケ, 国立(東京).

という本も、ちょうど読みました。目次だけ簡単に。

007-020 序章 語られなかった"過渡期"の日本美術 幕末明治美術への視点

021-160 第一部 十九世紀の浮世絵版画における風景主題 風景と時間をめぐって
023-075 第一章 歌川広重「木曽海道六拾九次」の「時間」
077-103 第二章 歌川広重と木曽街道の旅
105-131 第三章 歌川広重と縦絵の風景画
133-160 第四章 小林清親の光と広重受容

161-321 第二部 十九世紀の浮世絵版画における歴史主題 歴史と空間をめぐって
163-193 第五章 武者絵の十九世紀 葛飾北斎から歌川国芳へ
195-226 第六章 武者絵から歴史画へ 歌川国芳における画面拡大の意味
227-266 第七章 虚構から現実への階梯 月岡芳年「血みどろ絵」のリアリティ
267-321 第八章 十九世紀歴史画の確立 月岡芳年の『前賢故実』受容

323-327 終章 風景の時間と歴史の空間

329-333 あとがき 謝辞を兼ねて

335-387 資料・年譜
392-388 掲載図版一覧
395-393 索引

著者は大阪市立大学教授。2000~06年には中山道広重美術館学芸員だった関係上、第一部は当時の研究対象・広重に関する論考。

私としては、第二部の北斎、国芳、そして芳年に関する論考が特に面白かった。

芳年の元ネタとしての菊池容斎 (before 1868) 『前賢故実』を知れたのもよかった(第八章)。

この手の本、もっとないかな。探してみよう。

2017年8月21日月曜日

三井記念美術館 「地獄絵ワンダーランド」

にも行ってきました。日本橋に行ったのも何年ぶりだろう?

・三井記念美術館 > 展覧会情報 > 開催中の展覧会 : 特別展 地獄絵ワンダーランド 2017年7月15日(土)~9月3日(日)
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

特別展 地獄絵ワンダーランド
会場 : 三井記念美術館
住所 : 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
電話 : ハローダイヤル03-5777-8600
会期 :2017年7月15日(土)~9月3日(日)
休館日 : 月曜日、7月18日(火) ※但し7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館
開館時間 : 10:00~17:00 ※入館は16:30まで
ナイトミュージアム : 会期中毎週金曜日は19:00まで開館 ※入館は18:30まで
入館料 : 一般1,300円(1,100円) 大学・高校生800円(700円) 中学生以下 無料 *70歳以上の方(要証明)は1,000円。また20名様以上の団体の方は( )内割引となります。ナイトミュージアム(会期中毎週金曜日17:00以降)の入館料は一般1,000円 大学・高校生500円
主催 : 三井記念美術館、NHK、NHKプロモーション
協賛 : 日本写真印刷


同展チラシ, p.1


同展チラシ, pp.2-3


同展チラシ, p.4

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まずネーミングがいい。「地獄絵」と「ワンダーランド」をくっつけるセンスは素晴らしい。

冒頭は、

水木しげる先生の絵本「水木少年とのんのんばあの地獄めぐり」の原画。

・水木しげる (2013.6) 『水木少年とのんのんばあの地獄めぐり』. 32pp. マガジンハウス, 東京.

やあ、これは得したぞ。

水木さん最晩年の作品なので、絵は全編チーフ・アシスタントの村澤昌夫氏のもの(もう明かしてもいいでしょう)だが、全体のコンセプトは水木さんが抑えているはず。

地獄絵は、水木さん大好きでしたからね。微に入り細に入りの描き込みはさすがだ。水木さんは絵こそ描いていないものの、水木少年とのんのんばあの彩色だけは、自分で担当している(そこだけ彩色が他と違うのですよ)。たいしたもんです。

これでつかみはOKだ。

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水木作品の地獄なら、貸本時代の傑作・そのものズバリの「地獄」(1965)やその翻案作「コロポックルの枕」(1970)でしょ!とも思うが、これらはあまりに残虐描写がキツいので、子供も対象にしている今回の展覧会じゃ無理だったかな。

Redonの宇宙船に乗ってくる「鬼宇宙人」、仏足石の宇宙ロケットなど、SF主流に毒されていないユニークなメカニックの原画も見てみたい。

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残虐描写のきつい地獄絵自体は、六道図の一部や地獄草紙の展示があるだけなので、それほどショッキングではない。小さい絵が多いので、パンフレットなどに引用されている絵はかなり拡大したものであることがわかる。

後半になると、行けども行けども十王(閻魔大王のグループ)図だらけなのでちょっと飽きた。

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地獄残虐描写が少なかったので、ちょっと物足りない展覧会だったが、一つ収穫。

耳鳥斎(にちょうさい)・筆 (1793) 地獄図巻

この人、はじめて知った。江戸時代・大坂の浮世絵師なのだが、他に類を見ない「カワイイ絵」を描く人。この当時、目を黒丸で描いたり、開いた口をV字形に描くような人はいない。

地獄絵も全然怖くない。むしろみんな楽しそう。「役者が行く地獄」では、亡者は縛り付けられて、太い「大根」を口に押し込まれている。でも笑ってるよ(笑)。こんな地獄なら行ってみたい。

参考:
・アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】 >耳鳥斎の地獄ワールドツアー 2015-09-14
https://ameblo.jp/artony/entry-12073124925.html

今後、耳鳥斎追っかけてみよう。耳鳥斎の本って、

・中谷伸生 (2015.3) 『耳鳥齋アーカイヴズ 江戸時代における大坂の戯画』(関西大学東西学術研究所資料集刊36). vi+209pp. 関西大学出版部, 吹田(大阪).

くらいしかないんだな。いつか展覧会やってほしい。

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あと、ミュージアムショップにすごい本があった。

・梶谷亮治+西田直樹・著, Michael Jamentz+Rachel Saunders+Miriam Chusid・英訳 (2017.7) 『HELL 地獄 地獄をみる』. 592pp. パイ・インターナショナル, 東京.
http://pie.co.jp/search/detail.php?ID=4811

出たばかりの本のようだ。ぬるい絵が多かった展覧会に比べて、こちらはもうすさまじい絵が、「コレでもか!」とばかりに集めてある。圧巻!むしろ、こちらをそのまま展覧会にしてほしかったほど。

この本ほしい。しかし5900円+税とかなりのお値段なんだよなあ。いつか買おう。

2017年8月19日土曜日

月岡芳年ツアー2017(2) 太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語」 展

芳年ツアー第2弾は、原宿の太田記念美術館の前期。

・太田記念美術館 > 展覧会 > 年間スケジュール > 特別展 月岡芳年 妖怪百物語(as of 2017/06/28)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/%E6%9C%88%E5%B2%A1%E8%8A%B3%E5%B9%B4%E3%80%80%E5%A6%96%E6%80%AA%E7%99%BE%E7%89%A9%E8%AA%9E-2

会期 : 2017年7月29日(土)~8月27日(日)(7月31日、8月7、14、21日は休館します)
開館時間 : 午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
会場 : 太田記念美術館 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
TEL : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料 : 一般 1000円、大高生※学生証をご提示ください。 700円、中学生以下※中学生は学生証(生徒手帳)をご提示ください。 無料(リピーター割引 「月岡芳年 妖怪百物語」および「月岡芳年 月百姿」両展覧会の会期中2回目以降ご鑑賞の方は、半券のご提示にて200円割引いたします。※チケット購入時に半券をご提示下さい。他の割引との併用はできません。
芳年を巡る 入館料相互割引プラン : 下記展覧会のチケットを当館でご提示いただくと、「月岡芳年 月百姿」展を100円割引でご覧いただけます。※1枚につき1名様、1回限り有効、他の割引との併用はできません。
横浜市歴史博物館 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史×妖×芳年 2017年7月29日(土)~8月27日(日)


同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, p.2

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案の定、横浜の「歴史×妖×芳年」展とは「新形三十六怪撰シリーズ」が丸かぶり。

しかし、がっかりしたかというと、そんなことはない。横浜で芳年錦絵の見方を勉強できたおかげで、こちらでは重要技法を見逃すこともなく、じっくり鑑賞することができました。

空摺や正面摺の技を見ようと、伸びをしたり、しゃがんだりしてたのは自分だけだった。

横浜みたいに、技法の解説はないし。太田は浮世絵専門館なので、「そんなの解説するまでもなく、うちの客には常識」ってことなのかもしれない。

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これが図録。一般書籍として、書店でも販売されています。

・日野原健司+渡邊晃・著, 太田記念美術館・監修 (2017.7) 『月岡芳年 妖怪百物語』. 135pp. 青幻舎, 東京.


