を見てきました。
・東京外国語大学 TUFS Cinema > 過去の上映会 > 2017年度 > 『テザ 慟哭の大地/TEZA』 2017年12月10日(日) 13:30開場 14:00開映(as of 2017/12/13)
https://tufscinema.jp/171210-2/
エチオピア映画上映会『テザ 慟哭の大地/TEZA』
同上映会チラシ
上映作品 : 『テザ 慟哭の大地/TEZA』+上映後、エチオピア史学者による講演会あり!
開催日時 : 2017年12月10日(日)14:00開映(開場13:30)
会場 : 東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール
プログラム : 映画『テザ 慟哭の大地/TEZA』本編上映+講演会・映画解説 眞城百華先生(上智大学 エチオピア史研究)
その他 : 入場無料、各回とも先着501名、申込不要、一般公開
主催 : アフリカンウィークス実行委員会(東京外国語大学学生団体Femme Café/同大アフリカ地域専攻有志)
協力 : シネマトリックス/東京外国語大学 現代アフリカ地域研究センター/東京外国語大学TUFS Cinema
作品紹介
2008/エチオピア=ドイツ=フランス/アムハラ語、ドイツ語、英語/140分/カラー/日本語字幕付
監督 : ハイレ・ゲリマ(Haile Gerima)(監督/脚本/制作)
制作 : カール・バウムゲルトナー(Karl Baumgartner)
共同制作 : マリー・ミシェル・カトラン(Marie-Michèlegravele Cattelain)、フィリップ・アヴリル(Philippe Avril)
出演 : アロン・アレフェ(Aaron Arefe)、アビイェ・テドラ(Abiye Tedla)(出演者名は修正した)
【あらすじ】1970年代に医者を志し故国エチオピアを離れ、ドイツに留学していたアンベルブル(Anberber)。しかし、外国での人種差別と、皇帝ハイレ・セラシエ(Haile Selassie)の支配から軍事独裁政権に取って代わった故国の現状に失望し、荒涼とした故郷の村に帰ってきた。村で待つ母と村人たち。その中に佇むひとりの謎の女性アザヌ(Azanu)。蘇ってくる幼少期の記憶と大地の霊、忘れることができない夢に導かれるようにアンベルブルは、過去と現在を行き来する。そこに迫りくる独裁と暴力の影。この国に未来はあるのだろうか。その先に見えてくる希望の光とは。
ワガドゥグ全アフリカ映画祭 FESPACO グランプリ、ヴェネチア国際映画祭 脚本賞/審査員特別賞、カルタゴ アラブアジアン映画祭 Tanit d’Or グランプリ
参考:
・Wikipedia (English) > Teza (film)(This page was last edited on 20 September 2017, at 23:06)
https://en.wikipedia.org/wiki/Teza_(film)
・IMDb > Teza (2008)(as of 2017/12/13)
http://www.imdb.com/title/tt1284592/
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この映画は、1970年代から活動を続けてきた在米Ethiopia人監督Haile Gerima(1946-)の作品。
どうもこの人は、歴史もの・政治ものを志向する監督のようだ。この作品も政治的な主張が強く入っている。
参考:
・Wikipedia (English) > Haile Gerima(This page was last edited on 9 December 2017, at 02:56.)
https://en.wikipedia.org/wiki/Haile_Gerima
・岡倉登志 (2007.12) 13 ヨーロッパの博物館で冬眠? エチオピア映画. 岡倉登志・編著 『エチオピアを知るための50章』(エリアスタディーズ68)所収. pp.103-108. 明石書店, 東京.
