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2017年11月18日土曜日

国立西洋美術館 「北斎とジャポニズム」展

に行ってきました。

・読売新聞/北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃(as of 2017/11/16)
http://hokusai-japonisme.jp/index.html

北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
開催概要
会期 : 2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
会場 : 国立西洋美術館 [東京・上野公園]
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
開館時間 : 午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後8時。ただし 11/18は午後5時30分まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
観覧料(税込)当日(団体) : 一般1,600円(1,400円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) 中学生以下 無料(無料)
主催 : 国立西洋美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ
特別協賛 : キヤノン
協賛 : 花王、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三菱商事
協力 : 日本航空、ヤマトロジスティクス、西洋美術振興財団
お問合せ : TEL.03-5777-8600 (ハローダイヤル)

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同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, pp.2-3


同展パンフレット, p.4

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平日で雨も降っていたというのに、なんでこんなに人が多いんだ!上野公園も、この展覧会も。

最初、列に並んでいたが、一向に進みそうにないので、しょうがないから客の肩越しに眺める作戦だ。それでどんどん進んだが、じっくり見られないのは仕方ない。

おかげで、あとで図録を見て気づくことの多いこと・・・トホホ。

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これが図録。

・馬渕明子・監修, 袴田紘代+池田祐子・責任編集 (2017) 『北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』. 401pp. 読売新聞東京本社, 東京+国立西洋美術館, 東京.


デザイン : 山田政彦

これは腰巻(帯)ともカバーともつかないものをつけた状態。カバーには、

Claude Monet (1888) At Cap d'Antibes (At Cape Antibes/アンティーブ岬).

が使われている。で、カバーを外すと


デザイン : 山田政彦

葛飾北斎 (19C) 『北斎画譜 下編』より.

の、美しい薄墨摺が現れてくる。なかなか粋な装丁。

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最初のコーナーでは、19世紀の西欧の画家たちが北斎を模写した絵が、北斎の作品と並べて、「これでもか!」とばかりに出てきます。

もうこれで、「北斎のJaponismeへの影響」という、この展覧会のテーマに納得せざるをえない。

しかし、模写した画家たちも、こんな形で、それも名前入りで、それも日本で、まさか百数十年後にさらされるとは思ってもみなかっただろうなあ。草葉の陰での心中、お察しいたします。

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図録, p.64

これは、

葛飾北斎 (1815) 『北斎漫画 二編』より.
と
Edouard Manet (19世紀) Deux Sortes de Salamandres et Une Grosse Mouche (Gecko, Newt, Carpenter Bee/ヤモリ、イモリ、クマバチ)

Manetくらいだと、だいぶ自分流に消化した様子が伺えるが、有象無象の挿絵画家あたりになるともう、ホントに丸写しだ。

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工芸作家になるともっと露骨。絵皿、花瓶、ガラス工芸などなど、もうそのまま丸写し。


図録, p.150

葛飾北斎 (1949) 『北斎漫画 十三編』より.
と
Émille Gallé (1978-90) Vase 'Le Carp' (Vase with Carp/双耳鉢:鯉)

さすがGalléだけに、周囲の模様には自分のデザインが入っているが、鯉の絵柄は北斎の丸写しだ。

北斎の絵が西欧に浸透していった過程では、油絵よりも、むしろこういう工芸品の影響が大きかったのかもしれない。

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著名な画家もなると、さすがに露骨な丸写しはしない。それだけに、北斎の絵と並べて比較されても、「どこが?」「偶然では?」「考え過ぎじゃないの?」という展示が結構続く。

この辺は意見が分かれるところだろう。

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パンフレットp.1/p.2の

葛飾北斎 (19C) 『北斎漫画 十一編』より.
と
Edgar Degas (1894) Danseurs, en Rose et Vert (Dancers, Pink and Green/踊り子たち、ピンクと緑)

は、この展覧会のsymbolになっている絵。この絵にしてから、まずこのポーズは、Degasがたくさん描いている、踊り子たちの他の絵でも出てくるポーズである。

それを、北斎の描いた「力士のポーズ」の影響といえるのだろうか?