デザイン : 原条令子

展示作品をコーナーごとに紹介すると、

(1) 初期の妖怪画 16点
(2) 和漢百物語 26点
(3) 円熟期の妖怪画 24点
(4) 新形三十六怪撰 36点

まさに充実の展示です。それにしても、この頃の浮世絵師は多作だ。これでも芳年作品のほんの一部なのだから。

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お気に入りは、


月岡芳年 (1865.8) 和漢百物語 宮本無三四
同書, p.54

躍動感が素晴らしいですね。

他には、やたらと相撲取りの豪傑話(まあ作り話かうわさ話なのだろうけど)が多いのがおもしろい。小野川喜三郎が、三つ目入道に煙草の煙を吹きかけながらの、小馬鹿にした目が素晴らしい。嫌がる三つ目入道の顔との対比も、また絶妙。

しかし芳年が描く妖怪は貧相なものが多く、ちょっとかわいそう。これだけ妖怪画を描いているのに、芳年の立ち位置は飽くまで「退治する側」にある。「妖怪が好きで好きでたまらない」といったタイプではない、と見た。

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月岡芳年 (1885.9) 奥州安達がはら ひとつ家の図
同書, p.80

芳年らしさが発揮された一枚。縦二枚つづりの画面構成を存分に活かした力作だ。

横浜でも太田でも、残念ながら無惨絵系統の展示はほとんどないので、今回の展示の中では、そっち方面の嗜好を垣間見れる貴重な作品。

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なお、今回の図録はページがマットなので、発色が悪いような気がする。横浜と展示が重複している「新形三十六怪撰」で、図録を比較してみるのも面白い。

すると、横浜展示のものとは、摺りが違う版があったりする。これは一点物ではない浮世絵収集の宿命であり醍醐味でもある。

一つ紹介しておこう。


月岡芳年 (1891) 新形三十六怪撰 奈須野原 殺生石之図
同書, p.113


月岡芳年 (1891) 新形三十六怪撰 奈須野原 殺生石之図
横浜市歴史博物館・編 (2017.7) 『丹波コレクションの世界II 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化』. p.90 横浜市ふるさと歴史財団, 横浜.

横浜の図録は、ページがグロスで発色がいい。太田のよりもコントラストを強めにしている。ぼかしなど、微妙な味わいは太田図録の方がよく出ているかもしれない。

しかし、原本の保存状態の違い、図録での図版作製・色調整を考慮したとしても、これは摺り版が違うのではないか、と思った。

太田の展示では、一部の絵柄が刷られていない版を並べて展示してあったりするのも、なかなかおもしろかった。意図的なのか単なるミスプリントなのか、わかっていないそうだ。

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太田記念美術館はこじんまりとしたところなので、作品との距離が近くていい。その分、客が多いと結構窮屈になり、観覧も時間がかかるけど。平日昼間にゆったりした気持ちで見るには、すごくいい場所だと思った。

今回の「妖怪百物語」展は、2017/07/29~08/27と、わずか1ヶ月の短い展示なので、すぐに行った方がいい。もたもたしてると終わっちゃうぞ。

次回、「月百姿」展(2017/09/01~09/24、こちらも短いので注意)ももちろん行きます。

2017年8月5日土曜日

月岡芳年ツアー2017(1) 横浜市歴史博物館「歴史×妖×芳年」展

2017年5月27日土曜日 行きたい! 札幌 「月岡芳年」展

で紹介した、札幌の月岡芳年展には結局行けず、残念だったのですが、そのかわりに

2017年6月28日水曜日 東京・横浜でも「月岡芳年」展

で紹介した、原宿で2回、横浜で1回開かれる芳年展に行くことにしました。

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まず一発目は横浜。

・(公財)横浜市ふるさと歴史財団/横浜市歴史博物館 > 見る : 企画展 > 年度別アーカイブ : H29(2017) > 企画展 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史×妖×芳年 : 詳細を見る > 企画展 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化(as of 2017/06/28)
http://www.rekihaku.city.yokohama.jp/koudou/see/kikakuten/2017/tanba_collection-2/

会期 : 2017年7月29日 (土) ~2017年8月27日 (日)
会場 : 横浜市歴史博物館
開館時間 : 9:00~17:00(券売は16:30まで)
休館日 : 月曜日
観覧料 : 一般 企画展500円(400円) 企画展・常設展共通700円(560円)、大学生・高校生 企画展 200円(160円) 企画展・常設展共通300円(240円)、中学生・小学生企画展100円(80円)企画展・常設展共通100円(80円) ※( )内は20名以上の団体料金です。 ※毎週土曜日は、小・中・高校生は無料です。
芳年を巡る【入館料相互割引プラン】 : 本展チケットの半券を太田記念美術館(外部リンク)の展覧会「月岡芳年 妖怪百物語/月岡芳年 月百姿」(会期:2017年7月29日(土)~8月27日/9月1日(金)~9月24日(日))でご提示いただくと、100円割引で御覧いただけます。(一枚につき一名様、1回限り有効) 他の割引との併用はできません。
主催 : 横浜市歴史博物館
共催 : 横浜市教育委員会
協力 : 神奈川県立歴史博物館
後援 : 朝日新聞横浜総局・神奈川新聞社・産経新聞社横浜総局・東京新聞横浜支局・日本経済新聞社横浜支局・毎日新聞横浜支局・読売新聞横浜支局・NHK横浜放送局・TVK・FMyokohama84.


同展チラシ表


同展チラシ裏

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会場の横浜市歴史博物館は、横浜市営地下鉄ブルーライン/グリーンラインのセンター北駅から歩いて5分。これまで、行き先として視界に入ったことのない地域だったので、新鮮でした。

ところで、頭に何もつかない「センター」って何だろう?

平日でしたが、思ったより客がいた。それでも、作品の前に人がダンゴになっているような状態ではないので、じっくり見ることができました。

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これは図録↓

・横浜市歴史博物館・編 (2017.7) 『丹波コレクションの世界II 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化』. 107pp. 横浜市ふるさと歴史財団, 横浜.


装丁 : 高橋健介

展示作品は、横浜の貿易商・丹波恒夫氏(1881~1971)のコレクションから、78点が選ばれています。ほとんどは神奈川県立歴史博物館の所蔵品。

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月岡芳年(1839~92)は、幕末から明治前半に活躍した浮世絵師(錦絵師)。歌川国芳の弟子です。

2016年5月28日土曜日 府中市美術館 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展と岡田屋鉄蔵 『ひらひら』

で紹介した国芳一門のマンガ

・岡田屋鉄蔵 (2011.12) 『ひらひら 国芳一門浮世譚』. 182pp. 太田出版, 東京.

にも、小僧時代の芳年が出てきますよ。

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初期の武者絵などには、国芳の影響が強く出ていますが、次第に、豪胆な師匠の線とは違った、繊細な線での画風を極めていきます。

特に、糸のように細い線で描かれる美人画は、芳年の十八番。浮世絵というよりも、中国の美人画の影響があるような気がする。

明治になると、国芳の頃よりも一層海外の絵がどんどん入ってきて、絵師もいろいろな刺激を受ける機会が増えたのだと思う。

芳年にも、聖母子像の影響があらわな「一魁随筆 山姥 怪童丸」という作品がある。

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芳年の絵はもとより、彫師の技にも注目。明治期になると、彫師のテクニックもここまで進歩していたのか、と驚くばかりです。とても木版画には見えない。

摺師のテクニックにも仰天しっぱなし。ぼかし、グラデーションなどはお手の物。

空摺(墨をつけずに摺り、紙に凹凸を出す手法)
正面摺(墨の表面に艶を出して、単色の中に模様を浮かび上がらせる手法)
雲母(きら)摺(細かい雲母片を散らす手法)

などの、繊細な摺り技がふんだんに使われています。

会場には、これらの手法についての解説もあり、とてもわかりやすかった。この辺は指摘してもらわないと、素人にはなかなか気づかない。

これらは、図録や画集の印刷では全然出ない微妙な技なので、会場で現物を見るしかない。

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なお、図録カバーでは、この雲母摺部分のクローズアップが使われていて、なかなか通好みの装丁です。気づいた人はどれくらいいるかな?「遠方の星雲を撮影した天文写真」と思った人も多いかもしれない。

