まず影響が見られたのはTVアニメの世界。
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・<TVアニメ> 横山光輝・原作, 東映動画・制作 (1966.12~1968.12) 魔法使いサリー(全109話). NETテレビ.
サリーのクラスメートである「よし子」ちゃん(通称:よっちゃん)。知らない方はこちら↓でどうぞ。
・YouTube > よっちゃんの視力検査 (uploaded by EGO Channel, 2014/03/03)
https://www.youtube.com/watch?v=rdgDw2rDSTw
三つ子のお姉さんのあの子です。面長で背が高く、気が強く活発。表情豊かでよく動く。そして特徴的なのは、やっぱり「お下げ」。
これは確実にフイチンさん/お初ちゃんの影響があるでしょう。当時まだ「お初ちゃん」は連載中です。
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「魔法使いサリー」の後続番組
・<TVアニメ> 赤塚不二夫・原作,東映動画・制作 (1969.1~1970.10) ひみつのアッコちゃん(全94話). NETテレビ.
にも「フイチンさんの娘」が登場します。やはりアッコちゃんのクラスメートの「モコちゃん」です。
知らない方はこちらで↓
・大場★打太/いくつになってもアニメファン 略してINAF > Deep Closet > NEXT > 魔法少女・変身少女・戦うヒロインたち… ひみつのアッコちゃん(07/25/2004更新)
http://inaf.2-d.jp/C_d/___95i/akko.html
よし子ちゃんにくらべると少し地味かもしれませんが、やはり気が強く活発。そしてもちろん「お下げ」なのです。
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実は原作のマンガでは、よし子ちゃん、モコちゃんとも、それほどフイチンさん的ではありません。モコちゃんなどは、マンガではツインテールですらないし。
・しら/こんなんみっけ 穴子さんの年齢は27歳! > 横山光輝「魔法使いサニー」 2009/10/26(月) 午後 6:49
http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/8743548.html
・赤塚不二夫公認サイト これでいいのだ!! > マンガ > ひみつのアッコちゃん > キャラ紹介 (as of 2017/03/23)
http://www.koredeiinoda.net/manga/s_mokochan.html
これは、私は「フイチンさん」、「お初ちゃん」の動きを感じさせる絵が、マンガ家よりもアニメーターの琴線に強く触れたため、彼らがアニメ版にフイチンさん・キャラを持ちこんだのではないか、と推察しています。
あの絵を見たら、アニメーターなら絶対動かしたくなりますよね。
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実はその通り、「フイチン再見!」最終回にも描かれていますが、「フイチンさん」はアニメ化されたことがあるのです。
・<劇場アニメ> 上田としこ・原作, 湖山禎崇・監督, アニマル屋・制作 (2004.3) 『フイチンさん』. 55分. あにまる屋自主配給.
→ <DVD> (2006.5) グッドシップス, 東京.
参考:
・アニメ制作会社 エクラアニマル > 活動 作品紹介 > フイチンさん(as of 2017/3/23)
http://www.anime.or.jp/katudou/fuitin.html
予告編を見る限り、フイチンさんは頭身も小さくなり、上田「フイチン」とはちょっと違った印象を受けますが、美しいハルビンの風景など、評価は非常に高いアニメです。
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彼女らに共通するのは、「主役ではなく脇役」であること。子供向けアニメとはいえ、いつも楽しい話ばかりではありません。時には悲しい話やシリアスな話もあります。そういった場面もある連続アニメでは、「フイチンさんキャラ」はどうしても脇役止まりになってしまいます。
「フイチンさんキャラ」を主役として動かすには、相当な力量が必要なことがわかります。上田先生のすごさはそこなのです。
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さて、その「サリー」「アッコちゃん」以後、しばらくは「フイチンさんキャラ」というのは思い浮かばないのですが、1980年代に突然変異的に「フイチンさん」的な絵が現れます。
それがコレ↓
・高野文子 (1993.6) 『るきさん』. 120pp. 筑摩書房, 東京.
