2017年4月12日水曜日

『絶対安全剃刀』の表紙は高野文子の絵ではない?

前々回の

2017年4月7日金曜日 高野文子 「早道節用守」

で取り上げた

・高野文子 (1982.1) 『高野文子作品集 絶対安全剃刀』. 198pp. 白泉社, 東京.


装幀 : 南伸坊/小倉敏夫

ですが、これは初版第一刷以来、いまだに装幀や編集を変えずに、そのまま流通しています。これはすごいことなんですよ。発売以来、新装版など出す必要がないくらい、常に売れ続けているわけですから。

で、今回その装幀をチェックしていて、とんでもないことに気づいてしまいました。ちょっとショックでもあります。

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装幀者には、南伸坊/小倉敏夫とお二人の名前が出ています。はて、なぜ二人?

小倉敏夫さんは、北村薫の創元推理文庫シリーズの装幀で知ってるが、そのイラストが高野文子だった(人物のポーズが全部同じやつ)。おそらくこの本の装幀をきっかけに、縁ができたものと思われる。

でもなぜ南伸坊まで??装幀に二人がかりも必要ないだろ。

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で、よくよく見ると、裏カバーのカミソリのイラストは南伸坊の絵だ。この特徴的な、律儀で人懐っこい字と線は間違いない。


同書, 裏カバー

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でも、このカミソリの絵だけで、わざわざ南さんを呼んでくるもんだろうか?

などと思いながら、もう一度表紙をじっと見つめると・・・

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なんと、表紙の絵は高野文子ではない!これは南伸坊の絵だ!

中央の二人の女の子を見てほしい。


同書, 表紙(拡大)

この二人は、同書収録の「玄関」の登場人物、「えみこ(向かって左)」と「しょうこ(向かって右)」なのだが、


同書収録「玄関」, p.180

これが高野絵の二人。よく見比べてほしい。タッチがだいぶ違いませんか?

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特に右のしょうこ。これは高野絵か?南絵か?と訊かれたら、確実に南絵と言えますね。南伸坊絵の特徴がよく出ています。

無論、慎重に高野絵をフェイクしているので、まずわからない。当然だ。だから登場以来、30年以上誰も気づいていないのだ(自分ももちろん)。

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南さんは、他人の絵をフェイクすることをよくやっている。昨年のアックスvol.109(2016年2月)表紙の「フェイク河童の三平」は記憶に新しいところです。


同書表紙

詳しくは

2016年2月25日木曜日 水木しげる屁話 アックス 特集 追悼水木しげる 発売!

をどうぞ。

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それと有名なのは、

・内田春菊 (1987.12) 『南くんの恋人』. 青林堂, 東京.



この表紙の絵、作者なんだし、いかにも内田春菊と思ってしまうが、実は南伸坊の絵。

これは、あまりに辛いエンディングを創作してしまい、内田さんが「ちよみちゃん」を描けなくなってしまったので、仕方なく南さんが描いたもの。それにしてもフェイクがうますぎだ。

だが、この事実は別に隠していない。内田春菊本人が語っているのだし。

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しかし『絶対安全剃刀』の方は、南さんが描いたのだとしたら、理由がわからない。いったい、自分の初単行本の表紙を他人に描いてもらうなんて、どういうことなんだろう?

もしそうだとしても、これは高野さんは納得ずくのはず。というのもその後に『おともだち』でも、南さんが装幀をやっているから。

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とにかく謎だらけのこの表紙絵、業界の人に真相を確かめてほしいものだ。

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