2016年5月31日火曜日

冬目景 「アラナギサマ」

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月31日火曜日 冬目景 「アラナギサマ」
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

冬目景がマイブーム最盛期なので、当然のようにまた取り上げます。

現在発売中のイブニング, vol.16, no.12(2016年6月14日号)に読み切りで登場。表紙にも登場。


















相変わらず美しいが、よく見るとバランス悪くないか?この絵。

------------------------------------------

・冬目景 (2016.6) アラナギサマ. イブニング, vol.16 no.12(2016年6月14日号), pp.135-164.




















東京で小説家を目指す千軒(せんのき)健太郎。半ば居候と化しているニートの友人・一ノ谷。ケンは、ばあちゃんの頼みにもかかわらず、祈年祭(としごいのまつり)・年男の儀式に村に帰らない。

そこへやって来たのが分家の娘・鼎(かなえ)=セーラー服の美少女。健太郎の身に起こる怪現象、そして家へ戻ると一ノ谷が・・・。鼎も突如・・・。

------------------------------------------

文字にすると扉にある通り「伝奇ホラー」なんですが、実際は半分以上コメディです。最後の妖魔退治もギャグみたいだし。

とまあ、神秘的な美少女のギャップを楽しむマンガでした。

------------------------------------------

最終ページの柱には、「この作品の続編というか鼎ちゃんにまた会いたい人は熱いラブコールを送ってくれ。頼んだぞ。」とあるが、うーん、続編作れるかなあ?まあ、次回はようやく村に帰って・・・くらいはできそう。

「夕闇古書市」で予感した通り、作者はあやかしモノをやりたがっている気配がありますね。

こみ入った設定にすると、ツメが甘いところがある方なので、バックグラウンド抜きでポコポコ妖魔が出てくるものの方がいいような気がするな。そう「ACONY」みたいな感じで。

------------------------------------------

まあでも、鼎ちゃんまた見たいな。例によって数年後でもいいからさ(笑)。

2016年5月28日土曜日

府中市美術館 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展と岡田屋鉄蔵 『ひらひら』

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月28日土曜日 府中市美術館 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展と岡田屋鉄蔵 『ひらひら』
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

ちょっと古い話で、もう会期も終わってしまいましたが、

・「春の江戸絵画まつり ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」展. 前期:2016/03/12~04/12, 後期:2016/04/10~05/08. 府中市美術館, 府中.

に行ってきました。


















(折シワが入ってしまい、すまん)

------------------------------------------

このパンフレットの虎図は与謝蕪村。

蕪村というと俳人としてしか知らない人が多いかもしれないけど、実は画人としても超一流。

この虎図は、画面の上にみょろーんと伸びた尻尾が素晴らしい(パンフではトリミング)。あと、岩に体をこすりつけてるのが、ネコ科らしい。たぶん実在の猫を参考にしてそう。

------------------------------------------

実は日本画好きなんですよ。

はじめて意識したのは、

・南伸坊 (1983.8) 『モンガイカンの美術館』. 173pp. 情報センター出版局, 東京.

で、曾我蕭白の虎図を見て、「こんなおもしろい日本画もあるんだ」と思って以来です。

例によって、蕭白とか河鍋暁斎とかちょっと変わった絵を描く人が好きなんですが、一番好きなのは雪村周継。松濤美術館でやった展覧会はすごく楽しかった。

------------------------------------------

今回の府中市美術館の「ファンタスティック」展もテーマがテーマなだけに、きっとあるだろうと思っていましたが、蕭白も暁斎もいくつか展示がありました。うれしい。

後期しか行けなかったのがくやまれる。前期も見たかった。おまけに図録は売り切れだし。

------------------------------------------

収穫は、高井鴻山「妖怪図」を知ったこと。妖怪図をたくさん描いているのですね。一つ目好き。

国貞、国芳もあったし、幸せな展覧会でした。

------------------------------------------

そういえば、国芳一門を描いたマンガがあるのですよ。

・岡田屋鉄蔵 (2011.12) 『ひらひら 国芳一門浮世譚』. 182pp. 太田出版, 東京.
← 初出 : web連載空間 ぽこぽこ. 2011/2~11.
http://www.poco2.jp/


















