2018年1月8日月曜日

諸星大二郎 『雨の日はお化けがいるから』

諸星先生の短篇集が出ました。

・諸星大二郎 (2018.1) 『雨の日はお化けがいるから』(諸星大二郎劇場 第1集, BIG COMICS SPECIAL). 220pp. 小学館, 東京.


装幀 : 関善之 for Volare

この本、どこ行ってもない。なんで?初刷少ないのかな?巨大書店でようやく見つけました。

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副題にある通り、ビッグコミック増刊に掲載されていた作品が中心です。

詳細目次

(01) 003-038 闇綱祭り ← 初出 : ビッグコミック, 2013年7月10日号
(02) 039-066 雨の日はお化けがいるから ← 初出 : モーニング, 2015年4月16日
(03) 067-090 ゴジラを見た少年 ← 初出 : ビッグコミックオリジナルゴジラ増刊号, 2014年8月10日増刊号
(04) 091-121 影人 ← 初出 : ビッグコミック, 2016年6月17日増刊号
(05) 123-142 (眼鏡なしで)右と左に見えるもの エリック・サティ氏への親愛なる手紙 ← 初出 : ビッグコミック, 2016年10月17日増刊号
(06) 143-154 空気のような ← 初出 : (2006.1)『AERA COMIC ニッポンのマンガ』(朝日新聞社)
(07) 155-162 怒々山博士と謎の遺跡 ← 初出 : ビジネスジャンプ増刊BJ魂, 2006年5月1日増刊号
(08) 163-170 怒々山博士と巨石遺構 ← 初出 : ビジネスジャンプ増刊BJ魂, 2006年7月1日増刊号
(09) 173-180 河畔にて 第1話 クーリング・オフ ← 初出 : 諸星大二郎 (2013.12) 『子供の情景』(諸星大二郎選集 第2集)(小学館)
(10) 181-196 河畔にて 第2話 上流からの物体X ← 初出 : ビッグコミック, 2016年12月17日増刊号
(11)197-220 河畔にて 第3話 欲しいものは河を流れてくる ← 初出 : ビッグコミック, 2017年3月17日増刊号

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(01) 「闇綱祭り」は、「妖怪ハンター」に連なる異界もの。一番しっかりストーリーを作ってあるのがこの作品。


同書, p.7

この半分だけの神社!こんなのありえないんだけど、このイマジネーションは他の人では無理。創造力衰え知らず、といったところ。

他の作品はわりと軽めのものが多く、半分くらいコメディものだ。

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(02) 「雨の日がお化けがいるから」は、「あもくん」シリーズの追加作。『あもくん』単行本発売の際に、どういうわけか筋違いの講談社「モーニング」に掲載された。

諸星先生はメジャーとはいえないが、確実に販売数が読める巨匠ですからね、大手出版社もこういった形で折に触れ恩を売っておくようなことをするのです。

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(03) 「ゴジラを見た少年」が掲載された「ビッグコミックオリジナルゴジラ増刊号」はもう3年前かあ・・・。つい最近のように思ってしまうが・・・。

おなじみの少年時代の妄想ものだが、3.11や原発問題といった時事ものに関わっている。諸星作品にはたまにある傾向の作品だが、理に落ちすぎてあまり面白くはならないのが通例。

BCオリジナル増刊号は、この他にも「タイガース増刊」とか、最近変な特集をいろいろ組むのでおもしろい。店頭で見つけるのが楽しみ。

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(04)、(05)については、初出時に

2016年5月26日木曜日 諸星大二郎 「影人(えいじん)」
2016年9月27日火曜日 諸星大二郎 「(眼鏡なしで)右と左に見えるもの」

で触れていますので、そちらもご覧ください。

いやあ、しかし「(眼鏡なしで)・・・」は、改めて読んでもやっぱりすごい。

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(07)、(08)は久々の「怒々山博士もの」。このシリーズ、まだストックあるようなので、今後楽しみ。

(09)~(11)は、BC増刊号掲載のシリーズ。サイレントものだが、ちょっとご教訓ものっぽく、理に落ち過ぎであんまりおもしろくない。

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BC増刊号では、ここしばらく「オリオン・ラジオ」シリーズが続いている。かなり地味な作品群だ。

まあでも、68歳なのに現役バリバリで新作マンガを描いてくれて、そのどれもがかなりおもしろいというだけで驚異的だ。ファンとしてはありがたいと思う。

前作『BOX』はおもしろかったけど、自分にはあんまり肌が合わなかった。でも、あれは諸星先生が楽しんで描いていることがわかって、それだけで充分だった。

あの歳でいろいろ新しいことやろうとしてるんだから、すごいよ。

この感じだと、今後さらに「あっ」と驚くような作品を期待してもよさそうだ。楽しみ。

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