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パンフレットp.3上の

葛飾北斎 (1814) 『北斎漫画 初編』より.
と
Mary Cassatt (1878) Little Girl in A Blue Armchair(青い肘掛け椅子に座る少女)

では、北斎の「ぐでっと袋によっかかる布袋さま」の影響というのだから、「ほんと~?」と言いたくなる。

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しかし、Degasにしても、Cassattにしても、それまではもっと端正なポーズを描いていて、こういうユニークだったり、変わった角度からだったり、そして生き生きとしたポーズを描くことはなかったらしいのだ。

しかし、北斎の影響を受ける前後の比較がないので、観覧している方には、本当かどうかわからない。

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図録, p.123

葛飾北斎 (ca.1831) 百物語 さらやしき.
と
Odilon Redon (1888) Ensuite Parait Un Être Singulier, Ayant Une Tête d'Homme sur Un Corps de Poisson (Planche V, TENTATION DE SAINT ANTOINE, SÉRIE I) (Then There Appears A Singular Being, Having the Head of A Man on the Body of A Fish (Plate V from the portfolio THE TEMPTATION OF SAINT ANTHONY, First Series)/「聖アントワーヌの誘惑」第一集より, 《V. それから魚の体に人間の頭を持った奇妙なものが現れる》).

まで行くと、Redonが浮世絵を見ていたか?好んでいたか?からして全くわからないし、二つの絵の影響関係についても、こじつけのような気がする。

しかしまあ、前から見たいと思っていたRedonの絵が、意外なところで見られたので、うれしかった。

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もう優秀な画家ばかりですから、北斎の絵をそのまま持ってくることはしないのはわかる。これは絵柄の影響を受けた、というより、北斎の精神を受け継いだということなのだろう。

しかし、影響関係がわかりにくいのは事実。今も100%納得はしていない。学者さんの「トバシ」もかなりあると見た。

その評価は後世の人がしてくれるだろう。

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図録, p.248

これは言わずと知れた

葛飾北斎 (1830-33) 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏.

この波頭の描写はだいぶ西欧の画家に影響を与えたらしい。

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1867年のParis万国博覧会で浮世絵(おそらく波の絵があったと思われる)を見たらしいGustave Courbetは、その直後から波の絵を大量に描き始める。


図録, p.238

Gustave Courbet (ca.1870) La Vague(Wave/波).

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驚くのはこれ↓


図録, pp.240-241

葛飾北斎 (ca.1804-07) おしをくりはとうつうせんのづ(押送り波濤通船の図).
と
Georges Seurat (1885) Le Bec du Hoc, Grandcamp(尖ったオック岬、グランカン).

これ、構図がよく似てるけど、北斎は波、Seuratは岩だ。たまたまじゃないの?展覧会の現場ではそう思ってしまった。

ところが、絵の上の方を見てほしい。似たような位置に鳥の群れが!これは偶然ではないだろう。

そして決定的なのは「枠」だ。北斎の絵に枠があるのはそれほど奇異ではない。しかしだ、Seuratの絵、印象派の絵にこのような「枠」があるのは異常だ。

これに気づいてから、ようやく「北斎の影響」であることを確信した。

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じつはこの「枠」に気づいたのは、帰って図録を見ていて。うーん、現場で気づきたかった。悔しい。

しかしあの人出では、一点一点を、なかなかじっくり見れないのだ。図録を買っておいてよかったなあ。

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それにしても北斎の絵もなかなかにすごい。こんな波は現実にはありえないだろう。だいたい縦が5倍くらい誇張されている。

しかし、もしかすると北斎の方にも、何か元絵があったのかもしれない。この絵には西欧の版画(ething)の影響が見られるようだし。

この元絵(あるとして)を西欧の絵に探すのも、おもしろいかもしれない。

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今年、展覧会で非常に楽しんだ「Arcimboldo-国芳」の流れをはじめとして、西欧と日本のように地理的に離れていて、これまであまり関係が知られていなかった文化交流が明らかになっていく過程は、本当に面白い。

手前味噌だが、私がチベットやラダックを見るスタンスは、「チベットだけを見ていてもチベットは見えない」、「ラダックだけ見ていてもラダックは見えない」というものだ。

つまり、周囲との政治的・宗教的・文化的な差異と交流・影響関係を把握することで、その地域の特色が浮き出てくる。その浮き出た瞬間をエイッとすくい取るのだ。楽しい瞬間ですよ。

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図録, p.181

現物を見て腰を抜かしたのがこれ。

Émille Gallé (ca.1890-1900) Panel with Dropping Aronia(パネル : 枝垂海棠).