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優美な線で描かれた美人画からは一転、芳年が得意とした歴史物・時事もので男を描く際には、勢いのある直線で構成された角張った輪郭になります。特に、線の屈曲点での止めの迫力が芳年の特色。

芳年の売りの一つである「無惨絵」は、この丹波コレクションには少ない。しかし、今回は三枚綴りの歴史・時事ものや新形三十六怪撰シリーズなど、芳年の実力が十分堪能できる展示です。

この辺は、コレクターや展覧会キュレーターの個性が出るところ。今回は比較的一般人にも理解できるような作品ばかりが選ばれている、といえるでしょう。

しかし、逆を言えば、この展覧会だけでは、芳年の全貌は全く見えて来ないのだ。

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「新形三十六怪撰シリーズ」などは、原宿の太田記念美術館の展示とかなり重複していそうだが、一点ものではない浮世絵・錦絵の展覧会の宿命と観念して、もちろんそちらも行きます。

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暁斎や芳年が担った明治期の錦絵は、次第に印刷物に取って代わられます。彼らの後進たちは、印刷物での挿絵の世界に進んでいくわけですが、その世界もまた面白いのだ。

そして、伊藤晴雨、伊藤彦造、高畠華宵などを経て、これら挿絵画家の技は、現代のマンガ家たち、平田弘史、花輪和一、丸尾末広、さらには諸星大二郎の絵にまで続いていく。

手塚治虫を中心に置いてたどる「日本マンガ史」からは、全く見えてこない絵の系譜です。

そういった日本の通俗絵画史・マンガ史のパースペクティブの中に、芳年を置いて考えてみるのも、楽しみ方の一つでしょう。

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さて、次は、原宿・太田記念美術館の「月岡芳年 妖怪百物語」展だ!

2017年7月1日土曜日

「アルチンボルド展」に行ってきました

2017年5月29日月曜日 「アルチンボルド」展は絶対行きます

で宣言したとおり、上野の国立西洋美術館に行ってきました。

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・国立西洋美術館/アルチンボルド展(as of 2017/05/28)
http://arcimboldo2017.jp/

会期 : 2017年6月20日(火)-9月24日(日)
会場 : 国立西洋美術館[東京・上野公園]
http://www.nmwa.go.jp/
〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
休館日 : 月曜日、7月18日(火) *ただし、7月17日(月)、8月14日(月)、9月18日(月)は開館
時間 : 午前9時30分―午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで) *入館は閉館の30分前まで
お問合せ : 03-5777-8600[ハローダイヤル]
観覧料金 : 当日 一般 1,600円 大学生 1,200円 高校生 800円   前売/団体 一般 1,400円 大学生 1,000円 高校生 600円  ※中学生以下は無料 ※団体は20名以上 ※心身に障がいのある方とその付き添い者1名は無料(入館の際に障がい 者手帳をご提示ください) 【前売券】2017年3月21日(火)〜6月19日(月)まで〔国立西洋美術館では6月18日(日)まで販売〕
【チケット販売場所】国立西洋美術館(開館日のみ)、展覧会ホームページほか、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあなど各主要プレイガイドにて販売 ※手数料がかかる場合があります


同展パンフレット, p.1

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毎年書いてるが、この時期、上野は修学旅行の中学生でいっぱい。にぎやかでいいね。

驚いたことに、このArcimboldo展を見に来ている修学旅行生もいた。中学生は無料だからにしても、偉いぞ君たち。こういう変な絵をたくさん見て、変な大人になってくれたまえ。

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入ってすぐの「自分の顔をArcimboldo風にしてくれるアトラクション」は、平日だというのに長蛇の列。少し眺めて、自分がトライするのは諦めた。

でも、見たところ、みんなArcimboldoと言うよりは、その追随者であるFrancesco Zucchi(1562~1622)ぽくなっていたが、どうか?

しかしこれは人気あるだろうね。おもしろいもの。ソフト作製者エライ!

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Arcimboldoと言えば「寄せ絵」だが、今回の展覧会に来ていたArcimboldo作の寄せ絵は

「紙の自画像」、「四季」、連作「四季」4作、連作「四大元素」4作、「ソムリエ(ウェイター)」、「司書」、「法律家」、「庭師/野菜」、「コック/肉」

と、15作品。思ったよりも少なかった。

それでも、今回の目玉である連作「四季」、連作「四大元素」はやっぱりすごかった!

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奥様方に人気なのはやっぱり、花でできた「春」。海棲生物でできた「水」も人気だった。細部の見どころは、これが一番あるしね。

細部を見て理屈脳を作動させつつ、そこから徐々に遠ざかり、顔面であることが認識できた時に、感覚脳に切り替わる瞬間がたまらない。

脳が騙されている様子を、リアルタイムで自分の脳が観察できるのだよ。こんな楽しいことはない。

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あと驚いたのは、発色のよさ。とても450年前(16世紀末)のものとは思えない。保守・修復がよっぽど緻密に管理されてるんだな。油彩画恐るべし。

これは図録↓

・シルヴィア・フェリーノ=パグデン+渡辺晋輔・責任編集 (2017.6) 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』. 244pp. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.


デザイン : 梯耕治

残念ながら、図録は発色が悪い。図録でも悪くはないが、現物の発色は圧倒的な迫力。照明のセッティングも見事なのだろうけど。

とにかく「現物を見ろ」だ。

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Arcimboldoの絵は、寄せ絵以外にも普通の肖像画、生物画、生物画、下絵デッサンなども多数展示。Leonaldo da Vinciの流れをくむルネッサンスの画家であることがはっきりわかる。特に博物学的な絵に長けた人。

Vienna Habsburg家が世界中から集め、収蔵庫Kunst und Wunder Kammer(芸術と驚異の部屋)に保管していた珍しい産物や生物標本を、憑かれたように大量にスケッチしていったArcimboldoだが、彼はそれに飽きたらず、それらを組み合わせてバストショットの肖像画にして行ったのだった。

その過程が理解できるように展示が工夫されていた。

ただし、目玉の寄せ絵は数が少ないので、会場・図録のあちこちに同じ絵(レプリカ)が何度も顔を出す。ちょっとしつこく感じる人もいるかもしれない。

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Arcimboldo以前、以後の寄せ絵も多数展示されていて、寄せ絵のパースペクティヴがだいぶ把握できるようになった。それだけでも、ものすごく面白い。

まず驚くのは、Giuseppe Arcimboldo(1526~93)以前の寄せ絵。

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一番古いのは、なんと「男根の組み合わせで顔面を描いた絵皿」だ。Italy GubbioのFrancesco Urbini(?~1530-36~?)による1536年の作品。

所蔵館であるUniversity of Oxford(UK)のAshmolean Museumのwebsiteで見ることができる。

・Gardens, Libraries & Museums, University of Oxford > Out in Oxford > Ashmolean Museum > Dish with a composite head of penises(as of 2017/06/30)
http://www.glam.ox.ac.uk/outinoxford-ash-dish

性欲に支配された男を風刺したものだという。悪趣味、気持ち悪い、と思う人が多いかもしれない。

しかし、これがArcimboldoに影響を与えたのは、ほぼ確実でしょう。Gubbioは中部イタリアの都市。Milano出身のArcimboldoがこの作品自体、あるいはその類似品を見ている可能性はかなり高い。

今回展示されている作品は、動植物や無機物の寄せ絵ばかりだが、実はArcimboldoには人間の裸体を組み合わせた寄せ絵もある(後述)。それらは特に上記男根寄せ絵と似ている。

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お次は、「風刺作家・詩人Pietro Aretino(1492~1557)の肖像を描いたメダル」。16世紀第2四半期(1525~50頃)の作品。

メダル自体はかなりの数鋳造されているので、web上でもあちこちで見ることができるが、今回展示されていたメダルが最も保存がよい。Museo Nazionale del Bargello, Firenze, Italyの所蔵。北イタリアVeneziaで作られたもので、先ほどのGubbioよりMilanoに近づいている。

・Antiqua.mi > Attilio Troncavini/Medaglie aretiniane "satiriche"(「風刺作家」アレティーノのメダル)(2016/05/02)
http://www.antiqua.mi.it/Troncavini_Medaglie_Mag16.html

