に行ってきました。
・読売新聞/北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃(as of 2017/11/16)
http://hokusai-japonisme.jp/index.html
北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
開催概要
会期 : 2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
会場 : 国立西洋美術館 [東京・上野公園]
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
開館時間 : 午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後8時。ただし 11/18は午後5時30分まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
観覧料(税込)当日(団体) : 一般1,600円(1,400円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) 中学生以下 無料(無料)
主催 : 国立西洋美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ
特別協賛 : キヤノン
協賛 : 花王、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三菱商事
協力 : 日本航空、ヤマトロジスティクス、西洋美術振興財団
お問合せ : TEL.03-5777-8600 (ハローダイヤル)
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同展パンフレット, p.1
同展パンフレット, pp.2-3
同展パンフレット, p.4
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平日で雨も降っていたというのに、なんでこんなに人が多いんだ!上野公園も、この展覧会も。
最初、列に並んでいたが、一向に進みそうにないので、しょうがないから客の肩越しに眺める作戦だ。それでどんどん進んだが、じっくり見られないのは仕方ない。
おかげで、あとで図録を見て気づくことの多いこと・・・トホホ。
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これが図録。
・馬渕明子・監修, 袴田紘代+池田祐子・責任編集 (2017) 『北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』. 401pp. 読売新聞東京本社, 東京+国立西洋美術館, 東京.
デザイン : 山田政彦
これは腰巻(帯)ともカバーともつかないものをつけた状態。カバーには、
Claude Monet (1888) At Cap d'Antibes (At Cape Antibes/アンティーブ岬).
が使われている。で、カバーを外すと
デザイン : 山田政彦
葛飾北斎 (19C) 『北斎画譜 下編』より.
の、美しい薄墨摺が現れてくる。なかなか粋な装丁。
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最初のコーナーでは、19世紀の西欧の画家たちが北斎を模写した絵が、北斎の作品と並べて、「これでもか!」とばかりに出てきます。
もうこれで、「北斎のJaponismeへの影響」という、この展覧会のテーマに納得せざるをえない。
しかし、模写した画家たちも、こんな形で、それも名前入りで、それも日本で、まさか百数十年後にさらされるとは思ってもみなかっただろうなあ。草葉の陰での心中、お察しいたします。
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図録, p.64
これは、
葛飾北斎 (1815) 『北斎漫画 二編』より.
と
Edouard Manet (19世紀) Deux Sortes de Salamandres et Une Grosse Mouche (Gecko, Newt, Carpenter Bee/ヤモリ、イモリ、クマバチ)
Manetくらいだと、だいぶ自分流に消化した様子が伺えるが、有象無象の挿絵画家あたりになるともう、ホントに丸写しだ。
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工芸作家になるともっと露骨。絵皿、花瓶、ガラス工芸などなど、もうそのまま丸写し。
図録, p.150
葛飾北斎 (1949) 『北斎漫画 十三編』より.
と
Émille Gallé (1978-90) Vase 'Le Carp' (Vase with Carp/双耳鉢:鯉)
さすがGalléだけに、周囲の模様には自分のデザインが入っているが、鯉の絵柄は北斎の丸写しだ。
北斎の絵が西欧に浸透していった過程では、油絵よりも、むしろこういう工芸品の影響が大きかったのかもしれない。
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著名な画家もなると、さすがに露骨な丸写しはしない。それだけに、北斎の絵と並べて比較されても、「どこが?」「偶然では?」「考え過ぎじゃないの?」という展示が結構続く。
この辺は意見が分かれるところだろう。
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パンフレットp.1/p.2の
葛飾北斎 (19C) 『北斎漫画 十一編』より.
と
Edgar Degas (1894) Danseurs, en Rose et Vert (Dancers, Pink and Green/踊り子たち、ピンクと緑)
は、この展覧会のsymbolになっている絵。この絵にしてから、まずこのポーズは、Degasがたくさん描いている、踊り子たちの他の絵でも出てくるポーズである。
それを、北斎の描いた「力士のポーズ」の影響といえるのだろうか?
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パンフレットp.3上の
葛飾北斎 (1814) 『北斎漫画 初編』より.
