・原田ちあき (2016.5) 『原田ちあきの挙動不審日記』. 142pp. 祥伝社, 東京.
← 初出 : つぶやきGANMA, 2015/02/03~2016/01/19 http://tsubu.ganma.jp/
デザイン : セキネシンイチデザイン室
Artistなのになぜ自分で装丁しない?とも思うのだが、原田が装丁したらもっとスゴイことになるから、これで丁度いいのかか・・・。
不穏で素晴らしい表紙。ちなみに、これはカバーというか腰巻(帯)というのかよくわからないものの絵。
これを取っ払うと
こうなります。これは「パーティーの様子」だと(笑)。
なんか前回もこんなことやったな。
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この本は、初めて見た時からずっとほしかったのだが、最近はシュリンクがかかっていて中身が見れないのばかり。「いつか中身が見れたらその時買おう」と思っているうちに、店頭では全く見かけなくなってしまいました(笑)。最近の本は足が速い。
で、忘れかけていたところ、久々に見かけたので買っておいた。大アタリ。
もうね、久々に自分にピッタリ合う本が出てきたので、うれしくてスキップしちゃいましたよ(ウソ)。
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しかし、なぜシュリンクをかけるのだ?これは一見マンガの体裁をしてるけど、マンガじゃないのに。
じゃあ、何かと言われると、最近はあまりないかな?湯村輝彦、スージー甘金、霜田恵美子、なんきんの系統と言っておこう。
絵柄も、佐伯俊男、太田螢一、なんきんあたりを思わせるが、原田本人がその辺を見ているのかどうかすらわからない。自然発生してもおかしくないが。
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中身はこんな。
同書, pp.64-65
同書, pp.96-97
スキャナーでは、この蛍光色をうまく読んでくれない。ホントはもっとドギツイ色です。
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普通の人は「三白眼から、人物造形から、色使いから、すべてが気持ち悪い」という評価が多いだろう。でもこの作品は、一応この人なりにエンターテインメントとして成立させている作品だと思う。なので、実はマジモンの人のマンガほど、気持ち悪くないですよ(笑)。
絵の作品は、もっと気持ち悪いです。でも、どれもかわいい。
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「マンガみたいなもの」だと、日常エッセイネタもいずれ限界が来るだろうから、マンガの形式での創作ものも見てみたい。
それよりも「辛酸なめ子」的な扱いで、雑誌で重宝される方向に行くのかな?少なくとも「ネコ日記」の方向には行ってほしくない。
つぶやきGANMAの最近の掲載作を見ていると、結構普通のエッセイマンガになってきている。心配だ(笑)。
あ、でも絵は異常なままだからご心配なく。
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実はこの人けっこう美人さん(男顔)だ。この本にも写真があるので、せっかくだから貼っておこう。
同書, p.137
TVでもいけるかもしれん。まずは「タモリ倶楽部」から(笑)。
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(追記)@2017/11/20
と思ったら、もう結構TV出てるんだな。まあ、元・芸人志望だから、そうなるだろうな。
あっ!NHKにまで出てやがる(笑)。
2017年11月20日月曜日
2017年11月18日土曜日
国立西洋美術館 「北斎とジャポニズム」展
に行ってきました。
・読売新聞/北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃(as of 2017/11/16)
http://hokusai-japonisme.jp/index.html
北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
開催概要
会期 : 2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
会場 : 国立西洋美術館 [東京・上野公園]
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
開館時間 : 午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後8時。ただし 11/18は午後5時30分まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
観覧料(税込)当日(団体) : 一般1,600円(1,400円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) 中学生以下 無料(無料)
主催 : 国立西洋美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ
特別協賛 : キヤノン
協賛 : 花王、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三菱商事
協力 : 日本航空、ヤマトロジスティクス、西洋美術振興財団
お問合せ : TEL.03-5777-8600 (ハローダイヤル)
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同展パンフレット, p.1
同展パンフレット, pp.2-3
同展パンフレット, p.4
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平日で雨も降っていたというのに、なんでこんなに人が多いんだ!上野公園も、この展覧会も。
最初、列に並んでいたが、一向に進みそうにないので、しょうがないから客の肩越しに眺める作戦だ。それでどんどん進んだが、じっくり見られないのは仕方ない。
おかげで、あとで図録を見て気づくことの多いこと・・・トホホ。
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これが図録。
・馬渕明子・監修, 袴田紘代+池田祐子・責任編集 (2017) 『北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』. 401pp. 読売新聞東京本社, 東京+国立西洋美術館, 東京.
デザイン : 山田政彦
これは腰巻(帯)ともカバーともつかないものをつけた状態。カバーには、
Claude Monet (1888) At Cap d'Antibes (At Cape Antibes/アンティーブ岬).
が使われている。で、カバーを外すと
デザイン : 山田政彦
葛飾北斎 (19C) 『北斎画譜 下編』より.
の、美しい薄墨摺が現れてくる。なかなか粋な装丁。
------------------------------------------
最初のコーナーでは、19世紀の西欧の画家たちが北斎を模写した絵が、北斎の作品と並べて、「これでもか!」とばかりに出てきます。
もうこれで、「北斎のJaponismeへの影響」という、この展覧会のテーマに納得せざるをえない。
しかし、模写した画家たちも、こんな形で、それも名前入りで、それも日本で、まさか百数十年後にさらされるとは思ってもみなかっただろうなあ。草葉の陰での心中、お察しいたします。
------------------------------------------
図録, p.64
これは、
葛飾北斎 (1815) 『北斎漫画 二編』より.