表はAretinoの横顔。これは普通。

しかし裏は、髪の毛が男根で出来ている男の横顔だ。この男がAretinoとどういう関係で、なぜんそんな絵を裏においたのか謎。Aretinoのおふざけぶりを賞賛するものなのか、馬鹿にするものなのか・・・。

しかし、男根肖像の絵皿よりは、だいぶ洗練されてきている。

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そして、16世紀後半、Arcimboldoが次々と寄せ絵を作り始める。しかし寄せ絵の素材は、動植物・無機物とすっかり上品になり、男根などという下品な素材は出てこない。

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今回展示されているArcimboldoの寄せ絵は15作品だが、今回来なかった寄せ絵がまだまだある。

Arcimboldoの作品一覧はここを見るといいだろう↓

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > All 170 Artworks of Giuseppe Arcimboldo (as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/Art.nsf/Art_EN?Open&Query=[Champ1]+contains+%22Giuseppe%20Arcimboldo%22

特に惜しいのが、

Vortumnus(Rudolf II)
Basket of Fruit
5作あるThe Seasons
Seated Figure of Summer
The Admiral
四季シリーズも別バージョンが色々あるらしい

あたり。

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代表作ともいえる「ルドルフ2世」は、2017年11月~2018年5月(福岡→渋谷→滋賀)に開催される「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」

・チェコ文化年2017委員会/日本におけるチェコ文化年2017 > イベント : 展覧会/美術 > 神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展(as of 2017/06/30)
http://czechculture2017.jp/310703285412525125401251024093222693034324093-12523124891252312501652981999012398395143006412398199903002823637.html

で別途来ることを知っていたので、私はショックではなかったが、これを楽しみにしていた観覧客も、かなりいたんじゃないかなあ(図録には小さい絵で何度か登場する)。

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私が楽しみにしていた作品で、今回来なかった、そして図録にも取り上げられていない重要な2作品がこれ↓

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > Portrait of Eve(as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/@@/8BWLJR-Giuseppe-Arcimboldo-Giuseppe-Arcimboldo--Portrait-of-Eve

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > Portrait of Adam(as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/@@/8BWLJQ-Giuseppe-Arcimboldo-Giuseppe-Arcimboldo--Portrait-of-Adam

「イヴの肖像」と「アダムの肖像」だ。

これらは、子供の裸体で構成された肖像画なのだ。さあどんどん国芳の寄せ絵に近づいて来たぞ。

裸体で構成されているのは顔面だけで、他の部分は普通の絵なので、動植物を素材とした作品に比べると、完成度は低いかもしれない。

しかし、Arcimboldo作品の中では最も不気味な光を放つ2作品であり、今回来なかったのが本当に残念だ。

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Arcimboldoの奇妙な寄せ絵は、若干の追随者を生んだらしく、それらの寄せ絵もいくつか展示されていた。

しかし大半は、Arcimboldo作品の単なる模写、それもヘタ、であり、見てもあまり面白いものではない。

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上記「イヴの肖像」、「アダムの肖像」とよく似た、裸体を素材に使った寄せ絵が、18~19世紀に突如現れる。

それがBartolomeo Basso(18C~19C)による「女性の頭部」、「男性の頭部」だ。これは間違いなくArcimboldoの「イヴ」「アダム」を見て影響を受けている。そっくりだもの。

なお、これは今回世界初公開で、web上で検索しても全く出てこない。

唯一今回の展覧会の紹介記事に入っているので、そこで見てほしい(もちろん展覧会にも行ってほしい)。

・アソビュー/asoview ! NEWS 読むとお出かけしたくなる、遊びのニュース > エンタメ > 古怒田桃子/「アルチンボルト展」国立西洋美術館で開催中!謎の絵画の全貌を一挙レポート(最終更新:2017/06/21)
https://asoview-news.com/article/12043/

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この手の「裸体寄せ絵肖像画」は、この他には報告がないが、おそらく結構あったんだと思う。

2017年5月29日月曜日 「アルチンボルド」展は絶対行きます

のコメント欄でちょっとだけ触れた、

・松平斉民・収集 (19世紀) 『芸海余波 第五集』. 早稲田大学図書館所蔵, 東京.
http://www.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01646/

に収録されている「裸体寄せ絵肖像画」(線画での模写)の原画は、そんな絵の一つだったに違いありません。

「裸体寄せ絵肖像画」がこういった形で日本まで伝わり、それを見たか、あるいは噂で「こういう変な絵があるよ」と聞いただけかもしれませんが、江戸時代末期の絵師・歌川国芳(1798~1861)が影響を受け、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」をはじめとする寄せ絵を描いた可能性は十分あるのです。


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「国芳の寄せ絵が、Arcimboldoの寄せ絵の影響を受けている」と言われても、「いや、時代も場所もぜんぜん違うでしょ。偶然じゃないの?」と思っていたのだが、先般の府中での「国芳展」と今回の「Arcimboldo展」で、両者が細いながらも糸でつながった。

これには大変興奮しました。いやあ、見てきてホントよかった。

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なお、Arcimboldoから国芳、インド細密画まで、寄せ絵の系譜を総覧した論文が図録に収録されているので、そちらも必読です。

・アンドレアス・バイヤー・著, 岩谷秋美・訳 (2017.6) 多重形象化の芸術 ジュゼッペ・アルチンボルドの寄せ絵と二重化されたイメージの意味生産. 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』所収. pp.137-141. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.

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それから、もう一つ「目からウロコ」だったのが、Arcimboldoがシュールレアリズムに影響を与えている、という事実。

細部はこの上なく写実的なのに、全体はとてつもなく奇妙奇天烈な絵になっているあたりは、確かにシュールレアリズム、特にSalvador Dali(1904~89)と似ている。

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日本の国芳からDaliまで、時代と空間を超えて意外な影響力を放っているGiuseppe Arcimboldo。

これまでは、「変な絵を描くキワモノ画家」という扱いだったArcimboldoは、実は隠れた大画家であることがわかったわけで、今後ますます注目度が上がっていくでしょう。

次回は、今回来なかった絵、特に「イヴ」と「アダム」も含めて、さらに国芳なんかも入れて、もっと大々的に回顧展をやってほしい。まあ、早くても10年後くらいだろうけど・・・。

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(追記)@2017/07/01

図録はArcimboldoの寄せ絵作品を網羅していないので、ちょっと不満が残る。それでこんな本も買ってしまいました。

・レアナ・デ・ジローラミ・チーニー・著, 笹山裕子・訳 (2017.6) 『アルチンボルド アートコレクション』. 255pp. グラフィック社, 東京.
← 英語原版 : Leana De Girolami-Cheney (2013.10) ARCIMBOLDO (MEGA SQUARE). 256pp. Parkstone Press, NY, USA.


Design : Baseline/カバーデザイン : 石岡真一

版型は小さいのですが、今回展覧会に来なかった作品も収録しています。特に「イヴ」と「アダム」も。

じっくり見て国芳と比較しよう。

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(追記)@2017/08/07

Arcimboldoの影響が日本の浮世絵師・歌川国芳に及んでいるのではないか?というお話を、絵入りで補足しました。こちらもどうぞ。

2017年8月7日月曜日 アルチンボルド→国芳の流れ

2017年5月29日月曜日

「アルチンボルド」展は絶対行きます

・国立西洋美術館/アルチンボルド展(as of 2017/05/28)
http://arcimboldo2017.jp/

会期 : 2017年6月20日(火)-9月24日(日)
会場 : 国立西洋美術館[東京・上野公園]
http://www.nmwa.go.jp/
〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
休館日 : 月曜日、7月18日(火) *ただし、7月17日(月)、8月14日(月)、9月18日(月)は開館
時間 : 午前9時30分―午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで) *入館は閉館の30分前まで
お問合せ : 03-5777-8600[ハローダイヤル]
観覧料金 : 当日 一般 1,600円 大学生 1,200円 高校生 800円   前売/団体 一般 1,400円 大学生 1,000円 高校生 600円  ※中学生以下は無料 ※団体は20名以上 ※心身に障がいのある方とその付き添い者1名は無料(入館の際に障がい 者手帳をご提示ください) 【前売券】2017年3月21日(火)〜6月19日(月)まで〔国立西洋美術館では6月18日(日)まで販売〕
【チケット販売場所】国立西洋美術館(開館日のみ)、展覧会ホームページほか、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあなど各主要プレイガイドにて販売 ※手数料がかかる場合があります

