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stod phyogs 2009年6月1日月曜日 朝の連続テレビ小説+映画「ゲゲゲの女房」の予習をしておこう の巻(8) 評伝など-2
からの移籍です。日付は初出と同じです。
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えー、ただ今、水木しげる先生の自伝の数々をみております。
【 評伝など-2 】
<古川益三の自伝>
古川益三・著
『まんだらけ風雲録 幻のマンガを求めて』初出:書き下ろし
太田出版(1995/05)
----1970~77年(水木サン48~55歳)。元・マンガ家で現・まんだらけ社長・古川氏のサクセス・ストーリー。古川氏が水木プロにいたのはわずか2ヶ月(1970/07~08)だが、その後も水木プロに出入りし同アシスタントの山口芳則と古本屋・憂都離夜を始める(これがまんだらけの前身)。
<山口芳則のエッセイ>
山口芳則・著
「水木プロ アシスタント列伝 1964~1984」初出:まんだらけ no.9(1995/06)
収録:単行本未収録
----1964~84年(水木サン42~62歳)。足かけ10年にわたりアシスタントを務めた山口氏が、水木プロを去来したアシスタントたちを語る。わずか3ページだが内容は濃い。水木マンガ製作現場の謎も一部解き明かされている。
<宇田川政男の自伝>
宇田川政男・著
『マンガ家流転人生 筆一本の50年』初出:業界各紙
彩流社(1995/09)
----1959~62年(水木サン37~40歳)頃。兎月書房や三洋社の仕事で水木サンと交流があったマンガ家・宇田川雅夫(のちに政男)の自伝。実は、当時の話は「ここまで紙芝居、貸本の世界のことは、加太こうじ氏の『紙芝居昭和史』や水木しげる氏の『ねぼけ人生』にくわしく書かれているのだが」とそっけない。しかし軍隊体験~紙芝居~貸本マンガ、と水木サンと同じルートをたどってきた方なので、その証言は貴重。水木サンが首を傾げていた「業界紙進出作戦」の行方が気になる人も多いのではないだろうか?そして水木ファンには(タイトルだけ)お馴染みの『ばったり侍』がわずか3ページながら収録されているのにも注目。宇田川氏は水木サンの一歳年上で、本書執筆当時もなんとまだマンガ家現役であった(2000年に逝去)。
<関連論考>
梶井純・著
「貸本マンガの時代(4) ある紙芝居出身貸本マンガ家たち 水木しげると宇田川マサオ」初出:貸本マンガ史研究 no.9(2002/06)
収録:単行本未収録
<座談会>
「水木プロ アシスタント座談会」初出:まんだらけ no.13(1996/06)
収録:単行本未収録
----1964~96年(水木サン42~74歳)。北川義数(義和)、池上遼一、佐々岡健次(島根けんじ)、土屋慎吾、山口芳則、古川益三が水木プロ時代の思い出を語る。酒が入っての宴会なので話は散漫だが、貴重な証言満載。水木プロ一のあわて者だった土屋氏の話に相変わらず爆笑する(土屋慎吾は「黒い砂漠」主人公のモデル、同作品は『昭和史』、『ゲゲゲの楽園』に転用されている)。水木サンを過度に賞賛するわけでもなく悪口を言うでなく、「敬愛」という言葉が相応しい愛情あふれる座談会。池上・談「あの先生といればいい事あるよね」がすべてを物語っている。
<奥さんのインタビュー>
多田洋子・編
「水木しげる夫人 武良布枝」初出:語り下ろし
収録:多田洋子・編 『ソクラテスの妻たち』 スリーエーネットワーク(1997/01)
----1960~96年(水木サン38~74歳)。水木サンのエッセイを挟みつつ、布枝さんが自分の半生を語る。
<夫婦インタビュー>
谷口桂子・構成+文
「夫婦の階段 第187回 「妖怪」につかれた夫を支え続けた「平凡」な妻 武良布枝・水木しげる」初出:週刊朝日(1997/05/23)
収録:単行本未収録
----1960~97年(水木サン38~75歳)。37年目を迎えた結婚生活を二人で語る。この年はなぜか雑誌などで布枝さんの出番が多かった。
<関連記事>
「夫婦の肖像19 水木しげる・布枝夫妻」初出:婦人公論(1997/04)
収録:単行本未収録
<内田勝の自伝>
内田勝・著
『「奇」の発想 みんな少年マガジンが教えてくれた』初出:書き下ろし
三五館(1998/06)
----1965~68年(水木サン43~46歳)。少年マガジン黄金期の編集長・内田氏が当時を振り返る。鬼気迫る点描画製作の現場、鬼太郎アニメ化のいきさつなど、貴重な証言あり。
<年譜>
編者名なし
「水木しげる年代記(前)(後)」初出:書き下ろし