と
Edouard Manet (19世紀) Deux Sortes de Salamandres et Une Grosse Mouche (Gecko, Newt, Carpenter Bee/ヤモリ、イモリ、クマバチ)
Manetくらいだと、だいぶ自分流に消化した様子が伺えるが、有象無象の挿絵画家あたりになるともう、ホントに丸写しだ。
------------------------------------------
工芸作家になるともっと露骨。絵皿、花瓶、ガラス工芸などなど、もうそのまま丸写し。
図録, p.150
葛飾北斎 (1949) 『北斎漫画 十三編』より.
と
Émille Gallé (1978-90) Vase 'Le Carp' (Vase with Carp/双耳鉢:鯉)
さすがGalléだけに、周囲の模様には自分のデザインが入っているが、鯉の絵柄は北斎の丸写しだ。
北斎の絵が西欧に浸透していった過程では、油絵よりも、むしろこういう工芸品の影響が大きかったのかもしれない。
------------------------------------------
著名な画家もなると、さすがに露骨な丸写しはしない。それだけに、北斎の絵と並べて比較されても、「どこが?」「偶然では?」「考え過ぎじゃないの?」という展示が結構続く。
この辺は意見が分かれるところだろう。
------------------------------------------
パンフレットp.1/p.2の
葛飾北斎 (19C) 『北斎漫画 十一編』より.
と
Edgar Degas (1894) Danseurs, en Rose et Vert (Dancers, Pink and Green/踊り子たち、ピンクと緑)
は、この展覧会のsymbolになっている絵。この絵にしてから、まずこのポーズは、Degasがたくさん描いている、踊り子たちの他の絵でも出てくるポーズである。
それを、北斎の描いた「力士のポーズ」の影響といえるのだろうか?
------------------------------------------
パンフレットp.3上の
葛飾北斎 (1814) 『北斎漫画 初編』より.
と
Mary Cassatt (1878) Little Girl in A Blue Armchair(青い肘掛け椅子に座る少女)
では、北斎の「ぐでっと袋によっかかる布袋さま」の影響というのだから、「ほんと~?」と言いたくなる。
------------------------------------------
しかし、Degasにしても、Cassattにしても、それまではもっと端正なポーズを描いていて、こういうユニークだったり、変わった角度からだったり、そして生き生きとしたポーズを描くことはなかったらしいのだ。
しかし、北斎の影響を受ける前後の比較がないので、観覧している方には、本当かどうかわからない。
------------------------------------------
図録, p.123
葛飾北斎 (ca.1831) 百物語 さらやしき.
と
Odilon Redon (1888) Ensuite Parait Un Être Singulier, Ayant Une Tête d'Homme sur Un Corps de Poisson (Planche V, TENTATION DE SAINT ANTOINE, SÉRIE I) (Then There Appears A Singular Being, Having the Head of A Man on the Body of A Fish (Plate V from the portfolio THE TEMPTATION OF SAINT ANTHONY, First Series)/「聖アントワーヌの誘惑」第一集より, 《V. それから魚の体に人間の頭を持った奇妙なものが現れる》).
まで行くと、Redonが浮世絵を見ていたか?好んでいたか?からして全くわからないし、二つの絵の影響関係についても、こじつけのような気がする。
しかしまあ、前から見たいと思っていたRedonの絵が、意外なところで見られたので、うれしかった。
------------------------------------------
もう優秀な画家ばかりですから、北斎の絵をそのまま持ってくることはしないのはわかる。これは絵柄の影響を受けた、というより、北斎の精神を受け継いだということなのだろう。
しかし、影響関係がわかりにくいのは事実。今も100%納得はしていない。学者さんの「トバシ」もかなりあると見た。
その評価は後世の人がしてくれるだろう。
------------------------------------------
図録, p.248
これは言わずと知れた
葛飾北斎 (1830-33) 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏.
この波頭の描写はだいぶ西欧の画家に影響を与えたらしい。
------------------------------------------
1867年のParis万国博覧会で浮世絵(おそらく波の絵があったと思われる)を見たらしいGustave Courbetは、その直後から波の絵を大量に描き始める。
図録, p.238
Gustave Courbet (ca.1870) La Vague(Wave/波).
------------------------------------------
驚くのはこれ↓
図録, pp.240-241
葛飾北斎 (ca.1804-07) おしをくりはとうつうせんのづ(押送り波濤通船の図).
と
Georges Seurat (1885) Le Bec du Hoc, Grandcamp(尖ったオック岬、グランカン).