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同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, p.2-3


同展パンフレット, p.4

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Arcimboldoの寄せ絵を見て、国芳の寄せ絵を思い出す人は多いでしょう。

江戸時代末期の絵師・歌川国芳(1798~1961)は、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」をはじめとする「寄せ絵」の達人としても有名です。

参考:
・Japaaan日本の文化と ”今” をつなぐ! > Japaaanマガジン > アート > 日本画・浮世絵 > Japaaan編集部/猫や人が入り乱れる!浮世絵の寄せ絵(だまし絵)まとめ(@2013/05/22)
http://mag.japaaan.com/archives/6005

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国芳の「寄せ絵」が、独自の発想であるのか、Arcimboldoの影響であるのか、は議論が分かれるところでしょう。

Giuseppe Arcimboldo(1527~93)は、ルネッサンス期のイタリアの人。その絵は油彩画ですから、19世紀の日本人・国芳がArcimboldo作品の現物を見た可能性はありません。

しかし国芳は、若い頃から西洋画(特に洋書の銅版画挿絵)を集めては自分の絵に反映させるという、創意にあふれた人でした。

であるので、国芳の寄せ絵が、洋書に記されたArcimboldoの寄せ絵の模写あるいは類画)を見て、その影響を受けた可能性は十分あるのです。

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というわけで、このArcimboldo展は、国芳ファン、浮世絵ファンにとっても重要な展覧会なのです。

これは絶対行くぞ。

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(追記)@2017/07/10

ちゃんと行きましたよ(笑)。

2017年7月1日土曜日 「アルチンボルド展」に行ってきました

2017年5月18日木曜日

東京藝術大学大学美術館 「雪村展」 2回目

2017年4月10日月曜日 東京藝術大学大学美術館 「雪村展」

で書いたとおり、「雪村展」2回目行ってきました。

・東京藝術大学+読売新聞社/特別展 雪村 奇想の誕生 公式サイト(as of 2017/04/08)
http://sesson2017.jp/

「特別展 雪村 奇想の誕生」
会期 : 2017.3.28[火]- 5.21[日]
会場 : 東京藝術大学大学美術館[上野公園] 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
開館時間 : 午前10時~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 毎週月曜日 ※ただし5月1日は開館
主催 : 東京藝術大学、読売新聞社


同展パンフレット, p.1

会期もあとわずかなのでお早めに。会期末の土日はこむぞ。

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以下、後期展示の作品を中心に。

比較的初期の作品と思われる「茅濛図」(作品番号22)にすでに、あの粘り気のある波が現れているのを確認できたのは収穫。これぞ「雪村」だ!

同時期の名品「風濤図」(作品番号29)も素晴らしかった。これも「粘り気波」の傑作だ。

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鯉に乗った「琴高仙人・群仙図」(作品番号38)が後期の目玉の一つ。何度みても感動する傑作。次にこれを見れるのはいつのことか・・・。

待てよ、所蔵は京都国立博物館だから、いずれ常設展で展示されることもあるのか。その時にまた会いに行こう。

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「百馬図帖」(作品番号47)は、通期展示だが、何度も見るうちにこの絵の凄さがわかってきたぞ。これ立体になる!

通期展示だが、新発見の「呂洞賓図」(作品番号50)も感動モノだったなあ。変なポーズが魅力。

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ポスターにもなっている、鼻毛をなびかせた「呂洞賓図」(作品番号49)や、「列子御風図」(作品番号39)、「蝦蟇鉄拐図」(作品番号88)など、迫力ある重要作は前期展示が多かったような気がする。

日本画、特に古い絵は照明で痛みやすいため、必ず前後期展示替えがある。前後期二度観覧は必須なのだ。

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「龍虎図屏風」(作品番号65)は、後期の内でも前の方だけの展示だったので、ついに見れなかった。しかし、いつか所蔵館である根津美術館で見てやるぞ!

それと引き替えに見ることが出来たのが「雪村自画像」(作品番号106)。これは後期の内でも後の方だけの展示で、15年前の展覧会では展示がなかったのだ。思ったより小さかったが、感動しました。

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袋の上に乗って笑う「布袋図」(作品番号93)も後期展示のみ。何度みてもなごむ名品。

展示会場冒頭で出迎えてくれる、なごみの怪作「欠伸布袋」(作品番号44)は通期展示。この作品を見るだけでも1600円の価値は充分あると保証します。

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さあ、この展覧会を見ないと絶対後悔しますよ。必ず行ってください。

この展覧会を見れて本当に幸せでした。

2017年4月24日月曜日

府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展 2回目

2017年3月29日水曜日 府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展

で宣言した通り、2回目に行って来ました。大満足でした。


同展パンフレット, 外3面

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今回も冒頭で出迎えてくれた「通俗水滸傳百八人」シリーズ。後期展示も、当然ながら素晴らしい作品ばかり。

いったい体がどうなっているのやら、さっぱりわからないながら、ものすごい迫力の「黒旋風李逵」、原典「水滸伝」では地味な存在なのに、国芳画では存在感たっぷりな「急先鋒索超」など、いきなり充実した内容だ。

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次の役者絵コーナーでは、なんといっても「四代目中村歌右衛門死絵」のどでかい顔が見もの。いやあ、迫力だあ。

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そして、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」ついに見ました。国芳は、他にもこういった「裸体寄せ絵」をたくさん描いているが、やはりこの「みかけハ・・・」は別格の完成度であることが、あらためてわかった。

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さらに「相馬の古内裏」。上記パンフレットの右下、巨大ガイコツですね。現物はやっぱりすごい、そして美しい。

今回は、隣に杉田玄白・著, 大槻玄沢・重訂, 南小柿寧一・画, 中伊三郎・版刻 (1826) 『重訂解体新書図編』(これもはじめて見た!)が置いてあり、この絵の解剖学的な正確さを確認させてくれた。

もう至れり尽くせりの展示です。

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「宮本武蔵と巨鯨」も後期のみの展示。いやあ感動ですね。

この絵を描くシーンは、マンガ『ひらひら 国芳一門浮世譚』でも取り上げられていますから、そちらも是非どうぞ。

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同展パンフレット, 内3面

とにかく、これだけ充実した展覧会はめったにない。おまけに2回見てもわずか1050円なのだ。他の展覧会1回分よりまだ安い。

こりゃあ、見ない手はありませんぜ。

遠くに住んでいる方も、連休中に無理に遠出してでも見る価値は絶対あります。まさに「見逃すな!」。

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もし見逃したら、しゃーない。その時は図録を買いましょう。一般書店で市販されています。

・府中市美術館(金子信久+音ゆみ子)・編著 (2017.3) 『歌川国芳 21世紀の絵画力』. 287pp. 講談社, 東京.


ブックデザイン : 島内泰弘デザイン室

図録の充実ぶりも異常なほどです。展示に忠実な構成・レイアウトなので、行けなかった人もかなり満足できるでしょう。

2017年4月22日土曜日

サントリー美術館 「絵巻マニア列伝」展、特に「放屁合戦絵巻」

前回の「暁斎展」を見たあと、渋谷から六本木に移動して、この「絵巻マニア」展を見たのでした。展覧会のハシゴ。

東京ミッドタウンははじめて行ったのだが、どこも高級すぎて私には無縁の店ばかり。サントリー美術館くらいか、用があるのは。

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・サントリー・ホールディングス/サントリー > 文化・社会・スポーツ > 芸術・文化・学術 > サントリー美術館 > 展覧会 > 六本木開館10周年記念展 絵巻マニア列伝(as of 2017/04/22)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_2/


同展パンフレット/ポスター, 表

「開館10周年記念展 絵巻マニア列伝」
会場 : サントリー美術館(六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階)
会期 : 2017年03月29日 ~ 2017年05月14日
入場料 : 一般 当日 1300円(前売 1100円)  大学・高校生 当日 1000円(前売 800円)
開館時間 : 10:00から18:00まで 金曜日は20:00まで, 土曜日は20:00まで
休館日 : 火曜休館 火曜日が祝日の場合は火曜日開館、翌日休館
住所 : 〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンサイド
電話 : 03-3479-8600
ファックス : 03-3479-8643
アクセス : 都営地下鉄大江戸線六本木駅直結, 東京メトロ日比谷線六本木駅と直結予定, 東京メトロ千代田線乃木坂駅から徒歩約3分

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これは図録↓

・サントリー美術館・編集 (2017.3) 『開館10周年記念展 絵巻マニア列伝』. 239+VIIIpp. サントリー美術館, 東京.