男の名前だが、絵を見てすぐに「おめぇさん、おんなだな」とわかった。

絵が端正すぎるのがちょっと難点(世間的には長所)だが、とにかく江戸ものが大好きなのがガンガン伝わってくる。良作ですぜ、兄(あに)さん。

2016年5月26日木曜日

諸星大二郎 「影人(えいじん)」

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月26日木曜日 諸星大二郎 「影人(えいじん)」
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

・諸星大二郎 (2016.6) 影人(えいじん). ビッグコミック増刊6月17日号, vol.49, no.13, pp.47-75.


















これはうれしいなあ。

------------------------------------------

名作『諸怪志異』のテイストが復活している。それも阿鬼ものの合間に挟まれた、コメディ・テイストのショートショート風怪異譚が。

28ページの中に、起承転結も枝葉のエピソードもきっちリ収まり実に見事。わびしげなラストもいい。

------------------------------------------

扉を見ると、「諸星大二郎劇場1」とあるから、定期的に登場してくれるのだろう。楽しみ。

2016年5月19日木曜日

冬目景 『空中庭園の人々』 「夕闇古書市」

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月19日木曜日 冬目景 『空中庭園の人々』 「夕闇古書市」
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

ついに冬目景に手を出してしまいました。

この人の本は、ここ10年くらい本屋へ行くたびに手に取るのだが、ハマるのがわかりきっていたので、ずっと恐くて買わずに来た(おかしいか?)。

------------------------------------------

ついに買った記念すべき1冊めは最新刊

・冬目景 (2016.4) 『冬目景作品集 空中庭園の人々』(BIRZ COMICS). 175pp. 幻冬舎/幻冬舎コミックス, 東京.


















うまい!うますぎる!絵もストーリーもうますぎ。

------------------------------------------

冬目景の素晴らしさは、今さら私が語るまでもないのだが、もう非の打ち所がない。

・「夕闇古書市」. 『空中庭園の人々』所収, pp.73-97.
← 初出:(2012.9) 月刊コミックバーズ, 2012年9月号.


















わずか24ページの作品だが、盛り上げ方、オチの切れ味、探している本のエピソード、美少年、女の子の可愛さ・・・完璧です。

もっとも、諸星大二郎ファンとしては、古本屋での怪異、妖艶な着物美女、妖怪の本体は○○だった、などなど、すべてどこかで見たような設定・展開ではあるのだが・・・。しかしその完成度は高い。

作者はもしかすると、本格的に妖怪物に手を出す前の習作としてこれを描いたのかも・・・などと考えたりもする。

とにかく、これはもう「短編マンガの教科書」にしてもいいくらいの完成度。新人作家が、習作のネタとして使ってもいいかも。むしろ同じネタで他の作家がどう描くか、見てみたい気すらする。

------------------------------------------

・「青密花」. 『空中庭園の人々』所収, pp.123-173.
← 初出:(2016.3-4) 月刊コミックバーズ, 2016年3月号+4月号.

のような暗い作品が、実は冬目景の本質のような気がする。

しかし本人があとがきで書いているように、ページ数が少ないとコメディにした方がまとめやすいようで、

・「ELEMENT 7」. 『空中庭園の人々』所収, pp.3-32.
← 初出:(2011.12) 月刊コミックバーズ, 2011年12月号.
・「コビト事情」. 『空中庭園の人々』所収, pp.33-54.
← 初出:(2013.12) 月刊コミックバーズ, 2013年12月号.
・「Apartment of the Dead アパート・オブ・ザ・デッド」. 『空中庭園の人々』所収, pp.55-72.
← 初出:(2015.8) 月刊コミックバーズ, 2015年8月号.
・「天国のドア」. 『空中庭園の人々』所収, pp.99-122.
← 初出:(2013.5) 月刊コミックバーズ, 2013年5月号.