これは板に絵が描いてあるわけではなく、寄木細工で出来ているのだ。びっくり。はじめて知った。

これは「浮世絵を模した」なんていうのは、もうどうでもいい。とにかく驚愕の工芸品だ。

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Galléの寄せ木工芸品は、他に2点、テーブルとキャビネットが出品されていたが、これもものすごかった。

図録ではその凄さが全くわからないので、是非会場で現物を間近に見てほしい。

いつかGalléの展覧会があったら、是非行こう。

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それにしても、日本側は北斎だらけだ。この北斎一人で、錚々たる西欧の大画家軍団に多大な影響を与えているんだから、正に浮世絵の巨人である。

しかし、待てよ・・・。西欧に渡った浮世絵は北斎だけではないはずだ。他の浮世絵の影響って、ないのか?

この展覧会のテーマは「北斎」なので、他の浮世絵が取り上げられていないのは仕方ないのかもしれないが、それにしても北斎・北斎と強調し過ぎのような気がした。

浮世絵全体がJaponismeに影響を与えており、「その中で最も強い影響力を誇ったのが北斎だ」という位置づけがわかるような展示があってもいいのではないか、と思った。現物の展示がなくとも、写真入りパネル数枚でいいから説明がほしかった。

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日本の浮世絵が西洋の画家に与えた影響で一番有名なのは、実は北斎ではない。

歌川広重(1797-1858) → Vincent van Gogh(1853-1890)

である。

広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」や「名所江戸百景 大はし あたけの夕立」を、Goghがまんま模写しているのは、つとに有名。

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実は、この国立西洋美術館の「北斎とジャポニズム」展と同時に、同じ上野公園の東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催中なのだ。

・日本放送協会+NHKプロモーション+北海道新聞社/ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(as of 2017/11/17)
http://gogh-japan.jp/

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 東京展
開催概要
会期 : 2017年10月24日(火)─2018年1月8日(月・祝)
会場 : 東京都美術館
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36
アクセス : JR「上野駅」公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分、京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分 ※駐車場はありませんので、車での来場はご遠慮ください。
開室時間 : 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は午後8時まで ※いずれも入室は閉室の30分前まで
休室日 : 月曜日、12月31日(日)、1月1日(月・祝) ※ただし、1月8日(月・祝)は開室
観覧料(税込)当日(前売・団体) : 一般1,600円(1,300円) 大学生・専門学校生 1,300円(1,100円) 高校生800円(600円) 65歳以上1,000円(800円) 11月15日(水)、12月20日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料(要証明)。混雑が予想されます。 ※団体割引の対象は20名以上。 ※中学生以下は無料 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額 ※いずれも証明できるものをご持参ください
主催 : 東京都美術館、NHK、NHKプロモーション
後援 : 外務省、オランダ王国大使館
協賛 : 損保ジャパン日本興亜
協力 : KLMオランダ航空、日本航空
共同企画 : ファン・ゴッホ美術館
お問い合わせ : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
報道機関お問い合わせ : ゴッホ展 広報事務局(プラチナム内) 担当:金・森 TEL 03-5572-7351 / FAX 03-3584-0727 MAIL gogh-japan.pr@vectorinc.co.jp

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「北斎とジャポニズム」展で、「広重→Gogh」関係に意図的に触れていないのは、実はこういう理由があったのです。

そういうわけで、「ゴッホ展」も近々行くぞ!