デザイン : 高岡健太郎(日本写真印刷コミュニケーションズ)

表紙デザインがシンプルすぎる。絵巻を入れたものにしてほしかったが、もしかすると予算が尽きたか?

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この展覧会は、絵巻を愛好したり、保護したりした人々が残した文献を示しながら、絵巻の歴史をたどる、というユニークな企画。

絵巻物となると、一般には「美術」というより「日本史」の文脈で紹介されるケースが多く、通常の美術展よりはとっつきにくいかもしれない。

そのせいか、無茶込みだった「暁斎展」に比べ、休日なのにそこそこの入りで、じっくり観覧することができました。

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この展覧会に行った主目的は、「放屁合戦絵巻」と「福富草紙」。どちらも「屁」を題材とした珍しい絵巻。

こういった絵巻では、幕末の「屁合戦絵巻」(早稲田大学所蔵)が一番有名。

・早稲田大学 > Academics 学部・大学院・図書館 > 図書館 : 早稲田大学図書館 > コレクション・刊行物 Collections & Publications : 古典籍総合データベース > 屁合戦絵巻(as of 2017/04/22)
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/chi04/chi04_01029/

で見ることができる。

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サントリー美術館の「放屁合戦絵巻」の方は、平安時代12世紀中頃の定智・筆の原本を、室町時代1449年に模写した模本。原本は現存しない。

平安末期の風俗を知る上でも重要な作品なのだが、そんなことよりあまりの下らなさに、笑いをこらえられない。


同展図録, pp.94-95, 図版38

調べてみたが、同絵巻を概観できるサイトがなかったので、低解像度で図録図版を紹介します。新たに同絵巻の全貌を見ることができるサイトが出てきたら、これは消します。

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巻頭では、坊さんたちが豆を食べたり、全裸で腹ばいになって腹を冷やしたりと、放屁の準備に余念がない。

そうして始まった放屁合戦。着衣では屁の勢いが衰えるので、尻だけ丸出し、あるいはなぜか全裸(笑)。間抜けだ。

屁は放物線、というより直線で描かれ、そのすごい勢いが伺える、ってまあこれは誇張なのだろうけど。

屁を扇でよけるわ、帽子が屁で飛ばされるわ、陰部丸出しで全裸でんぐり返しをする男はいるわ、大勢の屁を袋に詰めて一気に吹き出すわ、大騒ぎ。

最後は、この放屁術師範らしい老尼さんが出てきて、屁で扇を割る模範演技を見せて終わり。

なんだこりゃ!

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実はこの老尼さん、放屁曲芸の達人・高向秀武(たかむこのひでたけ)の娘だとされている。

その高向秀武と、これを真似しようとして失敗する福富の物語(いわゆる「正直爺さん・意地悪爺さん」譚の一種)を描いた「福富草紙」(15世紀)が、この「放屁合戦絵巻」と一緒に展示されている。

しかし、この高向秀武、その娘の放屁術師範、実在したのだろうか?絵巻の内容を見ると、とても現実のことには思えないが・・・。

そんなことも考えてしまうこの展示、「屁」ファンには必見。

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「放屁合戦絵巻」はサントリー美術館の所蔵なので、いずれまた公開される時があるだろう。その時に、また見に行きたい。

また、こういった「放屁合戦絵巻」はいろんな時代、あちこちにあるらしいので、一度、それらを一堂に会した「放屁合戦大絵巻展」を開催してほしい。これはサントリー美術館の仕事になるでしょう。

図録収録の

・上野友愛 (2017.3) 数寄から広がる絵巻好き. サントリー美術館・編集, 図録『開館10周年記念展 絵巻マニア列伝』所収. pp.191-193. サントリー美術館, 東京.

も必読。

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他にも貴重な絵巻が続々登場。


同展パンフレット/ポスター, 裏

複製とはいえ、「伴大納言絵巻」(平安時代12世紀)を見れたのはよかったなあ。右から左へと時間が進んでいく展開、モブの描き分け、人の向きが意味する所、など絵巻の基本を学ぶにも最適な素材です。

他に印象的だったものを上げておくと、

「病草紙断簡」(平安時代12世紀)-変な病気の人を描いた草紙

「後三年合戦絵巻」(室町時代1347年)-平安時代奥州での戦を描いた絵巻、保存状態は悪いが迫力ある

「九相図」(鎌倉時代14世紀)-死体が腐っていく様を描いた気持ち悪い絵巻。前期展示はその江戸時代17世紀の模本だったが、原本に非常に忠実

「玄奘三蔵絵」(鎌倉時代14世紀)-そんな古いのものとは思えない保存のよさ。色彩の美しさに目を見張る。

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松平定信が絵巻保存、修復、模本作製に大きな功績があったことは、今回はじめて知った。まさに絵巻マニアだ。

「蒙古襲来絵詞」(鎌倉時代13世紀)もそんな定信のすすめで、熊本藩から江戸に運ばれて模本が作成されることにより、広く知られるようになった。

現在は宮内庁所蔵であるその原本が、今回観覧できるのだ。実に感動ですよ。歴史の教科書でしか見たことのないあの武者絵が目の前に。

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この展覧会の趣旨である、文献に記された記録とともに絵巻を楽しむ、という点では、古文書の筆使いを見るのも楽しい。なかなか読めないけど。

地味ながら、すごく面白い展覧会でした。是非どうぞ。

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展覧会に行く前に、この辺で予習しておくのもいいですよ。

・ほぼ日/ほぼ日刊イトイ新聞 > ほぼ日手帳2017spring > ほぼ日手帳マガジン > サントリー美術館学芸員・上野友愛・談/見方がわかれば、おもしろい!絵巻-emaki-の世界1~3(2017-04-14-FRI~04-16-SUN)
http://www.1101.com/store/techo/ja/magazine/2017/emakinosekai/2017-04-14.html?device=pc
・産経新聞社/産経ニュース > ライフ > 学術・アート > 産経新聞文化部・黒沢綾子/2017.4.22 11:00 【展覧会に行こう!】 「絵巻マニア列伝」 下ネタも不眠の悩みも…いにしえのオタクたちの愛好品から見えるのは今と変わらぬ姿
http://www.sankei.com/premium/news/170422/prm1704220021-n1.html

2017年4月19日水曜日

Bunkamuraザ・ミュージアム 「これぞ暁斎!」展

今年の春は、日本画展覧会大当たりの年で、「国芳」展、「雪村」展に続いて、観覧するのはこの「暁斎」展で3つ目だ。

実はこの日は、もう一つ展覧会をハシゴしたのだった。それは次回。

「国芳」展、「雪村」展とも後期にそれぞれもう一回行く予定だし、ほんともう忙しい。だけどうれしい。

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・東急文化村/Bunkamura > 展覧会 > ザ・ミュージアム > これまでの展覧会 > 2017年の展覧会 2/23(木)-4/16(日) ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_kyosai/

「ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」
開催期間 : 2017/2/23(木)-4/16(日) ※会期中無休
開館時間 : 10:00-19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場 : Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)
主催 : Bunkamura、フジテレビジョン、東京新聞


同展パンフレット, p.1

なんとか会期末に滑りこむことができた。しかし、まあすごい人出。大手企業+大手マスコミ主催展覧会の集客力をあらためて思い知った。

とはいえ、暁斎はいつからこんなにメジャーになったのか?驚くばかりだ。

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暁斎の絵はこれまでも、いろんな展覧会で見てきたが、これだけまとまった作品数を見るのは初めて。今回はUKのコレクターIsrael Goldman氏蒐集による暁斎コレクション。

展示数もすごい。ただでさえ、濃い絵を描く暁斎がこれだけズラリと並んだのですから、もうお腹いっぱいでした。

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同展パンフレット, p.2-4.