これ、構図がよく似てるけど、北斎は波、Seuratは岩だ。たまたまじゃないの?展覧会の現場ではそう思ってしまった。
ところが、絵の上の方を見てほしい。似たような位置に鳥の群れが!これは偶然ではないだろう。
そして決定的なのは「枠」だ。北斎の絵に枠があるのはそれほど奇異ではない。しかしだ、Seuratの絵、印象派の絵にこのような「枠」があるのは異常だ。
これに気づいてから、ようやく「北斎の影響」であることを確信した。
------------------------------------------
じつはこの「枠」に気づいたのは、帰って図録を見ていて。うーん、現場で気づきたかった。悔しい。
しかしあの人出では、一点一点を、なかなかじっくり見れないのだ。図録を買っておいてよかったなあ。
------------------------------------------
それにしても北斎の絵もなかなかにすごい。こんな波は現実にはありえないだろう。だいたい縦が5倍くらい誇張されている。
しかし、もしかすると北斎の方にも、何か元絵があったのかもしれない。この絵には西欧の版画(ething)の影響が見られるようだし。
この元絵(あるとして)を西欧の絵に探すのも、おもしろいかもしれない。
------------------------------------------
今年、展覧会で非常に楽しんだ「Arcimboldo-国芳」の流れをはじめとして、西欧と日本のように地理的に離れていて、これまであまり関係が知られていなかった文化交流が明らかになっていく過程は、本当に面白い。
手前味噌だが、私がチベットやラダックを見るスタンスは、「チベットだけを見ていてもチベットは見えない」、「ラダックだけ見ていてもラダックは見えない」というものだ。
つまり、周囲との政治的・宗教的・文化的な差異と交流・影響関係を把握することで、その地域の特色が浮き出てくる。その浮き出た瞬間をエイッとすくい取るのだ。楽しい瞬間ですよ。
------------------------------------------
図録, p.181
現物を見て腰を抜かしたのがこれ。
Émille Gallé (ca.1890-1900) Panel with Dropping Aronia(パネル : 枝垂海棠).
これは板に絵が描いてあるわけではなく、寄木細工で出来ているのだ。びっくり。はじめて知った。
これは「浮世絵を模した」なんていうのは、もうどうでもいい。とにかく驚愕の工芸品だ。
------------------------------------------
Galléの寄せ木工芸品は、他に2点、テーブルとキャビネットが出品されていたが、これもものすごかった。
図録ではその凄さが全くわからないので、是非会場で現物を間近に見てほしい。
いつかGalléの展覧会があったら、是非行こう。
------------------------------------------
それにしても、日本側は北斎だらけだ。この北斎一人で、錚々たる西欧の大画家軍団に多大な影響を与えているんだから、正に浮世絵の巨人である。
しかし、待てよ・・・。西欧に渡った浮世絵は北斎だけではないはずだ。他の浮世絵の影響って、ないのか?
この展覧会のテーマは「北斎」なので、他の浮世絵が取り上げられていないのは仕方ないのかもしれないが、それにしても北斎・北斎と強調し過ぎのような気がした。
浮世絵全体がJaponismeに影響を与えており、「その中で最も強い影響力を誇ったのが北斎だ」という位置づけがわかるような展示があってもいいのではないか、と思った。現物の展示がなくとも、写真入りパネル数枚でいいから説明がほしかった。
------------------------------------------
日本の浮世絵が西洋の画家に与えた影響で一番有名なのは、実は北斎ではない。
歌川広重(1797-1858) → Vincent van Gogh(1853-1890)
である。
広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」や「名所江戸百景 大はし あたけの夕立」を、Goghがまんま模写しているのは、つとに有名。
------------------------------------------
実は、この国立西洋美術館の「北斎とジャポニズム」展と同時に、同じ上野公園の東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催中なのだ。
・日本放送協会+NHKプロモーション+北海道新聞社/ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(as of 2017/11/17)
http://gogh-japan.jp/
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 東京展
開催概要
会期 : 2017年10月24日(火)─2018年1月8日(月・祝)
会場 : 東京都美術館
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36
アクセス : JR「上野駅」公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分、京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分 ※駐車場はありませんので、車での来場はご遠慮ください。
開室時間 : 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は午後8時まで ※いずれも入室は閉室の30分前まで
休室日 : 月曜日、12月31日(日)、1月1日(月・祝) ※ただし、1月8日(月・祝)は開室
観覧料(税込)当日(前売・団体) : 一般1,600円(1,300円) 大学生・専門学校生 1,300円(1,100円) 高校生800円(600円) 65歳以上1,000円(800円) 11月15日(水)、12月20日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料(要証明)。混雑が予想されます。 ※団体割引の対象は20名以上。 ※中学生以下は無料 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額 ※いずれも証明できるものをご持参ください
主催 : 東京都美術館、NHK、NHKプロモーション
後援 : 外務省、オランダ王国大使館
協賛 : 損保ジャパン日本興亜
協力 : KLMオランダ航空、日本航空
共同企画 : ファン・ゴッホ美術館
お問い合わせ : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
報道機関お問い合わせ : ゴッホ展 広報事務局(プラチナム内) 担当:金・森 TEL 03-5572-7351 / FAX 03-3584-0727 MAIL gogh-japan.pr@vectorinc.co.jp
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「北斎とジャポニズム」展で、「広重→Gogh」関係に意図的に触れていないのは、実はこういう理由があったのです。
そういうわけで、「ゴッホ展」も近々行くぞ!