← 初出 : Hanako, 1988年6月2日号~1992年12月17日号.
→ 再発 : (1996.12) (ちくま文庫). 筑摩書房, 東京.
→ 再発 : (2015.6) (新装版). 126pp. 筑摩書房, 東京.
装幀 : TAKE ONE(鈴木哲也)
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お下げでこそなく、また動きもそれほどではないが、この線はまさに「フイチンさん」「お初ちゃん」です。
同書, p.103
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当時、高野先生は「フイチンさん」(おそらく講談社漫画文庫版)にはまっていたらしく、
・<TV番組> NHK (2000.5.2) BSマンガ夜話 第14弾 第2夜 るきさん 高野文子. NHK-BS2.
では、いしかわじゅん氏が、高野先生のダンナ・秋山協一郎氏による「最近、うちの奥さん、「フイチンさん」ばっかり描いてるんだよ」という証言を紹介しています。これはおそらく「るきさん」が始まる前の話だと思われます。
この人は、どんどん絵柄を変えていく人で、前単行本(1987.8)『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』では、1950年代USAアクション映画風の絵に変わり、びっくりさせていました(違和感もありまくりでしたが)。
それが次作品『るきさん』では、また大きく変わり、「フイチンさん」ですからね。びっくりしっぱなしです。
「るきさん」以降は、この頃のシンプルな線が基本になり、初期の刺さるようなシャープな線ではなくなりました。
「るきさん」については、カラーコーディネートやデザインの実験などいろいろ語りたくなるのですが、実はあまり深読みする必要はありません。そのまま楽しめばいい作品だと思っています。
「るきさん」については、いつかまた語る機会があるでしょう。
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この後、高野先生は、
・高野文子 (1995.7) 『棒がいっぽん』(MAG COMICS). 204pp. マガジンハウス, 東京.
装丁 : 藤井進
という単行本を放ちます。これがまたすごい作品ばっかり。
特に
・高野文子 (1995.7) 奥村さんのお茄子(単行本版). 『棒がいっぽん』所収. pp.137―204. マガジンハウス, 東京.
は、驚天動地の怪作でした。これもいくらでも語りたくなる作品なのですが、今回は先へ進みましょう。
その「お茄子」に出てくるスーパーのおねーさんも、「フイチンさん」っぽいのです。
同書, p.194
こういうコミカルな動きを描くようになったのも「るきさん」以降。
この後、高野先生はまた別の絵になっていくのですが、その辺の話題もいずれまた。
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初期の高野作品は、岡崎京子や桜沢エリカといった女性マンガ家に大きな影響を与えていますが、「るきさん」周辺の作品では、その下の世代の女性マンガ家たちにも大きな影響を与えています。
彼女らの作品は、「フイチンさんの娘」というよりは「るきさんの娘」であり、「フイチンさんの孫娘」といった感じなのですが、系譜として連続するものであることは間違いありません。
以下次回
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(追記)@2017/03/26
「るきさん」を連載していたHanako(週刊誌)のマンガ部門は、高野さんのダンナ秋山協一郎氏が編集を担当していたのです。「るきさん」は、吉田秋生「ハナコ月記」、江口寿史「ご近所探検隊」、しりあがり寿「O.SHI.GO.TO.」との毎週交代での連載。
その後、マガジンハウスは1994年に「COMICアレ!」というマンガ雑誌を発行(1994/05~1997/03)。その編集も秋山氏(実質的に編集長)。「お茄子(雑誌版)」はもともとは「アレ!」で発表されたものでした。
そこで発掘されたのが、マガジンハウスの旧名・平凡出版・刊の雑誌「平凡」に連載されていた「お初ちゃん」でした。復刻「お初ちゃん」は、しばらく「アレ!」にも連載されていたのです。
そして、抜粋とはいえ単行本化されたのは、本当によかった。
高野先生に「フイチンさん」を薦めたのも秋山氏だったといいますから、上田としこ「フイチンさん」「お初ちゃん」と「るきさん」を繋ぐ鍵は、実は秋山氏だったことになります。
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