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この映画の舞台は、Ethiopia北西部Amhara州Tana湖北岸Gorgora近郊。
Google Mapに加筆
映画には、Tana湖の風景が繰り返し現れる。特に朝のシーンは美しい。Ethiopia地図は何度も見ているのだが、Ethiopiaの湖なんて気にかけたことなかったよ。勉強になった。
Google Mapに加筆
だいたいこの辺だろう。映画に出てくる島があるのはこのあたりだし。
Anberberが登っていた、対イタリア戦勝記念碑が立つMussolini山(というより丘)の場所はよくわからなかったのだが、Google Mapでは、印の場所に長い影が見えるので、たぶんここだろう。
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映画パンフレット, p.1&p.4
映画パンフレット, pp.2-3
映画は、Gorgora近郊の村にAnberber(40代)が帰って来る場面からはじまる。これはMengistu政権末期の1990年頃のようだ。
けがもしており、失意のAnberberはぶらぶらと散歩をするのみで、日々鬱々として過ごす。この辺が実に長く続き、ストーリー的にはけっこうじれったいのだが、Ehiopiaの村や習俗、エチオピア正教の寺院などを知るにはすごくおもしろい。
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映画は、徐々にAnberberの回想シーンの比率が高くなる。
1970年代はじめ、Anberberは医学留学で西ドイツ滞在。そこで反Haile Selassie皇帝運動にかぶれる。
1974年革命が成功し、Mengistu軍事政権が成立。皇帝Haile Selassieは密かに処刑された。
親友Tesfayeはドイツ人の妻子を置いてEthiopiaへ帰国。やがてAnberberも帰国し、Tesfayeの下で医学研究にはげむ。
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しかし、Mengistu社会主義政権は、皆が期待したような民主的な政権ではなく、政敵や反政府的な言動をする人々が日々逮捕され拷問や処刑される恐怖政治であった。
せっかく革命が成功したのに、その社会に幻滅するAnberber。彼の反政府的言動は、政府の標的となる。人民裁判で吊し上げをくらい、ついには自己批判に追い込まれる。
AnberberやTesfayeを追い詰める大臣役の俳優(名前は知らない)がすごく良かった。悪役として名演ですよ。
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Tesfayeもリンチで虐殺され、Anberberは東ドイツにいやいや派遣される(言うことを聞かないと命が危ない)。
そこでAnberberは1989年の「Berlinの壁崩壊」を目にする。はっきりと描かれてはいないが、それに続くソ連崩壊が、1991年のMengistu政権の崩壊につながるのだ。
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Anberberがけがをしたのは、こういった政治の動きとは関係ない出来事だった。これはちょっと意外。唐突な感は否めない。
そして冒頭のAnberberの帰郷につながる。
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最後はAnberberも立ち直り、明るい希望がほの見えるエンディング。実はもうMengistu政権崩壊は間近であることは、Anberberは知らない。
「ベルリンの壁崩壊」などとダブらせて、政権崩壊を匂わせてもいいのにな、とも思うが、この点この映画は淡々としている。これがGerima監督の作風なのだろう。
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とまあ、実際のEthiopia現代史のtime scaleを知った上で見るとすごく面白いのだが、基礎知識がないとわかりにくい映画かもしれませんね。時間も行きつ戻りつするし。
この映画が語る政治的な主張は、反Mengistuであり、現政権の立場と近い。まあ、Mangistu政権が「問答無用の悪役」として描かれるのは当然なんだけど、かといって現政権もどうもずいぶんロクでもないことをしているらしい。
だから、この映画の政治的主張もすぐに古くなるであろうが、でも、Gorgora周辺の美しい村・湖の風景はいつまでも映画の中に保存される。そういう意味で、Ethiopiaにとっても我々日本人にとっても有意義な映画であるのは間違いない。
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端々に出てくるEthiopia民謡/歌謡もなかなかよかった。Major音階のAfrican Popsとも、Arabic音階とも違うし、日本の追分などの民謡とそっくりです。いわゆるPanta-tonic(五音階)。
Ethiopiaで日本の演歌が人気なのも頷ける。
こういった離れた土地で、似た音階が現れるというのはホント不思議。これも文化周圏論が適用できるのだろうか?今後の課題ですな。
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なお、Ethiopiaをテーマにした音楽については、分家blogの
2017年4月4日火曜日 James Newton/AXUM 驚異のフルート・ソロ
で少し語っていますので、興味のある方はどうぞ。
この音楽は、モチーフとしてEthiopiaを使っているだけで、現実のEthiopia音楽とはほとんど関係ないのですが。
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主催者側の学生さんは、まだ1・2年生が多く、みんな初々しくも楽しそうでよかったです。Rasta colorsのAfricaマニアみたいな人はいなかったなあ(笑)。
東京外国語大学では、この映画の他にも2017/12/22までAfrica Weeks 2017という催し物をやっているので、皆さんも是非行ってみてください。
またこういうAfrica映画上映会があったら絶対行くぞ。
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