2018年5月19日土曜日

変な海外小説大集合! (1) 岸本佐知子・編訳 『居心地の悪い部屋』

別blogで、ここ半年ほど、USAの小説家William S. BurroughsのCDを延々紹介しているせいもあり、Burroughs関係の本ばかり読んでいるわけですが、ご存知の通りBurroughsの小説というのは、代表作THE NAKED LUNCH(裸のランチ)をはじめとして、変なのばっかりです。

私はもともとツツイストなので、そういう変な小説にはさほど抵抗感はないのですが、『裸のランチ』だけは強烈過ぎた。いまだに通読していない。拾い読みしただけ。

------------------------------------------

そうこうするうちに、他の前衛小説、実験小説、変な小説にも興味が出始めた。

もっとも、30年前には、やはり筒井康隆から派生して、R.A.Laffetyだの、Italo CalvinoだのGabriel Garcia-Marquezをはじめとする中南米文学を読んでいた時期もあったのだ。まあその感覚が蘇ってきたわけですな。

------------------------------------------

ちょうどいいタイミングで出くわしたのが、これ。

・岸本佐知子・編訳 (2015.11) 『居心地の悪い部屋』(河出文庫). 193pp. 河出書房新社, 東京.
← 原版 : (2012.3) 角川書店, 東京.(ただし文庫化にあって1編入れ替えあり)


カバー・デザイン : 水戸部功

岸本さんのエッセイ3冊は、ものすごくおもしろいし、Twitterも前から眺めていた。名前を聞くと反射的に「Miranda July」と出てくるほどには知ってるつもり。美人さんだし(Miranda Julyも美人ですよね)。

------------------------------------------

この本は、変な短編小説ばかりを翻訳して、野性時代誌上で連載したものの単行本化だ。

収録作を挙げておこう。

(01) 007-018 Brian Evenson (1994) Hébé Kills Jarry. IN : ALTMANN'S TONGUE. (ブライアン・エヴンソン 「ヘベはジャリを殺す」)
(02) 019-025 Luis Alberto Urrea (2010.11) Chametla. Tin House, serial#12. (ルイス・アルベルト・ウレア 「チャメトラ」)
(03) 027-036 Anna Kavan (1940) The Birthmark. IN : ASYLUM PIECE. (アンナ・カヴァン 「あざ」)
(04) 037-052 Paul Glennon (2010) How Did You Sleep? (ポール・グレノン 「どう眠った?」)
(05) 053-063 Brian Evenson (1994) The Father, Unblinking. IN : ALTMANN'S TONGUE. (ブライアン・エヴンソン 「父、まばたきもせず」)
(06) 065-068 Rikki Ducornet (1994) The Double. IN : THE COMPLETE BUTCHER'S TALES. (リッキー・ドゥコーネイ 「分身」)
(07) 069-081 Daniel Orozco (2011) Orientation. (ダニエル・オロズコ 「オリエンテーション」)
(08) 083-113 Lewis Robinson (2003) The Diver. IN : OFFICER FRIENDLY AND OTHER TALES. (ルイス・ロビンソン 「潜水夫 ダイバー」)
(09) 115-123 Joyce Carol Oates (2007) Hi, Howya Doin! (ジョイス・キャロル・オーツ 「やあ! やってるかい!」)
(10) 125-144 Ray Vukcevich (2001) Whisper. (レイ・ヴクサヴィッチ 「ささやき」)
(11) 145-155 Stacey Levine (1993) Cakes. IN : MY HORSE AND OTHER STORIES. (ステイシー・レヴィーン 「ケーキ」)
(12) 157-180 Ken Kalfus (1998) The Joy and Melancholy Baseball Trivia Quiz. (ケン・カルファス 「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」)
(13) 181-189 編訳者あとがき
(14) 190-191 文庫版あとがき
(15) 192-193 出典

------------------------------------------

(01)なんかはBurroughsのTHE NAKED LUNCHを思わせる妙な話。オチもよくわからんし。

(06)も、目が覚めたら自分の足が取れてた、なんていう変な話だ。しかし、その足もだんだん再生してくるばかりでなく、足からもだんだん身体ができてくる、なんて・・・。読みたくなるでしょ。

(07)は、漫談か朗読にしたらおもしろそうだ。マンガでもいいかも。

一番変な小説が(11)だ。なんか統合失調症の人の話を聞いてるみたい。「わたしは丸々となりたかった」が延々繰り返される。

------------------------------------------

全部が実験小説とは言えないかもしれないが、訳者の言う通り、どれも「モヤモヤ」する読後感の小説ばかり。変な物好きは是非一読を。

0 件のコメント:

コメントを投稿