はSF/怪奇/ファンタジー・テイストのコメディとしてこれまた完成度が高い。

------------------------------------------

というわけで、わかっていたことではあるのだが、当然のようにハマりまして、『空中庭園の人々』を買って以後、3週間ほどで冬目景の単行本は早くも17冊に達しました(笑)。冬目景作品集めで、夏くらいまでは楽しめそうだな。

===========================================

(追記)@2016/05/26

とか書きましたが、その後も狂ったようにかき集め、現在28冊。残すは『イエスタ』11+1冊だけとなりました。

『ACONY』がよかったなあ。こういう生意気な小娘に翻弄される系の話は好きだ。アコニーがかわいくない、という意見もあるが、かわいいですよね。「かわいげ」はないけど。

===========================================

(追記)@2016/06/05

『イエスタデイをうたって』全11巻読了。なんだ・・・この話は・・・。ダラダラ・マンガ・オールタイム・ベスト10には必ず入る作品。

桑田乃梨子『888』全6巻(10年)のダラダラっぷりもすごかったが、それをはるかに上回るダラダラっぷり。18年で全11巻。

ハルちゃんがどんどん暗くなっていくのが耐えられなかった。

これで冬目景マンガ単行本は全部揃ってしまった。夏まで持たなかったな。今のところ画集に手を出す気はない。

2016年5月12日木曜日

藤子・F・不二雄 「スーパーさん」

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月12日木曜日 藤子・F・不二雄 「スーパーさん」
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

・藤子・F・不二雄 (2004.5) 『アン子大いに怒る 藤子・F・不二雄SF短編集』(My First BIG). 188pp. 小学館, 東京.


















いわゆるコンビニ本ですな。

それでもさすが藤子F(藤本弘)、2014年で3刷。10年に渡って売れ続けるコンビニ本はあまり多くはないだろう。

------------------------------------------

収録作品は、

恋人製造法
アン子 大いに怒る(原題:赤毛のアン子)
女には売るものがある
スーパーさん
かわい子くん
老雄大いに語る
倍速
有名人販売株式会社

の8作。いずれも傑作ぞろい。

------------------------------------------

藤子Fの短篇集としては、小学館ゴールデン・コミックス異色短編集が6冊あった(当時は藤子不二雄名義)。

(1)『ミノタウロスの皿』(1977.12)
(2)『やすらぎの館』(1978.1)
(3)『ウルトラスーパーデラックスマン』(1978.2)
(4)『ノスタル爺』(1978.4)
(5)『夢カメラ』(1982.8)
(6)『鉄人をひろったよ』(1987.5)

このうち(1)~(4)までは立て続けに出たので、出るたびに買っていたが、(5)(6)の刊行はかなり間があいた。よって(5)が出た頃にはもうすっかり忘れていて、買ったのはかなり後になってから。(6)に至ってはいまだに持っていない。

------------------------------------------

「ドラえもん」や「パーマン」に見られる子供向け作品とはかなり異なるアダルトな作風に、かなりショックを受けた。

(1)収録の「劇画・オバQ」、「ミノタウロスの皿」、(2)収録の「ヒョンヒョロ」、(3)収録の「ウルトラスーパーデラックスマン」(ダークな小池さん)、「宇宙人レポート サンプルAとサンプルB」(里中満智子風の絵で描かれる衝撃のエロシーン)

あたりは、もう傑作中の傑作。

------------------------------------------

今回『アン子・・・』を買ったのは、上記(1)~(5)とはほとんどダブりがなかったから。少年向けも入ってるしね。

で、ここでようやく本題。

------------------------------------------

「スーパーさん」という作品があります。これは収録作の中ではかなり古く、初出は少女コミック1968年9月号。

















参考:

・ウィキペディア > 藤子・F・不二雄のSF短編一覧(最終更新 2013年9月23日 (月) 03:50)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%AD%90%E3%83%BBF%E3%83%BB%E4%B8%8D%E4%BA%8C%E9%9B%84%E3%81%AESF%E7%9F%AD%E7%B7%A8%E4%B8%80%E8%A6%A7

------------------------------------------

一目見て、これは通常のF作品とはペンタッチが違うことに気づきます。まず線が細い。それに動きもちょっと淡白です。

これは藤子Fの絵ではないと推測できます。では誰の絵か?

