2017年10月27日金曜日

萩尾望都 『A-A'』(5) 一角獣種とアスペルガー症候群

この「一角獣種シリーズ」でよく語られるのが、アスペルガー症候群との類似性。

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アスペルガー症候群(Asperger Syndrome、AS)とは、発達障害の一種で「高機能自閉症」とも呼ばれます。

1944年、Austriaの小児科医Hans Asperger(1906-80)がはじめて症例を報告した。1981年、UKの精神科医Lorna Wingが「アスペルガー症候群」という用語を用いた論文を発表し、以後この用語と概念が広く普及した。

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特徴はもう

2017年10月11日水曜日 萩尾望都 『A-A'』(1) 一角獣種とは何か?

でまとめた一角獣種の性格そのまま。

・他人の気持ちを理解しにくい
・他人の発言を額面通りに受け取る(特に皮肉や隠喩などが理解しにくい)
・空気を読むのが苦手
・特定の対象に強く興味を示し集中する
・きちんとしたもの、規則的なものを好む
・同じ行動を反復する
・毎日同じ食べ物を食べ続ける
・大きな声や接触が苦手であることが多い
・知的障害、言語障害はない

その結果、特に対人関係で周囲と軋轢が生じやすく、「変わり者」という扱いをされて、孤立してしまうケースが多い。

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「一角獣種シリーズ」に出てくる3人の一角獣種の中では、「A-A'」アディが典型的なASに似た性格を示すよう。

「4/4カトルカース」のトリルでは、性格よりも「一角獣種」の生理に焦点を当てて取り上げているので、あまりASっぽい感じは出ていない。

「X+Y」のタクトはアディとも似ているけど、おもしろいのは、タクトは「ちょっと変わり者」とは思われてはいるものの、周囲に愛されており、孤立したようなところが全くない。

まあタクトはちっちゃくて、アイドル的な扱いだからかもしれないが・・・。しかし、男だけの集団で、あんな寛容な子ばかりというのは、女性向けマンガ特有のファンタジー。だから、常にあんな風にうまくいくとは思わない方がいい。

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ASは「症候群」などという名前が付いているので、あたかも病気であるかのように思ってしまうが、私はそうは思っていない。原因は不明らしく、従って明確な治療法もない。そもそも治療する必要があるのだろうか?

ASっぽい人は昔からいた。病気という扱いではなく、「ちょっと変わった人だな」くらいの扱いだ。今も、ASと診断されていなくても、普通に周囲に一定数いる。

はっきり診断されているわけではないが、Jazz musicianのThelonious Monk(1917-82)はASだったんではないか、と言われていますね。確かに、伝記を読むとASっぽい行動だ。素晴らしい曲と、特異でおもしろすぎる演奏を多数残してくれた人です。日常生活もまた「The Unique」。

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ASの人が話したりする事、作ったりするもの、行動自体も、Monkのように、とても意外で興味深いものが多い。それが他の人と違っている故に、それを発展させれば、今まで見たことも聞いたこともない、新機軸・新発見・新発明になるんじゃないか、と思ってる。そう、ASの人は人類の宝なのだ。

私の周囲にも「この人ASっぽいな」という人は結構いた。もちろん、なかなか対応がむずかしいんだけど、徐々に対応の仕方がわかってきた。

まず褒めてやる。

これはASに限らないのですが、人は誰でも「自分を否定されること」には弱い。ASの人は特に弱いようです。

褒められて喜ばない人はいないでしょうけど、わざとらしい褒め方、お世辞はあまり効果ないような気がします。ASの人は、言葉を額面通り受け取る傾向があるので、一見うまく行きそうな気もするのですが、何故かわかりません。

とにかくASの人が興味を持って集中していることを、面白がって褒めるのが一番です(これもASの人に限らないのですが)。

ところが、ASの人が集中している対象の中には、「何それ?」という意外なものが多いのです。なかなか理解されないのですよ。だから、これはもう褒める側にも、ASの人と興味を共有する才能がいるのです。努力して身につくものじゃないので、むずかしいですよね。

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この「一角獣シリーズ」にもASの人への対応法のヒントがあると思う。アディに気をかけてあげて心を開かせたレグ・ボーン、タクトとは距離を保ちつつ仲間として受け入れているザーズ他の仲間たち。

まあ、所詮フィクションなので、真に受けると逆に危険なのだが、ヒント程度には使えると思う。

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萩尾先生は、どこから「一角獣種」のアイディアを得たのだろうか?執筆当時(1981~84年)は、ASという用語、概念はまだ専門家の間にしか知られていなかったと思うので、何か本で得た知識ではなさそうだ。周囲にASの人がいてモデルにしたのだろうか?

萩尾先生の「A-A'」へのコメントを見ると、今にして思えばある意味ASの象徴かもしれない、というような話をされているので、意識してASをモデルにしたわけじゃなさそう。

一部自分にも当てはまるらしいが、やはり周囲にASの人がいたんじゃないか、という気がする。

まあ、この辺はいつか業界の人に詳しく訊いてほしいところですね。

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なお、ASや発達障害に関しては、マンガもたくさん出ています。解説/HOW TOマンガや、実体験を(やや誇張して)描いたエッセイ・マンガの形態がほとんどです。創作モノとして昇華させた作品は知らないので、いつかそういう作品も見つけてみたい(あると思ってる)。

それにしても、「アスペルガー」というテーマに限っても、これだけたくさんマンガがあるって、やっぱり日本のマンガの多様性はすごい。

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