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(追記)@2017/11/18

なお、北斎の浮世絵は、状態がよいものはあまりありません。まあ、この展覧会は、北斎の浮世絵だけを見るものではないからいいんだけど。

状態のいい北斎を見るのであれば、太田記念美術館など、北斎展をしょっちゅうやってるのでそちらでどうぞ。

2017年7月1日土曜日

「アルチンボルド展」に行ってきました

2017年5月29日月曜日 「アルチンボルド」展は絶対行きます

で宣言したとおり、上野の国立西洋美術館に行ってきました。

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・国立西洋美術館/アルチンボルド展(as of 2017/05/28)
http://arcimboldo2017.jp/

会期 : 2017年6月20日(火)-9月24日(日)
会場 : 国立西洋美術館[東京・上野公園]
http://www.nmwa.go.jp/
〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
休館日 : 月曜日、7月18日(火) *ただし、7月17日(月)、8月14日(月)、9月18日(月)は開館
時間 : 午前9時30分―午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで) *入館は閉館の30分前まで
お問合せ : 03-5777-8600[ハローダイヤル]
観覧料金 : 当日 一般 1,600円 大学生 1,200円 高校生 800円   前売/団体 一般 1,400円 大学生 1,000円 高校生 600円  ※中学生以下は無料 ※団体は20名以上 ※心身に障がいのある方とその付き添い者1名は無料(入館の際に障がい 者手帳をご提示ください) 【前売券】2017年3月21日(火)〜6月19日(月)まで〔国立西洋美術館では6月18日(日)まで販売〕
【チケット販売場所】国立西洋美術館(開館日のみ)、展覧会ホームページほか、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあなど各主要プレイガイドにて販売 ※手数料がかかる場合があります


同展パンフレット, p.1

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毎年書いてるが、この時期、上野は修学旅行の中学生でいっぱい。にぎやかでいいね。

驚いたことに、このArcimboldo展を見に来ている修学旅行生もいた。中学生は無料だからにしても、偉いぞ君たち。こういう変な絵をたくさん見て、変な大人になってくれたまえ。

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入ってすぐの「自分の顔をArcimboldo風にしてくれるアトラクション」は、平日だというのに長蛇の列。少し眺めて、自分がトライするのは諦めた。

でも、見たところ、みんなArcimboldoと言うよりは、その追随者であるFrancesco Zucchi(1562~1622)ぽくなっていたが、どうか?

しかしこれは人気あるだろうね。おもしろいもの。ソフト作製者エライ!

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Arcimboldoと言えば「寄せ絵」だが、今回の展覧会に来ていたArcimboldo作の寄せ絵は

「紙の自画像」、「四季」、連作「四季」4作、連作「四大元素」4作、「ソムリエ(ウェイター)」、「司書」、「法律家」、「庭師/野菜」、「コック/肉」

と、15作品。思ったよりも少なかった。

それでも、今回の目玉である連作「四季」、連作「四大元素」はやっぱりすごかった!

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奥様方に人気なのはやっぱり、花でできた「春」。海棲生物でできた「水」も人気だった。細部の見どころは、これが一番あるしね。

細部を見て理屈脳を作動させつつ、そこから徐々に遠ざかり、顔面であることが認識できた時に、感覚脳に切り替わる瞬間がたまらない。

脳が騙されている様子を、リアルタイムで自分の脳が観察できるのだよ。こんな楽しいことはない。

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あと驚いたのは、発色のよさ。とても450年前(16世紀末)のものとは思えない。保守・修復がよっぽど緻密に管理されてるんだな。油彩画恐るべし。

これは図録↓

・シルヴィア・フェリーノ=パグデン+渡辺晋輔・責任編集 (2017.6) 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』. 244pp. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.


デザイン : 梯耕治

残念ながら、図録は発色が悪い。図録でも悪くはないが、現物の発色は圧倒的な迫力。照明のセッティングも見事なのだろうけど。

とにかく「現物を見ろ」だ。

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Arcimboldoの絵は、寄せ絵以外にも普通の肖像画、生物画、生物画、下絵デッサンなども多数展示。Leonaldo da Vinciの流れをくむルネッサンスの画家であることがはっきりわかる。特に博物学的な絵に長けた人。

Vienna Habsburg家が世界中から集め、収蔵庫Kunst und Wunder Kammer(芸術と驚異の部屋)に保管していた珍しい産物や生物標本を、憑かれたように大量にスケッチしていったArcimboldoだが、彼はそれに飽きたらず、それらを組み合わせてバストショットの肖像画にして行ったのだった。

その過程が理解できるように展示が工夫されていた。

ただし、目玉の寄せ絵は数が少ないので、会場・図録のあちこちに同じ絵(レプリカ)が何度も顔を出す。ちょっとしつこく感じる人もいるかもしれない。

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Arcimboldo以前、以後の寄せ絵も多数展示されていて、寄せ絵のパースペクティヴがだいぶ把握できるようになった。それだけでも、ものすごく面白い。