特に、展示前半、見ても見ても果てしなく続く「鴉図」に圧倒された。溌墨タッチで描かれる枝と鴉はまさに名人芸。また薄墨の使い方も大胆かつ細やかだ。

思ったより錦絵は多くなかったな。今回の展覧会は原画が多い。錦絵だと、描き込みの多い線から、どぎつい色からして、ほんとに濃い絵。

あこがれの「墨合戦」をようやく見れて感動。「放屁合戦」はなぜか見逃したかも。豆本だったからなあ。惜しいことをした。実は同じ日に別の美術館でもう一つ(というか、こっちが元祖)の「放屁合戦」を見ていたのでした。

名作の呼び声も高く、今回の展覧会の目玉でもある「地獄太夫と一休」、「百鬼夜行図屏風」。いやあ迫力ですね。ようやくこれが間近で見ることができたか・・・。

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これは図録

・及川茂・構成 (2017) 『これぞ暁斎! ゴールドマンコレクション』. 286pp. 東京新聞, 東京.


デザイン : 桑畑吉伸

それにしても多彩・多作な人だ。本格水墨画から彩色画、錦絵、挿絵、豆本、そして春画まで。

春画がきちんと展示されていたのにはちょっと驚いた。昨今の春画ブームのおかげなんだろうけど。春画もようやく芸術作品として、社会的に認知されてきたことを喜びたい。

春画って、今見るとエロさはもはや感じないよね。おもしろさとグロさは感じるけど。

若い女性も平気で春画をじっくり見ていたのには感心した。いいぞ、日本の女衆。

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さっきも描いたけど、とにかく暁斎は多作すぎる。今回の展示品だってほんの一部だ。「釈迦如来図」、「大和美人図屏風」などまだ見たことない名品が山のように残っている。そのうち、埼玉県蕨市にある河鍋暁斎記念美術館にも行ってみよう。

暁斎展は、東京のあと高知、京都、金沢と巡回する。これらの地域の皆さんは、是非お見逃しなく。

2017年4月10日月曜日

東京藝術大学大学美術館 「雪村展」

「15年ぶりの大回顧展!」ということを聞き、もう15年経ったか・・・と感慨深かった。雪村周継(せっそん・しゅうけい)の水墨画は、私が日本画・東洋画の面白さに気づいたきっかけとなったものなので、今回も当然見に行きました。

あとで15年前の展覧会についても触れましょう。

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・東京藝術大学+読売新聞社/特別展 雪村 奇想の誕生 公式サイト(as of 2017/04/08)
http://sesson2017.jp/

「特別展 雪村 奇想の誕生」
会期 : 2017.3.28[火]- 5.21[日]
会場 : 東京藝術大学大学美術館[上野公園] 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
開館時間 : 午前10時~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 毎週月曜日 ※ただし5月1日は開館
主催 : 東京藝術大学、読売新聞社


同展パンフレット, p.1

図録はこれ↓

・東京藝術大学大学美術館+読売新聞社・編集 (2017) 『特別展 雪村 奇想の誕生』. 247+E16pp.+折込. 読売新聞社, 東京.



行ったのは平日でしたが、上野公園は花見客でごったがえ。でもはずれの東京藝大まで来ると、人出もだいぶ減りちょっと一息。雪村展もそこそこの入りでしたから、比較的ゆっくり見ることができました。

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雪村周継(1490ころ-1580ころ)は、戦国時代に主に関東~奥州で活躍した禅僧・絵師。とにかく絵が面白いのが特徴だ。特に仙人画に面白いものが多い。

前掲のパンフレットを見てみましょう。

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1p目は、ヒゲとマユ毛(そして鼻毛も)風になびかせつつ頭上を見上げる呂洞賓、巨鯉に乗る琴高仙人が大きく取り上げられている。

これだけでも、雪村の面白さが十二分に伝わってくると思う。それにしても「呂洞賓図」は人気だね。15年前の展覧会でも、ポスター/パンフレットは「呂洞賓図」だった。

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パンフレットを開くと、そこにもおかしな仙人たちが勢揃い。


同展パンフレット, p.2-3

空に浮かびながら風に吹かれている「列子御風図」(右側)が、私の一番のおすすめ。15年前、この絵を見つけて「雪村展」を見に走ったのだった。

正面から風に立ち向かうのではなく、背中から風が吹いているのがまたいい。仙人はこうでなくちゃ。理想の境地だね。

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左上の「蝦蟇鉄拐図」も、おもしろいこと限りなし。図の細部まで面白すぎるので、今回も絵の前で長居してしまった(これは前期のみの展示なので注意!)。

右下の「欠伸布袋・紅白梅図」も爆笑もの。なんでまたアクビしてる布袋を描こうと思ったんだか。変だ。展覧会場では、真っ先にこの「欠伸布袋」が出迎えてくれますからお楽しみに。

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下の「風濤図」、「龍虎図屏風」で描かれている、スパゲッティというかイソギンチャクの触手みたいな、粘り気のある波が雪村の特徴。これを見るたびに笑いがこみ上げてくる。変だよねえ。

雪村は山水画もたくさん残しているのだが、どの絵もどこかしらバランスの悪いところがあり、そこが面白い。見ていてひっかかりが多い絵、といえるかもしれない。

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15年前見た時に比べて、ずっと立派な会場なので、絵との距離がちょっと遠いような気がする。そこが今回はちょっと残念だ。

地下展示場の入り口正面に展示されている「龍虎図屏風」二雙がレプリカとはいえ素晴らしい。感動した。なお、本物は後期展示(4/25~)。後期も見に行くからいいんだけど。

重要な絵が、かなり多く前後期入れ替え展示になっているので、1回だけしか行かない人は、どっちに行くか結構悩むでしょうね。観覧料けっこう高いし(1600円)。

まあでも、これを逃すと次回はきっとまた15年後だ。1回でもいいから見ておいたほうがいいですよ。

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さて、15年前の展覧会にも触れておきましょう。

2002年は、1~9月にかけて、千葉市美術館、渋谷区立松濤美術館、山口県立美術館、福島県立美術館を巡回したのだが、私が見たのは、

「雪村 戦国時代のスーパー・エキセントリック(特別展)」
会場 : 渋谷区立松濤美術館 〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14 電話:03-3465-9421
会期 : 2002年4月2日(火)~5月12日(日)
料金 : 【入館料】 一般300(240)円、小中学生100(80)円 ※今年度より、毎週土曜日は、小中学生は入館無料です ※( )内は10名以上の団体料金

参考:
・Internet Museum > 展覧会・イベントの検索 > 雪村 -戦国時代のスーパー・エキセントリック- (特別展)
http://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input%5Bid%5D=10155

でした。


同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, p.2

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図録はこちら↓

・山下裕二・監修 (2002) 『雪村展 戦国時代のスーパー・エキセントリック』. 216pp.+折込. 浅野研究所, 東京.


デザイン・制作:美術出版デザインセンター

琴高仙人が表紙のハードカバー。とても力のあるデザインです。

山下裕二先生の、展示・図録解説がまたおもしろかった。「蝦蟇鉄拐図」の解説なんか、「いいぞ、いいぞ、蝦蟇ちゃん!」なんだから笑える。

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松濤美術館はこぢんまりとした所なので、絵との距離がとても近く、今回よりも濃密に雪村の絵を楽しむことができたような気がします。

当時は「雪村」と言っても知る人は少なく(そういう自分もこの時初めて知ったのだが)、観覧客もあまり多くありませんでした。

当時、東京国立博物館では「没後500年 特別展 雪舟」も開催されており、そちらも行ったのだが、そっちはまあすごい人出。絵を見るのに一苦労だった。こちらの「雪村」はゆったり見れて楽しかったなあ。

おまけに観覧料が300円と激安だった。当然、迷わず後期も見に行ったわけです。

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今回の「雪村展」でも後期も行くわけですが、前回展示がなかった「雪村自画像」が展示される5月9日以降に行こうと思っています。これも楽しみだ。

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(追記)@2017/04/10

どうでもいいが、「りょどうひん」、「きんこうせんにん」、「がまてっかい」を一発変換してくれるGoogle IMEは、いったいどうなってんだ?

