2016年3月29日火曜日

ぶつけて痛い場所をなでるのはなぜか?

本エントリーは
stod phyogs 2016年3月29日火曜日 ぶつけて痛い場所をなでるのはなぜか?
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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・山口創(やまぐちはじめ) (2006.10) 『皮膚感覚の不思議 「皮膚」と「心」の身体心理学』(ブルーバックスB-1531). 229pp. 講談社, 東京.


















皮膚にある神経線維は、太い順にA線維、B線維、C線維に分けられます。伝達速度は太いほど速い。これは当然でしょう。A線維では5~70m/sec、C線維では0.2~2m/sec。10倍以上の差がある。

触覚のほとんどはA線維を伝わって素早く脳に到達しますが、C線維を伝わってゆっくり到達する触覚もある、ということになります。C線維は伝達速度が遅いだけではなく、高い周波数の刺激には反応せず、ゆっくり動く刺激のみに反応するんだそうです。

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皮膚の痛点というのは、太さの異なる神経線維がからみ合って形成されています。すると、ぶつけた時にどうなるか?

まずガーンという鋭い痛みが伝わります。これはA線維で素早く伝わった痛みで「first pain」といいます。

その後にじわじわ伝わってくる痛みもあることは、皆さんよくご存知でしょう。これはC線維でゆっくり伝わった痛み「second pain」。本当に「い、痛い~(泣)」と感じるのはこっちですよね。

その時どうしますか?ぶつけた場所をなでますよね。なぜそんなことをするのでしょう?

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「なでる」という行為は、比較的高周波の刺激です。すると主にA線維が反応し、この触覚を脳へ伝達します。

痛みがC線維経由でゆっくり伝わる先回りをして、なでられているという触覚がA線維経由で脳に伝わってしまうのです。すると脳は信号を発し、C線維経由で伝わる痛みが脊髄に入る入口(ゲート)を抑制してしまうんだそうです。

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あれは一種の気休めかと思っていたんだけど、本当に痛みが和らぐんですね。なんとよく出来たシステムであることよ。「手当て」とはよく言ったものだ。

この本は他にも「痒み」「くすぐったさ」といった触覚の分析をしていますが、上記の部分が一番面白かった。これ一つ学んだだけでも読んだかいがあったというもの。

1 件のコメント:

  1. 今日気づいたのだが、蚊に食われてかゆい時、ガリガリと掻いて痒みを消すのも、どうも同じシステムらしい。

    ほんとによくできてる、人間の体は。

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