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(追記)@2017/11/18
なお、北斎の浮世絵は、状態がよいものはあまりありません。まあ、この展覧会は、北斎の浮世絵だけを見るものではないからいいんだけど。
状態のいい北斎を見るのであれば、太田記念美術館など、北斎展をしょっちゅうやってるのでそちらでどうぞ。
・読売新聞/北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃(as of 2017/11/16)
http://hokusai-japonisme.jp/index.html
北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
開催概要
会期 : 2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
会場 : 国立西洋美術館 [東京・上野公園]
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
開館時間 : 午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後8時。ただし 11/18は午後5時30分まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
観覧料(税込)当日(団体) : 一般1,600円(1,400円) 大学生1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) 中学生以下 無料(無料)
主催 : 国立西洋美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ
特別協賛 : キヤノン
協賛 : 花王、損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三菱商事
協力 : 日本航空、ヤマトロジスティクス、西洋美術振興財団
お問合せ : TEL.03-5777-8600 (ハローダイヤル)
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同展パンフレット, p.1
同展パンフレット, pp.2-3
同展パンフレット, p.4
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平日で雨も降っていたというのに、なんでこんなに人が多いんだ!上野公園も、この展覧会も。
最初、列に並んでいたが、一向に進みそうにないので、しょうがないから客の肩越しに眺める作戦だ。それでどんどん進んだが、じっくり見られないのは仕方ない。
おかげで、あとで図録を見て気づくことの多いこと・・・トホホ。
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これが図録。
・馬渕明子・監修, 袴田紘代+池田祐子・責任編集 (2017) 『北斎とジャポニズム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃』. 401pp. 読売新聞東京本社, 東京+国立西洋美術館, 東京.
デザイン : 山田政彦
これは腰巻(帯)ともカバーともつかないものをつけた状態。カバーには、
Claude Monet (1888) At Cap d'Antibes (At Cape Antibes/アンティーブ岬).
が使われている。で、カバーを外すと
デザイン : 山田政彦
葛飾北斎 (19C) 『北斎画譜 下編』より.
の、美しい薄墨摺が現れてくる。なかなか粋な装丁。
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最初のコーナーでは、19世紀の西欧の画家たちが北斎を模写した絵が、北斎の作品と並べて、「これでもか!」とばかりに出てきます。
もうこれで、「北斎のJaponismeへの影響」という、この展覧会のテーマに納得せざるをえない。
しかし、模写した画家たちも、こんな形で、それも名前入りで、それも日本で、まさか百数十年後にさらされるとは思ってもみなかっただろうなあ。草葉の陰での心中、お察しいたします。
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図録, p.64
これは、
葛飾北斎 (1815) 『北斎漫画 二編』より.
と
Edouard Manet (19世紀) Deux Sortes de Salamandres et Une Grosse Mouche (Gecko, Newt, Carpenter Bee/ヤモリ、イモリ、クマバチ)
Manetくらいだと、だいぶ自分流に消化した様子が伺えるが、有象無象の挿絵画家あたりになるともう、ホントに丸写しだ。
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工芸作家になるともっと露骨。絵皿、花瓶、ガラス工芸などなど、もうそのまま丸写し。
図録, p.150
葛飾北斎 (1949) 『北斎漫画 十三編』より.
と
Émille Gallé (1978-90) Vase 'Le Carp' (Vase with Carp/双耳鉢:鯉)
さすがGalléだけに、周囲の模様には自分のデザインが入っているが、鯉の絵柄は北斎の丸写しだ。
北斎の絵が西欧に浸透していった過程では、油絵よりも、むしろこういう工芸品の影響が大きかったのかもしれない。
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著名な画家もなると、さすがに露骨な丸写しはしない。それだけに、北斎の絵と並べて比較されても、「どこが?」「偶然では?」「考え過ぎじゃないの?」という展示が結構続く。
この辺は意見が分かれるところだろう。
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パンフレットp.1/p.2の
葛飾北斎 (19C) 『北斎漫画 十一編』より.
と
Edgar Degas (1894) Danseurs, en Rose et Vert (Dancers, Pink and Green/踊り子たち、ピンクと緑)
は、この展覧会のsymbolになっている絵。この絵にしてから、まずこのポーズは、Degasがたくさん描いている、踊り子たちの他の絵でも出てくるポーズである。
それを、北斎の描いた「力士のポーズ」の影響といえるのだろうか?
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パンフレットp.3上の
葛飾北斎 (1814) 『北斎漫画 初編』より.
と
Mary Cassatt (1878) Little Girl in A Blue Armchair(青い肘掛け椅子に座る少女)
では、北斎の「ぐでっと袋によっかかる布袋さま」の影響というのだから、「ほんと~?」と言いたくなる。
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しかし、Degasにしても、Cassattにしても、それまではもっと端正なポーズを描いていて、こういうユニークだったり、変わった角度からだったり、そして生き生きとしたポーズを描くことはなかったらしいのだ。
しかし、北斎の影響を受ける前後の比較がないので、観覧している方には、本当かどうかわからない。
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図録, p.123
葛飾北斎 (ca.1831) 百物語 さらやしき.
と
Odilon Redon (1888) Ensuite Parait Un Être Singulier, Ayant Une Tête d'Homme sur Un Corps de Poisson (Planche V, TENTATION DE SAINT ANTOINE, SÉRIE I) (Then There Appears A Singular Being, Having the Head of A Man on the Body of A Fish (Plate V from the portfolio THE TEMPTATION OF SAINT ANTHONY, First Series)/「聖アントワーヌの誘惑」第一集より, 《V. それから魚の体に人間の頭を持った奇妙なものが現れる》).
