に行ってきました。
・国立国会図書館 > 新着情報 > イベント・展示会情報 > 展示会 > 2017年10月10日(火)~2017年11月11日(土) 東京本館/2017年11月17日(金)~2017年12月9日(土) 関西館 企画展示「挿絵の世界」(as of 2017/10/31)
http://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/exhibition2017.html
東京会場
日時 : 2017年 10月10日(火) ~11月11日(土) 日曜日、10月18日(水・資料整理休館日)、11月3日(金・祝)を除く。10:00~19:00(土曜日は18:00まで) ※一部の資料の展示替え、展示箇所替えを行います。
会場 : 国立国会図書館 東京本館 新館1階 展示室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 利用者サービス部 サービス企画課 展示企画係 03-3506-5260(直通) tenji-kikaku@ndl.go.jp
関西会場
日時 : 2017年 11月17日(金) ~12月9日(土) 日曜日・11月23日(木・祝)を除く。10:00~18:00 (ただし11月19日(日)のみ10:00~16:00開催。) ※『東京日日新聞大錦』、『新聞附録東錦繪』、『水野年方下圖』の3点は複製パネルでの展示です。
会場 : 国立国会図書館 関西館 地下1階 大会議室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。 ※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 関西館 総務課 0774-98-1224(直通)
同展チラシ表
同展チラシ裏
------------------------------------------
今年の夏は、
2017年9月16日土曜日 月岡芳年ツアー2017(3) 太田記念美術館 「月岡芳年 月百姿」 展
2017年8月19日土曜日 月岡芳年ツアー2017(2) 太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語」 展
2017年8月5日土曜日 月岡芳年ツアー2017(1) 横浜歴史博物館「歴史×妖×芳年」展
と、幕末~明治前期の最後の浮世絵師・月岡芳年に、ずいぶんとつき合いました。
この展覧会は、その芳年や落合芳幾(1833-1904、この人も歌川国芳の弟子)から始まります。つまり浮世絵/錦絵が新聞に取り入れられ、そして滅びていく過程です。
------------------------------------------
これは図録代わりのパンフレット。会場で無料配布されています。
・国立国会図書館・編 (2017.10) 『挿絵の世界』(国立国会図書館 平成29年度企画展示). 12pp. 国立国会図書館, 東京.
同書, p.1
最初の展示は、芳年、芳幾による大判の新聞錦絵。浮世絵/錦絵の最後のきらめきの作品です。
その後、錦絵が成立しなくなると、浮世絵師たちは新聞・本の挿絵に活路を見出していきます。
水野年方(1866-1908)は芳年の弟子。新聞小説の浮世絵風挿絵画を確立した人で、名前を知らなくとも教科書や歴史の本などで、誰しも見覚えがあるんではないだろうか。
同書, pp.2-3
年方の流派は現代にも生き続けており、美人挿絵で一世を風靡した岩田専太郎(1901-74)などの「色っぽい女性画」は年方の流れをくむもの。
------------------------------------------
明治も中期になると、洋画技術もだいぶ普及。小説の挿絵にもクロッキー/スケッチ風の挿絵が現れるが、当初は不人気で、浮世絵師が描き直しているのがおもしろい。
しかし、挿絵の世界でも、徐々に洋画技術が普及。そしてそれは大正初期のArt Nouveau(アール・ヌーヴォー)、特にAubrey Vincent Beardsley(1872-98)の挿絵が入ってきたことで決定的になる。
日本の挿絵にも、Beasleyのそっくり絵が多数現れている。
------------------------------------------
かくして浮世絵派は、挿絵の世界でも主役ではなくなっていくのだが、その流れは決して消えることはなかった。
大正~昭和初期の人気画家(と言うより、はっきりイラストレーターと言える人)・高畠華宵(1888-1966)には、洋風の影響は当然ありながらも、浮世絵の技法が色濃く残っている。
伊藤彦造(1904-2004)ともなると、はっきり浮世絵師の直系である。彦造の展示挿絵は荒々しく、また色もまっ黒だったなあ。
------------------------------------------
何度か書いているが、この流れはマンガ家の絵にも受け継がれ、特に貸本マンガの世界で生き続けてきた。橋本将治、平田弘史などがその流れをくむ人たち。
花輪和一、丸尾末広などのガロ系マンガ家も、Disney~手塚治虫系の絵とは別で、挿絵画家の影響が強い人たちだ。
------------------------------------------
昭和に入り、挿絵の世界に中原淳一、蕗谷虹児、松本かつぢ、らが現れてくると、自分にも馴染みのある世界になってくる。
しかし、この展覧会で自分が一番知りたかったのは、今まで述べた、浮世絵師たちの滅びの姿だ。今まで知らなかったそのミッシング・リンクが、だいぶわかってきた。その意味で非常にいい展覧会だったと思う。
------------------------------------------
もちろん、挿絵の世界はその後も大きな発展を遂げる。
1940年代以降、山川惣治、小松崎茂らが出現するると、すっかり挿絵の世界も濃厚な洋画の世界になる。
こちらも、もちろんマンガの世界に影響を与えている。通常、「どっから出てきた絵なのか、わからない」と評される諸星大二郎などは、この系統と見ていいだろう。
------------------------------------------
そして、真鍋博、高荷義之らのSF挿絵。宇野亜喜良、灘本唯人、和田誠らの洒脱な挿絵。より一層モダンな河村要助、峰岸達、浅賀行雄らになると、もう今もお馴染みの挿絵だ。
ひとつ不思議なのは、山藤章二の展示が一つもなかったこと。でもなんとなくその理由がわかる。山藤挿絵の特徴は、絵の中に文章が入り、作家とinterplayを繰り広げることに特徴がある。これはもう挿絵の域を超えている、という判断だったのかもしれない。
------------------------------------------
最後にラノベ・イラストの世界だ。もうこのへんは、自分には馴染みがないのだが、色々勉強させてもらった。
しかし、このあたりの絵は、源流になっている、吾妻ひでおのロリ絵、東映動画に始まる宮﨑駿のジブリ絵なども考慮した上で、見ていく必要がある。
挿絵の流れは、挿絵だけで完結するものではない。挿絵という切り口で、日本の絵(マンガやアニメなども含む)の大きな流れをつかんでいくのも、この展覧会の楽しみ方だ。
その意味で、非常に面白い展覧会でした。
------------------------------------------
挿絵というものは、原画がもはや存在しないケースが多く、展示はみな印刷物だ。絵が小さい。大規模な展覧会など不可能なのだ。
小規模な展覧会なのは仕方ない。むしろ、これこそ国会図書館らしい展覧会といえる。
無料なのに、見応えたっぷりでとても面白い。ぜひ行ってみてください。もし東京展を見逃しても、「けいはんな」の関西館まで行って見てくる価値は充分あると思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