2018年3月4日日曜日

『ランバーロール 01』 森泉岳土「あの日あなたと ヴェネツィア2016」ほか

・ランバーロール・編 (2018.2) 『ランバーロール01』. 159pp. ランバーロール, 出版地不明.


表紙画 : 森泉岳土, デザイン : セキネシンイチ制作室

という雑誌というか本を見つけました。

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表紙画は森泉岳土。相変わらず嫌味なくらいうまい、美しい。ロゴもユニーク(読めない!)。

森泉(モデルさんではない方(笑))については、これまで3度取り上げていますので、「この人の絵、何?」という人はそちらでどうぞ。

2017年10月15日日曜日 森泉岳土 『報いは報い、罰は罰』
2016年12月31日土曜日 森泉岳土 『うと そうそう』
2016年8月14日日曜日 森泉岳土5連発

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同人誌的な内容だが、ISBNがついているので、一応通常の流通ルートに乗る商業誌。雑誌コードはついていないので、本という扱い。

奥付には、版元「ランバーロール」の所在地記載がない。この辺は同人誌的。

それでも装丁はやたらと立派で、プロに依頼してるし、こっちは商業誌的、というキメラのような雑誌だ。

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内容は、マンガが5編に短編小説が4編という構成。

006-015 (マンガ) 森泉岳土/あの日あなたと ヴェネツィア2016
016-022 (小説) 戌井昭人/アライちゃん
023-023 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
024-033 (マンガ) ササキエイコ/工場
034-042 (小説) 加藤秀行/マルシェ
043-043 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
044-061 (マンガ) おくやまゆか/むかしこっぷり 塀の上の二人のはなし
062-071 (小説) ふくだももこ/カナちゃん
072-073 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
074-084 (小説) 松波太郎/5、4、3、2、1、0.9
085-085 (イラスト) 森泉岳土/(無題)
087-119 (マンガ) 横山雄/彗星のこども
120- (マンガ) 安永知澄/海ちゃんへの手紙 すごいひと

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中心になっているのは誰かわからないが、森泉は表紙・巻頭だし、その他にイラストも4枚提供してるし、彼が雑誌の顔として全面的に協力しているのは間違いない。


同誌, p.43

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・森泉岳土 (2018.2) あの日あなたと ヴェネツィア2016. 『ランバーロール01』所収. pp.6-15. ランバーロール, 所在地不明. 

は、ItalyのUdineで毎年開催されているIl Far East Film Festival 18(第18回ウーディネ極東映画祭)(2016年4月)で、岳父である映画監督・大林宣彦が、Gelso d’Oro alla Carriera(生涯功労賞)を受賞した際に、一家でItaly、特にVeneziaを訪れた時の思い出を綴る小品。

内容は一見軽いが、大林監督は末期癌であることを公言しているので、実は家族にとっては大切な思い出だ。

「ああ くつろぐ」

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森泉が、大林監督の娘さんと結婚しているのは、知っている人は知っているが、知らない人も多いかもしれない。アーティストとして自立しているから、それを売りにする必要は全くないので、表に出すことはあまりない(かといって隠しているわけでもない)。

しかし、やはり大林監督の時間が少なくなっているせいもあって、最近は両者のコラボが増えてきた。『うとそうそう』の推薦シールや解説(になってなかったけど)に大林監督が登場しているし、大林監督の最新映画『花筺』のポスターも森泉だ。

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線画だけのシンプルな絵だが、「水で描いてそこに墨を垂らす」といういつもの森泉画法で描かれている。

大きく描いて、それを絵ごとにスキャナーで取り込み、画像ソフト上でコマ構成するというやり方らしいが、ここまで縮小されていると、そんな凝った画法が使われていることに気づかない人も多いだろう。

しかし、この線の妙な不均質さに「筆にしても変だ」と嗅ぎつけた人は、

・ジャパン・クリエーターズ Wannabe.jp > Illustration イラスト > Illustrator FILE 10:森泉岳土(2015年8月24日更新)
http://wannabe.jp/illustration/column/moriizumi/index.html

をどうぞ。

イラストの方は、お得意の「人物シルエット+にじみベタ塗り」が多用された森泉らしいもの。これが4枚も見れるのだから幸せだ。

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他の作者で知っているのは「おくやまゆか」だけ。これも死期の迫った父親の記憶を代筆した、いい作品だ。

ササキエイコ、横山雄は、どちらもアート系のマンガだ。森泉人脈らしい作品群。

こういった中に入ると、普通の絵柄の安永作品が居心地悪そう(笑)。

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小説の方は、いずれも文学賞を取っているような、それなりに有名な人たちらしいが、私はほとんど小説というものを読まないので、全然知らなかった。

小説はほとんど読まない、とはいえ、「ツツイスト」ではあるので、戌井作品、松波作品などには、どうしても筒井康隆の影響を見てしまう。いずれも面白い実験小説だ。

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ランバーロールは、どのようなペースで発刊されるのかわからないが、毎回森泉作品が読めるのなら、また買おうと思う。

どうも、創刊準備号である『ランバーロール 0』というのもあるらしいので、探しに行ってみる。

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