まで行くと、Redonが浮世絵を見ていたか?好んでいたか?からして全くわからないし、二つの絵の影響関係についても、こじつけのような気がする。
しかしまあ、前から見たいと思っていたRedonの絵が、意外なところで見られたので、うれしかった。
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もう優秀な画家ばかりですから、北斎の絵をそのまま持ってくることはしないのはわかる。これは絵柄の影響を受けた、というより、北斎の精神を受け継いだということなのだろう。
しかし、影響関係がわかりにくいのは事実。今も100%納得はしていない。学者さんの「トバシ」もかなりあると見た。
その評価は後世の人がしてくれるだろう。
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図録, p.248
これは言わずと知れた
葛飾北斎 (1830-33) 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏.
この波頭の描写はだいぶ西欧の画家に影響を与えたらしい。
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1867年のParis万国博覧会で浮世絵(おそらく波の絵があったと思われる)を見たらしいGustave Courbetは、その直後から波の絵を大量に描き始める。
図録, p.238
Gustave Courbet (ca.1870) La Vague(Wave/波).
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驚くのはこれ↓
図録, pp.240-241
葛飾北斎 (ca.1804-07) おしをくりはとうつうせんのづ(押送り波濤通船の図).
と
Georges Seurat (1885) Le Bec du Hoc, Grandcamp(尖ったオック岬、グランカン).
これ、構図がよく似てるけど、北斎は波、Seuratは岩だ。たまたまじゃないの?展覧会の現場ではそう思ってしまった。
ところが、絵の上の方を見てほしい。似たような位置に鳥の群れが!これは偶然ではないだろう。
そして決定的なのは「枠」だ。北斎の絵に枠があるのはそれほど奇異ではない。しかしだ、Seuratの絵、印象派の絵にこのような「枠」があるのは異常だ。
これに気づいてから、ようやく「北斎の影響」であることを確信した。
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じつはこの「枠」に気づいたのは、帰って図録を見ていて。うーん、現場で気づきたかった。悔しい。
しかしあの人出では、一点一点を、なかなかじっくり見れないのだ。図録を買っておいてよかったなあ。
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それにしても北斎の絵もなかなかにすごい。こんな波は現実にはありえないだろう。だいたい縦が5倍くらい誇張されている。
しかし、もしかすると北斎の方にも、何か元絵があったのかもしれない。この絵には西欧の版画(ething)の影響が見られるようだし。
この元絵(あるとして)を西欧の絵に探すのも、おもしろいかもしれない。
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今年、展覧会で非常に楽しんだ「Arcimboldo-国芳」の流れをはじめとして、西欧と日本のように地理的に離れていて、これまであまり関係が知られていなかった文化交流が明らかになっていく過程は、本当に面白い。
手前味噌だが、私がチベットやラダックを見るスタンスは、「チベットだけを見ていてもチベットは見えない」、「ラダックだけ見ていてもラダックは見えない」というものだ。
つまり、周囲との政治的・宗教的・文化的な差異と交流・影響関係を把握することで、その地域の特色が浮き出てくる。その浮き出た瞬間をエイッとすくい取るのだ。楽しい瞬間ですよ。
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図録, p.181
現物を見て腰を抜かしたのがこれ。
Émille Gallé (ca.1890-1900) Panel with Dropping Aronia(パネル : 枝垂海棠).
これは板に絵が描いてあるわけではなく、寄木細工で出来ているのだ。びっくり。はじめて知った。
これは「浮世絵を模した」なんていうのは、もうどうでもいい。とにかく驚愕の工芸品だ。
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Galléの寄せ木工芸品は、他に2点、テーブルとキャビネットが出品されていたが、これもものすごかった。
図録ではその凄さが全くわからないので、是非会場で現物を間近に見てほしい。
いつかGalléの展覧会があったら、是非行こう。
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それにしても、日本側は北斎だらけだ。この北斎一人で、錚々たる西欧の大画家軍団に多大な影響を与えているんだから、正に浮世絵の巨人である。
しかし、待てよ・・・。西欧に渡った浮世絵は北斎だけではないはずだ。他の浮世絵の影響って、ないのか?
