続いては、「一角獣種シリーズ」2作目
・萩尾望都 (1983.11) 4/4 カトルカース. プチフラワー, 1983年11月号.
→ 収録 : 『A-A'』(小学館文庫). pp.51-100. 小学館, 東京.
『A-A'』(小学館文庫版), p.51.
今回のメインテーマは「念動力」と「共鳴」。
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舞台は木星の衛星イオの大規模基地。
NASAの外惑星探査機Voyager 1号が木星に到達したのは1979年。その時に、衛星イオは活発な火山活動が存在し、表面は硫黄分に富む溶岩で覆われていることが明らかになった。
この作品が描かれた当時、その情報はだいぶ知られていたはずだが、この作品には全く反映されていない。
舞台はほとんど基地のドームの中なので、全然影響ないけど。
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主人公は14歳のモリ。超能力養成学校(?)の学生。だが、その力をうまく発揮できないのが悩み。
モリはペルー出身。幼いころ、その念動力とカレイドスコープ・アイ(万華鏡のようにきらめく瞳)のせいで、村人に殺されかかったことがある。しかし念動力により村を全滅させた。その後、念動力をうまく扱えなくなった。
ある日、モリは一角獣種の娘トリルが落下するのを、空中で止めるという大技を披露する。
トリルは、サザーン博士が育ている一角獣種の純粋種であった。知能障害があり、言葉もうまく喋れない。サザーン博士は、一角獣種の繁殖と改良について研究しているアブナイ先生だ。
『A-A'』(小学館文庫版), p.77.
モリの15歳の誕生日にトリルを招いたところ、モリの念動力が大暴れ。モリとトリルは「共鳴」という現象を起こしており、それによりモリの念動力が増幅されることがわかった。
サザーン博士からトリルを奪い、連れ出すモリ。そこで二人はさらに大きな事件を起こしてしまう。
イオにいれなくなったモリは、火星に旅立つ。しかし、トリルも研究所から逃げ出してしまう。戻ろうとするモリが見つけたトリルは・・・。
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SFの設定を除くと、古典的な「A boy meets a girl」+「ロミオとジュリエット」ストーリーだ。
このエピソードでは「一角獣種」の性格よりも、その歴史、現状、生理が重要なキーとなっている。
サザーン博士は、トリルの卵子を取り出し人工授精させようとしたり、自分でも犯したりしている(よう)で、実はとてもハードでヤバイ話。こんなのが少女マンガ誌(というより、プチフラワーは女性版「青年誌」だが)に載っていたんだから、すごいよね。
主人公は一貫してサイキック男子なので、ちょっと「一角獣種」の効果が薄いけど、悲劇としてよくまとまった逸品だ。
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後悔を残したモリは、次の「X+Y」にも登場し、ダブル主役をはることになる。
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