収録:水木しげる 『水木しげる貸本時代ロマン(上)(下)』 太田出版(1999/03~05)
----1922~99年(水木サン0~77歳)。この手の年譜は数あれど、これは特別。年譜自体はシンプルなものの、貴重な写真満載(ねずみ男のモデル・梅田栄太郎氏の写真まである)。「餓死」、「竹内寛行」といった水木ファンの興味をそそるキーワード解説も秀逸で、ちょっとした水木小事典にもなっている。
<後藤修一のインタビュー>
後藤修一・談
「ナチな人々File No.3 三島由紀夫や水木しげるに愛された、元祖ナチおたく ヒトラー研究家・後藤修一」初出:語り下ろし
収録:佐藤卓己+日本ナチ・カルチャー研究会・編著 『ヒトラーの呪縛』 飛鳥新社(2000/07)
----1971年(水木サン49歳)。ナチス・マニアの後藤氏が、『劇画ヒットラー』で原作・資料協力をすることになったいきさつを語っている。
<関連記事>
水木しげる
「わが友(2) 後藤修一 ヒットラー少年 鬼太郎と桃太郎をあわせて・・・」初出:日本読書新聞(1984/04/30)
収録:単行本未収録
----つげ義春、長井勝一の間に挟まり堂々の登場。水木サンと後藤氏の交流については、この二記事以外ほとんど記録に残っていないので貴重。
<評伝>
児玉淳・著
『水木しげる 鬼太郎と妖怪たちの世界』初出:書き下ろし
講談社・火の鳥人物文庫(2000/11)
----1922~2000年(水木サン0~78歳)。小学生向けの評伝なので、内容はあっさりしている。子供が好きな妖怪がらみの話が多いことが特徴。
<大山学の自伝>
大山学・著
「私記貸本漫画家(3) 東京へ」初出:貸本マンガ史研究 no.5(2001/06)
収録:単行本未収録
----1966年~67年(水木サン44~45歳)。貸本マンガ家、永島慎二のアシスタントなどとして活動していた大山氏の連載自伝。その中の一話が上京当時、国分寺で暮らした日々の思い出。水木サンからアシスタントの勧誘を受けた話、水木・つげ・池上が連れ立って古本屋で猟書していた話などもある。なお、その古本屋とは、あの椎名誠・著『さらば国分寺書店のオババ』の店だったそうな。
<池上遼一のインタビュー>
池上遼一・談
「池上遼一氏インタビュー 貸本マンガのリアリズム さいとう・たかをの都会的センスとつげ義春の生活感」初出:貸本マンガ史研究 no.8(2002/03)
収録:単行本未収録
----1966年~68年(水木サン44~46歳)。水木プロ加入前の、貸本マンガに係わった時代と当時の劇画に関する話題がほとんどだが、水木プロやつげ義春の話題もある。また、当時つげ同様アシスタントより格上の「手伝い」として水木プロに出入りしていた貸本出身のマンガ家・伊藤正樹、橋本将次に関する話題も貴重。
<南伸坊のエッセイ>
南伸坊・著
「前代未聞の珍放送 水木先生のTV名場面を観る」初出:書き下ろし
収録:水木しげる・ほか 『水木しげる80の秘密』 角川書店(2002/07)
----1970年代?~1990年代?。水木サンTV番組出演時の珍エピソードを、視聴者として笑い転げていた南伸坊が語る。水木サンのTV番組出演については、水木研究の中でも最も遅れている分野。このエッセイでも、番組名、放送年月日は不明。
<呉智英のエッセイ>
呉智英・著
「「水木話」総集編水木しげるの最高傑作は「水木しげる」である」初出:書き下ろし
収録:水木しげる・ほか『水木しげる80の秘密』 角川書店(2002/07)
再録:呉智英 『犬儒派だもの』 双葉社(2003/03)/双葉文庫(2006/03)
----1970~2002年(水木サン48~80歳)。かつて水木サンの資料整理係、『のんのんばあとオレ』の編集協力者として働き、その後も交流が途絶えることがなかった著者ならではの、とっておきの水木エピソード集。タイトルはけだし名言である。
<関連エッセイ>
呉智英・著
「我が師、我が友 水木しげるさん 人柄に魅了される」初出:週刊読書人(2000/01)
収録:呉智英 『犬儒派だもの』 双葉社(2003/03)/双葉文庫(2006/03)
<関連エッセイ>
呉智英・著
「じっと待てない男」初出:書き下ろし
収録:水木しげる 『ほんまにオレはアホやろか』 新潮文庫(2002/08) 解説
再録:呉智英 『犬儒派だもの』 双葉社(2003/03)/双葉文庫(2006/03)
----両エッセイとも、水木サンのとあるエピソードをつづったもの。
(一部修正+追加@2009/06/04)
<奥さんのインタビュー>
武良布枝・談
「水木夫人インタビュー 夫・水木しげるの思い出を語る」初出:語り下ろし