この展覧会のテーマは「北斎」なので、他の浮世絵が取り上げられていないのは仕方ないのかもしれないが、それにしても北斎・北斎と強調し過ぎのような気がした。
浮世絵全体がJaponismeに影響を与えており、「その中で最も強い影響力を誇ったのが北斎だ」という位置づけがわかるような展示があってもいいのではないか、と思った。現物の展示がなくとも、写真入りパネル数枚でいいから説明がほしかった。
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日本の浮世絵が西洋の画家に与えた影響で一番有名なのは、実は北斎ではない。
歌川広重(1797-1858) → Vincent van Gogh(1853-1890)
である。
広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」や「名所江戸百景 大はし あたけの夕立」を、Goghがまんま模写しているのは、つとに有名。
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実は、この国立西洋美術館の「北斎とジャポニズム」展と同時に、同じ上野公園の東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催中なのだ。
・日本放送協会+NHKプロモーション+北海道新聞社/ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(as of 2017/11/17)
http://gogh-japan.jp/
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 東京展
開催概要
会期 : 2017年10月24日(火)─2018年1月8日(月・祝)
会場 : 東京都美術館
住所 : 〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36
アクセス : JR「上野駅」公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分、京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分 ※駐車場はありませんので、車での来場はご遠慮ください。
開室時間 : 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は午後8時まで ※いずれも入室は閉室の30分前まで
休室日 : 月曜日、12月31日(日)、1月1日(月・祝) ※ただし、1月8日(月・祝)は開室
観覧料(税込)当日(前売・団体) : 一般1,600円(1,300円) 大学生・専門学校生 1,300円(1,100円) 高校生800円(600円) 65歳以上1,000円(800円) 11月15日(水)、12月20日(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料(要証明)。混雑が予想されます。 ※団体割引の対象は20名以上。 ※中学生以下は無料 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額 ※いずれも証明できるものをご持参ください
主催 : 東京都美術館、NHK、NHKプロモーション
後援 : 外務省、オランダ王国大使館
協賛 : 損保ジャパン日本興亜
協力 : KLMオランダ航空、日本航空
共同企画 : ファン・ゴッホ美術館
お問い合わせ : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
報道機関お問い合わせ : ゴッホ展 広報事務局(プラチナム内) 担当:金・森 TEL 03-5572-7351 / FAX 03-3584-0727 MAIL gogh-japan.pr@vectorinc.co.jp
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「北斎とジャポニズム」展で、「広重→Gogh」関係に意図的に触れていないのは、実はこういう理由があったのです。
そういうわけで、「ゴッホ展」も近々行くぞ!
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(追記)@2017/11/18
なお、北斎の浮世絵は、状態がよいものはあまりありません。まあ、この展覧会は、北斎の浮世絵だけを見るものではないからいいんだけど。
状態のいい北斎を見るのであれば、太田記念美術館など、北斎展をしょっちゅうやってるのでそちらでどうぞ。
2017年11月1日水曜日
国立国会図書館 「挿絵の世界」 展
に行ってきました。
・国立国会図書館 > 新着情報 > イベント・展示会情報 > 展示会 > 2017年10月10日(火)~2017年11月11日(土) 東京本館/2017年11月17日(金)~2017年12月9日(土) 関西館 企画展示「挿絵の世界」(as of 2017/10/31)
http://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/exhibition2017.html
東京会場
日時 : 2017年 10月10日(火) ~11月11日(土) 日曜日、10月18日(水・資料整理休館日)、11月3日(金・祝)を除く。10:00~19:00(土曜日は18:00まで) ※一部の資料の展示替え、展示箇所替えを行います。
会場 : 国立国会図書館 東京本館 新館1階 展示室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 利用者サービス部 サービス企画課 展示企画係 03-3506-5260(直通) tenji-kikaku@ndl.go.jp
関西会場
日時 : 2017年 11月17日(金) ~12月9日(土) 日曜日・11月23日(木・祝)を除く。10:00~18:00 (ただし11月19日(日)のみ10:00~16:00開催。) ※『東京日日新聞大錦』、『新聞附録東錦繪』、『水野年方下圖』の3点は複製パネルでの展示です。
会場 : 国立国会図書館 関西館 地下1階 大会議室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。 ※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 関西館 総務課 0774-98-1224(直通)
同展チラシ表
同展チラシ裏
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今年の夏は、
2017年9月16日土曜日 月岡芳年ツアー2017(3) 太田記念美術館 「月岡芳年 月百姿」 展
2017年8月19日土曜日 月岡芳年ツアー2017(2) 太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語」 展
2017年8月5日土曜日 月岡芳年ツアー2017(1) 横浜歴史博物館「歴史×妖×芳年」展
と、幕末~明治前期の最後の浮世絵師・月岡芳年に、ずいぶんとつき合いました。
この展覧会は、その芳年や落合芳幾(1833-1904、この人も歌川国芳の弟子)から始まります。つまり浮世絵/錦絵が新聞に取り入れられ、そして滅びていく過程です。
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これは図録代わりのパンフレット。会場で無料配布されています。
・国立国会図書館・編 (2017.10) 『挿絵の世界』(国立国会図書館 平成29年度企画展示). 12pp. 国立国会図書館, 東京.
