新人の単行本デビュー作
・森田るい (2017.11) 『我らコンタクティ』(アフタヌーンKC). 255pp. 講談社, 東京.
← 初出 : アフタヌーン, 2017年5月号~11月号.
装丁 : 名和田耕平デザイン事務所
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UFO(あるいは宇宙人)に宇宙で映画を見せるために、ロケットを打ち上げようとする「かずき」と、これに巻き込まれるゲスい女子「カナエ」の物語。
かずきはボーッとしてるようで、本当は実力あるという男子(優秀すぎるきらいはあるが)。カナエは最初こそロケットを金づるとしてしか見ていなかったが、徐々に本気になっていく。
テーマはロケット開発だが、中身の実際は青春モノだ。登場人物はそれほど多くないが、仲間が集まってくるという「水滸伝」要素もあり、なかなかよい。
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前半は、かずきの兄とその不倫相手・梨穂子さん、兄弟の葛藤という人間ドラマがあって、ロケット製作はその合間に挟まる感じで、ちょっとタルい。
それが兄弟和解があって、ロケット打ち上げに向かう後半のスピード感は素晴らしい。
まあ、設定は甘々なんだけど。特に金の出所とか映画の光源とか。
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人物は、強弱のない細い線で描かれる。昨今多い、いかにもなペンタブ線だ。まるで真鍋博。
そんな中に一人だけ、目力が強力な女子を主人公として置いたのが成功の秘訣だろう。でなかったら、ずっと地味なマンガになっていたはず。
こういう絵はもっと地味な日常マンガ向きなんだが、この絵でアクション要素もあるこういうマンガにするのは相当な実力だ。シンプルながら、人物はちゃんと立体として表現されているし。
背景も端正ながらうまいし、画面構成も美しい。
同書, pp.212-213
これでスピード感あるストーリー、少し甘いけどよく考えてある設定と、マンガとしてほぼ完璧な出来だ。作者も相当満足感があるんではないだろうか。
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調べてみると、2013年アフタヌーン四季賞で入賞。その後短編を数本発表。他には主に同人誌方面で活動していたらしい。
なんでまた、急にこんな大作を手がけたんだろう?表に出ないけど、誰か科学・工学に強い協力者がいるんじゃないか、という気がする。
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こんな傑作をモノにしてしまうと、今後もストーリー性の強い作品を世間から求められてしまうような気がするが、大丈夫だろうか?この人の地は、それとは違うような気もするので、ちょっと心配。
でもまあ、地味な日常ものの人だと思っていたのに、ストーリー性の強い意欲作をガンガン発表し始め、びっくりさせられっぱなしの田中相みたいな例もあるので、どうなるか楽しみではある。
そういえば、田中相も紹介したことなかったなあ。そのうち気合入れて紹介します。
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