「15年ぶりの大回顧展!」ということを聞き、もう15年経ったか・・・と感慨深かった。雪村周継(せっそん・しゅうけい)の水墨画は、私が日本画・東洋画の面白さに気づいたきっかけとなったものなので、今回も当然見に行きました。
あとで15年前の展覧会についても触れましょう。
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・東京藝術大学+読売新聞社/特別展 雪村 奇想の誕生 公式サイト(as of 2017/04/08)
http://sesson2017.jp/
「特別展 雪村 奇想の誕生」
会期 : 2017.3.28[火]- 5.21[日]
会場 : 東京藝術大学大学美術館[上野公園] 〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
開館時間 : 午前10時~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 毎週月曜日 ※ただし5月1日は開館
主催 : 東京藝術大学、読売新聞社
同展パンフレット, p.1
図録はこれ↓
・東京藝術大学大学美術館+読売新聞社・編集 (2017) 『特別展 雪村 奇想の誕生』. 247+E16pp.+折込. 読売新聞社, 東京.
行ったのは平日でしたが、上野公園は花見客でごったがえ。でもはずれの東京藝大まで来ると、人出もだいぶ減りちょっと一息。雪村展もそこそこの入りでしたから、比較的ゆっくり見ることができました。
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雪村周継(1490ころ-1580ころ)は、戦国時代に主に関東~奥州で活躍した禅僧・絵師。とにかく絵が面白いのが特徴だ。特に仙人画に面白いものが多い。
前掲のパンフレットを見てみましょう。
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1p目は、ヒゲとマユ毛(そして鼻毛も)風になびかせつつ頭上を見上げる呂洞賓、巨鯉に乗る琴高仙人が大きく取り上げられている。
これだけでも、雪村の面白さが十二分に伝わってくると思う。それにしても「呂洞賓図」は人気だね。15年前の展覧会でも、ポスター/パンフレットは「呂洞賓図」だった。
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パンフレットを開くと、そこにもおかしな仙人たちが勢揃い。
同展パンフレット, p.2-3
空に浮かびながら風に吹かれている「列子御風図」(右側)が、私の一番のおすすめ。15年前、この絵を見つけて「雪村展」を見に走ったのだった。
正面から風に立ち向かうのではなく、背中から風が吹いているのがまたいい。仙人はこうでなくちゃ。理想の境地だね。
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左上の「蝦蟇鉄拐図」も、おもしろいこと限りなし。図の細部まで面白すぎるので、今回も絵の前で長居してしまった(これは前期のみの展示なので注意!)。
右下の「欠伸布袋・紅白梅図」も爆笑もの。なんでまたアクビしてる布袋を描こうと思ったんだか。変だ。展覧会場では、真っ先にこの「欠伸布袋」が出迎えてくれますからお楽しみに。
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下の「風濤図」、「龍虎図屏風」で描かれている、スパゲッティというかイソギンチャクの触手みたいな、粘り気のある波が雪村の特徴。これを見るたびに笑いがこみ上げてくる。変だよねえ。
雪村は山水画もたくさん残しているのだが、どの絵もどこかしらバランスの悪いところがあり、そこが面白い。見ていてひっかかりが多い絵、といえるかもしれない。
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15年前見た時に比べて、ずっと立派な会場なので、絵との距離がちょっと遠いような気がする。そこが今回はちょっと残念だ。
地下展示場の入り口正面に展示されている「龍虎図屏風」二雙がレプリカとはいえ素晴らしい。感動した。なお、本物は後期展示(4/25~)。後期も見に行くからいいんだけど。
重要な絵が、かなり多く前後期入れ替え展示になっているので、1回だけしか行かない人は、どっちに行くか結構悩むでしょうね。観覧料けっこう高いし(1600円)。
まあでも、これを逃すと次回はきっとまた15年後だ。1回でもいいから見ておいたほうがいいですよ。
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さて、15年前の展覧会にも触れておきましょう。
2002年は、1~9月にかけて、千葉市美術館、渋谷区立松濤美術館、山口県立美術館、福島県立美術館を巡回したのだが、私が見たのは、
「雪村 戦国時代のスーパー・エキセントリック(特別展)」
会場 : 渋谷区立松濤美術館 〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14 電話:03-3465-9421
会期 : 2002年4月2日(火)~5月12日(日)
料金 : 【入館料】 一般300(240)円、小中学生100(80)円 ※今年度より、毎週土曜日は、小中学生は入館無料です ※( )内は10名以上の団体料金
参考:
・Internet Museum > 展覧会・イベントの検索 > 雪村 -戦国時代のスーパー・エキセントリック- (特別展)
http://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input%5Bid%5D=10155
でした。
同展パンフレット, p.1
同展パンフレット, p.2
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図録はこちら↓
・山下裕二・監修 (2002) 『雪村展 戦国時代のスーパー・エキセントリック』. 216pp.+折込. 浅野研究所, 東京.
デザイン・制作:美術出版デザインセンター
琴高仙人が表紙のハードカバー。とても力のあるデザインです。
山下裕二先生の、展示・図録解説がまたおもしろかった。「蝦蟇鉄拐図」の解説なんか、「いいぞ、いいぞ、蝦蟇ちゃん!」なんだから笑える。
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松濤美術館はこぢんまりとした所なので、絵との距離がとても近く、今回よりも濃密に雪村の絵を楽しむことができたような気がします。
当時は「雪村」と言っても知る人は少なく(そういう自分もこの時初めて知ったのだが)、観覧客もあまり多くありませんでした。
当時、東京国立博物館では「没後500年 特別展 雪舟」も開催されており、そちらも行ったのだが、そっちはまあすごい人出。絵を見るのに一苦労だった。こちらの「雪村」はゆったり見れて楽しかったなあ。
おまけに観覧料が300円と激安だった。当然、迷わず後期も見に行ったわけです。
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今回の「雪村展」でも後期も行くわけですが、前回展示がなかった「雪村自画像」が展示される5月9日以降に行こうと思っています。これも楽しみだ。
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(追記)@2017/04/10
どうでもいいが、「りょどうひん」、「きんこうせんにん」、「がまてっかい」を一発変換してくれるGoogle IMEは、いったいどうなってんだ?
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(追記)@2017/04/17
私の一番のお気に入り「列子御風図」だが、これが実は三幅対であったらしいことも、今回はじめて知った。
これは、狩野常信による縮図(今回の図録p.161, 図版114 狩野常信筆 狩野家縮図)に記されている。
・東雲のブログ > 2011年2月26日 (土) 列子御風図
http://tohun.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-195c.html
に、その三幅対の再現図が示されています。いやあ、こうだったのか、という「目からうろこ」の再現図です。
それにしても両側の図幅はどこに行ったのやら・・・。今回初登場の「呂洞賓図」みたいに、いつかお目にかかれる日を楽しみにしていよう。
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今回の展覧会では、雪村の後進への影響についての展示が多かった(展示の最後の方)。
雪村の作品自体が濃すぎるせいもあり、観覧している間は、あまりピンと来なかったが、このように図録などを見ながらいろいろ考えていると、じわじわ効いてくるね。素晴らしい展示力・企画力であったことを実感。
もう一度見に行くのが、ますます楽しみになった。
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