まず驚くのは、Giuseppe Arcimboldo(1526~93)以前の寄せ絵。

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一番古いのは、なんと「男根の組み合わせで顔面を描いた絵皿」だ。Italy GubbioのFrancesco Urbini(?~1530-36~?)による1536年の作品。

所蔵館であるUniversity of Oxford(UK)のAshmolean Museumのwebsiteで見ることができる。

・Gardens, Libraries & Museums, University of Oxford > Out in Oxford > Ashmolean Museum > Dish with a composite head of penises(as of 2017/06/30)
http://www.glam.ox.ac.uk/outinoxford-ash-dish

性欲に支配された男を風刺したものだという。悪趣味、気持ち悪い、と思う人が多いかもしれない。

しかし、これがArcimboldoに影響を与えたのは、ほぼ確実でしょう。Gubbioは中部イタリアの都市。Milano出身のArcimboldoがこの作品自体、あるいはその類似品を見ている可能性はかなり高い。

今回展示されている作品は、動植物や無機物の寄せ絵ばかりだが、実はArcimboldoには人間の裸体を組み合わせた寄せ絵もある(後述)。それらは特に上記男根寄せ絵と似ている。

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お次は、「風刺作家・詩人Pietro Aretino(1492~1557)の肖像を描いたメダル」。16世紀第2四半期(1525~50頃)の作品。

メダル自体はかなりの数鋳造されているので、web上でもあちこちで見ることができるが、今回展示されていたメダルが最も保存がよい。Museo Nazionale del Bargello, Firenze, Italyの所蔵。北イタリアVeneziaで作られたもので、先ほどのGubbioよりMilanoに近づいている。

・Antiqua.mi > Attilio Troncavini/Medaglie aretiniane "satiriche"(「風刺作家」アレティーノのメダル)(2016/05/02)
http://www.antiqua.mi.it/Troncavini_Medaglie_Mag16.html

表はAretinoの横顔。これは普通。

しかし裏は、髪の毛が男根で出来ている男の横顔だ。この男がAretinoとどういう関係で、なぜんそんな絵を裏においたのか謎。Aretinoのおふざけぶりを賞賛するものなのか、馬鹿にするものなのか・・・。

しかし、男根肖像の絵皿よりは、だいぶ洗練されてきている。

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そして、16世紀後半、Arcimboldoが次々と寄せ絵を作り始める。しかし寄せ絵の素材は、動植物・無機物とすっかり上品になり、男根などという下品な素材は出てこない。

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今回展示されているArcimboldoの寄せ絵は15作品だが、今回来なかった寄せ絵がまだまだある。

Arcimboldoの作品一覧はここを見るといいだろう↓

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > All 170 Artworks of Giuseppe Arcimboldo (as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/Art.nsf/Art_EN?Open&Query=[Champ1]+contains+%22Giuseppe%20Arcimboldo%22

特に惜しいのが、

Vortumnus(Rudolf II)
Basket of Fruit
5作あるThe Seasons
Seated Figure of Summer
The Admiral
四季シリーズも別バージョンが色々あるらしい

あたり。

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代表作ともいえる「ルドルフ2世」は、2017年11月~2018年5月(福岡→渋谷→滋賀)に開催される「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」

・チェコ文化年2017委員会/日本におけるチェコ文化年2017 > イベント : 展覧会/美術 > 神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展(as of 2017/06/30)
http://czechculture2017.jp/310703285412525125401251024093222693034324093-12523124891252312501652981999012398395143006412398199903002823637.html

で別途来ることを知っていたので、私はショックではなかったが、これを楽しみにしていた観覧客も、かなりいたんじゃないかなあ(図録には小さい絵で何度か登場する)。

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私が楽しみにしていた作品で、今回来なかった、そして図録にも取り上げられていない重要な2作品がこれ↓

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > Portrait of Eve(as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/@@/8BWLJR-Giuseppe-Arcimboldo-Giuseppe-Arcimboldo--Portrait-of-Eve