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(追記)@2017/04/17

私の一番のお気に入り「列子御風図」だが、これが実は三幅対であったらしいことも、今回はじめて知った。

これは、狩野常信による縮図(今回の図録p.161, 図版114 狩野常信筆 狩野家縮図)に記されている。

・東雲のブログ > 2011年2月26日 (土) 列子御風図
http://tohun.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-195c.html

に、その三幅対の再現図が示されています。いやあ、こうだったのか、という「目からうろこ」の再現図です。

それにしても両側の図幅はどこに行ったのやら・・・。今回初登場の「呂洞賓図」みたいに、いつかお目にかかれる日を楽しみにしていよう。

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今回の展覧会では、雪村の後進への影響についての展示が多かった(展示の最後の方)。

雪村の作品自体が濃すぎるせいもあり、観覧している間は、あまりピンと来なかったが、このように図録などを見ながらいろいろ考えていると、じわじわ効いてくるね。素晴らしい展示力・企画力であったことを実感。

もう一度見に行くのが、ますます楽しみになった。

2017年3月29日水曜日

府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展

に行ってきました。

・府中市美術館・主催 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展. 2017年3月11日~5月7日. 府中市美術館, 府中.



・府中市美術館 > 企画展 > 企画展一覧 > 歌川国芳 21世紀の絵画力(更新日:2017年2月27日)
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/kuniyoshi21.html

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ここは毎年春に日本画の展覧会を開いてくれるので、いつも楽しみ。

今年は「国芳」だ!やったー。楽しいぞ。

これは図録

・府中市美術館(金子信久+音ゆみ子)・編著 (2017.3) 『歌川国芳 21世紀の絵画力』. 287pp. 講談社, 東京.


ブックデザイン : 島内泰弘デザイン室

一般書店でも販売されるようです。

国芳の絵の有名どころ、少なくとも私レベルが知っているような絵はほとんど展示されている。もちろん図録にも収録。この充実ぶりはちょっとすごいよ。

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最初に展示されているのは、国芳の名を世に轟かせた「通俗水滸傳百八人」シリーズ。

その勇ましさにも圧倒されるが、一番気になったのは、その中の「通俗水滸傳百八人一個 金槍手徐寧」(図録p.17 図版1-17)。

見得を切る徐寧ももちろん素晴らしいのだが、斬られて落ちる鳥をその傍らで指差す二人がとても気になる。

これは浮世絵のタッチとは異なり、細い線で写実的に描かれている。西洋絵画のうちでも、銅版画(エッチング)のタッチである。

国芳が西洋銅版画からヒントを得ていたのは知っていたが、こんな駆け出しの頃(1820年代末、国芳30歳位)から西洋絵画を取り入れていたとは知らなかった。収穫だ。

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展示テーマに「何が私たちの心をつかむのか」というのがあったが、そりゃあもう、おもしろいんだもの!つかむつかむ。

現代人が見ても充分面白いんだから、当時の人々は狂喜したろう。特に役者絵なんてのは、今の芸能人の映像みたいなもんだから、我々の百倍楽しんでいたはず。

老中・水野忠邦様のしみったれた「天保の改革」でかけられた規制をくぐり抜けての、猫に模した役者絵、落書きに模した役者絵など、トンチの効いた絵に、お役人様はホゾを嚙み、江戸っ子は快哉を叫んだことであろう。

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特に気に入ったのは、団扇絵シリーズ(図録pp.148-157、図版2-10~18)。

うちわの中央に大きく描かれた役者絵。大胆かつバランスもよく、とてもモダンなデザインだ。一つほしい。

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展覧会は前・後期に分かれており、4月11日から後期。人気の高い「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」、「宮本武蔵と巨鯨」などは後期展示になる。

また行くぞ。入場券の半券を持って行くと、入場料は半額になるし。

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これは出口に置いてあった「国芳スタンプ」12種。これもなかなか楽しい。蛙の子を連れた金魚の絵、大好き。

国芳は、子犬や猫の絵も得意でたくさん残している。犬猫ファンも必見の展覧会だ。

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2016年5月28日土曜日 府中市美術館 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展と岡田屋鉄蔵 『ひらひら』

でも挙げたように、国芳一門を取り上げたマンガがあるのです。

・岡田屋鉄蔵 (2011.12) 『ひらひら 国芳一門浮世譚』. 182pp. 太田出版, 東京.
← 初出 : web連載空間 ぽこぽこ. 2011年2月~11月.
http://www.poco2.jp/


装丁 : 芥洋子

もう一度紹介しておきましょう。というのも、美術館の人と話をしたら、このマンガの存在を全くご存じなかったから。たぶん一般にも知名度は低いんだろうな、ということで。

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主人公は、お武家から弟子入りした、架空の絵師・伝七(歌川芳伝)。しかし、作者が本当に描きたかったのはやはり国芳自身だろう。

国芳はかなり豪快なオヤジに描かれている。まあ、大体自分がイメージする国芳とぴったりで気に入っている。


同書, p.179.

本編では使われなかったが、この絵いいですね。

これの元絵は「勇国芳桐対模様(いさましくによしきりのついもよう)」(図録pp.142-143、図版1-148)だ。

国芳一門の行列の先頭で、音頭を取る国芳の後ろ姿。これを左右ひっくり返して、前向かせたのが上の絵になる。本当はものすごくカラフルで豪奢な羽織。これはぜひ展覧会で現物を見てほしい。

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実は、岡田屋鉄蔵さんは2016年に崗田屋愉一と改名。

そして上記『ゆらゆら』の続編、今度は国芳自身が主人公のマンガが発売になります。

・崗田屋愉一 (2017.3) 『大江戸国芳 よしづくし』(ニチブンコミックス). 232pp. 日本文芸社, 東京.

こちらも参考にどうぞ。

・日本文芸社 > コミックス > 内容紹介 ニチブンコミックス 大江戸国芳よしづくし 崗田屋 愉一 著
http://www.nihonbungeisha.co.jp/books/pages/ISBN978-4-537-13563-3.html
・崗田屋愉一/岡田屋鉄蔵/OKDY(as of 2017/03/28)
http://okdy.sakura.ne.jp/top.html
・Okadaya Tetuzoh -OKDY- @YuichiOkadaya facebook(as of 2017/03/28)
https://www.facebook.com/YuichiOkadaya/

美術館の売店で販売するにはそぐわないかもしれないが、国芳入門としてこういうマンガを読むのもいいと思うんだがな。府中市美術館にも是非置いてほしい。

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さて、4月11日以降また行くのが楽しみ。安いし(大人700円)、皆さんも是非どうぞ。

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(追記)@2017/04/27

「国芳展」2回目のお話はこちらで↓

2017年4月24日月曜日 府中市美術館 「歌川国芳 21世紀の絵画力」展 2回目

2017年2月12日日曜日

谷口ジロー先生逝去

・産経ニュース > 訃報 > 2017.2.12 00:06 漫画「孤独のグルメ」「『坊っちゃん』の時代」…谷口ジローさんが死去 69歳
http://www.sankei.com/life/news/170212/lif1702120013-n1.html

まだまだ描いてくれると思っていたのに・・・残念です。

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遺作は、

・谷口ジロー (2016.11) 『ヴェネツィア』. 128pp. 双葉社, 東京. 
・谷口ジロー (2015.9) 『孤独のグルメ 2』. 141pp. 扶桑社, 東京.
・谷口ジロー (2015.2) 『千年の翼、百年の夢』(ビッグコミックススペシャル). 142pp. 小学館, 東京.

あたりになりそうだが、やっぱり『千年の翼、百年の夢』が掉尾を飾るのにふさわしい作品だと思う。


















カバー・デザイン : 蓑原圭介(ロケット・ボム)

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ルーブル美術館の歴史をめぐる幻想連作。美しい作品です。谷口先生の興味を特に惹いたのは「サモトラケのニケ」。復元(想像)されたニケが狂言回しとして何度も登場します。


















同書, p.118

最終ページよりも、このページが終わりにふさわしいような気がする。

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最近は『孤独のグルメ』で一般にもよく知られているけど、それ以前の作品も読んでほしい。

とはいえ自分も、谷口作品の熱心な読者とはいえず、『孤独のグルメ』以降、身近な人となったのはみんなと同じです。それまでは結構とっつきにくい作風・絵柄だったのだ。

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『「坊っちゃん」の時代』(原作 : 関川夏央)、『歩く人』、『父の暦』、『遥かな町へ』、『犬を飼う』、『散歩もの』あたりの後期作品ですかね、よく読んだのは。あんまり読んでないね、やっぱり。

それにしても、最後まで質の高い絵を描いておられた方でした。なかなかできる仕事じゃないです。

たくさんの作品をありがとうございました。ご冥福をお祈りします。