同書, p.1
最初の展示は、芳年、芳幾による大判の新聞錦絵。浮世絵/錦絵の最後のきらめきの作品です。
その後、錦絵が成立しなくなると、浮世絵師たちは新聞・本の挿絵に活路を見出していきます。
水野年方(1866-1908)は芳年の弟子。新聞小説の浮世絵風挿絵画を確立した人で、名前を知らなくとも教科書や歴史の本などで、誰しも見覚えがあるんではないだろうか。
同書, pp.2-3
年方の流派は現代にも生き続けており、美人挿絵で一世を風靡した岩田専太郎(1901-74)などの「色っぽい女性画」は年方の流れをくむもの。
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明治も中期になると、洋画技術もだいぶ普及。小説の挿絵にもクロッキー/スケッチ風の挿絵が現れるが、当初は不人気で、浮世絵師が描き直しているのがおもしろい。
しかし、挿絵の世界でも、徐々に洋画技術が普及。そしてそれは大正初期のArt Nouveau(アール・ヌーヴォー)、特にAubrey Vincent Beardsley(1872-98)の挿絵が入ってきたことで決定的になる。
日本の挿絵にも、Beasleyのそっくり絵が多数現れている。
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かくして浮世絵派は、挿絵の世界でも主役ではなくなっていくのだが、その流れは決して消えることはなかった。
大正~昭和初期の人気画家(と言うより、はっきりイラストレーターと言える人)・高畠華宵(1888-1966)には、洋風の影響は当然ありながらも、浮世絵の技法が色濃く残っている。
伊藤彦造(1904-2004)ともなると、はっきり浮世絵師の直系である。彦造の展示挿絵は荒々しく、また色もまっ黒だったなあ。
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何度か書いているが、この流れはマンガ家の絵にも受け継がれ、特に貸本マンガの世界で生き続けてきた。橋本将治、平田弘史などがその流れをくむ人たち。
花輪和一、丸尾末広などのガロ系マンガ家も、Disney~手塚治虫系の絵とは別で、挿絵画家の影響が強い人たちだ。
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昭和に入り、挿絵の世界に中原淳一、蕗谷虹児、松本かつぢ、らが現れてくると、自分にも馴染みのある世界になってくる。
しかし、この展覧会で自分が一番知りたかったのは、今まで述べた、浮世絵師たちの滅びの姿だ。今まで知らなかったそのミッシング・リンクが、だいぶわかってきた。その意味で非常にいい展覧会だったと思う。
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もちろん、挿絵の世界はその後も大きな発展を遂げる。
1940年代以降、山川惣治、小松崎茂らが出現するると、すっかり挿絵の世界も濃厚な洋画の世界になる。
こちらも、もちろんマンガの世界に影響を与えている。通常、「どっから出てきた絵なのか、わからない」と評される諸星大二郎などは、この系統と見ていいだろう。
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そして、真鍋博、高荷義之らのSF挿絵。宇野亜喜良、灘本唯人、和田誠らの洒脱な挿絵。より一層モダンな河村要助、峰岸達、浅賀行雄らになると、もう今もお馴染みの挿絵だ。
ひとつ不思議なのは、山藤章二の展示が一つもなかったこと。でもなんとなくその理由がわかる。山藤挿絵の特徴は、絵の中に文章が入り、作家とinterplayを繰り広げることに特徴がある。これはもう挿絵の域を超えている、という判断だったのかもしれない。
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最後にラノベ・イラストの世界だ。もうこのへんは、自分には馴染みがないのだが、色々勉強させてもらった。
しかし、このあたりの絵は、源流になっている、吾妻ひでおのロリ絵、東映動画に始まる宮﨑駿のジブリ絵なども考慮した上で、見ていく必要がある。
挿絵の流れは、挿絵だけで完結するものではない。挿絵という切り口で、日本の絵(マンガやアニメなども含む)の大きな流れをつかんでいくのも、この展覧会の楽しみ方だ。
その意味で、非常に面白い展覧会でした。
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挿絵というものは、原画がもはや存在しないケースが多く、展示はみな印刷物だ。絵が小さい。大規模な展覧会など不可能なのだ。
小規模な展覧会なのは仕方ない。むしろ、これこそ国会図書館らしい展覧会といえる。
無料なのに、見応えたっぷりでとても面白い。ぜひ行ってみてください。もし東京展を見逃しても、「けいはんな」の関西館まで行って見てくる価値は充分あると思います。
・国立国会図書館 > 新着情報 > イベント・展示会情報 > 展示会 > 2017年10月10日(火)~2017年11月11日(土) 東京本館/2017年11月17日(金)~2017年12月9日(土) 関西館 企画展示「挿絵の世界」(as of 2017/10/31)
http://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/exhibition2017.html
東京会場
日時 : 2017年 10月10日(火) ~11月11日(土) 日曜日、10月18日(水・資料整理休館日)、11月3日(金・祝)を除く。10:00~19:00(土曜日は18:00まで) ※一部の資料の展示替え、展示箇所替えを行います。
会場 : 国立国会図書館 東京本館 新館1階 展示室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 利用者サービス部 サービス企画課 展示企画係 03-3506-5260(直通) tenji-kikaku@ndl.go.jp
関西会場
日時 : 2017年 11月17日(金) ~12月9日(土) 日曜日・11月23日(木・祝)を除く。10:00~18:00 (ただし11月19日(日)のみ10:00~16:00開催。) ※『東京日日新聞大錦』、『新聞附録東錦繪』、『水野年方下圖』の3点は複製パネルでの展示です。
会場 : 国立国会図書館 関西館 地下1階 大会議室 ※展示会の観覧のみの場合、入館手続きは不要です。図書館資料利用中の展示会観覧はできませんので、退館手続きを済ませてから展示会場にお入りください。 ※満18歳未満の方もご覧いただけます。
参加費 : 無料
お問い合わせ先 : 国立国会図書館 関西館 総務課 0774-98-1224(直通)
同展チラシ表
同展チラシ裏
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今年の夏は、
2017年9月16日土曜日 月岡芳年ツアー2017(3) 太田記念美術館 「月岡芳年 月百姿」 展
2017年8月19日土曜日 月岡芳年ツアー2017(2) 太田記念美術館 「月岡芳年 妖怪百物語」 展
2017年8月5日土曜日 月岡芳年ツアー2017(1) 横浜歴史博物館「歴史×妖×芳年」展
と、幕末~明治前期の最後の浮世絵師・月岡芳年に、ずいぶんとつき合いました。
この展覧会は、その芳年や落合芳幾(1833-1904、この人も歌川国芳の弟子)から始まります。つまり浮世絵/錦絵が新聞に取り入れられ、そして滅びていく過程です。
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これは図録代わりのパンフレット。会場で無料配布されています。
・国立国会図書館・編 (2017.10) 『挿絵の世界』(国立国会図書館 平成29年度企画展示). 12pp. 国立国会図書館, 東京.
