2017年8月5日土曜日

月岡芳年ツアー2017(1) 横浜市歴史博物館「歴史×妖×芳年」展

2017年5月27日土曜日 行きたい! 札幌 「月岡芳年」展

で紹介した、札幌の月岡芳年展には結局行けず、残念だったのですが、そのかわりに

2017年6月28日水曜日 東京・横浜でも「月岡芳年」展

で紹介した、原宿で2回、横浜で1回開かれる芳年展に行くことにしました。

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まず一発目は横浜。

・(公財)横浜市ふるさと歴史財団/横浜市歴史博物館 > 見る : 企画展 > 年度別アーカイブ : H29(2017) > 企画展 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史×妖×芳年 : 詳細を見る > 企画展 丹波コレクションの世界Ⅱ 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化(as of 2017/06/28)
http://www.rekihaku.city.yokohama.jp/koudou/see/kikakuten/2017/tanba_collection-2/

会期 : 2017年7月29日 (土) ~2017年8月27日 (日)
会場 : 横浜市歴史博物館
開館時間 : 9:00~17:00(券売は16:30まで)
休館日 : 月曜日
観覧料 : 一般 企画展500円(400円) 企画展・常設展共通700円(560円)、大学生・高校生 企画展 200円(160円) 企画展・常設展共通300円(240円)、中学生・小学生企画展100円(80円)企画展・常設展共通100円(80円) ※( )内は20名以上の団体料金です。 ※毎週土曜日は、小・中・高校生は無料です。
芳年を巡る【入館料相互割引プラン】 : 本展チケットの半券を太田記念美術館(外部リンク)の展覧会「月岡芳年 妖怪百物語/月岡芳年 月百姿」(会期:2017年7月29日(土)~8月27日/9月1日(金)~9月24日(日))でご提示いただくと、100円割引で御覧いただけます。(一枚につき一名様、1回限り有効) 他の割引との併用はできません。
主催 : 横浜市歴史博物館
共催 : 横浜市教育委員会
協力 : 神奈川県立歴史博物館
後援 : 朝日新聞横浜総局・神奈川新聞社・産経新聞社横浜総局・東京新聞横浜支局・日本経済新聞社横浜支局・毎日新聞横浜支局・読売新聞横浜支局・NHK横浜放送局・TVK・FMyokohama84.


同展チラシ表


同展チラシ裏

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会場の横浜市歴史博物館は、横浜市営地下鉄ブルーライン/グリーンラインのセンター北駅から歩いて5分。これまで、行き先として視界に入ったことのない地域だったので、新鮮でした。

ところで、頭に何もつかない「センター」って何だろう?

平日でしたが、思ったより客がいた。それでも、作品の前に人がダンゴになっているような状態ではないので、じっくり見ることができました。

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これは図録↓

・横浜市歴史博物館・編 (2017.7) 『丹波コレクションの世界II 歴史(れきし)×妖(あやかし)×芳年(よしとし) "最後の浮世絵師"が描いた江戸文化』. 107pp. 横浜市ふるさと歴史財団, 横浜.


装丁 : 高橋健介

展示作品は、横浜の貿易商・丹波恒夫氏(1881~1971)のコレクションから、78点が選ばれています。ほとんどは神奈川県立歴史博物館の所蔵品。

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月岡芳年(1839~92)は、幕末から明治前半に活躍した浮世絵師(錦絵師)。歌川国芳の弟子です。

2016年5月28日土曜日 府中市美術館 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展と岡田屋鉄蔵 『ひらひら』

で紹介した国芳一門のマンガ

・岡田屋鉄蔵 (2011.12) 『ひらひら 国芳一門浮世譚』. 182pp. 太田出版, 東京.

にも、小僧時代の芳年が出てきますよ。

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初期の武者絵などには、国芳の影響が強く出ていますが、次第に、豪胆な師匠の線とは違った、繊細な線での画風を極めていきます。

特に、糸のように細い線で描かれる美人画は、芳年の十八番。浮世絵というよりも、中国の美人画の影響があるような気がする。

明治になると、国芳の頃よりも一層海外の絵がどんどん入ってきて、絵師もいろいろな刺激を受ける機会が増えたのだと思う。

芳年にも、聖母子像の影響があらわな「一魁随筆 山姥 怪童丸」という作品がある。

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芳年の絵はもとより、彫師の技にも注目。明治期になると、彫師のテクニックもここまで進歩していたのか、と驚くばかりです。とても木版画には見えない。

摺師のテクニックにも仰天しっぱなし。ぼかし、グラデーションなどはお手の物。

空摺(墨をつけずに摺り、紙に凹凸を出す手法)
正面摺(墨の表面に艶を出して、単色の中に模様を浮かび上がらせる手法)
雲母(きら)摺(細かい雲母片を散らす手法)

などの、繊細な摺り技がふんだんに使われています。

会場には、これらの手法についての解説もあり、とてもわかりやすかった。この辺は指摘してもらわないと、素人にはなかなか気づかない。

これらは、図録や画集の印刷では全然出ない微妙な技なので、会場で現物を見るしかない。

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なお、図録カバーでは、この雲母摺部分のクローズアップが使われていて、なかなか通好みの装丁です。気づいた人はどれくらいいるかな?「遠方の星雲を撮影した天文写真」と思った人も多いかもしれない。

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優美な線で描かれた美人画からは一転、芳年が得意とした歴史物・時事もので男を描く際には、勢いのある直線で構成された角張った輪郭になります。特に、線の屈曲点での止めの迫力が芳年の特色。

芳年の売りの一つである「無惨絵」は、この丹波コレクションには少ない。しかし、今回は三枚綴りの歴史・時事ものや新形三十六怪撰シリーズなど、芳年の実力が十分堪能できる展示です。

この辺は、コレクターや展覧会キュレーターの個性が出るところ。今回は比較的一般人にも理解できるような作品ばかりが選ばれている、といえるでしょう。

しかし、逆を言えば、この展覧会だけでは、芳年の全貌は全く見えて来ないのだ。

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「新形三十六怪撰シリーズ」などは、原宿の太田記念美術館の展示とかなり重複していそうだが、一点ものではない浮世絵・錦絵の展覧会の宿命と観念して、もちろんそちらも行きます。

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暁斎や芳年が担った明治期の錦絵は、次第に印刷物に取って代わられます。彼らの後進たちは、印刷物での挿絵の世界に進んでいくわけですが、その世界もまた面白いのだ。

そして、伊藤晴雨、伊藤彦造、高畠華宵などを経て、これら挿絵画家の技は、現代のマンガ家たち、平田弘史、花輪和一、丸尾末広、さらには諸星大二郎の絵にまで続いていく。

手塚治虫を中心に置いてたどる「日本マンガ史」からは、全く見えてこない絵の系譜です。

そういった日本の通俗絵画史・マンガ史のパースペクティブの中に、芳年を置いて考えてみるのも、楽しみ方の一つでしょう。

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さて、次は、原宿・太田記念美術館の「月岡芳年 妖怪百物語」展だ!

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