収録:水木しげる・ほか 『水木しげる80の秘密』 角川書店(2002/07)
----1960~2002年(水木サン38~80歳)。これまでの40年間を振り返るが、やはり苦労時代の話が興味深い。これが後に自伝『ゲゲゲの女房』に発展する。
<追悼特集>
『貸本マンガ史研究 no.13 追悼・桜井昌一』シナプス(2003/08)
----2003年4月に逝去した東考社社長・桜井昌一氏を一号丸ごと使って追悼した特集号。水木サンの談話をはじめ、人柄が偲ばれる豪華メンバーの追悼文、論考、年譜、対談再録、小写真集、東考社出版物リストなど充実した内容。水木サンが関係する記事も多く、次の通り。
三宅秀典 「貸本マンガ末期の苦闘と栄光 東考社と貸本マンガ」
池上遼一 「桜井さんを想う」
伊藤徹 「桜井さんの思い出」
長谷川裕 「文庫版『河童の三平』のこと」
水木しげる 「私は昌一さんが好きだった」
山口芳則 「点を打つ」
つげ義春+桜井昌一・対談 「いまは夢みたい」(再録、初出は1972年)
<評伝+インタビュー>
桐山秀樹・著
「マンガ道 波瀾万丈 激白・みんなが泣いた、笑った「名作」はこうして誕生した 第23・24回 水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」 (上)(下)」初出:アサヒ芸能(2004/06/17~06/24)
収録:単行本未収録
----水木サン1922~2004年(水木サン0~82歳)。「鬼太郎」の話題だけではなく、実質的に「水木しげる伝」ショート・バージョンになっている。
<年譜>
平林重雄・編
「水木しげる詳細年譜 最新見出し付版 2004年12月」初出:書き下ろし
収録:水木しげる 『完全版 マンガ水木しげる伝(下)戦後編』 講談社漫画文庫(2005/01)
----1922~2004年(水木サン0~82歳)。今のところ、これが年譜の決定版(おそらく未発表で日々アップデートされているはず)。経歴から発表作品、出版物、イベント、関連グッズ、テレビ化/出演、旅行までを網羅した特濃年譜。字が細かい上に、一年分改行もなく、誤字・脱字も多い(おそらく校正を放棄している)ため、きわめて見にくいが、そういった欠点は全く気にならない(「私には」ってことで、同意してくれなくてもいいです)。水木情報の宝庫。快挙です。
<伊藤徹のエッセイ>
伊藤徹・著
「水木しげるに魅せられて四〇年」初出:ユリイカ(2005/09)特集・水木しげる
収録:単行本未収録
----1971~90年(水木サン49~68歳)。ディープな水木ファンで現在は古書店・籠目舎店主、画期的な水木本を多数自費出版もしている伊藤徹(水木サンは「イトーテツ」と呼ぶ)が、『水木しげる作品リスト』や『水木しげる画業四〇周年』を作成した際の思い出を中心に語る。
<弟さんのエッセイ>
武良幸夫・著
「武蔵野美大のころ」初出:ユリイカ(2005/09)特集・水木しげる
収録:単行本未収録
----1947~50年(水木サン25~28歳)。弟さんで水木プロ・マネージャーの幸夫さんが、水木サン帰国後に東京で共に過ごした日々を回想。月島で魚屋、吉祥寺に住み輪タク・オーナーと美大、募金の旅、神戸の水木荘まで。
<奥さんの自伝>
武良布枝・著、五十嵐佳子・編集協力
『ゲゲゲの女房』初出:書き下ろし
実業之日本社(2008/03)
----1960~2007年(水木サン38~85歳)。これが連続ドラマ、映画原作の柱になる。既存の自伝では取り上げられなかったエピソードや意外な新発見もあり、「水木伝」に新たな一石を投じた画期的な作品。それにしても奥さんの水木サンへの信頼には頭が下がります。感動作です。
<娘さんのエッセイ>
水木悦子・著
『お父ちゃんと私 父・水木しげるとのゲゲゲな日常』初出:ようかいどうかわらばん(2003~)
やのまん(2008/03)
----1976年頃~2007年(水木サン54歳頃~85歳)。次女・悦子さんのエッセイ。水木マンガのキャラクターとしてもよく登場している。近年の水木サンの日常が中心。
<関連記事>
水木悦子+赤塚りえ子+手塚るみ子・談
「おやじの話、しちゃおうか」初出:朝日新聞(2008/07/06)
収録:単行本未収録
----水木しげる、赤塚不二雄、手塚治虫とマンガ界の三巨匠の娘さんたちがそれぞれの父を語る。
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(追記)@2009/06/04
呉智英「「水木話」総集編」の書誌を修正し、関連エッセイを追加した。
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