同書, p.1
最初の展示は、芳年、芳幾による大判の新聞錦絵。浮世絵/錦絵の最後のきらめきの作品です。
その後、錦絵が成立しなくなると、浮世絵師たちは新聞・本の挿絵に活路を見出していきます。
水野年方(1866-1908)は芳年の弟子。新聞小説の浮世絵風挿絵画を確立した人で、名前を知らなくとも教科書や歴史の本などで、誰しも見覚えがあるんではないだろうか。
同書, pp.2-3
年方の流派は現代にも生き続けており、美人挿絵で一世を風靡した岩田専太郎(1901-74)などの「色っぽい女性画」は年方の流れをくむもの。
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明治も中期になると、洋画技術もだいぶ普及。小説の挿絵にもクロッキー/スケッチ風の挿絵が現れるが、当初は不人気で、浮世絵師が描き直しているのがおもしろい。
しかし、挿絵の世界でも、徐々に洋画技術が普及。そしてそれは大正初期のArt Nouveau(アール・ヌーヴォー)、特にAubrey Vincent Beardsley(1872-98)の挿絵が入ってきたことで決定的になる。
日本の挿絵にも、Beasleyのそっくり絵が多数現れている。
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かくして浮世絵派は、挿絵の世界でも主役ではなくなっていくのだが、その流れは決して消えることはなかった。
大正~昭和初期の人気画家(と言うより、はっきりイラストレーターと言える人)・高畠華宵(1888-1966)には、洋風の影響は当然ありながらも、浮世絵の技法が色濃く残っている。
伊藤彦造(1904-2004)ともなると、はっきり浮世絵師の直系である。彦造の展示挿絵は荒々しく、また色もまっ黒だったなあ。
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何度か書いているが、この流れはマンガ家の絵にも受け継がれ、特に貸本マンガの世界で生き続けてきた。橋本将治、平田弘史などがその流れをくむ人たち。
花輪和一、丸尾末広などのガロ系マンガ家も、Disney~手塚治虫系の絵とは別で、挿絵画家の影響が強い人たちだ。
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昭和に入り、挿絵の世界に中原淳一、蕗谷虹児、松本かつぢ、らが現れてくると、自分にも馴染みのある世界になってくる。
しかし、この展覧会で自分が一番知りたかったのは、今まで述べた、浮世絵師たちの滅びの姿だ。今まで知らなかったそのミッシング・リンクが、だいぶわかってきた。その意味で非常にいい展覧会だったと思う。
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もちろん、挿絵の世界はその後も大きな発展を遂げる。
1940年代以降、山川惣治、小松崎茂らが出現するると、すっかり挿絵の世界も濃厚な洋画の世界になる。
こちらも、もちろんマンガの世界に影響を与えている。通常、「どっから出てきた絵なのか、わからない」と評される諸星大二郎などは、この系統と見ていいだろう。
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そして、真鍋博、高荷義之らのSF挿絵。宇野亜喜良、灘本唯人、和田誠らの洒脱な挿絵。より一層モダンな河村要助、峰岸達、浅賀行雄らになると、もう今もお馴染みの挿絵だ。
ひとつ不思議なのは、山藤章二の展示が一つもなかったこと。でもなんとなくその理由がわかる。山藤挿絵の特徴は、絵の中に文章が入り、作家とinterplayを繰り広げることに特徴がある。これはもう挿絵の域を超えている、という判断だったのかもしれない。
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最後にラノベ・イラストの世界だ。もうこのへんは、自分には馴染みがないのだが、色々勉強させてもらった。
しかし、このあたりの絵は、源流になっている、吾妻ひでおのロリ絵、東映動画に始まる宮﨑駿のジブリ絵なども考慮した上で、見ていく必要がある。
挿絵の流れは、挿絵だけで完結するものではない。挿絵という切り口で、日本の絵(マンガやアニメなども含む)の大きな流れをつかんでいくのも、この展覧会の楽しみ方だ。
その意味で、非常に面白い展覧会でした。
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挿絵というものは、原画がもはや存在しないケースが多く、展示はみな印刷物だ。絵が小さい。大規模な展覧会など不可能なのだ。
小規模な展覧会なのは仕方ない。むしろ、これこそ国会図書館らしい展覧会といえる。
無料なのに、見応えたっぷりでとても面白い。ぜひ行ってみてください。もし東京展を見逃しても、「けいはんな」の関西館まで行って見てくる価値は充分あると思います。
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