・WahooArt.com > Fine Art : All Artists > G > Giuseppe Arcimboldo > Portrait of Adam(as of 2017/06/30)
http://en.wahooart.com/@@/8BWLJQ-Giuseppe-Arcimboldo-Giuseppe-Arcimboldo--Portrait-of-Adam

「イヴの肖像」と「アダムの肖像」だ。

これらは、子供の裸体で構成された肖像画なのだ。さあどんどん国芳の寄せ絵に近づいて来たぞ。

裸体で構成されているのは顔面だけで、他の部分は普通の絵なので、動植物を素材とした作品に比べると、完成度は低いかもしれない。

しかし、Arcimboldo作品の中では最も不気味な光を放つ2作品であり、今回来なかったのが本当に残念だ。

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Arcimboldoの奇妙な寄せ絵は、若干の追随者を生んだらしく、それらの寄せ絵もいくつか展示されていた。

しかし大半は、Arcimboldo作品の単なる模写、それもヘタ、であり、見てもあまり面白いものではない。

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上記「イヴの肖像」、「アダムの肖像」とよく似た、裸体を素材に使った寄せ絵が、18~19世紀に突如現れる。

それがBartolomeo Basso(18C~19C)による「女性の頭部」、「男性の頭部」だ。これは間違いなくArcimboldoの「イヴ」「アダム」を見て影響を受けている。そっくりだもの。

なお、これは今回世界初公開で、web上で検索しても全く出てこない。

唯一今回の展覧会の紹介記事に入っているので、そこで見てほしい(もちろん展覧会にも行ってほしい)。

・アソビュー/asoview ! NEWS 読むとお出かけしたくなる、遊びのニュース > エンタメ > 古怒田桃子/「アルチンボルト展」国立西洋美術館で開催中!謎の絵画の全貌を一挙レポート(最終更新:2017/06/21)
https://asoview-news.com/article/12043/

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この手の「裸体寄せ絵肖像画」は、この他には報告がないが、おそらく結構あったんだと思う。

2017年5月29日月曜日 「アルチンボルド」展は絶対行きます

のコメント欄でちょっとだけ触れた、

・松平斉民・収集 (19世紀) 『芸海余波 第五集』. 早稲田大学図書館所蔵, 東京.
http://www.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01646/

に収録されている「裸体寄せ絵肖像画」(線画での模写)の原画は、そんな絵の一つだったに違いありません。

「裸体寄せ絵肖像画」がこういった形で日本まで伝わり、それを見たか、あるいは噂で「こういう変な絵があるよ」と聞いただけかもしれませんが、江戸時代末期の絵師・歌川国芳(1798~1861)が影響を受け、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」をはじめとする寄せ絵を描いた可能性は十分あるのです。


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「国芳の寄せ絵が、Arcimboldoの寄せ絵の影響を受けている」と言われても、「いや、時代も場所もぜんぜん違うでしょ。偶然じゃないの?」と思っていたのだが、先般の府中での「国芳展」と今回の「Arcimboldo展」で、両者が細いながらも糸でつながった。

これには大変興奮しました。いやあ、見てきてホントよかった。

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なお、Arcimboldoから国芳、インド細密画まで、寄せ絵の系譜を総覧した論文が図録に収録されているので、そちらも必読です。

・アンドレアス・バイヤー・著, 岩谷秋美・訳 (2017.6) 多重形象化の芸術 ジュゼッペ・アルチンボルドの寄せ絵と二重化されたイメージの意味生産. 『ARCIMBOLDO : NATURE INTO ART』所収. pp.137-141. 国立西洋美術館, 東京/NHK, 東京/NHKプロモーション, 東京/朝日新聞社, 東京.

