2016年12月31日土曜日

森泉岳土 『うと そうそう』

2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発

で紹介した森泉岳土の新刊が出ています。

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・森泉岳土 (2016.12) 『うと そうそう』. 166pp. 光文社, 東京.
← 初出 : 小説宝石, 2015年6月号~2016年8月号


ブックデザイン : 吉岡秀典(セプテンバー・カウボーイ)

今回は、水と爪楊枝を8B(!)の鉛筆に持ち替えての作品。紙は画用紙かな?

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うまい、うますぎる。嫌味に感じるほどうまい。中身もブックデザインも完成度が高すぎて、私がくだくだ語る必要もない。見て、読んでもらえばそれで充分、といった作品。

解説によると、著者はこの作品全部を、連載開始前わずか1ヶ月で描き終え、連載はそれを小出しにしていったのだそうな。驚きですね。

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中身は8ページものが15編。いずれも主人公のモノローグで構成される詩のような作品。スケッチのような単純な線で描かれており、シルエットを得意とする森泉にとってはお手のものだろう。



鉛筆なので下描きはないはず。一発勝負でこれだけの絵が描けてしまうのがすごい。別紙にラフくらい取ってから、その後にコマ割りして描いてはいるのだろうが。

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各話の扉がまた凝っている。上3分の2は見えるか見えないかのかすかな線で、手前に置いて見るとよく見えないが、奥から覗きこむようにすると見えてくるという、ホログラムのような特殊印刷。どういう仕組みなんだろう。

本をひっくり返しても同じなので、インクの粒子に角度がついている、とかではなさそう。不思議な仕組みだ。

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解説は映画監督・大林宣彦。実は、著者は大林監督の娘婿に当たるのです。大林監督の文章は、フラフラあちこちに寄り道する展開で、本人の話と似ていておもしろい。

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1400円+税、ということで高いと感じるかもしれませんが、ブックデザインも含めてひとつの芸術作品と思って、手に取ってみてください。

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(追記)@2016/12/31

著者自身が、小説宝石及びブックバンで本作について語っているので、そちらもどうぞ。

・ブックバン > レビュー > 森泉岳土/だれかの指 『うと そうそう』刊行エッセイ(2016/12)
http://www.bookbang.jp/review/article/523795
← 初出 : 小説宝石, 2017年1月号

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(追記)@2017/01/01

扉の仕組みが少しわかった。仕掛けがあるのはインクの方じゃなくて紙の方だ。

光沢のある紙を使っているんだが、特定の角度に光を多く反射する。それが手前側、少し本を傾けた角度(本を読む視線の方向)。すると紙が光を反射して白っぽくなり、やはり白っぽいインクで印刷された絵と同化して真っ白に見える、という寸法。

その角度からずれると、紙からの反射は減り、紙は少し黒っぽくなり絵が見える、というわけだ。

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