2017年10月14日土曜日

萩尾望都 『A-A'』(2) A-A'

まずは表題作の「A-A'」から。

・萩尾望都 (1981.8) A-A'. プリンセス, 1981年8月号.
→ 収録 : 『A-A'』(小学館文庫). pp.4-49. 小学館, 東京.


『A-A'』(小学館文庫版), pp.4-5.

昔は、正統派少女マンガ誌に、こんなハードSFが載っていたのですよ。

当時のプリンセスには、SFマンガでは他に山田ミネコがいたが、主力は、貸本時代から活躍する細川智栄子や「わたなべまさこ」など。ちょっと古くさいマンガが多かった。

細川智栄子「王家の紋章」なんて、いまだ現役作品だ!

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「一角獣種シリーズ」は、前回まとめた一角獣種の性格がもたらす軋轢を背景に、もう一つSFガジェットを大きなテーマとしておいている。

「A-A'」では、それが「クローン」だ。

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プロキシマ星系第5惑星ムンゼル探査基地に派遣されていたアデラド・リー(一角獣種、19歳、女性)は、事故で死んでしまう。地球で眠りから覚めたアデラドは、自分がアデラド本体のクローンであることを知る。

A=アデラド(アディ)、A'=アデラドのクローン、ということ。

宇宙探査隊員は、事故死にそなえ、地球を発つ前にクローン作成を義務付けられているのだ。そして本体が事故死の場合は、クローンが代役を務めるため、探査基地に再度派遣される。

二代目アディは、初代アディ3年前のクローンなので、16歳のまま。保存されていた記憶も3年前で止まっているわけ。

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ムンゼル基地に到着した二代目アディは、一角獣種のコミュ障をいかんなく発揮し、周囲をとまどわせる。


『A-A'』(小学館文庫版), p.15.

実は3年前には初代アディも同様だったのだが、レグ・ボーンのおかげで次第に心を開くようになり、二人は恋人同士となったのだった。

二代目アディに対するレグの反応は複雑。「初代アディそのままだ」「いや、アディは死んだのだ。今いるアディは別人だ」という葛藤。再びアディを気にかけるが、二代目アディは一向に心をを開かない。

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レグと二代目アディが調査に向かった先で、二人は偶然、「あるもの」を発見。その「あるもの」に絶望したレグは、二代目アディの心を開かせることもあきらめ、αケンタウリ星系トリマン・コロニーAに転属してしまう。

そこに、トリマン・コロニーAの爆発事故のニュース。レグも事故死。これに対する二代目アディの反応(内面)は、「爆発の光度はどれぐらいだったろう?」。

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アディの冷たい反応に呆れる隊員たちであったが、ある日アディが拒食症に陥っていることに気づき、彼女なりにショックを受けていることを知る。

アディ同様、レグもクローンの出番となる。再びムンゼル基地に配属された二代目レグ。

到着した二代目レグを迎えたアディは・・・。

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クローンをメイン・テーマにした作品だが、これが「一角獣種」という背景に乗っていることで、とても深みのある作品になっている。

SFはやはり設定が命だ。設定がテキトーだと、舞台はSFっぽくても、単にドンパチやってるだけで、実は舞台はどこでもいい話になってしまう。

「一角獣種」を中心においていることもあり、このシリーズは終始静かに進む。が、ところどころに大きな見どころを置いているので、退屈するようなことは一切ない。ここでは、「あるもの」発見が大きな見どころ。

ラストシーンは、カタルシスと感動をもたらす名場面になっている。その一瞬で物語をバスッと断ち切るテクニックも名人芸だ。

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アディの冷たい無表情がいいですね。そのクールさの下から少しずつ感情がにじみ出てくる際の、微妙な描写もおもしろい。

あまり有名じゃないけど、萩尾中編SFの傑作の一つだと思う。是非ご一読を。

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