と
Mary Cassatt (1878) Little Girl in A Blue Armchair(青い肘掛け椅子に座る少女)
では、北斎の「ぐでっと袋によっかかる布袋さま」の影響というのだから、「ほんと~?」と言いたくなる。
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しかし、Degasにしても、Cassattにしても、それまではもっと端正なポーズを描いていて、こういうユニークだったり、変わった角度からだったり、そして生き生きとしたポーズを描くことはなかったらしいのだ。
しかし、北斎の影響を受ける前後の比較がないので、観覧している方には、本当かどうかわからない。
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図録, p.123
葛飾北斎 (ca.1831) 百物語 さらやしき.
と
Odilon Redon (1888) Ensuite Parait Un Être Singulier, Ayant Une Tête d'Homme sur Un Corps de Poisson (Planche V, TENTATION DE SAINT ANTOINE, SÉRIE I) (Then There Appears A Singular Being, Having the Head of A Man on the Body of A Fish (Plate V from the portfolio THE TEMPTATION OF SAINT ANTHONY, First Series)/「聖アントワーヌの誘惑」第一集より, 《V. それから魚の体に人間の頭を持った奇妙なものが現れる》).
まで行くと、Redonが浮世絵を見ていたか?好んでいたか?からして全くわからないし、二つの絵の影響関係についても、こじつけのような気がする。
しかしまあ、前から見たいと思っていたRedonの絵が、意外なところで見られたので、うれしかった。
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もう優秀な画家ばかりですから、北斎の絵をそのまま持ってくることはしないのはわかる。これは絵柄の影響を受けた、というより、北斎の精神を受け継いだということなのだろう。
しかし、影響関係がわかりにくいのは事実。今も100%納得はしていない。学者さんの「トバシ」もかなりあると見た。
その評価は後世の人がしてくれるだろう。
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図録, p.248
これは言わずと知れた
葛飾北斎 (1830-33) 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏.
この波頭の描写はだいぶ西欧の画家に影響を与えたらしい。
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1867年のParis万国博覧会で浮世絵(おそらく波の絵があったと思われる)を見たらしいGustave Courbetは、その直後から波の絵を大量に描き始める。
図録, p.238
Gustave Courbet (ca.1870) La Vague(Wave/波).
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驚くのはこれ↓
図録, pp.240-241
葛飾北斎 (ca.1804-07) おしをくりはとうつうせんのづ(押送り波濤通船の図).
と
Georges Seurat (1885) Le Bec du Hoc, Grandcamp(尖ったオック岬、グランカン).
これ、構図がよく似てるけど、北斎は波、Seuratは岩だ。たまたまじゃないの?展覧会の現場ではそう思ってしまった。
ところが、絵の上の方を見てほしい。似たような位置に鳥の群れが!これは偶然ではないだろう。
そして決定的なのは「枠」だ。北斎の絵に枠があるのはそれほど奇異ではない。しかしだ、Seuratの絵、印象派の絵にこのような「枠」があるのは異常だ。
これに気づいてから、ようやく「北斎の影響」であることを確信した。
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じつはこの「枠」に気づいたのは、帰って図録を見ていて。うーん、現場で気づきたかった。悔しい。
しかしあの人出では、一点一点を、なかなかじっくり見れないのだ。図録を買っておいてよかったなあ。
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それにしても北斎の絵もなかなかにすごい。こんな波は現実にはありえないだろう。だいたい縦が5倍くらい誇張されている。
しかし、もしかすると北斎の方にも、何か元絵があったのかもしれない。この絵には西欧の版画(ething)の影響が見られるようだし。
この元絵(あるとして)を西欧の絵に探すのも、おもしろいかもしれない。
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今年、展覧会で非常に楽しんだ「Arcimboldo-国芳」の流れをはじめとして、西欧と日本のように地理的に離れていて、これまであまり関係が知られていなかった文化交流が明らかになっていく過程は、本当に面白い。
手前味噌だが、私がチベットやラダックを見るスタンスは、「チベットだけを見ていてもチベットは見えない」、「ラダックだけ見ていてもラダックは見えない」というものだ。
つまり、周囲との政治的・宗教的・文化的な差異と交流・影響関係を把握することで、その地域の特色が浮き出てくる。その浮き出た瞬間をエイッとすくい取るのだ。楽しい瞬間ですよ。
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図録, p.181
現物を見て腰を抜かしたのがこれ。
Émille Gallé (ca.1890-1900) Panel with Dropping Aronia(パネル : 枝垂海棠).