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それから、もう一つ「目からウロコ」だったのが、Arcimboldoがシュールレアリズムに影響を与えている、という事実。

細部はこの上なく写実的なのに、全体はとてつもなく奇妙奇天烈な絵になっているあたりは、確かにシュールレアリズム、特にSalvador Dali(1904~89)と似ている。

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日本の国芳からDaliまで、時代と空間を超えて意外な影響力を放っているGiuseppe Arcimboldo。

これまでは、「変な絵を描くキワモノ画家」という扱いだったArcimboldoは、実は隠れた大画家であることがわかったわけで、今後ますます注目度が上がっていくでしょう。

次回は、今回来なかった絵、特に「イヴ」と「アダム」も含めて、さらに国芳なんかも入れて、もっと大々的に回顧展をやってほしい。まあ、早くても10年後くらいだろうけど・・・。

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(追記)@2017/07/01

図録はArcimboldoの寄せ絵作品を網羅していないので、ちょっと不満が残る。それでこんな本も買ってしまいました。

・レアナ・デ・ジローラミ・チーニー・著, 笹山裕子・訳 (2017.6) 『アルチンボルド アートコレクション』. 255pp. グラフィック社, 東京.
← 英語原版 : Leana De Girolami-Cheney (2013.10) ARCIMBOLDO (MEGA SQUARE). 256pp. Parkstone Press, NY, USA.


Design : Baseline/カバーデザイン : 石岡真一

版型は小さいのですが、今回展覧会に来なかった作品も収録しています。特に「イヴ」と「アダム」も。

じっくり見て国芳と比較しよう。

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(追記)@2017/08/07

Arcimboldoの影響が日本の浮世絵師・歌川国芳に及んでいるのではないか?というお話を、絵入りで補足しました。こちらもどうぞ。

2017年8月7日月曜日 アルチンボルド→国芳の流れ

2017年5月29日月曜日

「アルチンボルド」展は絶対行きます

・国立西洋美術館/アルチンボルド展(as of 2017/05/28)
http://arcimboldo2017.jp/

会期 : 2017年6月20日(火)-9月24日(日)
会場 : 国立西洋美術館[東京・上野公園]
http://www.nmwa.go.jp/
〒110-0007 東京都台東区上野公園7−7
休館日 : 月曜日、7月18日(火) *ただし、7月17日(月)、8月14日(月)、9月18日(月)は開館
時間 : 午前9時30分―午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで) *入館は閉館の30分前まで
お問合せ : 03-5777-8600[ハローダイヤル]
観覧料金 : 当日 一般 1,600円 大学生 1,200円 高校生 800円   前売/団体 一般 1,400円 大学生 1,000円 高校生 600円  ※中学生以下は無料 ※団体は20名以上 ※心身に障がいのある方とその付き添い者1名は無料(入館の際に障がい 者手帳をご提示ください) 【前売券】2017年3月21日(火)〜6月19日(月)まで〔国立西洋美術館では6月18日(日)まで販売〕
【チケット販売場所】国立西洋美術館(開館日のみ)、展覧会ホームページほか、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあなど各主要プレイガイドにて販売 ※手数料がかかる場合があります

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同展パンフレット, p.1


同展パンフレット, p.2-3


同展パンフレット, p.4

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Arcimboldoの寄せ絵を見て、国芳の寄せ絵を思い出す人は多いでしょう。

江戸時代末期の絵師・歌川国芳(1798~1961)は、「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」をはじめとする「寄せ絵」の達人としても有名です。

参考:
・Japaaan日本の文化と ”今” をつなぐ! > Japaaanマガジン > アート > 日本画・浮世絵 > Japaaan編集部/猫や人が入り乱れる!浮世絵の寄せ絵(だまし絵)まとめ(@2013/05/22)
http://mag.japaaan.com/archives/6005

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国芳の「寄せ絵」が、独自の発想であるのか、Arcimboldoの影響であるのか、は議論が分かれるところでしょう。

Giuseppe Arcimboldo(1527~93)は、ルネッサンス期のイタリアの人。その絵は油彩画ですから、19世紀の日本人・国芳がArcimboldo作品の現物を見た可能性はありません。

しかし国芳は、若い頃から西洋画(特に洋書の銅版画挿絵)を集めては自分の絵に反映させるという、創意にあふれた人でした。

であるので、国芳の寄せ絵が、洋書に記されたArcimboldoの寄せ絵の模写あるいは類画)を見て、その影響を受けた可能性は十分あるのです。

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というわけで、このArcimboldo展は、国芳ファン、浮世絵ファンにとっても重要な展覧会なのです。

これは絶対行くぞ。

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(追記)@2017/07/10

ちゃんと行きましたよ(笑)。

2017年7月1日土曜日 「アルチンボルド展」に行ってきました