2017年9月10日日曜日

小坂俊史5連発(1) 『モノローグジェネレーション』『月刊すてきな終活』

かつて、本屋に行って、特に買いたいものが見当たらない、でも何か読みたい。そんな時、「これでも買っておくか」という代打的存在だったのが、唐沢なをき。

決して馬鹿にしているわけじゃなくて、「この人のマンガなら絶対ハズレはない」という篤い信頼と思ってください。熱心なファンとはいえないけど、唐沢商会名義のものを含めて30冊くらい持ってる。

こういう人の条件は、安定した面白さ、出版点数が多いこと、この2つですね。

------------------------------------------

で、それが今は、小坂俊史(こさかしゅんじ)になってます。

小坂俊史のマンガはこれまで

2016年8月24日水曜日 『終電ちゃん』の副読本2冊

で、『中央モノローグ線』(2009年)を、

2017年3月6日月曜日 小坂俊史 『遠野モノがたり』の座敷童子と終電ちゃん

で、モノローグ・シリーズの続編、『遠野モノがたり』(2011年)を取り上げました。

------------------------------------------

そのモノローグ・シリーズの完結編(て、ほどではないけど)が、

・小坂俊史 (2013.5) 『モノローグジェネレーション』(BAMBOO COMICS). 115pp. 竹書房, 東京.
← 初出 : 月刊まんがライフオリジナル, 2011年8月号~2013年3月号.


装丁:名和田耕平デザイン事務所

------------------------------------------

今回は、シリーズ・レギュラーであるイラストレーター「なのか」をはじめ、中1(13歳)から72歳まで、いろんな世代の8人のレギュラー+単発が十人くらい(ちゃんと数えていない)の女性のモノローグ四コマ。

前2作のような場所の縛りはないので、ちょっと焦点がボケた感があるけど、相変わらずレベルは高い。ストリート・ミュージシャンのニコ(24歳)のエピソードが一番好きだ。あと、女子中学生ものを描かすと、この人はホントうまいですね。

30代イラストレーター「なのか」が、作者の分身に当たるのだろう。「埋もれたままの中堅」なんて、ずいぶん自虐的だが、いやいや、小坂さん、あんたもう「巨匠」の域に半分足突っ込んでますよ。

------------------------------------------

モノローグ・シリーズが終わって、次に竹書房が小坂氏に課したタスクはとんでもないものだった!それがこれ↓

・小坂俊史 (2014.12) 『月刊すてきな終活』(BAMBOO COMICS). 109pp. 竹書房, 東京.
← 初出 : 月刊まんがライフオリジナル, 2013年7月号~2014年11月号.


装丁:名和田耕平デザイン事務所

------------------------------------------

なんと「「終活」をテーマに四コマ「ギャグ」を描け!」というのだ。無理筋だよな~、普通。

でもこれが、暗くならず(ほどほど湿っぽいのはしょうがない)、かといって「死」に対して失礼にならない形で、ちゃんとギャグになっているのだから驚きだ。

登場人物は、必然的に高齢者が多くなった。しかし、高齢者を描けるようになったことで、その後の作品でも登場人物に広がりが出て、また深みのあるマンガになって来た。

高齢者ばかりだと、ほんとにマジな「終活」になってしまうので、中学生や20代の若者、30~40代の中年も無理やり突っ込んでくる、その力技にも舌を巻く。

------------------------------------------

だいたい、「強盗殺人で無期懲役(刑期は結局37年)くらって出所してきた78歳」のマンガなんて、シリアス・ストーリー・マンガでさえおいそれとは描けないのに、それをギャグ四コマできっちり描いてしまうのだ。

犯行時のフラッシュバックや被害者遺族への謝罪まで「ギャグ四コマ」で描く。驚きですよね。

------------------------------------------

基本的に毎回一人を取り上げているのだが、一人だけ毎回登場するのが、「余命●カ月の女(33)」。これも連載最後のオチはちゃんと暗くならずにまとめてる。さすがだ。

『中央モノローグ線』の祥子とか、『球場のシンデレラ』の桶川さんとかと同系の、お馴染みのネガティブ担当レギュラーだが、作者にとっては動かしやすいキャラなんだろうな。

こういう作者がいじりやすいキャラを見つけると、どの作品でも安定度が俄然増してくる。

------------------------------------------

あとがきを読むと、さすがの「四コマ王子」(もうこのキャッチフレーズも恥ずかしい年頃か?)もネタをひねり出すのに七転八倒の苦しみだったらしい。同情するわ。

しかし、この作品は小坂氏の一つメルクマールになった作品じゃないかと思う。

そして、次の作品がさらにすごかった!

以下次回。

0 件のコメント:

コメントを投稿