これは板に絵が描いてあるわけではなく、寄木細工で出来ているのだ。びっくり。はじめて知った。
これは「浮世絵を模した」なんていうのは、もうどうでもいい。とにかく驚愕の工芸品だ。
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Galléの寄せ木工芸品は、他に2点、テーブルとキャビネットが出品されていたが、これもものすごかった。
図録ではその凄さが全くわからないので、是非会場で現物を間近に見てほしい。
いつかGalléの展覧会があったら、是非行こう。
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それにしても、日本側は北斎だらけだ。この北斎一人で、錚々たる西欧の大画家軍団に多大な影響を与えているんだから、正に浮世絵の巨人である。
しかし、待てよ・・・。西欧に渡った浮世絵は北斎だけではないはずだ。他の浮世絵の影響って、ないのか?
この展覧会のテーマは「北斎」なので、他の浮世絵が取り上げられていないのは仕方ないのかもしれないが、それにしても北斎・北斎と強調し過ぎのような気がした。
浮世絵全体がJaponismeに影響を与えており、「その中で最も強い影響力を誇ったのが北斎だ」という位置づけがわかるような展示があってもいいのではないか、と思った。現物の展示がなくとも、写真入りパネル数枚でいいから説明がほしかった。
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日本の浮世絵が西洋の画家に与えた影響で一番有名なのは、実は北斎ではない。
歌川広重(1797-1858) → Vincent van Gogh(1853-1890)
である。
広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」や「名所江戸百景 大はし あたけの夕立」を、Goghがまんま模写しているのは、つとに有名。
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実は、この国立西洋美術館の「北斎とジャポニズム」展と同時に、同じ上野公園の東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催中なのだ。
・日本放送協会+NHKプロモーション+北海道新聞社/ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(as of 2017/11/17)
http://gogh-japan.jp/
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 東京展
開催概要
会期 : 2017年10月24日(火)─2018年1月8日(月・祝)
会場 : 東京都美術館
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36
アクセス : JR「上野駅」公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分、京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分 ※駐車場はありませんので、車での来場はご遠慮ください。
開室時間 : 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は午後8時まで ※いずれも入室は閉室の30分前まで
休室日 : 月曜日、12月31日(日)、1月1日(月・祝) ※ただし、1月8日(月・祝)は開室
観覧料(税込)当日(前売・団体) : 一般1,600円(1,300円) 大学生・専門学校生 1,300円(1,100円) 高校生800円(600円) 65歳以上1,000円(800円) 11月15日(水)、12月20日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料(要証明)。混雑が予想されます。 ※団体割引の対象は20名以上。 ※中学生以下は無料 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額 ※いずれも証明できるものをご持参ください
主催 : 東京都美術館、NHK、NHKプロモーション
後援 : 外務省、オランダ王国大使館
協賛 : 損保ジャパン日本興亜
協力 : KLMオランダ航空、日本航空
共同企画 : ファン・ゴッホ美術館
お問い合わせ : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
報道機関お問い合わせ : ゴッホ展 広報事務局(プラチナム内) 担当:金・森 TEL 03-5572-7351 / FAX 03-3584-0727 MAIL gogh-japan.pr@vectorinc.co.jp
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「北斎とジャポニズム」展で、「広重→Gogh」関係に意図的に触れていないのは、実はこういう理由があったのです。
そういうわけで、「ゴッホ展」も近々行くぞ!
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(追記)@2017/11/18
なお、北斎の浮世絵は、状態がよいものはあまりありません。まあ、この展覧会は、北斎の浮世絵だけを見るものではないからいいんだけど。
状態のいい北斎を見るのであれば、太田記念美術館など、北斎展をしょっちゅうやってるのでそちらでどうぞ。
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