確証はないのですが、これは鈴木伸一の絵ではないか?と思います。勘ですね。

------------------------------------------

鈴木はトキワ荘メンバーの一人で、1968年当時、両藤子、石森章太郎らとともにスタジオ・ゼロを運営。アニメの制作班の中心として活躍していました。

というよりも、ラーメン大好き「小池さん」のモデルと言った方がわかりやすいでしょうね。

------------------------------------------

この鈴木先生の描いた絵というのはほとんど見当たらないのですが、

・大川瀬萬画倶楽部/萬画三昧―漫画・マンガ・まんがの大好きな人集まれ > トキワ荘物語 鈴木伸一 その1  2014/9/23(火) 午後 8:14/その2 2014/9/25(木) 午後 9:59/その3  2014/10/2(木) 午後 4:30/その4  2014/10/5(日) 午後 9:55
http://blogs.yahoo.co.jp/okawasemc/26560855.html
http://blogs.yahoo.co.jp/okawasemc/26566440.html
http://blogs.yahoo.co.jp/okawasemc/26584591.html
http://blogs.yahoo.co.jp/okawasemc/26593808.html
(初出はCOM 1970年2月号)
・岩波書店 > 書籍 ジュニア新書 > 既刊書一覧 > アニメが世界をつなぐ 鈴木 伸一 > MORE INFO(2008年3月27日発行)
https://www.iwanami.co.jp/hensyu/jr/toku/0803/500591.html
(表紙画および文中イラスト)
・ドラゴンクエスト Encyclopedia > 日記(ツッコミ日記 Encyclopedia) > Category : 催事 > 2010年04月29日 14:49更新 東京国際アニメフェア2010に行ってきた その2
http://dqe.jp/diary/?date=20100329
(No.4 鈴木伸一館長直筆イラスト色紙(小池さんがラーメンを前にピースサイン))

などがWEB上で見つかります。

------------------------------------------

どうでしょう?私は「スーパーさん」の絵とは共通点があると思うのですが。

あるいは当時の藤子プロ・アシスタントが描いたものかもしれません。

藤子プロのアシスタントについては詳しくないので、あとは藤子ファンにおまかせします(水木プロのアシスタントの絵だったら、かなりわかるんですが・・・)。

2016年5月7日土曜日

いがらしみきお 『今日を歩く』

本エントリーは
stod phyogs 2016年5月7日土曜日 いがらしみきお 『今日を歩く』
からの移籍です。日付は初出と同じです。

===========================================

・いがらしみきお (2015.3) 『今日を歩く』(IKKI COMIX 682). 137pp. 小学館, 東京.
← 初出:(2014.2~15.2) WEBイキパラCOMIC.
http://www.ikki-para.com/


















単行本デザイン:関善之 for VOLARE Inc.

------------------------------------------

マンガについてはあちこちでたくさん語られているので、ここでは「あとがき」について。

┌┌┌┌┌ 以下、いがらし(2015.3)135p.より ┐┐┐┐┐

私の向かいの家のおとうさんも、テリア系の小さい犬といっしょに一日3回散歩する人だったんですが、そのうち犬が高齢化し、ボケはじめ、散歩から帰っても、いつまでたっても家に入らずにただ道を眺めながら、ぼ~っと立ち尽くしてたりします。しょうがないので、おとうさんも犬の傍らに立って、いっしょに道を眺めている。それは美しい光景でした。

└└└└└ 以上、いがらし(2015.3)135p.より ┘┘┘┘┘

こういう風景を「美しい」と表現できる人に、私はなりたい。